ザ・二コラ・マジックショー
ひもじい……
ひもじいよぉ……
「くっそぉ……そりゃ街英雄とはいえ、文字も読めないような奴が働ける口はそうそうないよなぁ」
俺はこの晴天の昼下がり、当てもなくぶらぶらと散歩をしていた。
残金のこり三千リンズ。報酬の支払いまではまだ三日ほどあるらしい。
なるべく節約してやってきたつもりだが、宿代と食費だけでみるみると消費されてしまったのだ。
パーティーのメンバーともギルドが閉鎖されてるのもあって顔を合わせていない。
所持金の関係でメアリスと同じ宿は取れないし、ロザリオは教会で生活している。
当初の二コラと同じ宿に泊まっているが、時間帯が合わないのか顔を見ていない。
「はぁ、なにか金になる話はないか……ん?」
そんなロクでもない人間みたいな独り言をしながら歩いていると、商店街の入り口あたりに妙な人だかりを見つけた。
ここ何日かで何回か見かけてた気もするが、一体何なんだろう。
「おい! 今日も二コラ様の大魔術を見られるぞ!」
二コラ?
そういえば、普段はショーで稼いでるとか言ってたな。
先日の活躍の件もあって大盛況のようだ。
どれ、どんなものか、冷やかしてやろう。
「さあご覧あれ、今日の魔術はこちら! ここにつながっている鶏、今から卵を産むのですが、なんと生まれるのはグリフォンなのです!」
「「「おおおおおお!!!」」」
おい。
ちょっと待ってくれ。
グリフォンってあれだろ?
馬の体に鷲の顔と翼の生えたような幻獣みたいなやつ。
それを? このただの鶏が? 産む?
なにを馬鹿な……
「コケーーーーーッ!!」
と、二コラがくるくると短い杖を振りながら鶏の頭を小突くと、鳴き声と共に卵を産んだ。
ふむ。ただの卵だな。
「ここに、成長促進の魔法をかけますると……ラ・クロイサンス!」
そして呪文と共に、卵がピクピクと動き出した。
成長促進の魔法というのは言葉通り、生き物の成長を助長する魔法で、卵や胎児にも有効な魔法らしい。なんでそんな魔法があるんだ。
「おい見ろ! 卵が割れて来たぞ!」
野次馬の一人が指さし、やがて卵の殻が破られる。
そこから出てきたのは、液体で毛が湿っているグリフォンの赤ちゃんだった。
「本当だ! グリフォンの子供だ! なんで鶏からレベル50クラスのモンスターが生まれるんだ!」
「間違いない、この鶏も正真正銘ただの鶏だ!」
「どうなってんだ、グリフォンの卵を仕込むにしたって、産卵から子育ての期間のグリフォンは群れで子供を守るから、レベル80の人間でも難しいんだぞ!?」
「というか、そのグリフォン売ってくれ!」
などなど、野次馬の皆さんは目の前の光景が信じられないようだ。
そんなにすごい事なのか。
「あれ、サトシじゃないですか。とうとう私のショーを手伝ってくれる気になったんですか?」
観衆の中に俺の姿を見つけたようで、俺の手を引っ張って部隊へとあげやがった。
まだ俺は了承していない。
「まてまて、俺は手伝うつもりはないぞ。街と違って俺だけ消されてこの世界に戻ってこれないとか嫌だぞ」
「何か勘違いしてるようおですが、私は街を異界へ送ったわけじゃありませんよ。それより、お金に難儀してるんじゃないですか? お手伝いいただけたら、気持ちくらいは渡すのですが」
「俺は何をすればいい?」
「それじゃあ、脱出マジックでもしましょうか」
実にスムーズな流れで二コラが道具を準備する。
脱出マジックかぁ。あれだろ、なんか箱みたいのに入れられて、どこかに抜け穴があるんだろ?
そういうのだったら何とかできそうだ。
「じゃあ、このグリフォンを成体まで成長させましょうか。ラ・クロイサンス!」
ん?
脱出マジックに、なんでそんなことをする必要が?
というかそんな危険なモンスターを街中で成体までさせちゃって大丈夫なのか?
「みなさんご安心ください! グリフォンはその性質上、初めに見た私を親だと思っています! 私の命令に忠実なので、襲われたりの危険はありません!」
ほほう、まさに鳥頭って訳だ。
「ではアルメアちゃん。このサトシという男をパクッといっちゃってください」
「ん?」
パクッ
その瞬間、視界が真っ暗になると同時に体中が生暖かい何かに包まれた。
これ
もしかして
捕食されて