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« 有楽町 »
ある夏の日。
その日は、有楽町駅の近くで待ち合わせをした。
『そごう』を横目に目黒さんが言った。
「あそこの上の食堂、行ったことある?
なかなか上手いんだよ。
時々、昼飯を食いに行ってる。」
「なんか、ファミリー向けって感じよね。
最近は行かないけど、
ソフトクリームを銀色のグルグルに入れて出してくれるのよね。
あれ、嬉しかったわ。」
「銀色のグルグル? あぁ、あれね。
ソフトクリームホルダーのことだね。
うん、なかなか上手いよ。」
あちこちでセミが鳴いている。
都会のど真ん中だというのに。
今年の夏は暑い。
「セミの鳴き声を聞いてどう思う?
うるさい?」
「私はセミの鳴き声を聞くとオーガズムを感じるわ。
ミーンミンミンミンミーン。
生きてるって感じがする。」
ミーンミンミンミンミーン。
先ほどまで絞り出すように鳴いていたのがピタッと止まった。
「今日はダメ?」
「私、生理だもの。
それにさっきステーキを食べたから血がすごく出るわ。」
「はっはっはっ。?!
今、想像しちゃったよ。
女性の身体って本当に動物的だな。」
「にゃぁ。」
私の瞳孔が開いた。
また、セミが鳴き始めた。