表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/3

ep.1

とある国の、とある港。

停泊中の中規模旅客船が間もなく出港の時刻を迎えようとしていた。

その旅客船のタラップ近く、まだ年若い一組の男女と言葉を交わす一人の聖職者の姿があった。


「本当に助祭様には感謝申し上げます」

「私たちが結婚できたのは全て助祭様のお力添えのおかげです……!」


男性は感極まった声を出し聖職者に握手を求め、男性のすぐ隣に立つ女性は涙ぐみ、目元にハンカチを当てていた。


「いいえ、私はなにもしておりません。全ては女神様のお導き、そしてお二人の純なる愛の賜物です」


明るく朗らか、曇りのないザ・聖職者スマイル。

それを全面に押し出し、助祭様と呼ばれた聖職者――レティシアは男性の握手に応えた。

同時に、旅客船からタラップの引き上げを告げる汽笛が上がる。


「では、私はこれにて!」


足元に置いていた木製のスーツケースを手に取り、レティシアはタラップを駆けあがる。

乗船後すぐさま船べりに身を乗り出すと、先ほどの男女に向かって手を振った。


「助祭様、どうぞ道中お気をつけて!」

「本当にありがとうございました!」


タラップが上がり、出港を告げる汽笛にかき消されぬよう声を張り上げる男女に、レティシアも負けじと返す。


「お二人に女神ユール・キアナ様の祝福がありますよう! これからもどうか末永くお幸せにー!!」


船が動き出し港を離れていく。

二人の姿が遠くなるまで手を振り――やがて見えなくなった途端、レティシアはその場にしゃがみこんだ。


「ッア――――!!!! もうマジで尊い婚約破棄された悪役令息(公爵家)とそれを支えて無実証明に奔走した幼馴染の伯爵令嬢のカップルとか最高かよ最高だな!? 御令嬢いやもう御夫人か、ぽっちゃりぎみなのがコンプレックスでずっと引きこもっていたのに大好きな幼馴染の無実証明するために頑張っちゃうとかさぁもう健気オブ健気! そりゃ御令息……おっと御主人もときめくよ! 初恋ウェルカムバックだよ!! いやほんと無実の証拠を突きつけたときの御婦人の凛々しさといったら! 立ち会えた奇跡にマジ感謝今日もご飯がウマいです女神様バンザイ。なのにぽっちゃり気にしてそのあと発展しないんだからジレンマだったよねどう見たって御主人も意識してるしむしろ昔から御主人はぽっちゃりをかわいいって言ってたんだから信じて胸に飛び込めよ! ぽっちゃりはステータスだろなにあなたが幸せになってくれたらそれでいいのって身を引こうとしてんの早よ結婚しろ! いやもう結婚してるわつーか私が式執ったわやだもう末永く爆発して!!」


ここまで、ほぼ息継ぎなしのレティシアの独り言である。

そしてブツブツと呟きながらも、その手は懐から取り出したノートに淀みなく先ほど港で別れた男女の馴れ初めから結婚に至るまでの経緯を漏れなく書き記している。


「それにしても我ながら良いお式だった」


御婦人どちゃくそ可愛かったなァ、と幸福に満ちた溜息と呟きがレティシアの口からこぼれ出る。

先ほどの男女――公爵家令息と伯爵家令嬢にして現在は次期公爵夫妻――の結婚式を執り行ったのはレティシアで、式当日中幸せそうに笑う二人の笑顔を思い出してはレティシアの頬もだらしなく緩む。


「見守るだけじゃなく結婚まで導けるなんて……天職だよねぇ」


本当、生まれ変わってよかった。


意図せずにトーンを落とした呟きと共にノートを閉じる。

レティシアは、前世を持つ転生者であった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ