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週末ゲリライベント

今日は早めの食事を済ませて20時前に全員スタンバイしてる。

そして20時にログイン。

一気にイルヴィス城へと駆け出した。


事の起こりは昨日…いつものように仕事をするコウの隣でネットサーフィンにいそしむ私。

ついでに公式もチェックすると、イベント情報にニュー情報の表示。

おお~クリック、クリック♪




☆☆ 第一回イルヴィス王国主催御前試合 ☆☆


イルヴィス国民の皆様こんにちはっ。

今回は週末ゲリライベントだっ!

明日土曜日21時よりイルヴィス城にて王国主催御前試合を行います。

受付は20時から20時50分まで。

21時より予選を始めます。


試合は1対1の個人戦。

Lv別にLv5~10、11~15、16以上の3コース。

装備は各自持ち込み。ジョブは自由。

勝敗はどちらかのHPが0、戦闘不能になった時点で決します。

※ なお、この時に限り戦闘不能になってもデスペナルティで経験値が減る事はありません。


各コース優勝者には豪華賞品を進呈。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



まあ…その優勝賞品にエンジェルウィングがあったわけで……もうあとは言わずもがな…


フロウちゃんのために参加する羽目になるコウ。

何故かユキ君もエントリー。


いわく

『姫様の奴隷としてはもうやるっきゃないっしょ(>_<)b』

私もユキ君に誘われたけど丁重に辞退した。

どう考えても無理ぽぃ。


で、当のフロウちゃんはヒールボランティアに応募してたり。

これは試合前と試合後、HPの減った選手に回復魔法をかけるという役。

システム的に全快とかもできたんだろうけど、このあたりがユーザー参加型のこだわりらしい。


で、私とユートは観客席でまったり観戦する事にした。


なんのかんので結構な人数が参加してるらしいこのイベント。

予選が終わって本戦出場の8名が決まる頃には22時になっている。

一番レベルの高い16以上のコースの本戦にコウはともかくとしてユキ君まで残ってるよ…。


「ね、ウィザードであれってすごくない?」

隣にいるユートに言うと、ユートもうんうんとうなづいた。

「ていうかさ、8名の中で2名が5人しかいないうちのギルドっていうのがすごいよな。」


あ~それもそうだよねぇ。

これで…優勝準優勝とかだったらすごいなぁ。ちょっとワクワクしてきたっ。



本戦のくじ引き開始。

ユキ君第一戦目だ。


名前を呼ばれてピョン!と壇上にチビキャラのユキ君が飛び乗ると、

「ユキ君、頑張って~!!」

と歓声が上がる。


どうやらチビっこ魔導師がごつい前衛に混じって戦う図が、多分リアル女の子なのかな、一部の子達に大受けだったらしい。

ユキ君は壇上でピョンピョン飛びながら観客席に向かって手を振る。


続いて他も呼ばれて壇上へ。


コウが壇上に上がるとまた黄色い声が。

でもユキ君と違ってコウは完全スルー。


さらに…そのあと、なんだか聞き覚えのある名前が…

コウより一際大きい黄色い声に送られて壇上に上がるその姿は…


「う~ん…誰だっけ??あの人見た事ある気が…」

うなる私にユートが聞く。

「アイジュさん?」

「うん」

「アオイ覚えてないん?ほら、最初に俺らがPT組んだガーディアン」


「ああ~~あの人かっ」

思い出したよっ!

フロウちゃん巡ってコウがキレた人だっ!


真っ白な鎧を身にまとって壇上にあがったアイジュさんは観客席に向かって丁寧におじぎをした。

それによってまた歓声が上がる。



こうして壇上に上がった本戦勝ち残り組み。

それぞれ一言どうぞと言われ、まずユキ君から。


壇上中央にうながされて進むと

「姫様~♪頑張るから後で褒めてねっ♪」

と、いきなり舞台端のヒールボランティア席に手を振る。


「お知り合いですか?」

ときく司会におもいっきり体ごとうなづいたあと、

「うちのギルドの姫っす!(^o^)ノ」

と答える。


「うちのギルドは別名”姫様と愉快な従者達”ってことで、今日は姫様にエンジェルウィングを奉納するために参加してまっす(^o^)ノ」

とその後に続けた。

そこでコウが後ろからペチコ~ンとユキ君の頭をはたいた。


「お前は~!思いっきりうちのギルドに対して歪んだ認識植え付けてどうするっ!」

「いったぁ~、いいじゃん、いいじゃん!ホントの事じゃんっ!」

ぴょんぴょん頭を押さえて飛び跳ねながらコウの手から逃げ回るユキ君のコミカルな動きに会場がワッと笑いに包まれる。


「お~そう言えばお二人同じギルドですね。

では順番飛ばして先にコウさん、何か一言お願いします」

司会は収拾付かなくなる前にと今度はコウに振る。


「いつもヘイト考えずに飛ばす特攻野郎を一度殴ってみたかったので、良い機会ですし頑張ります」

とのコウの言葉にまた会場から笑い。

コウがこんな場所で笑い取るキャラになるとはユキ君に会うまでは思っても見なかったよ。


で、その後次々豊富を述べる面々。


そして最後にアイジュさん。

名前を呼ばれて中央に進むと、アイジュさんもいきなりヒールボランティア席に向かって優雅に一礼。

「ここまで回復をして下さった姫にまず感謝を述べさせて下さい(^^」

というアイジュさんの言葉にまた会場から悲鳴。


「アイジュさんも…お知り合いでしたか?」

と司会に聞かれてアイジュさんはにっこり。

「はい。フレンドで…俺もお笑いコンビの二人の方々と同様、姫のためにここにいます」

その言葉に悲鳴とおお~という歓声が同時にわき起こる。



『この気取った兄ちゃんて…仲良しなん?w』

ギルド会話でユキ君がなんとなくとげのある口調で言った。


『以前うちのPTに入った事あるヘタレガーディアン…だったんだが、ここまで来てるってことはあれからちょっとは使える奴になったんだろうな』

と、コウもなんとなくトゲがある。


『なんかさ、こいつにだけはなんとなく負けたくないって思ってるの俺だけ?ww』

『珍しく気が合うな。俺もだ』


そこでユキ君が沈黙。

一瞬の間の後ポツリとつぶやいた。


『こいつよりは…コウのがいいな』

『一緒にするなっ!』

と、コウは流してたんだけど、私はちょっと気になった。

何がコウの方がいいんだろう?


まあそれを追求するまもなく、ユキ君の第一試合が始まった。



相手はウォーリア。

試合開始と共に距離を詰めようと走ってくる相手に一気に氷系の魔法を唱えるユキ君。

ピキ~ンと一瞬足元が凍る。

その間にタタ~っとユキ君はまた一気に距離を取って、さらに氷系の魔法。

詠唱中にまた相手は走ってくるけど、ユキ君に辿り着くまでに詠唱中の魔法が着弾。

また足元が凍ってその間に距離を取るユキ君。

その繰り返しで、結局無傷で圧勝。


なるほど…殴られたら終わるウィザードが勝てたのってこういう事なのか~。


感心する私に

『ウィザードソロだとこんな感じの戦闘なんだよっ。

俺はそのために氷魔法の効果上げる装備だけは充実させてる。

ま、それでなんとか同格以下だとかなりの確率で凍ってくれるけど、格上だとそれでも凍ってくれる率低いし、経験値稼ぎは素直にPT入った方がいいけどねw』

と、ユキ君は教えてくれた。


同格以下だと凍るってことは…今Lvキャップが20で16以上のコースといっても今残ってるのは全員Lv20なわけだから、これユキ君優勝なんじゃない?


コウも第一戦はウォーリア相手に圧勝して次は準決勝。

アイジュさんも残ってるから……かなりな確率でフロウちゃんエンジェルウィングげつな予感。

そして次もベルセルク相手に例の戦法でユキ君勝ってウィング取得確定フラグ立ったねっ。


そして準決勝第二戦。

『絶対勝てよっ!コウ!ま、負けても俺が勝つからいいけどさっww』


コウvsアイジュさん。

ユキ君がエールを送る。


『コウさんっ、負けたら針千本ですねっ(^-^)b』

と、そこでフロウちゃんの例のお言葉。

『うはっ負けたらもう人生終わるじゃんwファイトだっコウwww』

ユキ君爆笑。


『ま、姫がウィング欲しいっていうんだから、取って来るしかないだろ』

コウは言ってゆっくりと大剣を手に立ち上がった。




『ほ~固いなっ、さすがガーディアンてとこか』

戦闘が始まってアイジュさんに斬りつけたコウの第一声。


『ディフェンス使う事も覚えたんだな、こいつ』

『何?前は使ってなかったん?』

『ああ、前は盾のくせにタゲ取れないはHPスポンジだわっていうどうしようもない奴だった』

『えーw』

のんきに雑談してるとこみると、一見膠着状態に見えるんだけどまだコウ余裕あるのか…。


『コウ、どうでもいいけど早く片つけてよw俺暇なんだけど?ww』

『お前はちょっとは我慢を学べ』

『むりっw』

『…ったく…』


そこで膠着状態っぽかった戦闘が一気に動き出した。

なんだかアイジュさんのHPが急にガンガンへって行く。

コウのHPも減ってるけど、減りの早さが全然違う。

私には何が起こってるのか全くわかんなかったんだけど、ユキ君が解説する。


『攻撃仕様装備に着替えてバーサク使い始めたね。

防御は通常の半分って事は、基準値の4分の1になるけど、攻撃はジョブ&オフェンス&バーサクで基準値の8倍、さらに攻撃装備だから…ま、防御が低い分削られるけど、相手は所詮ガーディアンだから攻撃2分の1だしね。

盾役だからって馬鹿みたいに防御ガチガチで攻撃装備用意してないガーディアンじゃ本気で攻撃に入ったベル相手に勝ち目ないね。』


そう…なのかぁ…。


コウ圧勝で会場からは悲鳴と歓声。


「とうとう決勝となったわけですが…ギルド内対決ですねっ!」

決勝はコウvsユキ君。

うちのギルド一気に有名になりそうだ。



「あの戦法取られると…勝つのユキ君なのかなぁ…」


盛り上がる会場。

周りの雑音で、すごい勢いでログが流れて行く。


「ん~~俺、コウが負ける図って考えられないんだけど…」

私の言葉にユートが答えた。

それも確かに…。


てか…あんまり見たくないな、コウが負けるとこって。

ユキ君なら負けてもいいってわけじゃないんだけど、つきあってる期間も密度も違うからねぇ。


私はリアルで隣にいるフロウちゃんに聞いてみた。

「ね、フロウちゃんはどっちが勝つと思う?」

するとフロウちゃん即答。

「コウさん♪」

「なんで?」

「エンジェルウィング取ってきてくれるって約束したのでっ♪」


……

なんというか…根拠ないんだね。

でもその根拠のない自信がしばしばその通りになるからすごいんだよね、フロウちゃんの場合。


『んじゃ、お互い手加減なしでっ!(^o^)』

戦闘に入るとやっぱり氷系魔法を唱え始めるユキ君。

一気に距離を詰めようと走るコウ。

でも肉薄する前に氷魔法が着弾した……が……


『え?』


HPは3分の1ほど減るがコウの歩は止まらない。

そして呆然と立ちすくむユキ君を一刀両断。


『なんでぇ???』

勝負がついてもまだぽか~んとしてるユキ君にコウはきっぱり

『氷耐性装備。基本だろ?』

『うあああ~~そんな物持ってやがったかぁ~!!』

『そりゃ…普段盾だし。

俺が凍ってヘイト稼げなくなれば姫にタゲ行くから。』


なるほど…。

アタッカーだとあまり揃えてないよね、そんなものまで。

なまじ盾もやってるからそこで差がついたんだね…。


結局…こうしてコウが優勝。

司会さんがでてきてお祝いの言葉と共にユキ君の健闘も讃え、それぞれ一言を求める。


それに対してユキ君はおおげさに肩を落とすと

「忘れてました…。こいつ普段盾役なわけですよ…。

ええ、ええ、俺がいくら全開で行こうとタゲピクリとも寄越さない鉄壁の盾で……。

当然そんな奴だから氷耐性装備なんてのをですね、当たり前に持ってやがって……」

と言って、がっくりと膝をついた。


笑いに包まれる会場。

最初から最後までこの調子のユキ君はすっかり会場の人気者に。


こうしてイベントが終わったわけなんだけど、終わった後の方がすごい事に…。

ユキ君とコウがフレカ交換求めてきたりする人達に囲まれるのはいいとして…フロウちゃんまで時の人に。


「アオイちゃん、どうしましょう?」

涙目で私に助けを求めるフロウちゃん。

今回は…フロウちゃんのせいじゃないよな……。


私はしかたなしにフロウちゃんのPCで

「ごめんなさいっ!(>_<)」

と打ち込んで即ログアウト。

もうあそこまで行くと移動もできないし…全員の応対なんて絶対に無理。


で、なんだか同じギルド名背負ってるせいか私達の周りもちょっと怪しい雰囲気に…

私とユートもその場で即落ちして、内線でコウにその旨を伝えた。

コウもそれをユキ君に伝えてその場おちしたらしい。

こうしてフロウちゃんのエンジェルウィング取得作戦は無事(?)幕を下ろしたのだった。


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