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お姫様と愉快な従者達

『守るってファンタジーのナイト様って感じで素敵ですよね♪(^-^』


あの日以来、フロウちゃんはガーディアンのテク"守る"がお気に入り。

日々ギルド会話で、またはパーティー会話でそんな台詞を垂れ流してる。

まあ…ね、私もちょっとカッコいいとは思ったけどさ、空気読もうよ、彼氏はイライラしてるぞ、きっと。


『確かにカッコいいとは思うけどさ…カッコだけだよ?

"守る"なんて実際は盾役ちゃんとこなせてれば実はほぼ必要ないテクだしねぇ。』

ユートが無言で…たぶん若干イライラしているであろうコウを気遣って口をひらいた。


『姫もさ…いつもコウが盾やってるから”守る”なんてテクなくても殴られた事ないっしょ?

野良いってみ?ガーディアンがいて”守る”使ってても、効果時間切れた瞬間ヒーラーがしがし殴られてるから』


あ~それ言えてる。


私もたまに情報収集がてら仲間内以外のパーティ、いわゆる野良パーティと言われるものに入ってみたりしてるんだけど、それでわかったこと。アイジュさんが特別ヘタレなわけじゃない。


ガーディアンの皆さんは盾役ということで大体が攻撃弱くて、それを補足するような行動を取る事もなく火力不足でタゲが維持できない。

で、ヒーラーやアタッカーにタゲが行ったのを"守る"を使って削りきるまでしのぐというのが一般的。

もちろん削りきるまでに"守る”が切れれば他は殴られるという構図なわけで…。


あの日コウに教えてもらって以来着替え装備も持ち歩くようになった私は、プリーストやウィザードなど、あきらかに自分より柔いジョブにタゲが行った時のみ、思い切り攻撃重視装備に着替えてタゲを取って、タゲ来た瞬間にいつもの思い切り回避装備に着替えて乗り切るなんて事もやってみたら大絶賛されて、後衛さんからフレカ交換を申し込まれる事が増えた。



コウがいる時は当たり前に必要無かった事なんだけどね…。

野良に入るとコウがいかに優秀な盾だったのかを実感する。


だからうちのパーティーに入ってくる補充さん達は、大抵パーティーが終わる頃にはコウを大絶賛しててコウにフレカ交換申し込んで、次回も誘ってといって帰っていくんだ。



『フロウちゃんもさ…しばらく野良渡り歩いてみれば?コウのありがたさが実感できるよ?』

だから、そう言ったのはほんの軽い気持ちだった。

フロウちゃんはいつもコウがいるのが当たり前な環境でやってきたから、少しは世間の荒波に…って思っただけで…それがあんなすごい事態になるなんて…ホントに思っても見なかったんだよ…。




という事で野良パーティ初体験のフロウちゃんのお供をする事になった言い出しっぺな私。

完全野良も怖いんで、以前フレカ交換申し込まれたフレンドのウィザード、ユキ君を誘う事にした。


「おお~~これが噂の姫?!」

ユキ君はチビキャラの特攻野郎ウィザード。

フードつきのローブをかぶってお姫様キャラのフロウちゃんの周りをクルクル回る様子はさながら白雪姫と小人みたいだ。


毒舌にして腹黒がモットーの彼はそのモットーとは裏腹に楽しく気がいいやつで、最初のパーティでフレンドになって以来よく一緒に遊んでいる。

で、当然ギルドの事にも話が及び、いつかギルドメン、特に姫キャラなフロウちゃんを見てみたいと日々言ってたんで声をかけてみたんだけど、二つ返事でおっけ~をくれた上に、あっという間にあと3人も集めてくれた。


ユキ君のフレンドだというガーディアン、モンク、ドラゴンウォーリアの3人。いずれも男キャラ。


「諸君!諸君は光栄にも初めて野良パーティに降臨という究極の箱入り、いや、金庫入り姫の護衛に選ばれたのだっ!死ぬ気でお守りするんだっ!いいなっ!(>_<)ノ~~」

「おおお~~~!!!(>_<)ノ」

「姫をお守りしたいかぁ~!!」

「オオ~~!!!(>_<)ノ」


相変わらずテンションの高いユキ君の号令に負けず劣らないテンションで3人が応えて拳を振り上げる。


そんな異様なテンションにもあくまでマイペースなフロウちゃん、いつものニコニコマークで

「ギルド以外の方とご一緒したことないので、色々至らない事もあるかと思いますが、一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします♪(^-^」

と、言ってペコリんとお辞儀をする。


その言葉にまたオオ~と声を上げる面々。

こうして姫君と愉快な従者達の旅は始まった。





例によって山の中腹での巨人狩り。

私が釣って来た敵をガーディアンのギルバート君、通称ギル君が引き受けてくれる。


意外な事に…他の3人はギル君がヘイトを稼ぐまで待たない。

ギル君とほぼ同時くらいに鬼の勢いで殴る殴る殴る…。

まあユキ君は攻撃魔法なわけだけど、正確には。


当然…タゲはモンクのカイ君やユキ君へと移動するわけだけど、そこでギル君が必殺"守る"発動。

その間も攻撃の手を全然緩めない面々。

超攻撃特化パーティの前にあえなく沈む敵。



「すごい…ね」

目から鱗な戦い方に思わずつぶやくと、ユキ君がニヤリと

「ギルはヘタレガーディアンだからっ。

タゲ維持なんか期待しちゃ行けないっ。

壁になってる間に速攻叩くっ!これが俺達風戦法(^o^)」

と、シュタっと指をたてる。


「そして…野良でも加減できない特攻野郎の出来上がりだっ」

カイ君がそれに突っ込みをいれ、ドラゴンウォーリアのランスロッド君、通称ランス君とギル君が思い切りうなづいて同意した。

なんだかハイテンションで面白いパーティーだ。


「野良だとレベル下げてくるよなっ、ユキwww」

ハハっと笑うランス君に、ユキ君は

「おうよっ、最近野良だと死にすぎてヒーラーに蘇生拒否される訳だがっ」

と、おどけてみせる。


「それでもギルさんがちゃんと”守る”使って下さるから、皆さん安心して攻撃できるんですよね♪

それぞれしっかり役割分担できてらして、良いパーティさんですねっ(^-^」


あまりに今までと違うパーティにポカ~ンとしていたフロウちゃんが、そう言ってようやく動き出す。

祈る動作でHPを減らしたギル君にヒールを唱えると周りから歓声があがった。

そっか、ショートカットって動作と魔法の組み合わせとかにも使えるんだね。

フロウちゃんらしい使い方だ。


「ホント姫っすねっ!めちゃ萌えっす!」

カイ君とランス君が大はしゃぎ。


ギル君は

「ありがとうございます」

とフロウちゃんに膝まづいた。


そして

「惜しいな~。ぜひこのNOUKINパーティーのマスコットに欲しい人材だっ」

と、うなるユキ君。


「マジ姫様に常駐してもらえるならテンションあがるよなっ!」

というランス君。

このパーティ、これ以上テンションあがったらどうするんだ…。


その後もこの一見むちゃくちゃな戦法のパーティは意外に安定してて、ほぼランス君、ユキ君以外にタゲはこない。

もちろんそのタゲはギル君が”守る”使って引き受けるわけなんだけど…。


フロウちゃんにタゲ来たのは一度だけ。

ユキ君にタゲが来てギル君が守ってる最中に、大きく減ったユキ君のHPを回復したフロウちゃんが一度だけ殴られたわけなんだけど…それだけでも大騒ぎ。


「姫様に怪我させるなんてこのヘタレっ!!!」

他の3人からブーイングの嵐。

ギル君土下座っ。


そんな収拾つかなくなった事態を終決させたのはフロウちゃん。

例の可愛い祈りのポーズからヒールを唱えて自己回復すると、

「前衛さんと違って結構HP減っちゃうものなんですねぇ、初めて知りましたっ(^-^」

と言った後、一呼吸。

「…守って…あげたくなりましたっ?(^-^」

両手を胸の前で合わせて、ちょこんと首を傾げるその可愛らしいポーズに一同絶叫。


ブンブン首を縦にふるギル君。

「ギルッ、お前もう即姫様のフォロー入れられるように"守る"はとっとけっ!

他には使わんでもいい!許すっ!」

ビシっと言うカイ君。


「姫様っ、お怪我をおわせた事はもうギルに死んで詫びさせるんで、マジうちに常駐しませんかっ?!」

とランス君。

「お前ら必死過ぎっwwww」

とユキ君はケラケラ笑った。


そして…ギル君がその後他に対して”守る”を使わなかったのはいうまでもない。


こうしてフロウちゃんの初野良PTは無事終了。

あんまり…荒波に揉まれなかった模様……終……



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