第18話 いろいろと教えてみた結果
獣人族の国までの道のりで、彼女たちの成長は目を見張るものだった。
今目の前では末恐ろしい光景が広げられていた。
彼女たちに本を渡してから約一週間ほど進んだここは魔人族が戦争を始める前から危険区域とされていた山の中だ。
名をゲバルト山脈という。
この山は龍脈という気の流れが集中する地域らしく、その影響でモンスターたちが強かった。
昔は、山中の道を通るだけでは襲ってくることはなかった。
龍脈の影響はモンスターだけでなく獣や植物にも影響があり、餌は豊富にあったからだ。
しかしもともと強かったモンスターたちは魔人族により魔改造されたり、品種改良のようなものをされていた。
おかげで、通るだけならなんとかなっていた道もレッドドラゴンの前を通るほうがマシと思えるような地獄に変化していた。
山に近づくだけでモンスターたちが襲ってくるようになっていた。
そのため、山に近かった村は魔人族に攻められる以前に消滅(文字通り、跡形もなく消し飛んでる)している。
さて、そんなゲバルト山脈の山中だが、目の前で繰り広げられている光景はとても悲惨なものだった。
主にモンスター側に。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
『女神式体術の基礎』を読んだバファラは基礎体力作りから始めた。
とはいっても、馬車に並走してひたすら走り続ける、というものだったのだが。
最初のうちはすぐに追いつけなくなり、馬車で休むことが多かったものの、三日もすれば馬車と完全に並走できるようになっていた。
それ以降は馬車の屋根の上で型の練習を行っていた。
途中で何かコツを掴んだらしく、謎の破裂音を発していた。
破裂音の正体は後々わかるとして、コツを掴んだ後はひたすらモンスター相手に実戦を積み重ねていった。
ちなみに武器は『アーク』を渡している。
もともと魔力の数値がそこまで高くないため、大規模な爆発は発生しないものの、まったく発生しないということもなく、十二分にその威力を発揮していた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
『女神式商人の心得』を読んだセイラは、ひたすら馬車の中で算数の勉強を行っていた。
もともとただの村人だったセイラは頭を使って物事を考えたことはあまりなかった。
そしてそのまま捕らわれの身になっていたので、勉強をすることもなく今に至る。
ある程度計算ができるようになってからは、カシスと問答をしていた。
主に市場相場や物の価値、今後の資産運用について話し合っていた。
問答も一通り落ち着くと馬車から戦闘の風景を穴が開くほど見ていた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
『シェフたちの晩餐』を読んだカリンが、一番早くその実力を発揮していた。
本を渡したその日の夜からさっそく料理をさせてみた。
生まれて初めて作ったと言っていた最初の料理すら、すでにお城の晩餐よりも美味しいものが出来上がっていた。
その後も毎日料理のうまさは拍車がかかり、今時点で魂魄掌握で呼び出した料理人並みの腕前になっていた。
料理本がほしいということで各種料理に関する本を作ってあげると馬車の中で没頭していた。
しかし、なぜかある時からセイラと同様に馬車から戦闘風景を舐めるように見ていた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
『女神式暗殺術-入門編-』を読んだミストは、馬車の中で精神統一から始めた。
気を静め、周りの風景に溶け込むように気配を消し、馬車の中にいるはずなのにどこにもいないように思ってしまうほど、存在感を消していった。
動かずにそれができるようになったところで、今度は動きながらそれができるように練習を始めた。
しかもバファラと並走しながら。
入門編をクリアしたところで今度は『女神式暗殺術-基礎編-』と『女神式暗殺術-応用編-』を渡す。
食い入るように見た後、それらを実践していく。
基礎編、応用編すらも自分の力にしていったミストにそっと『女神式忍術本』を渡した。
その後、バファラと同様に道中の戦闘に参加し、メキメキと実力を伸ばしていった。
また、バファラと同じく武器を渡している。
--------------------------------------------------------------
神造兵器『メタトロン』&『サンダルフォン』
女神が暇つぶしで作成した武器。羽のような見た目をした純白の双剣。
能力は以下の通り。
・素早さ極大UP
装備した者の素早さを大幅にアップさせる。
・切れ味自動補正
常に刃が研ぎ澄まされた状態になる。
・超振動刃
切れ味に加え、刃が超振動することで、抵抗なく切ることができる。
・射出
特定の操作をするとサンダルフォンの刃を射出することができる。
--------------------------------------------------------------
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
道中でも危なげなく戦闘するようになった彼女らは今までは極々普通の一般人だったはず。
ただの村人だったり、城主の娘だったりしたはずの彼女たちをいったい何が駆り立てたのだろう。
この一週間の努力で、この世界でも稀有な戦闘力の持ち主となっていた。
カシスがモンスターの詳細な情報を全員に展開し、
セイラが情報をもとに全員を指揮する。
その指揮のもとバファラが無双し、
ミストが唐突に現れてモンスターたちの首を背後から斬っていく。
そしてカリンがモンスターたちを生きながら料理していく。
今もまた、ジェネラルオーガが率いるオーガたちと戦闘しているが、まったくもってオーガたちが手も足も出ていなかった。
アイアンオーガに向かってバファラが正拳突きをすると肉が弾け飛ぶ破裂音と小気味いい破裂音がする。
鋼のように硬いはずのアイアンオーガの体には内臓や骨がむき出しの風穴があいていた。
肉がはじけ飛ぶ破裂音はアイアンオーガの体から発せられていたのだった。
小気味いい破裂音は、バファラの正拳を綺麗に決めた時に出てくる音らしい。
普通は音はならない。私でも無理。
たぶんアイアンオーガの風穴も『アーク』を使ったからできた風穴でもなさそうだった。
正拳突きや回し蹴りで次々とオーガを屠っていくバファラのすぐそばで、カリンが包丁を使ってオーガたちを肉に変えていっていた。
肉片ではない。肉だ。
しかもこの包丁、本当にただ普通の包丁だ。
手足を斬り落とし、分解し、肉に変えていくカリン。
オーガの解体が終わると、次はハンマーを取り出して別なオーガへと迫る。
ちなみにこのハンマーも武器ではなく、肉をミンチにする料理用ハンマーである。
それを使って、オーガをミンチ肉に変えていく。
なお、この世界のモンスターの肉は地味に美味しい。
すでに道中の倒したモンスターで実食はしていて、全員が全員満足する味だった。
なので今後この肉が食卓に並ぶのだろう・・・うーむ。
戦闘の采配でもジェネラルオーガを上回る指揮をセイラがとっていた。
緻密に計算に計算を重ね、セイラ独自に編み出した確率論と兵法を使って、ジェネラルオーガが指示を出す前にすでに先手を打ち、作戦らしい作戦を実行させないまま最後まで完封していた。
その指揮によって、バファラやカリンが戦いやすい状況に持っていきつつ、ミストに暗殺を任せていた。
暗殺を任せられていたミストは遠距離系のモンスターの首を片っ端から斬っていった。
視野が広く、目がよく、接近戦が苦手な彼らは接近されるのを嫌う。
そのため接近すること自体がなかなか難しいのだが、ミストは気配を消して背後からいきなり現れるように首を斬る。
味方が次々と殺られていくことで彼らはより警戒するがミストの姿を見つけることができずにいた。
どんなに周りを警戒してもいつの間にか背後に立たれて、首を斬られる。
こうして、遠距離系のモンスターはいなくなっていった。
そうしてジェネラルオーガだけを残してモンスターは全滅。
最後に残ったジェネラルオーガも逃げることは許されず、右から肩をぐるぐる回しながら近づいてくるバファラ、左から近づいてくる包丁とハンマーを持ったカリン、そしておそらく背後から現れるであろうミストに恐怖しながら、カシスの弓矢に射られて絶命した。
末恐ろしいパーティーが出来上がった。
-------------------------------------
ブックマーク感謝です♪
まだまだ精進していきたいと思うので、
感想や評価を頂けるとすごくうれしいです。




