朝の一幕
私はいつも通りに6時に起きてパジャマから身軽な服に着替え、ランニングシューズを履き、三十分間走るのが休日の日課だ。
清々しい空気を肺一杯に入れ、息が上がらない程度のスピードで走る。暫く走れば、よく買い物で愛用している商店街を通る。
「おっ、幻月ちゃん。今日も早いね」
声を掛けたのは地元の肉屋さんのおじさんで行きつけの店だ。
「おはようおじさん。今日もいつものお願いしますね」
「あいよ、任せとけ」
奥に見えた奥さんに手を振り、再び走る。15分たったところで折り返し、家へと戻る。
家まで残り、500Mの所で悠くんの家から見慣れた姿が見えたために駆け寄った。
「おはよー、咲希」
「あっ、幻月姉さんおはよう」
咲希は悠くんの妹であり、極夜の大の親友だ。ショートヘアーが活発的なイメージを連想させる。
「極夜、最近頑張ってるよ。あの調子なら行けそうだよ」
「そうね、ただちょっと頑張りすぎかなとも思ってるのよ、咲希はどうなの?」
「私は部活の推薦で入るよ。まぁ、勉強もそれなりにやってるけどね」
「そうか、極夜も運動部だったらすんなり入りそうだな」
「あの子は異常よ……私走るからまたねー」
手を振り、私が走っていた方向へ手を振りながら走っていった。それを見送り家に向かった。
当然家に帰っても兄さんと極夜は寝ている。上から着替えを持ってきて、シャワーを浴びる。カーテンは閉まってるために下着のまんまリビングに向かい熱い体を冷ます。
「ふぅ~」
若干濡れている髪を肩に掛けていたタオルで拭き取る。その時、普段……いやこの時間なら絶対に聞かないはずの声が聞こえた。
「お、お、お、お姉ちゃん!! 家だからってその格好は! あぁ! お兄ちゃん見ちゃダメ!」
「な、なんだ極夜!? ってお、おい! 幻月!」
耳に聞こえたのは極夜と兄さんの声だ。まさかあの二人が起きるわけないじゃん。まだ7時よ。騒がしいなぁと思いながらタオルをどかすとそこには確かに、二人がいた。
「え、えぇぇぇ!!? こ、これは夢!?」
試しに頬を叩くが、痛い……。あり得ないこんなのあり得ない……。
「んなことよりお姉ちゃん! 服を着る!」
「そ、そうだ!」
「だからお兄ちゃんは見ちゃダメ!」
兄さんと視線が合った。その瞬間逸機に恥ずかしさが込み上げる。
「極夜! 兄さんをあっちに追いやって!」
「分かった! お兄ちゃんのバカ! エッチ!」
兄さんを無理矢理廊下に押し出す。その間に私はソファーに投げ捨ててあった服を着込む。
そのあと、極夜に怒られたのはまた後の話だ。