13.« 山手線 » 秋
代々木駅で山手に乗り換える時、
ドアが閉まりかけて急いで山手線に乗り換えた時に、先に乗っていた人にぶつかってしまった。
「あっ、ごめんなさい。」
「あれっ?! あや!」
「えっ? 奈落!」
進学して互いに学校が変わってしまってから奈落に会うのは春以来だった。
「元気だった? どこまで行くの?」
「元気だよ。渋谷まで。奈落は?」
「オレも渋谷。
そうだ。オレら今夜、新宿でライブやるんだけど。来ない?」
「ごめん。今日はこれからムムと出かけるんだ。
ムムにちょっと聞いてみる。」
「へぇ、まだムムと付き合ってるんだ。
あいつ、ひどい奴だよ。」
「どういう意味?」
「どういう意味って・・・、わかるだろ?
あいつ、悪い奴だよ。
おまえ、カワイソウだから言わなかったけどさ。
おまえなんかさ・・・。」
「なに、それ?
ムム、なんて言ったの?」
「おう、渋谷に着いたぜ。
降りないの?」
「奈落。ムム、なんて言ったの?」
「おい、閉まっちゃうぜ。オレ、降りるよ。
じゃあな。次回は来いよ。また電話するよ。」
渋谷からたくさんの人が乗ってきて、その人の波で電車の奥まで連れていかれてしまった。
窓の外を景色が流れる。
どれぐらい山手線に乗っていたのか、
どの駅で山手線を降りたのか、
覚えていない。
*
人間ってそうゆうもんじゃないよ。
そう言ってた人が結局そうゆうもんだった。
そうゆう人間だった。
がっかりした。