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第2話 召喚された地に降り立った結果

光の道の最終地点に踏み込んだ瞬間、一瞬の間私こと地球の女神は意識を手放してしまう。

失神や気絶というよりもちょっとした立ちくらみに近いような、そんな感覚を感じた後あたりを見渡すとどうやらお城の中にいるようだった。

レンガ造りで少し装飾に凝っている室内の一番奥には王様らしい恰好をした玉座に座る男が一人。

その横にはその妃と思わしき女が一人。

それを取り囲むように並ぶ兵士らしき男たち。

そして目の前には汗だくになりながら肩で息をしている少女がいた。


「ついに・・・ついに召喚でき・・・た・・・」


そう言い残して目の前の少女はいきなり倒れてしまった。

どうやら死んでしまったらしい。魂が徐々に天へと昇り始めている。

慌てて駆け寄る王様らしき男と妃らしき女と兵士らしき男たち。


「い、息をしておらぬ!?だ、誰か医者を連れてこい!!」

「そんな・・・召喚の負担がこれほどまでにひどいなんて・・・!!」


周りに当たり散らかすように、医者を求める王様らしき男。

召喚なんてさせるんじゃなかった、と後悔に打ちひしがれる妃らしき女。

召喚された私をそっちのけで右往左往する兵士らしき男たち。


これではらちが明かないと思い、死んでいる少女に近づいていく。


「ぬ、何をしようというのだ!」


王様らしき男が近づいてきた私を不審がる。

そんな男を宥めながら手をさし伸ばす。


「いいからいいから。見ておきなさい。」


なんとなくは感じ取っていたが、この世界でも女神の力は使えるには使えるらしい。

ただ、意識すると微妙に違うように感じる。というかスキル扱いになっているらしい?

少女を蘇生させようと思った瞬間に脳内に「蘇生魔法」と浮かんできていた。


天から天使が舞い降り、天へと向かいつつあった魂を優しく抱きかかえ、もとの少女の体へと戻していく。

少女を戻し終わった天使たちは純白の羽をばらまきながら消えていく。

青白かった顔色が穏やかな寝顔に変わり、そして目を開ける。


「おぉ・・・おぉぉ!!」

「あぁ・・・」

「す、げぇ・・・」


驚きと喜びのあまり、王様らしき男と妃らしき女と周りの兵士らしき男たちは言葉にならない声を出していた。


「もう、大丈夫かな?」

「は、はい・・・ありがとうございます・・・?」


状況の呑み込めていない王女らしき少女は疑問形で礼を述べる。

ちゃんと蘇生できたか気になって間近で経過観察をしていると王女らしき少女は頬を紅色に染めていく。

一通り観察し、問題ないことを確認したところで立ち上がり、質問する。


「で、君たちはいったい何者なのかな?私はどうしてこんなところにいる?」


状況も彼女たちが何者なのかもスキルでわかってはいるけど、テンプレ的にはこういう質問をしておいたほうがいいだろう。

その質問にハッとして慌てて立ち上がる王女。

慌てすぎて心配そうに近づいていた王様のあごに王女の頭がクリーンヒットする。

幸いにも召喚の儀式のためか、頭に装飾品の類がなかったのが幸いし大きなけがにはならなかったが、王女の頭は石頭だったらしい。

王様はたたらを踏んだ後、玉座の前に倒れてしまった。


「も、申し訳ございません。私はアルトルージュ王国の第一王女、クリス・アルトルージュと申します。私が貴方様を召喚したのでございます。」


その声にどこか聞き覚えがある気がしたものの、どこで聞いたのかは思い出せない。

思い出そうとした表情がどうにも怪しんでいるのだと勘違いしたらしく、王女がまくしたてるように説明を続けた。


「私どもの世界は今危機に陥っております!彼の魔王が現れてからはモンスターが蔓延り、国の人々は疲れ果て、もはや太刀打ちするのも困難となってきております。

そこで私が勇者召喚の儀を行い、貴方様を召喚したのです。」

「本来であれば、異世界の勇者を召喚するというのは難しかったのですが、我が子クリスは幼少のころより魔法に長けており、実現することができました。異世界の勇者を召喚できたのは今から500年ほど昔に一度だけ成功したと言い伝えがあります。」


妃が援護射撃が如くフォローの言葉を続ける。

しかし、今の言葉に気になる点があった。


「500年前・・・?」


そう、この世界に来る前にこの世界の時間軸のことは知っている。

地球でいう5分前にできた世界だが、すでに300年の時が経過している。

ところが妃がいうには今から500年前の歴史が存在している。

恐らくだが地球の哲学者が提言した「世界5分前仮説」のようなものだろう。

あらかじめ作成された歴史が存在する状態からいきなり世界がスタートしているらしい。

歴史をあらかじめ作っておくなんて、あの男(神)は意外と優秀かもしれない。


歴史の設定に矛盾が起こると矛盾からほころびが発生し、その瞬間から世界は崩壊しかねない。

そうなってくると管理者である神はひたすらに崩壊を留めるため、修正を施す必要がある。

しかし、世界レベルでのその加筆修正は膨大な量で、一般的(?)な神が作る世界は0から作っていき、ダメだったらリスタートをするのが常識だ。

もちろん作り直すにはまた膨大な時間がかかり、その分世界の出来上がりが遅くなってしまう。

ちなみに私は一発で成功しているため、地球の歴史は他の世界に比べても比較的長かったりするのだ(ドヤァ


ゴホン、話がそれた。

そんなことを一人考え込んでいると王女が話を続ける。


「500年前にも同様に魔王が現れ、打破するために勇者召喚が成されました。そのときの勇者が地球のニホンジンで黒瞳黒髪の男の方だったと言い伝えられています。

そして貴方様も言い伝えと同じような方でほぼ確信は持てていますが、貴方様は地球の方でしょうか?」

「えぇ、私は地球から来ましたが・・・言い伝えと同じ・・・?」


そんなはずはない。

私は女神と言われるだけあってちゃんと女だし、俗にいう巨乳と言われる程度には大きい胸がある。

そこにいる妃にはかなわないが、王女よりは遥かに大きいはず。

そう思いながらこの世界にきて初めて自分の姿を確認する。


そこには黒瞳黒髪の制服姿の男が立っていた。


女神は男になっていた。

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