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ユキ君の人物像

翌日からがすごかった。

人がいなさそうな時間にこっそりインしてとりあえずマイルームに戻ってそこ落ちしておいたんだけど…

夜にインしたとたん、フレからギルドに入りたいってwisがいっぱい…。

皆の所も同じくらしい。


『どうするよ?これ。一応俺がギルマスじゃないからって事で保留にしてるんだけど…』

と言うユート。

私も同じ対応してる。

もちろん私の隣にいるフロウちゃんにもそうさせてるわけで…。


『あれ?断ってないん?みんな。

俺なんか”無理w”で全部すませてるけどww』


それは…ユキ君のキャラだからできるわけで…。


『コウは?』

ユートがさらに聞く。

そうだよね、ギルマスじゃないからって保留の仕方ができないコウはどうしてるんだろう…。


『俺も即断ってる。リアフレギルドだからって事で。

ギルド名の由来説明するとそれで納得してもらえてる、いまのところ』


おお~その手が!


『俺違うんだけど?w』

ユキ君がそこでもっともなツッコミ。


『お前もそういう事で話合わせとけ』

『えーw嘘だめよー。コウ君は大学生以外のお友達には会いたくない人?w』


ユキ君の言葉にコウは一瞬沈黙。


『なんでそうなる?』

『今の沈黙は?』

『まじめに一瞬意味がわからんかった』


たぶん…これは嘘。

ユキ君勘がいい上に突っ込み激しいからなぁ…


『いや、単純にコウ達大学生なんだろうな~と。

社会人だったらさ、4人揃って必ず20時に集合って無理ぽいし。残業や付き合いとかあるっしょ。

高校生以下なら逆にご近所幼なじみで家族ぐるみのつきあいとかじゃない限り長い期間よその家に泊まれないっしょ。』


相変わらずなユキ君。

一応…言っておくか。


『ユートの家もうちもコウのとこも放任なんだよ。

ま、付き合い長いっちゃ長いからフロウちゃん家ならおっけぃってのもあるんだけどね』

『なるほど~w』


『ユキ、お前よく他人の事にはツッコミいれるけどさ、お前はどうなんだよ』

そこで珍しくコウの方から口を開いた。

『俺?』

『そ。相手の事聞くならまず自分からだろ。

自分は謎のままにしといて相手の事聞くって感じ悪いぞ』


うあ~コウったらズバっと。


でもそこはさすがユキ君。

『あ、ごめん、そうだよな。

いや、野郎だし隠す理由もぜんっぜんないから隠すつもりもなかったんだけど聞かれなかったじゃん?

聞きたきゃ話すよ?w』


あ…そうなんだ。

なんていうか…私達前回の事もあって気にし過ぎだったのかなぁ…。


『さすがにいきなり本名は勘弁だけど、簡単に自己紹介しよっか?

今18のフリータ。もち♂ね。

東京都在住でランスとカイとは同じ孤児院出身で部屋シェアして住んでんだ。

他…なんかききたきゃどうぞ?w』


おお~同じ年だったのか~。

意外にざっくばらんなユキ君に私はちょっと安心した。


『明日…時間取れるか?』

唐突なコウの言葉に

『は?明日のいつ頃?』

と今度はユキ君の方が少し驚いてるっぽい。


『いつでも。お前働いてるんだろ?仕事に支障でない時間でいい。

こっちが合わせる』

『え~っとそれは…デートのお誘い?w』

『その手の冗談は…まじキレるぞ!』

『あ~はいはいw真面目だねぇw』

ユキ君は軽くながした。


『えっとね~朝7時から夕方7時までなんのかんので仕事つまってんだよねぇ。

11時半から1時半まで移動がてら昼飯だからそのついででいい?w』


なんか…すごいペースで仕事してない?

コウとかとは違う意味で、同じ年でも私とすごい違いだなぁ…。


『おっけー。じゃ、場所とかはwisでな。』


へ?


『なに?ここじゃまずいわけ?会いに行くのってコウだけ?』

私も感じてた疑問をまたユートが口にする。

『コウさんずるいです~(>_<)』

と、さらにフロウちゃんの声。


『姫とアオイは女だからいきなりは駄目だ。

で、二人を二人だけで家に残すのは…俺が怖すぎるからユートも留守番』


あれ?どこかで聞いたような話…

ええー?私もコウの脳内では優香さん並み?!


『とりあえず…俺だけでも会ってればリアフレギルドってのも嘘じゃないだろ』

『あー、そういう意味っ。

コウって本気で真面目なんだねぇww』

『ってことで、あとはwisな。』

そこで二人の会話が途切れる。



「アオイちゃん……」

「はい?」

「つけちゃいましょうかっ?」

「はいぃ??」

リアル隣でこぶしを握りしめるフロウちゃん。


「コウさんだけずるいですっ!」


ちょ、ちょっとそれはまずいかと……。

てか…フロウちゃん、実は怖がりじゃなかったっけ?


「えっとね♪一度やってみたかったんですっ探偵ごっこ♪」

ピョン!とベッドから飛び降りるとクロゼットをサッと開ける。

そこには怪しい変装セット……ってよりはコスプレセットというのが正しい?


「フロウちゃん…」

「はい?」

「そんなのつけたら余計に目立つと……」

「えー、そうですかぁ?」

しょぼ~んとするフロウちゃん。

さすがに娘の鞄に隠しマイク仕込む父親の娘……。


「わかりましたっ!アオイちゃんのお洋服貸して下さいっ!ユートさんにも内緒ですよっ!」

いきなり立ち直って詰め寄るフロウちゃん。


だ~か~ら~やめようよ~。

…と思いつつ引っ張って行かれる自室。

一応お姫様のご希望通り着替えを出してみたけど、無理っ。

お嬢様然としたフロウちゃんにジーンズとかって激しく似合わないし、それ以前に全部がブッカブカだ。


「やっぱり…不自然だと思うよ、フロウちゃんに私の服って。

それに…普段と違う服なんて着てたらコウなりユートなりに気付かれて終わると思う…。

かといってコウが家出てから着替えてたら完全見失うでしょ」


「そうですね……」

ホッ。あきらめてくれたか。

…と思った私が甘かった。


「じゃ、地味目の自分の服でっ♪」

フロウちゃんはにっこりきっぱり断言したのだった。






結局…ユートに助言を求める事もできないまま翌日…。


「コウさん、今日はお昼要らないんですよね?」

食後のお茶をいれながら言うフロウちゃんにうなづくコウ。


「ん~、じゃあたまにはお昼外食しちゃいましょう♪コウさん待ち合わせどちらです?

帰り合流できるなら合流してお買い物しましょ?」


うああ~~フロウちゃん画策してるし…。

コウは新聞を読みながらお茶をすすってたけど、チラリとフロウちゃんを見上げた。


「新宿。だけど付いて来るのは駄目だぞ。帰りに合流はいいけど…」


お見通しだね。


「えっと…じゃあ駅まで♪ねっ。」

返事を聞かずにフロウちゃんはタタ~っと使用後の食器を片付けにキッチンに走って行く。


コウはため息一つ。

キッチンに戻るフロウちゃんを見送ると、ユートに

「姫から目を離すなよ。まじ付けてきかねんから」

と念を押した。

「らじゃっ。ま、アオイもいるしね、大丈夫」

と、ユートは苦笑して答える。


……ごめん…私も共犯なんだ……なんて言えるはずもなく……。



昼前、コウの車(というとコウいちいち怒るんだけど)で自宅をでる。

そして駅前駐車場に車を止める。


「じゃ、そういうことで後で電話するから適当にしてろ」

と言ってコウが一人で雑踏へ消える。


「じゃ、先にお買い物~♪」

コウが行くと即フロウちゃんが私の腕をつかんでお店にかけこんだ。


ユートは…さすがに入れずに店の前。

だってさ…ランジェリーショップだし……。

服くらいなら入って来ちゃうんだけどね。


それを良い事にフロウちゃん、ダ~っと店内を疾走。

コソっと反対側の入り口から店を出た。

もちろん…私の腕をしっかり掴んだまま。

まあ、離されてもそれはそれで困るんだけどね。


「コウさん…あっち行きましたよねっ!」

コウが消えた方に向かうフロウちゃん。


「ね、こんな人ごみじゃ探し出すの無理だと思うっ」

「ううん!コウさん目立つからっ!上手くすれば見つかりますっ!」


……確かにね…コウも目立つけど……ごめん、フロウちゃんの方が目立ってる。

地味…な服装なんですか?それって。


白地に小花模様のワンピース。

リボンやらフリルやら付いてて、お人形の服みたいです。

しかも…それが妙に似合う美少女なわけで…。

ファッション雑誌か何かから抜け出してきたような美少女が疾走してる姿に、道行く人が振り返っていきますが?


「みつからな~い」

しかし所詮お嬢様。体力は私を遥かに下回ってたようで、南口改札に辿り着いたあたりでへたりこんだ。

と、その瞬間、携帯が鳴り響く。


「はい?」

誰からかは検討がついてはいるんだけど……


「アオイ…今いったいどこ?」

私が出ると電話の向こうからはユートのため息。


「ごめんね…フロウちゃんが暴走しちゃって…」

「迎えに行くから。コウにバレたらマジやばい。で?今どこ?」

「えとね…今南口改札…ってまったあ!!!」

私が説明し始めたところでフロウちゃんがまたダ~ッと疾走。


「ごめっ、あとで連絡するっ!」

私は慌てて電話を切るとフロウちゃんを追った。


「フロウちゃん!お願いっ!私からだけは離れないでっ!」

慌ててその腕をつかむと、フロウちゃんは

「あ~、見失っちゃいました…コウさんらしき人影みつけたんですけど…」

と、肩を落とす。


なんか…心臓にわる……


「この人ごみだし、もう無理だって。ね、戻ろう?」

もう何が無理って私が無理!


私の言葉にフロウちゃんは周りをキョロキョロ見渡してたけど、結局無理と判断したのか

「そうですね…」

と、トボトボ歩き始めた。


なんだか結構遠くまできたんだな。

走り回ってたから気付かなかったけど…。

フロウちゃんと並んでそんな事を考えてると再び鳴る電話。


「アオイ…今どこよ?マジ」

少し焦った様なユートの声。


あ~どこなんだろ~。

実は私新宿詳しくなかったり。地下とかややこしいんだよね。


「ちょっと待ってね~」

と、ユートに言って、フロウちゃんを振り返って

「ね、今どのへんなの?フロウちゃん」

と聞くと、フロウちゃんはきょとんとした表情で

「え?アオイちゃんが知ってるのでは?」


うあああ~~~お互いそう思ってたのかっ!


「ごめん…迷子っぽい…」

私が言うと電話の向こうでユートのため息。


「はい、二人ともそこでストップ~。

今近くに見えるもの、お店とか何かあるよね?」

「うん…」

「それ教えて」

私が周りの状況を説明すると、またユートのため息。


「あのさ…君達どこまで行ってんの?

とにかく…今迎えに行くから絶対にその場動かない事、いい?」

呆れたユートの言葉に了承する私。


「何かあったら即電話してね、じゃ、いったん切るから」

と、言って携帯が切れる。


「ユートさん…なんて?」

携帯を切ってフォルダーにしまうと、フロウちゃんが私をみあげて聞いてくる。

「迎えにくるって」

私が答えると

「そうですか…」

と、ため息。

そして、アオイちゃん、と、小さくつぶやく。


「はい?」

「…ごめんなさい…アオイちゃんまでユートさんに怒られちゃいますね…」

しょぼんとするフロウちゃん。

ちっちゃな子供みたいに可愛くてなんだか怒る気にならない。


「あ~、大丈夫。ユートだからっ。」

と、私はヒラヒラ手を振った。




そして待つ事数分…。

フロウちゃんといるから…だろうな。道行く人が振り返ってくよ。


しっかりフロウちゃんの手を握ったままユートを待ってると、急に目の前に影。


「ね、一人?」

どこぞの兄ちゃん二人組がフロウちゃんに声かけてる。

「二人…ですけど?」

上目遣いに不思議そうに二人を見上げるフロウちゃん。


二人組は

「うっあ~、声もめちゃ可愛いねっ。

遊びにいかね?そっちの子も♪」

と、返事を聞きもせずにフロウちゃんの肩を抱いて連れてこうとする。


「ちょっと!勝手に決めないでっ。ここで人待ってるのっ!」

慌てて私はフロウちゃんと二人組の間に割って入ったけど、

「え~、いいじゃん。こんな可愛い子待たせるなんてロクな奴じゃねえって」

と、今度は私も腕を掴まれた。


ちょ…。

意外に強い力に少し焦ったけど

「アオイちゃん…」

と、フロウちゃんが不安げな声で私の手を握る手に少し力を込めるのに気付いて自分を叱咤する。

私がしっかりしなきゃ…。


「ちょっといい加減に…!」

私がキッと顔を上げて口を開きかけた時、腕を掴んでた手が離れた。


「は~い♪ロクでもない奴登場~♪」

二人組の腕を取るのはまた別の二人組。


二人共ユートくらいあるのかなぁ…その二人に最初の二人は悪態をついて去って行く。

なんか…一難去ってまた一難?


「んじゃ、そういう事で~♪」

と、近づいてくる二人。

私は反射的にフロウちゃんを後ろにやって、二人をにらみつけた。


「アオイ…目が怖いんだけど?」

私の目の前でピタリと止まると、二人組の一人がそう言って笑い転げた。


「お待たせしました、姫様の従者2号ただいま参上」

と、もう一人は恭しく礼をして、笑い転げる相方をペシコンとはたく。

「お前も挨拶せんかいっ!」

「らじゃらじゃっ。従者3号同じく参上でありますっ」

と、相方の方も言ってピシっと敬礼した。


「ちょっと待ってね、従者1号ももうすぐ到着するからっ」

と、自称従者2号は言ってチラリとあたりを伺う。


「あ~。きたきたっ!」

自称従者2号がお~い、と手を振った。


うあ……

手を振った方向を見た私は思わず隠れたくなった。

なんだかちっこい男の子と、その後ろには…コウ。


「やほっ!従者一号……」

とその男の子が言いかけた言葉は

「この馬鹿野郎っ!!!!!」

というコウの怒声で遮られる。


その勢いに道行く人が立ち止まるがさらに

「お前は一体何してんだっ!!!」

と、怒鳴りつけるコウ。


「あ、あのね、」

思わず口を開く私に

「アオイは黙ってろっ!!」

と、怒鳴ると、コウは私をグイっと押しのけ、後ろに隠れる様にしてるフロウちゃんの肩をつかんだ。

こんなに本気で怒ってるコウ見るのは初めてかもしれない…。


「待ってろって言ったな?」

低い声で言うコウに、ポロポロ涙をこぼすフロウちゃん。


これ…間に入らないとやばくない?と思ってると次の瞬間…


「こっちの寿命が縮まったぞ…なんかあったらどうすんだ…」

と、そのままハグ………。


なんというか…まあ…心配するまでもなかったわけですな。


「…ご、ごめんなさい…」

コウの腕の中にすっぽり包まれて嗚咽するフロウちゃん。

もうね…道行く人が何事かと立ち止まってるわけで…。


「あ~、おきになさらず~」

と、周りにヘラヘラと言う自称従者達。

そうこうしてるうちにユートも到着。



「んじゃ、あっちはとりあえず放置ということでっ」

私よりちょっと背が高いくらいの小柄な男の子がシュタっと手をあげて言った。


「まいどっ!ユキでっす。」

「同じくまいどっ!カイっす」

「同じく、ランスでっす」

その左右に並ぶ自称従者2号3号も同じく手を挙げる。


「あ…ども…。私は…」

「アオイっ!もうまるわかりっ」

私の言葉を遮ってユキ君がニカっと笑う。


「つかさ、4人揃って自分とソックリキャラなわけねっ。コウもすぐわかったしっ。

姫様行方不明の報を受けて俺らも探すべ~ってなった時特徴聞いたら、コウが見たらすぐわかるって言ったの聞いてホントかよって思ってたらホントにマンマだったし。マジ笑ったよ」


あうあ…ユート、コウに連絡とっちゃったわけね…。

チラリと見る私の視線に気付いてユートは苦笑した。

「仕方ないっしょ。あれで姫に何かあったら俺ら詰め腹切らされかねないしっ」


まあ…ね。


「でも…さ、姫様大学生じゃなかったっけ?」

「うん」

「どれだけ大事にお守りしちゃってるんさ、あれ」

ユキ君がそう言って二人の方にチラリと視線を向ける。


コウは…たぶん今までの事件の事があるから怖いんだろうけど…それはさすがに初対面に近いユキ君達に言っちゃまずいよね…。

返事に悩む私の代わりにユートが口を開いた。


「あ~姫ってさ…あの容姿だしさ、昔から絡まれやすいんよ。

街中歩いてるだけでいきなり腕掴まれて連れてかれそうになったりとか、結構普通はありえんような状態に陥るから。」

「あ~なるほど。リアルでもネットみたいな状態なわけね」

「そそ。ストーカーとか変質者とか諸々すごくて。

普段から繁華街は絶対に一人で歩かせないようにしてるから」

ユートの説明でユキ君はしごく納得してくれたようだ。


「確かに…俺ら発見した時も連れて行かれかけてたもんな」

と、カイ君とランス君が顔を見合わせてうなづく。



そんな事を話してるうちに、お互い落ち着いたのかコウとフロウちゃん合流。

「皆さん、ご迷惑おかけしてごめんなさいっ」

まずフロウちゃんがペコンと頭を下げるのに、ユキ君達はいやいや、と、軽く手を振る。


「カイ達の話だとすでに拉致られかけだったって?

ま、その前に保護出来て良かった。

姫様マジ気をつけてね。

どうしてもお出かけ時に他にお供がみつからなかったら俺らでも召喚してっ。

これ3人それぞれの携帯っ」

サラサラっとメモ用紙にペンを滑られてビリっと破くと、フロウちゃんに差し出す。


「えっと…私のは…」

それを受け取って小さなバッグを探るフロウちゃんを制してユキ君が言う。


「あ~、そっちはいいからっ。

女の子があんま携番配っちゃ駄目だよっ姫様。

俺らのとこかける時も公衆電話以外なら頭に184ちゃんとつけてね、非通知になるから」


お~、意外に細やかだ。さすがユキ君。

ユキ君は私にも同様に携番教えてくれて、その後7人で軽く食事をして分かれた。




「すっごく良い人達だったねっ」

容姿はさすがにネットのまんまとはいかないものの、男の子にしては小さめのユキ君と割と背が高いカイ君とランス君のデコボコトリオは、なんとなくネット内の彼らの面影があった。

ものごしとかも本当にそのまんまで、初対面とは思えないくらい。


「なんかネット内のイメージのまんまだったな」

とユートも同意して微笑んだ。

そんな中コウは…いつもにもまして無言。

ただ、買い物の最中もフロウちゃんの手をしっかりつかんでる。


「あのね…コウさん…」

フロウちゃんはさすがに神妙に手を取られたまま黙り込んでたが、ふとコウを見上げた。

コウは無言でフロウちゃんを見下ろす。


「ユキさんは…ね、大丈夫な人…だと思ったの。」

ポツリと言うフロウちゃん。


「で?」

とうながすコウ。


「うん…。ユキさんはコウさんに悪い事しない人。だから私にも悪い事しない人…かなぁってね。」

「だから、会いに行っても平気だと思ったのか?」

「うん…。」

「なんでそれ言わない?」

「えとね…たまにね…あ、この人大丈夫って思う人がいてね…でもそれがどうして?って聞かれるとね…わかんない。

で、コウさんがダメっていう時ってちゃんと理由があって…それはわかってて…えっと…」

「ようは…理由のあるダメを覆せる理屈がないって事か?」

「うん!そう!そうなの!」


わかってもらえたのが嬉しかったらしく、フロウちゃんがピョンピョン飛び跳ねた。


「姫の大丈夫ってのは…時として千の理屈より確かなんだよな…」

コウが苦笑する。

「わかった。これからは言え。無条件に信じる事にするから」

なんか…不思議な人達だ…。


「たまに…さ、俺思うんだけど…」

同じく近くでそれを聞いてたユートが小声で私に言う。

「うん?」

「姫ってさ…下手すると電波なんだけどさ…実はものすご~い物みえてるぽ?」

「私もそれ思う…」

「なんかさ…宗教団体の教祖様とかにしたらすごい成功しそうだ…」


た…たしかに…。

フロウちゃんの言う事ってめちゃくちゃで行動もめちゃくちゃなんだけど、断言されるとなんか本当な気になっちゃうような妙な迫力があるんだよね…。


「なんかね…コウさん…」

フロウちゃんの独白はまだ続いてる。


「ん?」

「大変な事…起こると思うの。

だから…その時には信用するべき人って信用した方が良いと思う」


え……


「姫、それどういう…」

コウの言葉を完全スルーで、フロウちゃんは

「あっ、美味しそうなスイカ♪ユートさん、カゴに入れて下さいな♪」

と、関心が完全にスイカに移ったみたいで、スイカを指差してピョンピョン飛び跳ねた。


こうなったら…もう直前に言った事なんて覚えてないのがフロウちゃん。

コウはまた無言でため息をついた。


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