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弓持つ君は、  作者: 八幡八尋
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憧れなのか?

前の話と流れは同じです。

篠原美智子視点

  え~!!先生、キュードー部だったの?!


高原美佳が隣で煩く喚き立てた。

煩いという意味を込めて、少しだけ顔を歪ませる。でも多分、誰も気付いてないんだろう。


先生は弓道部の顧問だ。

「別にやってたわけじゃないけどまあ生徒に教えるくらいだし」なんて生半可な気持ちで顧問をしている他の先生方と同じにはしないでほしい。

何と言っても彼女は、この界隈では有名人なのだから。


私の家は日本でも指折りの弓道の名家で、姉や私自身も物心ついた時期から弓と矢を手に持っている。父は指導の時以外も厳しく、幼心に「絶対に今後衝突することがある」と私は感じていた。対して母は、優しくおおらかで私の心を癒してくれる存在だった。姉は母似で優しく明るい性格、私は成長するにつれ、父に似た仏頂面で感情の起伏のない人間へと育った。


6才の頃、父に連れられて全日本弓道大会を観に行った。

その年頃、父似のこの性格と弓道が嫌で嫌で仕方がなくて、「女の子らしくなりたい」と毎日のように私は喚いていた。父は勿論、そんな私に対して厳しく叱り、私は反発し衝突しまくった。つまりは、フラグ回収なるものをしていたということだ。

大会前日も大喧嘩をしたけれど、大泣きする私を何とか母がなだめ、怒る父を姉がなだめて次の日はお互い仏頂面のまま手を繋いで会場へ向かった。


そこで彼女に出逢った。

最年少、高校1年生。初出場の全国大会で見事1位を勝ち取り、世界大会でもトップの成績。どこの道場も彼女を引っ張りだこだったけれど、結局フリーのままで、しかも数年経つと大会に出ることもなくパタリと名を聞かなくなってしまった。何より一番メディアを驚かせたのは、彼女が「何となく」という理由で「初めて」高校から弓道部に入ったことだ。

大会はプロもいるというのに、全く怯む様子もなく弓を構える彼女に、私はすっかり魅入られてしまった。


  おとうさん、あの人、すごいねぇ!


喧嘩をしていることも忘れ、目をキラキラと輝かせる私に、父は呆れながらも少しだけ微笑んでくれた。


あの人の、隣につきたい。

その日から私は弓道に打ち込むようになった。

思えば、人生最初で最長の恋のような気がする。


結局、私の願いは別の意味で叶えられることになってしまった。

まさか入学した高校の、担任の先生が「彼女」だったなんて。驚きすぎて、何度も名簿を見直した。

どう見たって同姓同名。間違えるはずのない彼女の名前。顔を見て更に確信してしまって、その日はろくに人の話を聞いていなかった。

そうすると友達をつくる機会をすっかり失ってしまっていたわけで、私は入学1週間で早クールビューティーという地位を築いてしまった。元々の外見やらもあるのだろうが、一度定着してしまったイメージは崩すことが難しい。


  あ、キュードー部と言えばさ、篠原さんも強いんだよね?


過去を思い出していた私は、高原さんの言葉で唐突に現実に引き戻された。

どうやら、考え込みすぎて眉間にシワがよっていたらしい。いけない、笑顔笑顔。


  そう、かな?


  え~だって全国で金でしょーすごいじゃん!みかは絶対ムリだもん


ヘラヘラ笑う高原。「お前のアホ面だったらどんなに頑張っても無理だろうな」と言いたいのをグッと堪えて、愛想笑いを一段と強くした。


  

結果が全てとは思ってないから。努力を怠ったら、私なんてすぐ抜かされちゃうだろうし


そう言って席を立つ。

そう、先生と私の違うところは努力型か天才型かというところだ。天性のセンスを持っているのに、突然やめて教師になるなんてなんて勿体無い。

私はずっと、貴方が弓を射つ傍に居たかったのに。

妬みと私情が縺れたその感情を、勘の良い彼女に見せたくなかった。


今はまだ、手の届かない存在で。

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