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9.« 秋葉原 駅 » 夜

「ホラね。あの子。

最近バイトで入ってきたあの子。

今、あんたの隣でタバコ吸ってたでしょ。

あの子、あんたのこと好きみたいだよ。」


「えっ?! なに? さっきの子?」


「うん。だっていつもあんたがタバコ吸いにくると、あの子も来るもん。

あんたと時間を合わせてるみたい。」


「う~ん。そうかなぁ。あんまりタイプじゃないから。

・・・気がつかなかった。」


ミミったら変なこと言って。

でも、そうかなぁ。

いつもと微妙に時間を変えて非常階段わきのドアの前でタバコを吸っていると、

彼がやってきた。

やっぱそうかなぁ。


いつも、私とミミとチョコがしゃべっているのをわきで聞いているだけ。

時々ミミが話しかけると、それには敬語で答えている。

背は高いけど、やっぱ私のタイプじゃないなぁ。

だいたいバイトのくせに喫煙時間多すぎ。真面目に働け。

私も話しかけてあげたら、マジメに答えてた。

ふ~ん。悪い子じゃないみたいだけど。あんまり年下って興味ない。


ある夜、ミミが年齢の近い社内の子を5~6人募って飲み会をした。

バイトのあの子も来ていた。

まだ週半ばなので、軽く飲んで早めに撤収した。

私はそのバイトの子と帰る方向が一緒だった。

一緒に秋葉原駅まで歩いた。

思ったよりも話が弾んだ。

そう言えばさっきの飲み屋でもよくしゃべっていた。

駅に向かう線路わきの坂道で、

私は緩んできた靴のストラップを直すために立ち止まらなくてはならなかった。

彼は緩やかな下り坂を時々私を待つようにゆっくりと歩いている。

彼の後姿の手ぶらの手が光って見えた。

私は彼に追いついて後ろから彼の右手を両手で握った。ふふ。

彼は喜ぶのかと思った。でも違ってた。

怒りだしたのだ。


「面白い?」


「へっ?」


「僕のこと、からかって面白い?

君のことが好きだって知っているくせに。

こんなことして面白い?・・・。」


ヒェ~っ、

そ、そんなぁ。

私はますます面白くなって笑い出しそうになった。

だって、そんなに真面目にとらなくっても。

でももしも笑ったら、もっともっと怒りそうな気配だったので、考えを散らしてマジメな顔をつくった。ヒヤヒヤした。そして、咄嗟に思いついた言葉を絞り出した。


「私、き、きみのこと好きだよ。」


「うそだ。」


「ホントだってば。そう、ホントよ。

キスしていいよ。」


「うそだ。」


「ホントよ。キスして。」


私は背伸びをして、彼の唇にキスをした。

彼は私のキスを受け入れた。

彼は私に長い長いキスをした。

脇を電車が通って道が明るく照らされた。

キスは悪くなかった。


「離したくない。」


彼から離れようとした私の腕を彼がつかんだ。


「まだ週の中日なかびだし。

ゴメン、今日は帰る。

また明日ね。」


私は彼の手を振りほどいて秋葉原の駅の改札に立った。


「じゃぁ、明日ね。」


「僕は明日は大学があるから・・・。今週はもう来ない。」


少し離れた所で彼が言った。


「じゃぁ、来週ね。電車が来ちゃう。バイバイ。」


彼が何か言った。

私は聞こえないフリをしてホームに向かって階段を駆け上がった。




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