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幕間 クリスの気持ち2

「私の夢が叶いましたわ・・・」


真剣な目で考え込んでいる勇者様を見ながら、思わず声が出てしまった。


小さいころからの夢。勇者の召喚。

しかも稀代の魔法使いすら使えない『蘇生魔法』をいとも簡単に使ってしまうほどの能力の持ち主。

勇者召喚の儀は間違いなく成功であり、この国、いやこの世界に希望が現れたのだ。


「夢・・・?」

「はい、私の夢は黒瞳黒髪のニホンジンの勇者様を召喚することだったのです。」


私がそう説明すると、なぜか勇者様は驚いていた。

真面目な顔をしたり、急に驚いたり、よくわからないけど・・・勇者様の百面相はとても面白かった。


しかし、いつまでも、勇者様とか貴方様とか言っているのもどうかと思うので、名前を聞いてみることにした。


「えっと・・・貴方様のお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「あー・・・いやー・・・そのー・・・」


今度はものすごく困った顔をしていらっしゃる。

しかしその困った顔には少し心当たりがあった。


実はこの世界では召喚の儀は何度も行われている。

しかし、500年前の伝説の召喚を除いて、一度も無事に成功したことはなかった。

ある伝承では国民全員が消し飛び国が滅び、

ある王国では勇者の頭だけが呼び出され、

ある噂では媒体にした古のマジックアイテムが地形が変わるほどの爆発を起こしたり。


このような悲惨な話はいくつかあるが、最も多いのが記憶喪失だった。

勇者を召喚することができても、記憶をなくし、スキルもなくし、何もできない凡人と化す。

背筋に冷たいものが流れる。


「そう・・・ですね。自分が何者かはわかるのですが、名前だけが・・・」

「召喚で何か失敗したのでしょうか・・・」

「い、いや、そんなことはないと思うよ!名前以外はわかるし!」


よかった。勇者様はすべての記憶を失ったわけではなかったようだ。

不完全ではあるけど、名前だけ、というのは僥倖だろう。

でも、やっぱり伝説と同じようにはいかなかった。

きっと私は図に乗っていたのだ。魔法の能力があるからと、無理やり召喚の儀なんてするのが悪かったのだ。

下手したらこの国を滅ぼしていたかもしれない。もしかしたら人族が全滅した原因は私になっていたかもしれない。

一度落ち込み始めると次々と負のスパイラルに陥ってしまう。


「わからない名前は考えてもしょうがない。クリスが名前を決めてくれないか?」

「え、私がですか?」


きっと勇者様は見抜いたうえで助け舟を出してくれたのだろう。

自分の名前がわからないなんてショックな出来事があったのに、自分のことよりも私の心配をしてくださった。


「それでは、クロト・・・様はいかがでしょうか・・・?」


誠心誠意、心を込めて名前を考えて、勇者様にお伺いを立ててみた。

若干安直な気がするけど・・・大丈夫だろうか・・・


「うん、いい名前だね、ありがとう」


勇者様に褒めてもらえた瞬間、私の胸が高鳴った。

私は今最高に幸せな気分だ。


「ではクロト様、改めまして・・・ようこそアルトルージュ王国へいらっしゃいました。」


お母さまの歓迎のあいさつの後、状況の説明や皆と晩餐会を行った。


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・


晩餐会の後、私は部屋で一人悶々としていた。

クロト様を見ていると、私の胸はどんどん高鳴っていく。

はじめは病気なのかなと思ったけど、侍女に聞いてみると「それは恋の病です」と言われた。

私は初めて人を好きになったのだと言われて気が付いた。


クロト様は準備が終われば旅立つ。

それは呼び出した理由からして当たり前の話。

いつまでも王国にいることはできない。


晩餐会以降ずっと悩んでいたけど、やはり私はクロト様のそばにいたいと思った。

そばにいて、少しでも役に立ちたいと思った。


ならば、私が旅についていけばいい!

不意に天啓の如くそう思い浮かんだ。

そうと決まれば、さっそくクロト様に相談してみよう。


正直に話していても足手まといになりかねないし、理由(いいわけ)を考えて・・・

どうしてもダメと言われたら、以前偶然聞いてしまった侍女たちの「男をオトす方法」を実践してみよう。

それらの準備をしてから、私は夜中の廊下へと出ていく。


「夜分遅くにすみません。もうお眠りになったでしょうか?」


もしやもう寝てしまったのかもしれない。

と気づいたのは部屋の前に来てからだった。

ちょっとドキドキしながら、ここでくじけてしまってはもう二度とチャンスがない気がして、意を決して訊ねてみる。


「どうぞ。どうしましたか?」

「実は・・・お願いがございまして・・・」


クロト様は起きていて、すんなり部屋に入れてくださった。

さぁ、ここからが本番・・・!


「わ、私を旅に同行させてください!」

「ん、いいんじゃない?」

「実は私は・・・って理由は聞かないんですか?」

「うん、もともと連れていく気だったし」


今までの私の悩みは何だったんだってくらい、クロト様はあっさり了承してくれた。


「よかったです・・・拒否されるとばかり思ってましたから、色々と覚悟してきたんですよ・・・?」


あまりのあっさり具合につい口が滑ってしまった。

言わなくてもいいことを言ってしまった。


「覚悟?」

「あ、いえ!な、なんでもないです!!」


慌てて否定してみるものの、クロト様は不思議そうにこちらを見つめてくる。


「あら?この部屋にこんなものありましたっけ?」


話題を変えるために何かないか部屋を見渡すと、見たことがないものが置いてあった。

ひとまずこれに話題を変えよう。

そう思って歩き出したところで・・・


「きゃぁっ!!」


足元にあるアイテムに気づかず踏んでしまい、そのままこけてしまった。


「あうー・・・足元に気づいてま・・・きゃっ!み、見ましたかっ!!!?」


「男をオトす方法」を使うための準備で、私はパンツを履いていなかった。

クロト様と自分の位置、こけた時の姿勢、クロト様の表情から判断するに間違いなく見られてしまった。


「ち、違うのです!普段から履いてないとかそういうわけではなくってですね、連れてっていってくれなかったらそういう行為をしてでもと、ああ!いやそういうわけではなくって!えーっとあーっと・・・」


もう、必死で、必死に、必死すぎるくらい、言い訳をする私。

目の前がぐるぐる回る。

自分でもだんだん何を言っているかわからなくなっていく。


「あうー・・・そのー・・・こうなったら覚悟!」

「お、落ち着いて・・・」

「既成事実を作れば万事解決デス!!」


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・


こうして、私は勇者様の旅に連れて行ってもらえることとなった。

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人の心理描画ってすごく難しいですね。


まだまだ精進していきたいと思うので、

感想や評価を頂けるとすごくうれしいです。


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