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  « 御徒町 »

隣にいる目黒さんに聞いた。 


「会社の女の子には手をつけないの?」


「会社の子?

君みたいに殊勝な子なんていないよ、うちの会社には。」


殊勝? 褒めすぎじゃない? それとも『軽い』ってこと?

でもまあ、悪口でもなさそうなのでそのまま受け流した。


「私、自分がやりたいことが定まっていないだけだと思うの。

私の友だち、会社で先輩にいびられてるって言いながらも辞めないで頑張ってる。

私ができないことをやっている人ってすごいと思うわ。

私ね、もっと世の中を見てみたいの。

外の世界を見てみたい。

私ね、来月から外国に行くの。

すぐには帰ってこないわ。

一年とか、二年。それとももっと。

ねぇ、餞別に何か買ってよ。

本当は靴がいいけど、バッグでもいいわ。

もう選んであるの。

ねぇ、いいでしょ?」


「きっ、君っては。

いやだよ。

そのために僕と寝てるの?

イケナイよ。そんなことしちゃ・・・。」


やだ、本当に怒っちゃった?

いいじゃない、お金ちょうだいって言った訳じゃないんだから。

援助交際に加担しているとでも思ったのかしら?

本当に、私が愛情だけであなたと寝てると思ってるの?

んな訳ないじゃない。あなたはおっさんなのに。

あなた、ダメだわ。

私、ケチな男って嫌いなの。

もう会わない。

会いたくない。


その後、私がいないある日曜日に家に電話があったらしい。

「何か用事だった?」って聞くと 「君の家の近くを車で通ったから。」 って言ってた。

家の近くまで来たから、私に会いたくなったの?

私に会ってどうするつもりだった?

スーツ姿じゃない、普段着の彼ってどんな格好をしているの?

知りたくない。


「もう家に電話しないで。親が変に思う。」


なんだかそのまま面倒になってフェードアウトしちゃった。

ごめんなさい。

だって、なんだか、

恋する相手を間違えているような気がする。

きっと、あなたのこと、心から好きになってくれる人、現れると思う。

あなた、いい人みたいだから。


何度も彼と寝ていたはずなのに、ほとんど記憶に残っていないのだ。

どんな風に服を脱がされて、どんな風にしたのか、

よかったのか、よくなかったのか。

印象に残っていないので、きっと良くも悪くもなかったのだ。

エッチのことよりも、一緒にどこどこで食事をしたとか、夜じゅう一緒にあの道を歩いたとか、

彼が私に話してくれたことばかり覚えている。

彼のスーツの下の身体の特徴よりも、顔の特徴をよく覚えている。


あなた、いい人みたいだから。

きっと、あなたに本気で恋してくれる人、現れると思う。




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