秋には秋刀魚の塩焼きと焼き茄子がええ。
秋の夜長、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
深夜にお腹が空いて冷蔵庫を開けてしまった経験がある方に、ぜひ捧げたいお話です。
どうぞ肩の力を抜いてお楽しみください。
秋の夜は長い。じつに長い。ぼう、っと天井を見詰めていても、少しも時間が立たない。1時間経過したかと思って時計を見ても、三十分しか経ってないことも多い。
それでも寝返りを何度も何度も打ちながら、眠れぬ時間を過ごす。眠れないからといって眠らずに過ごせば、翌日の脳のパフォーマンスが非常に劣悪になる。
長い!。
深夜2時も回るとおなかも空腹を訴えてくる。さて、冷蔵庫の中に何か食料品はなかったかしら?
抜き足差し足忍び足の体でキッチンへと向かう。
冷蔵庫のドアを開けると、果たして生の秋刀魚2尾とお那須が2個。何故こんな微妙な品目がこの数だけ残っていたのかは、自分でもわからなかった。
しかもとまちらも、ただ焼くだけ調理と共通しているではないか!これはチャンス(?)だ。
秋の代表選手 とも言える 秋刀魚と秋の象徴、秋の王様とされるなすび。この両者が揃えばもう他に何もいらないのではないのだろうか、何も太刀打ちできないのではなかろうか?
深夜2時半、静まり返ったキッチンでひとり、魚焼きグリルに点火する。青い炎がメラメラと立ち上り、真夜中の背徳的な宴が幕を開けた。
秋刀魚に塩をパラパラと振りかけ、グリルの網へと横たえる。隣のフライパンでは、切れ目を入れたお那須様がジュウジュウと油を吸いながら身をよじらせている。やがて香ばしい脂の匂いと焦げた醤油の香りが狭いキッチンを満たし始めると、私の胃袋は「待ってました!」とばかりに盛大な鳴き声をあげた。
ジューシーに焼き上がった秋刀魚の皮に箸を突き立て、脂の乗った白い身を口へ運ぶ。──うまい。うますぎる。香ばしい塩気と脂の旨味が口いっぱいに広がり、間髪入れずにアツアツの焼き茄子をポン酢と生姜で追いかける。とろけるような茄子の甘みと酸味が脂をサッパリと洗い流し、無限ループの扉が開いた。まさに「秋刀魚×焼き茄子」の最強タッグ前では、真夜中という罪悪感すら最高の調味料に化けるのだ。
気づけば魚の骨と茄子のヘタだけを残し、完璧な満足感とともに私は布団へダイブした。満腹感に満たされた脳は一瞬で覚醒を諦め、私は吸い込まれるように深い眠りについたのだった。
──そして翌朝。ずっしりと重い胃もたれと、部屋中に充満する香ばしすぎる秋刀魚の残り香とともに目を覚ました私は、カレンダーを見て絶句する。今日は年に一度の健康診断、しかも「受診前10時間は絶食」の胃部レントゲン検査の日であった。
秋の夜長と食欲の関係。それは、理性を粉々に打ち砕く悪魔の罠そのものだったのである。
【了】
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
深夜の脂の乗った秋刀魚とジュウジュウ焼けるお茄子……想像しただけで胃袋が刺激されてしまいますが、真夜中の背徳グルメには相応の代償(と翌朝の部屋の匂い)が伴うようです。
皆様も、健診前夜の深夜の宴にはどうかご注意ください。
少しでもクスッと笑っていただけたり、秋刀魚が食べたくなっていただけたら幸いです!




