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入学

「兄さん、起きてもう朝だよ!」

 ぐっすりと爆睡していたが、突然双子の妹である幻月(げんげつ)が俺の肩を揺らして起こす。

「まだ夜だろ……? 寝かしてくれ……」

 めくられた布団を再び、頭までかぶり目を閉じる。

「寝ぼけてないで! ほら、外見てごらんって!」

 また乱暴に布団を取り上げられる。しぶしぶ目を開けて、窓を見ればいつの間にか、夜が明けて憎き太陽が光を放っていた。

「いつの間に……」

「下降りてるから、ご飯出来てるから早く着替えて顔を洗って来てよ」

「ふぁ~い」

 あくびと同時に返事をすれば、幻月のため息が聞こえる。急いで着替えないとまた呆れられる。テキパキと着替え顔を洗いリビングに向かえば、テーブルの上には美味しい朝食が並んでいた。

「あっ、お兄ちゃん。おはよう」

「おう、おはよう極夜」

 満面の笑みで挨拶をしたのはもう1人の妹である極夜(きょくや)だ。

「今日は私の方が先に起きたから、お兄ちゃん飲み物買ってね」

「あー、すっかり忘れてたって……幻月、極夜おこしたら勝負にならないだろ」

「あっ、そうだよお姉ちゃん!」

 二人でブーブーと文句を言うと、再び重いため息を漏らした。

「起こさないと……夕方まで寝てるでしょ? それに兄さん、入学式早々から遅刻って恥ずかしくないの?」

「「ご、ごもっともです」」

 ただ、頷く事しか出来ない。

「私が居なくなったらこの先どうするの? まぁ、いいわ取り敢えず温かい内に食べましょ」

「そうだな……では」

「「「いただきます」」」

 幻月の作った美味しい朝食と共に、この家について紹介しよう。

 俺の名前は姫美夜(ひめみや) 白夜(はくや)今は16歳で、県内でも超難関校として有名な高校に入学した。

 そして、双子の妹の幻月。

 俺と同じ高校に入学して、家事などをやってくれているために母親と思ってしまうが、やはり妹としては可愛い。

 一番したは極夜。

 ちょっと人見知りがあり、初対面の人は苦手だが、本当は、天真爛漫で可愛いやつだ。因みに、極夜も俺達と同じ高校に入学するために猛勉強している。

 両親は仕事の関係で海外にいるが、幻月と極夜がいるため寂しさなんて感じてない。毎月仕送りを送って貰ってるためにバイトなんてしなくても遊んで暮らしていられる。

「ところで極夜、最近勉強はどう?」

「一年もあるから行けるかな、でも気を抜かずに頑張るよ!」

「それがいいわ。さて、そろそろ出る準備しないとね兄さん」

「ん? もうこんな時間か、極夜と一緒に登校出来ないなんて俺辛いぜ」

「本当に、兄さんは極夜に溺れてるね」

「まぁな、あっ、幻月嫉妬か? 心配すんなって二人は大切な妹なんだから」

「うっ、兄さんのバカ」

 照れ隠しのように幻月は洗面所に向かった。あんな感じに照れる幻月の可愛さは異常だ。

「あっ、私も行かないと遅刻しちゃう!」

「あぁ! 俺も!」

 結局、幻月に釣られて歯を磨き髪を整える。

「うし、出来た」

 そのまま、走りながら2回に上り、バックを肩に掛ける。

「兄さーん! 置いてくよー!」

「いまいくー!!」

 ドタドタと階段を掛け下りる。その勢いを保ったらまま、靴を履いて外に出る。

「鍵も閉めた……じゃー、行こっか」

 極夜は先に学校に行ったために背中姿さえ拝む事が出来なかった。

 まぁ、でも新しい学校生活は楽しみだ。




「幻月、どこのクラスだ? おれは1組だが」

「3だって、初めてじゃない?  兄さんと違うクラス」

「あぁ、そうだな。また後でな」

「うん」

 朝のあの会話を最後に、幻月の顔を見ていない俺は、エネルギー不足だ。入学式始まるまでの時間がとても長い。その時後頭部に軽い衝撃が走った。

「ようヒメ、相変わらずあの二人がいないと暗い顔してんなお前」

 俺に話しかけてきたのは、幼馴染である青羽(あおば) (ゆう)

「うるせーよ、ていうかお前その名前で呼ぶなって小学校から言ってるだろ」

「いいじゃねぇか、お前の美貌に合わせて呼んでるって小学校から言ってるだろ」

 オウム返しのように返されてため息が漏れる。こいつと真面目に相手をすると本当に疲れる。

「にしても相変わらずいつ見ても女にしか見えないなー、本当に女だったら付き合ってやったのに」

「俺がもし女だったら股間に膝蹴り入れてやるよ」

「こら、ヒメそんな乱暴に育てた覚えは無いぞ。可愛い子にトゲはいりません」

「お前に育てられた記憶はありません」

 そう、たしかにこいつの言うとおり、俺は自分で言いたくないが、かなりの女顔だ。父より母の血の方が濃かった俺は、色素の薄い金髪に、赤い目という顔で慎重は163ちょっとしかない。そのために二人といれば必ず三姉妹と間違えられる。

「なぁヒメ、便所行かねぇか?」

「いいぜ、ちょうど俺も言おうとしてた」

「流石は親友だぜ、いこうぜ」

「あー、はいはいそうですねー」

 適当に棒読みで返し、悠と肩を並べて教室を出る。




 肩を組んでくる悠をジト目で見る。直感でトイレを目指しているように見えたが、案内の張り紙が張っており難なく道は分かった。

「ちょっと! 離して! やめてよ!」

 割りと近くで聞こえた声、そしてこの持ち主は間違いなく幻月の物だ。

「おい、これって幻月ちゃんのだろ?」

「あぁ、そうだよ! 行って来る!」

「おおい、待てよ!」

 悠を置いていき、全力で幻月の声のした方に走る。姫美夜家は代々から運動神経はずば抜けて高いと知っていたが、その遺伝子が俺にもあってよかった。

 すぐさま、幻月を発見するとガラの悪い奴らに絡まれていた。幻月は俺を見ると手を伸ばした。

「兄さん!」

「幻月! お前らその手を離しやがれ」

「あ? いいじゃねぇかよ。ちょっと借りるだけだよ」

 無理矢理幻月の腕を引っ張り自分の頭とところに引き寄せる。

「きゃっ! い、痛い……」

「おい! いい加減にしろ! 人の妹に勝手に手を出してんじゃねぇよ!」

「うるせーなぁ、騒ぎになったら面倒だから今日は見逃しやるよ」

 男達は、幻月を突き飛ばしたためによろける。床に倒れる前に、俺は受け止めた。それと同時に、胸に顔を押し当ててきた。

「兄さん! 怖かったぁ……」

「よしよし。もう大丈夫」

「まぁ、とりあえず一大事にならなくて良かった。あのまんま抵抗してたら確実にヒメ殴りに行ってたろ?」

「まぁ、正直今からあの背中にドロップキックをかましたいよ」

「兄さん暴力はダメ。私ならもう大丈夫だから、ありがとう」

「おう、何かあればまた助けてやるよ」

 手を振る幻月の可愛らしさについつい頬が緩んでしまう。

「相変わらず重度のシスコン患者だな。まぁ、幻月ちゃんや極夜ちゃんがなら誰もがなりそうだけどな」

「本当に可愛いよ。さて、便所行って教室戻ろうぜ」

 本来の目的を済まして、教室に戻れば入学式の準備が整ったのか、廊下に並び体育館に進んでいった。

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