2.« 京成線 » 夕方
はるかちゃん、さなえちゃん、わたしの三人で、京成線終点の駅ビルに隣接している映画館へ映画を観に行った。本当は小学生だけで映画なんて見に来てはいけないって言われてはいるんだけど、学校にばれなきゃ大丈夫。わたしたちの親たちも一応は知っている。映画を観たらどこにもよらずにすぐに帰って来るってことが条件で子どもたちだけで映画館へ行くことを許してもらった。
「もう六時だね。お腹空いた。ちょっと食べて行こうよ。」
「でも、早く帰らなきゃ叱られる。」
「ちょっとなら平気だよ。だってもう我慢できない。」
「ロッテリアでハンバーガーくらいいいじゃない。
食べよう、食べよう。」
「わたし、もう帰りの電車賃しか持ってない。
それに、お腹空いてないし。いいよ。大丈夫。行っておいでよ。
わたし、ここで待ってるから。」
はるかちゃんとさなえちゃんの二人が顔を見合わせて、二人でごそごそと内緒話を始めた。
「ん。じゃぁ、そうするよ。すぐ食べて戻って来るからここで待ってて。」
そう言って二人は走ってロッテリアの中に消えて行った。
「あ~ぁ、もっとお小遣いもらってくればよかった。
うちの親、ケチだから・・・。」
駅構内の高い天井を見上げてため息をついて待っていると、
わたしの背中をおもいきり叩く人がいた。
振り向くと、はるかちゃんとさなえちゃんの二人だった。
「あれっ? もう?
早いじゃん。どうしたの?」
「三人で食べた方が美味しいじゃん。
わたしたち少しずつお金を多めに持っていたから、三個買えたんだ。
ホラ、一緒に食べよっ。」
彼女らからもらったハンバーガーは美味しかった。
この店ではいつもエビバーガーしか食べたことがなかったから、初めて食べる肉のバーガーはとても美味しかった。
あれから数十年も経ってしまって、毎年、年賀はがきだけはくるけど、さなえちゃんと会って話せる機会は年に一回あるかないかの頻度になってしまった。はるかちゃんとはもう五年も会っていない。
また三人そろって会える日が来るといいなって思う。