異世界人の目標が微妙なのは一体……? #3
「ねぇ、私、別のパーティーからお誘いあるからそっちに行きたいんですけど」
いつものクエスト終了後の食事会。定着しつつあるこの時間だが、俺たちの戦闘ぶりを体験したメアリスがパーティーから抜けたいと言い出した。
「おいおい、たった一回で根を上げたのか? 俺なんか、この世界に来て3日目、3日連続でこれだけど我慢してるんだぞ」
まあ、メアリスが抜けたがるのもわからなくもない。
結果としてイエティはすべて討伐できたわけだが、その内容があれではね。
「そうですよ、私たちはまだ草原でのクエストしか受けてないですけど、洞窟系のクエストになったときシーフがいないのは痛手です」
いや、二コラ。そういう問題じゃないんだけどね?
「私は別に構わないわよ。洞窟の中って、湿気があってあまり好きじゃないんだけど」
まあ、こんな二人を抱えていたら、嫌になるのもわかる。
「ほら、やっぱり、相性とかあるし、いろいろ組み合わせを試してみたいなって。それに私、もっとちゃんと王道なファンタジーの世界を体験したいの。初心者パーティーっぽいからそんな感じで行けるかなって思ってたんだけど……そういう事だから、じゃあね!」
と、食事に手を付けずに足早に去って行ってしまった。
そこまで嫌がるか? いや当然か。
「なあ、改めて聞くけど、お前らのそのスタイル、何とかならないのか?」
「あ、私が年齢の割りにあまり成長してないことに触れましたね!? い、いいんです別に、このほうが小さい見た目に意外な魔術! っていうウケがあるんですから!」
「あら、あまり自慢することじゃないと思ってたけど……私、普通の人よりは大きいと思うわよ……?」
「そっちじゃねぇよ! 戦い方だよ!」
二コラがこの小柄なほうがいろいろ都合がいいんですと弁明し、ロザリオが着痩せするほうなんだと説明する。
そうじゃない。
「いや、二コラは魔法使えるんだから魔法で援護してくれよ! ロザリオも、え、なんで金とるの!? 正直、自分の仕事すればそれなりに引っ張りだこじゃない? 君!」
正直、ロザリオの支援魔法は大したものだと思う。
ほかのプリ―ストがどうなのかという基準がないから解らないが、筋力速度防御と三拍子そろった上昇効果に、きちんと回復も使えるのだ。
前衛もこなしてくれるというのは、場合によってはかなりの長所でもある。
しかし、メアリスに聞いたところ、やっぱり支援魔法で金をとるのは異常らしい。
「だから援護してるじゃないですか。私の大魔術でイエティの戦意は完全にそがれてましたよ?」
「だってぇ、そういうので困惑したりする表情って、すごくいいじゃない」
どうしよう。俺のパーティーメンバーが頭おかしい。
これは俺も、本格的に別の仲間を探したほうがいいかもしれない。
と、その時である。
『緊急、緊急。ギガントベヒモス接近。ギルド員は至急ギルド前広場に召集せよ。繰り返す……』
街中へと張り巡らされた拡声器から、魔法でつながったアナウンスが発せられる。
「ん? ギガントベヒモスってなんだ?」
やたら慌ただしくなりつつあるギルド内の動きを眺めながら、二コラとロザリオに質問する。
「ああ、この混沌とした民衆の表情、いいわぁ……」
「ああ、ギガントベヒモスですね。とてつもなくでかいベヒモスです」
いや、わからん。
「何年かに一回、どこからともなく現れる、一つの都市に匹敵する大きさのベヒモスです」
「おい、それってやばいんじゃないのか!? そんなもん、突っ込まれただけで一貫の終わりじゃないか! 早く俺たちも集まったほうがいいんじゃ……」
「まあ、何とかなるんじゃないですか? この街には英雄ロクさんがいますし、何とか追っ払ってくれるでしょう」
だから何者なんだよロクさん! というか、なんとかできるものなのか?
たしかロクさんってのは魔法剣士じゃなかったっけ。火力に特化した魔法職とかならわかるが、どう対抗するんだよ!
「何年か前にも襲撃があったんですけど、その時も撃退してたし、私たちの出番はないかと」
「でも、とりあえず話だけは聞き行こうぜ。大丈夫ってんなら、見学したっていいわけだし」
そんなわけで、俺たちはギルドの外に出た。