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第4話 記憶喪失のふりをした結果

不思議そうにクリスが上目遣いで見てくる。


「あー・・・いやー・・・そのー・・・」


とっさに名前と言われても思い浮かばないものだ。

何しろ150億年なかったものをいきなり決めろと言うのだから。

いや、正確に言えば思い浮かんではいる。

浮かんではいるのだけど、どれもこれも女っぽい名前だ。

今の私は性別が男になってるから、女っぽい名前を使うわけにはいかない。

私が悩んでいるとクリスが想定外のことを言い出した。


「あ、もしかして、記憶喪失なのですか?」


召喚のときに、何かがきっかけで記憶を失ってしまったと勘違いしたのだろう。

もちろんそんなことはない。

でもこれは案外いい方法かもしれない。クリスの勘違いに便乗することにした。


「そう・・・ですね。自分が何者かはわかるのですが、名前だけが・・・」


うん、嘘は言ってない。女神ウソツカナイ。


「召喚で何か失敗したのでしょうか・・・」

「い、いや、そんなことはないと思うよ!名前以外はわかるし!」


記憶喪失の原因が自分の召喚のせいだと勘違いに拍車をかけ、落ち込み始めたクリスを慌ててフォローする。

といってもフォローがうまくできない。

いくらなんでも女神を召喚できたすごい人です。なんてことは言えないし、嘘を言ったところで何の意味もないし・・・そうだいいことを考えた。


「わからない名前は考えてもしょうがない。クリスが名前を決めてくれないか?」

「え、私がですか?」


急な無茶ぶりをクリスにしてみる。

驚きはしたが真剣に悩み始めるクリス。


「それでは、クロト・・・様はいかがでしょうか・・・?」


見た目黒瞳黒髪黒い制服だから「クロト」なのだろうか・・・安直すぎる・・・

ってステータスの名前の欄がもうクロトになってる!?

これはもうOKと言わざるを得ない・・・


「うん、いい名前だね、ありがとう」


ここで褒めれるあたり、私はきっとイケメンなんじゃないかと思う!(錯乱)

ほ、ほら、クリスも赤くなってるし!うんうん!私イケメン!


「ではクロト様、改めまして・・・ようこそアルトルージュ王国へいらっしゃいました。」


顔を赤くしてうつむいているクリスの代わりにアルトルージュの女王が歓迎の言葉を述べる。

なお、アルトルージュの王様はいまだに空の彼方へ意識が飛んだままだった。

ある意味この国にとって超歴史的な瞬間に王様が気絶してるなんて、後で目が覚めた時に凹むに違いない。かわいそうに。

その後、気絶している王様は別室に運ばれ、女王から召喚の目的などを聞かされた。


この世界には、人族、獣人族、亜人族ドワーフやエルフなど、龍人族、魔人族の五種族がいる。

10年ほど前までは種族間で争うこともなく、平和に暮らしていたそうだ。

ところが現在、魔人族の王が魔王を名乗り、君臨しているらしい。

もともと種族としても強く、数も多かった魔人族は他の種族の領地を奪い、魔人族の領地を広げていっており、魔人族以外の種族は一~二国ほどしか国が残っていない。

アルトルージュ王国も人族の最後の国であり、人口も100万人もいない。

領地の拡大に伴って増えた魔人族の人口は数億とも数百億とも言われている。

質も負けていれば、数も負けており、アルトルージュ王国が残っていたのも古の遺産である結界装置のおかげだ。

しかしその結界もいずれは突破され、アルトルージュ王国は魔人族の暴力に呑み込まれていくだろう。

そんな状況を打開するため、私は呼ばれたそうだ。


私に与えられたミッションを三行にまとめると・・・

領地を取り戻し

魔王を倒し

世界に平和を取り戻す

といったところだろうか。


一通りの説明の後、夕食の晩餐に参加することとなった。

地球の食文化レベルに比べたらこの世界は遥かに低い水準にある。

それを差し引いても晩餐の料理は王族が普段食べているものとは思えないほど、質素なものだった。

確かに一般人の食事に比べれば、上等なものなのだろうが、それでも高級な食事とは言い難い。

それほどまでに人族は追い詰められているのだと、認識させられた一面だった。

女神の名前はクロトになった。

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