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シャイニングフール ~SF異世界希望したのにこれじゃない感なのは一体……?~  作者: 葉巻シガー
とりあえずこの世界に慣れろ! 編
14/15

ザ・二コラ・マジックショー

 ひもじい……

 ひもじいよぉ……


「くっそぉ……そりゃ街英雄とはいえ、文字も読めないような奴が働ける口はそうそうないよなぁ」


 俺はこの晴天の昼下がり、当てもなくぶらぶらと散歩をしていた。

 残金のこり三千リンズ。報酬の支払いまではまだ三日ほどあるらしい。

 なるべく節約してやってきたつもりだが、宿代と食費だけでみるみると消費されてしまったのだ。

 パーティーのメンバーともギルドが閉鎖されてるのもあって顔を合わせていない。

 所持金の関係でメアリスと同じ宿は取れないし、ロザリオは教会で生活している。

 当初の二コラと同じ宿に泊まっているが、時間帯が合わないのか顔を見ていない。


「はぁ、なにか金になる話はないか……ん?」


 そんなロクでもない人間みたいな独り言をしながら歩いていると、商店街の入り口あたりに妙な人だかりを見つけた。

 ここ何日かで何回か見かけてた気もするが、一体何なんだろう。


「おい! 今日も二コラ様の大魔術を見られるぞ!」


 二コラ?

 そういえば、普段はショーで稼いでるとか言ってたな。

 先日の活躍の件もあって大盛況のようだ。

 どれ、どんなものか、冷やかしてやろう。


「さあご覧あれ、今日の魔術はこちら! ここにつながっている鶏、今から卵を産むのですが、なんと生まれるのはグリフォンなのです!」


「「「おおおおおお!!!」」」


 おい。

 ちょっと待ってくれ。

 グリフォンってあれだろ?

 馬の体に鷲の顔と翼の生えたような幻獣みたいなやつ。

 それを? このただの鶏が? 産む?

 なにを馬鹿な……


「コケーーーーーッ!!」


 と、二コラがくるくると短い杖を振りながら鶏の頭を小突くと、鳴き声と共に卵を産んだ。

 ふむ。ただの卵だな。


「ここに、成長促進の魔法をかけますると……ラ・クロイサンス!」


 そして呪文と共に、卵がピクピクと動き出した。

 成長促進の魔法というのは言葉通り、生き物の成長を助長する魔法で、卵や胎児にも有効な魔法らしい。なんでそんな魔法があるんだ。


「おい見ろ! 卵が割れて来たぞ!」


 野次馬の一人が指さし、やがて卵の殻が破られる。

 そこから出てきたのは、液体で毛が湿っているグリフォンの赤ちゃんだった。


「本当だ! グリフォンの子供だ! なんで鶏からレベル50クラスのモンスターが生まれるんだ!」


「間違いない、この鶏も正真正銘ただの鶏だ!」


「どうなってんだ、グリフォンの卵を仕込むにしたって、産卵から子育ての期間のグリフォンは群れで子供を守るから、レベル80の人間でも難しいんだぞ!?」


「というか、そのグリフォン売ってくれ!」


 などなど、野次馬の皆さんは目の前の光景が信じられないようだ。

 そんなにすごい事なのか。


「あれ、サトシじゃないですか。とうとう私のショーを手伝ってくれる気になったんですか?」


 観衆の中に俺の姿を見つけたようで、俺の手を引っ張って部隊へとあげやがった。

 まだ俺は了承していない。


「まてまて、俺は手伝うつもりはないぞ。街と違って俺だけ消されてこの世界に戻ってこれないとか嫌だぞ」


「何か勘違いしてるようおですが、私は街を異界へ送ったわけじゃありませんよ。それより、お金に難儀してるんじゃないですか? お手伝いいただけたら、気持ちくらいは渡すのですが」


「俺は何をすればいい?」


「それじゃあ、脱出マジックでもしましょうか」


 実にスムーズな流れで二コラが道具を準備する。

 脱出マジックかぁ。あれだろ、なんか箱みたいのに入れられて、どこかに抜け穴があるんだろ?

 そういうのだったら何とかできそうだ。


「じゃあ、このグリフォンを成体まで成長させましょうか。ラ・クロイサンス!」


 ん?

 脱出マジックに、なんでそんなことをする必要が?

 というかそんな危険なモンスターを街中で成体までさせちゃって大丈夫なのか?


「みなさんご安心ください! グリフォンはその性質上、初めに見た私を親だと思っています! 私の命令に忠実なので、襲われたりの危険はありません!」


 ほほう、まさに鳥頭って訳だ。


「ではアルメアちゃん。このサトシという男をパクッといっちゃってください」


「ん?」


 パクッ


 その瞬間、視界が真っ暗になると同時に体中が生暖かい何かに包まれた。


 これ


 もしかして


 捕食されて


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