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12.浮 遊 « 神田 »
神田駅前の『養老の滝』で待ち合わせた。
先にきていた目黒さんは一人で飲み始めていた。
「やだ、手酌しで。
いつもこんな風に一人で飲んでるの?
ごめんね、遅くなっちゃった。」
私はテーブルの上のお手拭きで手をふく。
「いいんだよ、こういうのが。
若い娘はこういった場所は好きじゃないかな?
安くて旨い。僕は好きだけど。」
私のことを考えてくれるよりも、自分本位なのね。
初めてのデートが『養老の滝』?
まぁ、いっか。
私も友人たちとは似たような店をよく使うもの。
「旨いよ、君も食えよ。」
箸の先でお皿の魚をつまんだ。
おっさんだもの。仕方ないわ。
「次回はお寿司やに連れて行ってあげるから。」
「ふふ。そうですか。」
私はお通しに箸をつけた。