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鏡よ鏡の私の呪い  作者: 大橋狭間
嘘つきと、狼少女と、
1/21

プロローグ:鏡よ鏡

「私は鏡に嫌われている」

 子どもの頃、そんなことを言っていた時期がある。

 けれど、『自分の姿が鏡に映らない』なんて戯言は、誰も信じてはくれなかった。

 子どもの言ってることだと、まともに取り合ってくれなかったのだ。

 それでも、事実、私は一度も鏡の中に自分を見たことがない。

 どころか、水面にも、誰の瞳にも、私はいない。

 中学生の頃は自分のそれが無性に不安で、眠れなくなったり、学校を休んだりもした。

 高校生になった今も、どうしようもなく怖くなって、時々部屋の隅で涙を流す。

 まるで、自分が存在してはいけないような気がして、居場所が無いように感じて、不安で不安でしょうがなかった。怖くて怖くて仕方がなかった。

 熱い滴が頬を伝う。

 なら、今私が涙しているのは何故だろう?

 不安だからだろうか?

 怖いからだろうか?

 私がぺたぺたと自分の顔を触ると、私の前にいる彼女も同じように顔を撫でた。

 まるで、鏡写しみたいに。

 私は今、突飛なことを考えている。

 常識的にあり得ないことを考えている。

 暗闇がそう錯覚させたのだろうか?

 月明かりが私をおかしくしたのだろうか?

 それとも、あの『事件』が私の中の歯車を狂わせてしまったのだろうか?


 彼女は私だった。

 あるいは、私は彼女だった。


 私には、彼女が、自分と同じ顔をしているようにしか見えなかったのだ。

 自分の顔を見たことがない。それなのに、私の疑問はいつの間にか確信に変わっていた。


 鏡よ鏡、私はだあれ?

 その答えが、私の目の前にいた。

「鏡よ鏡、私はお前だ」

 目の前の彼女はそう言った。


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