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鬼女  作者: I
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鬼女

鬼女が公家の血を求めて、京都から東京へ。セーマンたちも鬼女を追うが、鬼女は人の皮を着込み、邪悪な氣を遮断していた。

 「まりちゃんのアーマーには、武器装備はしていないから。はい、これね!」

 「えーっ! なんで武器がないの?」

 「今、霊魂の研究中やが、ips細胞を利用して片の細胞を電氣配列で六芒星を形成させた。計算上では、超能力を増大できる筈。ねーちゃん、得意の念じることで物體化する能力を使えば、いろんな神剣を呼び使えると思うのやけど……どないやろ? 試してくれるかー。着替えてきいやー」

 麻理亜は制服とペンダントを受け取り、隣の蔵で着替えに行った。

 「じゃー。着替えてくるね」

 「セーちゃん、儂にはないのかー」

 「じぃーのもあるよ。ほれ! これっ」

 セーマンは、祖父にジャットを手渡すと同時に交換条件を云った。

 「はい、その変わり研究資金のほう、お願いたす。越後屋」

 「誰が、越後屋やねん! お前は、悪代官かー。分かった。分かった」

 泰明は、ジャケットを着て念じた。

 「なんじこりゃー。時代錯誤も甚だしいわっ!」

 泰明の姿は、平安貴族の冬の正装である冠直衣の姿に変身した。そんな祖父が孫に叱っている時。麻理亜が制服に着替えて蔵に戻ってきた。

 「ふっ。じいちゃん、何それ、可笑しい! 平安貴族見たい」

 「セーマン! こんなカッコで戦えるかー。裾を踏んで躓くやろ。それに、目立つやろーがぁー」

 「そうで、おじゃるかっ! 夏になったら特殊アーマーが、判断して夏用の烏帽子直衣に衣更えするのにー。じぃー、もう一回念じてみー」

 祖父は、念じアーマーを変化てした。

 「セーマン、なんじこりゃー」

 セーマンは、法螺貝を吹いていた。

  ボ~ボー。

 「敵は、本能寺にあり」

 「俺は、明智光秀か!」

 「強そうやん! 兜の桔梗紋もバッチリ、輝いているやん」

 そこには、戦国時代の武将、明智光秀の鎧兜アーマーを着込んだ泰明の姿があった。

 「こんな、カッコで外に出れるか!」

 「そうやでー、セーちゃん。戦国時代と違うでー」

 泰明は変化を解き、ジャケットを脱ぎセーマンに投げつけた。

 「記録しなおし、お前のようなカッコのいいアーマーにせよ。いいなー。それまで、研究資金ださへんでー。お前が開発して政府や企業の契約を身を繰るよ」

 「へぇー、折角造ったのにー。半分は、アーマーが判断して形を形成しているのに、面倒やなぁー。んー難儀やなぁっ……。分かった。何とか、やり直すわー。時間かかるでー。俺も忙しいねん」(半分は、人間の記憶なのに! けど、一體いつの時代の人なんや?!)

 セーマンは、祖父・泰明の正體は、まだ知っていなかった。唯一、正體を知っているのは、母のダイアナと麻理亜だけであった。

 「時間かかっても、いいから作り直せ!」

 「我ままな、じいさんやなぁー」

 泰明は、麻理亜の方を向き云った。

 「麻理亜は、試したのか」

 「まだ。じゃー、念じるね!」

 (何か、嫌な予感。第一変化!)

 麻理亜は念じて、制服は変化した。白い粒子に包まれ、妖艶な姿を露わになって現れた。

 「ちょっと! 何これ、趣味悪いし」

 祖父とセーマンは口を揃えていった。

 「イイジャン!」

 「ちょっと! 何これ、體のラインが…。恥ずかしいわぁー」

 「麻理亜も、大人になったなー」

 「じいちゃん、やらしい目で見ないでくれるー」

 「じぃー。鼻の下が伸びているぞ。エロじじぃー」

 麻理亜の第一変身は、全身の大部分が白で覆われていた。内側の特殊インナーは白いタイツで覆われて、體のラインにフィットとして滅り張りのあるボディーラインが分かった。外側のアーマーには、肩当から腕、指の先に掛けて装着し金色に輝き、その特殊素材が腕の筋力と上半身を強化していた。下半身のアーマーは、上半身と同じで金色に輝くTバックのような下着を装着し、特殊素材が脚力を強化した。頭部は、白い兜を装着し、色ぽい口元だけが見えていた。額には、金色の六芒星が輝きあり麻理亜の特殊な能力を増幅できた。セーマンと同様にスピードを重視している為に、動きやすい特殊仕様になっている。

 (第二変化!)

 第二変身は、スピードと力を重視して覆面が銀に輝く兜に変わり、外側のアーマーが、肩から指先までにかけて金色から銀色に変化し、特殊素材で強化され腹部から足先まで銀の特殊素材で覆われ、衝撃から身を守もことと筋肉を限界まで引き上げ超人的な動きができた。銀に輝く光と静寂な白は、不思議な色をしており、白の中の白で清白とも云うおうか、麻理亜の黒髪が映え葛葉姫、白狐のように神秘な輝きを放ち清麗であった。

 セーマンは、麻理亜の武器仕様は、装備しなかった。念を物體化できる力をもっている妖術を額の六芒星が、妖術を高め物體化にする力も倍増した。能力の能力増幅装置は、セーマンの科学と脳科学の力に祖父の能力の融合で神通力・能力増幅装置は完成し作り上げた。だが、ヒヒイロカネの組織と人間の脳における影響は不明であった。特殊スーツの力で、神々の武器を使いこなせ両大腿部には、赤、白、青、黄、黒の龍が五芒星を形成しており龍たちが、戦いに応じて武器に変化できた。

 兜には量子Aiが搭載しており、相手によって武器を選んでくれた。

 「あっそうや! 安倍四天王の刀を武器に加えよう」

 セーマンは、安倍家の秘剣であり安倍四天王が使っていた神剣をセーマンの研究室に運んでいた。その、日本刀を四つの透明のボックスの中に夫々を入れ、スイッチを押すとボックスの中が、光輝き日本刀が粒子に変わると、麻理亜のアーマーに転送された。

 「まりちゃん! 最近、サイコパスも息を潜めて動いていないから、今のうちに使いこなせるように練習しょうかぁー。暗なったら鞍馬山で特訓するでー」

 (第三変化)

 兜の量子Aiが説明した。

 《第三変化は、スビート、力が倍増し魔力も倍増できます。あらゆる力が倍増する変わりに筋肉に疲労がかかり、今の體力には三分が限界であり、第三変化に體をなれるようにトレーニングが必要である》


 その日の夕方。一番星の金星が輝き始め出した頃。

 鞍馬山で訓練が始まった。

 その日から、夜な夜な鞍馬の山からの金属音。

 體をぶつけ合う衝撃波。

 スピードが増す度に、音速に近づき京の闇に響き渡っていた。京の人々は、常識では考えられない奇怪な事件が続き、新たな魑魅魍魎が、鞍馬の山で暴れていると人々は震えていた。

 《警告域まで、5・4・3……》

 (もう、少しで……始めて、まりちゃんに勝てるのに…)

 《警告! 警告! 直ちに変化を解除せよ》

 (もう、少しだが……。心拍数が限界か…)

 《バイタル。異常! バイタル。異常! 変身解除》

 「ス、ス、ストップ!」

 アーマーの安全装置が作動し、第三変化からインナーに解除し生命を維持していた。

 「真剣白刃取り! あれ!」

 麻理亜は神剣を振り下ろし、セーマンは白刃取りをしたが、間に合わずに擦り抜けたが、セーマンの額に髪一重でピタッと止まった。

 「何よ。急に! 吃驚するじゃない」

 「ハァー、ハァー、ハァー。あかん! これ以上、動いたら體が潰れる!」

 セーマンは両膝を地面に付け、左足が痙攣して動けなかっていた。特殊アーマーでの戦闘時間は、運動量によるが、長くて五分が限界であった。

 「今日の練習は、ここまでにしときましょう。うちに帰ろう」

 「う、うん」

 セーマンは、麻理亜の息が切れていないのと五分経過していたが、俊敏に動きに不思議に思っていた。

 (なんでや?……)

 セーマンは特殊アーマーに、内蔵している量子Aiで、麻理亜のバイタルチェックをしていた。

 (脈拍も心電図も軽く運動した時の数値。筋肉にも負担がかかっていない。疲労物質も蓄積していない……。あかん、全然わからへん??)

 安全装置が働き、筋肉に負担を掛けないレベルに後退したが、変身した儘のセーマンにとって、筋肉が肥大した儘であり、筋肉に負担が大きく溜まらずに変身を解除した。そして、セーマンの體の周りには、そよ風が吹き火照った體には快かった。風の精が集まり、體を回復させていた。麻理亜の能力は凄く、最初のうちは、筋肉に負担が掛かり筋肉痛で悩まされたが、セーマンが開発した筋肉の回復と疲労物質をとるアミノ酸を摂取してからは、能力を上げていた。が、神通力・能力増殖装置も麻理亜の中に隠れていた神通力を引き上げ、麻理亜の神氣も妖氣も強化してから能力が上げていた。麻理亜は第三変化のとき魔力で回復魔術を使いながら第三変化を長くつかえた。セーマンも神通力の研究し、神通力は未だ未だ未知数である脳にあると考えていた。そして、三日で特殊アーマーに體が慣れることができたが、限界時間は未だ未だ短かった。訓練により筋肉が強化されて、姉弟とも筋肉質になっていた。人の為に、鬼女と戦う為に訓練していたが、美という徳が麻理亜に与えられ、セーマンもギリシャ彫刻のような肉体美になっていた。


 次の早朝に泰明は、麻理亜を連れて再び広隆寺に行った。本堂の真下にある隠し地下室には、封印された鬼女の遺體が保管されていた。鬼女の體には八百年間、閉じ込められた魂魄は、朱塗りの封印矢と銀の破魔矢が、誰かの手によって打ち破られていた。歴史の記憶から消された鬼女伝説を知る何者かが、宿り主がいた銀の破魔矢は盗まれて、鬼女の額から聖矢を抜かれ床に落ちていた。その落ちていた聖矢を広い上げた麻理亜は、サイコメトリーを行ない脳内の中に抜いた者の未来と過去のビジョンが流れるように入ってきた。

 ビジョンには、若い女の姿があった。その者は、茂子と性格も人からも苛められていた。自分の恨みを成就する為に、自分を犠牲に體を差し出した。鬼と茂子の魂魄を自分の體の中に憑依させた。若い女は、鬼女の封印を抜いた為に、鬼女の魂魄が肉体を求めて、若い女の宿り主が子宮に憑依して命の火が消された。そして、自ら怨霊となった。女は、医学的には死亡していた。怨霊となった若い女は、恨みが成就するまで自分の肉体の背後にいた。恋の縺れの恨みを晴らした怨霊は、肉体から離れて怨霊は地獄に落とされていた。肉体が腐敗するまで、鬼女の魂魄は取り憑き、人から人へと憑依していたビジョンが麻理亜には見えていた。

 (それで、一回目の犯行と二回目以降の犯行が違うのか!)

 麻理亜は矢を泰明に渡して、ビジョンを話した。

 「なるほどのう。死人に憑依した鬼族なら魔王尊の祠の中から妖刀を手にできる!」

 この数日間、鬼女は深い闇に息を潜めていたが、欲求が溜まり再び犯行に及んだ。場所は、警備強化した京都でなく、明治維新以降、江戸に皇居を移した。東京で事件は起きた。

 大都会東京で次々と、公家を先祖に持つ女性が狙われた。都心は混乱となり、夜になると誰も出歩く者はいなくなり、経済にも影響を与えた。警視庁も厳重警備を行なっていたが、人間の力で捕えられる者ではなかった。そして、被害は全国に広がり公家の血を引く者を次々と襲われ、日本中を恐怖に陥れた。苗字だけでは分からないこともあり、公家の御落胤や公家の血を引く者も多くおり、歴史上では、戦で死んだとされている天皇や公家が隠れ里で生き延び、豪族として名を変え子孫繁栄していることもあり、関係がないと思っていた者までもが襲われた。後に、被害にあった者の先祖を遡ると、公家の血筋と分かることが多く、事件は難航していた。警察も姉弟も、お手上げ状態で警察に対する暴動が起こらないか政府も姉弟も心配していた。

 殺戮は、日に日に残虐性を増し、誰にも氣づかれず。誰にも知らず間に、斬りられ傷口から腐敗が始まり病院で狂い死ぬ。體の血は、一滴も無くなり干からびた抜け殻になる。魂魄は妖刀の一部になり、怨霊の仲間にさせられていた。


 そして、再び京都で事件が起こった。一カ月も絶たぬまに、京都だけで被害者数、三十人を超え、全国では五十人の若い娘が襲われた。府警は、公家の血を引く者を使い囮捜査に踏み込んだ。

 三組の男女の警官を京都の町並を歩かせた。

 「これから囮捜査に入る! 一班は、前に待機! 二班は、に待機! 三班は、烏丸三条に待機! 以上配置に付け!」

 午前0時。

 三班の囮捜査官。警部補が、人の氣配を感じて本部と連絡しながらパートナーの警部と共に烏丸三条の交差点から東に入った。

 「どうした。園警部補?」

 「人の氣配が…」

 《三班の園です。烏丸三条の交差点を東に移動します》

 佐竹警部と園警部補は、銃に手をかけ三条通りを東に入り烏丸三条から近くにある文化博物館の壁に向かって、華奢な女性が路を背に蹲っているのを発見した。園と佐伯は銃から手を離し、華奢な女性に近づき、女の背中に手を当てて声を掛けた。佐竹は、園に背を向け離れたところで本部に報告をしていた。

 「どうか、なされたのですかー」

 その女性が、園の手を掴み取り、いきなり斬り掛かり園の首を一文字に斬った。その斬り口は鋭く首は付いていたが、何をされたが園は全く氣づかずに、呆然と女の方を見ていた。

 「えっ?」

 女の顔は、見る見る醜い鬼女の形相になり、華奢な體つきから服が破れ、體は3メートルほどの高さになり、園は女を震えながら見上げた。

 「公家の匂いがする。お前の血を戴く!」

  ギヤャ~

 園は、見る見る変わる女の姿に、悲鳴を上げ一氣に血圧が上がった。そして、鬼女が持っている懐刀を見て、園は斬り付けられたことに氣づいた。

 「いやー」

 園は、発狂し更に血圧が上がり、首からは大量の血が吹き上がり、首は地面に落ち転がった。

 「園!」

 園の體は、鬼女に掴み掛かっていたが、直ぐに膝から倒れ込み、吹き上がる血飛沫が鬼女に掛かった。

 「公家の血は、美味じゃ! 美味じゃ!」

 鬼女は、前々から園警部補を狙っていた。

 「ばっ、化物!」

 佐竹が、一回目の警告発射したが、鬼女は止まらずに佐竹に剣先を向けて向かってきた。

 「止まれ!」

 佐竹は、鬼女に向けて残りの銃弾を発砲したが、俊敏な動きで悉く避けられた。

 拳銃の音に、付近を警戒していた十人の刑事たちが集まり、鬼女に向けて一斉に発砲した。

 「なんだ。こいつは……。人間か!?」

 十人分の乾いた銃声が、ビル群に反響して鳴り響いていた。

 鬼女の俊敏性は、人間の目で追えるスピードでなく、銃弾を全部使いきったが、偶然にも最後の一発の銃弾が、壁に跳返り犯人のこめかみに命中して、その場に倒れた。

 「丸弾で、助かった」

 「何だ。この化物は?」

 刑事たちが、息絶えようとしている鬼女に近づいてきた。

 「何だ。この醜い生き物は?」

 「醜いだと。×○※◎□……」

 鬼女は、日本語でない刑事たちにも聞いたことのない意味不明な言葉を残し息絶えて、體は縮み始め人の姿に戻ったが遺體は腐敗が進んでおり身元も分からず異臭を放ち、肉は腐り、骨が見え、蛆が湧いていた。後に、DNA鑑定で、東京で二週間前に行方不明になった公家の血を引く娘であった。

 警察は、現場検証を行ない。園警部補の遺體を霊安室に保管していた。だが、三時間後に家族が引き取りに来たときには、園警部補の遺體が霊安室からなくなっていた。

              

 場所は、京都府警本部。

 警視庁と合同本部司令室。

 捜査権は、警視庁に移った。他の県警や府警からもベテラン刑事たちが、応援に駆け付けていた。

 「被疑者死亡で、この事件は終了とする。解散」

 警官たちは、椅子から立ち事件解決に安堵な顔をしていた。

 「佐伯巡査。遺留品を保管場所に持っていって!」

 若手の佐伯巡査が、遺留品の懐刀を保管場所に持っていった。

 「これが、凶器か!」

 佐伯は、誰もいない保管場所で、懐刀を見ていた。ビニール袋の上からであったが、懐刀を持った途端に彼の顔つきが変わった。ビニール袋の中から懐刀を取り出し、背中側のベルトに差し込み背広で隠し自分の部署に戻った。

 「佐伯巡査。今日は、もう帰っていいぞ。ご苦労さん!」

 「はい……」

 鬼女の脂肪解剖が行われ、陽子助手の女性の子宮の中に宿り主が寄生していた。

 佐伯の声は、いつもの声より太く誰の目からも様子が変で、無表情で目が虚ろであった。佐伯は帰ることなく、その場に俯き立ち止まっていた。何かに誘われる儘に、懐刀の鞘を抜くと虚ろな表情から鬼の形相のような顔つきになり、氣が狂ったように発狂し棚を薙ぎ倒し、ドアを破壊し、部署から叫びながら飛び出ていった。

 廊下を走り叫びながら、右に刀、左に銃を持ち物凄い形相で駆け走り、その形相に同僚たちは、のけ反り誰も制止する者はいなかった。

 「佐伯。どうした!」

 同期の巡査が、佐伯の前に立ち塞がった。

 佐伯の體は細身の體つきであったが、腕は急激に異常発達して太くなった。背広のスリーブが破れ、太く剛毛に覆われた毛むくじゃらの腕が露になっていた。氣が狂った佐伯は、立ち塞がった同僚の巡査に向かって刀を振り下ろして、巡査の左肩から左脇腹に向けて切り落とし、辺りに血飛沫が飛び散り佐伯の顔に返り血がかかっていた。

 「人の血がこんなに、美味しいとは、ケケケッ…」

 長い舌で、血を美味しそうに嘗めていた。

 「止まれ。佐伯巡査!」

 連続殺人事件の捜査官も、まだ府警本部に残っており銃を携帯している警官たちが、佐伯に向けて一斉に発砲し全身に銃弾を浴びた。が、佐伯は體中に無数の銃弾をうけたにも関わらず、警官たちに銃を向け銃で撃つ返し、懐刀で斬りつけ致命傷ほどの傷を負わせると、四階の窓ガラスを破り飛び、身軽に着地すると人間のスピードでない速さで逃走した。京都府警は、全動員して佐伯の捜索にあたった。


 そして、佐伯が行方不明になってから一時間後。

 佐伯巡査は福家陽子に懐刀を渡すと佐伯巡査は、その場に倒れ込んだ。

 時刻は、午前6時を回っていたが、未だ未だ寒いこの時期は、まだ、辺りは暗かった。

 そんな、夜が開けない暗闇の中に、福家が、寂しく京都の前で立っていた。その女は、霊安室からいなくなった園警部補の残り血を飲み力を漲っていた。園の魂魄は妖刀の一部になり、福家の肉体は鬼女と茂子に憑依されていた。鬼女は、死に装束の白い着物姿で、血の氣のない青い顔をしていた。、新たな肉体に慣れていないのか、動きもぎこちない動きで、歩行の動きも膝の曲げず小刻みに歩いた。

 「この體…。まだ血が足りぬ、ほかの體を見つけないと……。體が、持たない」

 鬼女は、夜が開けるまでに新たな體を求めて消え去った。佐伯は一時間後、その京都大宮御所の近くになる。御所の南池に浮いているところを職員に発見された。佐伯の持ち出した懐刀は、発見されなかった。警察は、佐伯の事件は別の事件として発表し、連続殺人事件は、解決したと発表することなった。

 警察は、記者会見で連続通り魔殺人は、解決したと発表をし、佐伯の事件を謝罪したが、懐刀が紛失しなくなったことと、園警部補の遺體が無くなったことも、隠し発表しなかった。


 「桔梗ー、学校に行くよ」

 「いってきま~す」

 母親が、笑顔で云った。

 「おはようおかえりー」

 セーマンは、登校の途中に京阪電車の駅の売店で新聞を買い。一面が連続殺人事件解決の見出しであった。セーマンは電車の中で、事件の記事を読んでいた。

 「まりちゃん。事件解決したなー」

 「セーちゃん。何云っているのよ。まだ終わっていないわー」

 「そうだよ、にぃーちゃん」

 桔梗は、自慢そうにセーマンに説明をした。

 「あんなぁー。この事件はなぁ、犯人の體が腐敗して使い物にならないから捨てただけでー。京都大学法医学室の福家陽子に宿り主が寄生し、佐伯巡査は福家に妖刀を渡し佐伯巡査は遺體として発見された。まだ、被害者が出ている筈やで。新しい體を求めて、次から次へと新しい肉体を求めて憑依したんやでぇー。その殺された魂は、妖刀の一部になって、怨霊になって、これからも人を襲い続ける」

 「警官が被害にあったことは、書いてあるが、遺體が無くなったとは書いてないでー」

 「隠蔽して隠しているんや。大人が、やりそうなことや」と桔梗がいつた。

 「話を戻すが、人を襲い続くって、誰かに聞いたんかー」

 「うん、お姫様見たいな格好をしている。綺麗な人に聞いた」

 「桔梗、名前聞いたの?」

 「うん。明子と云っていたよ」

 麻理亜は、驚いた

 「それって三条明子じゃない!」

 「そこまで、聞いていいへんけどなぁ、『あなたの先祖に、お世話になった者です』て云っていたよ」

 「やっぱり、三条明子やー。でも、事件は続くわ」

 京阪電車に乗っている乗客が、怪奇事件を詳しくしている。姉弟たちの話しに、耳を大きくして聞く者もいれば、歴史に詳しく、名探偵並みの推理に納得する者や制服を見て、頭の賢い学校の者と話しに頷く者多かったが、中には摩訶不思議な話しに避けるような目で見ている者もいた。


 授業終了のチャイムが鳴り。

 授業が終わり、母の迎えで桔梗は、先に帰っていた。母は英国の魔女の生き残りであり神秘的な力の持ちで、この事件は、まだ解決していないと分かっており、セーマンの大怪我も麻理亜の神通力も桔梗の神通力も知っていたが、公家でもあり安倍家の血を引く子供たちを心配していた。

 母と桔梗が自宅に着くと、祖父にお客がきていた。

 「では、お願いします」

 二人の客人は、入れ違いに帰っていった。

 「御構いも無く、すみません」

 母の神眼が、二人の客人の體を透視した。

 (警察庁公安部と京都宮内庁が、なぜ?)

 桔梗は、家に帰ると日課である。子犬のの靈犬源太と一緒に散歩に出かけた。

 〈! 散歩に行くよ。調べたいことがあるんやぁ。ついておいでー〉

 「おかあさん。源太と散歩にいってきます」

 「桔梗。暗くなるまで帰ってくるのよ。源太、何あったら頼むわね」

  ワン!

 源太は、霊能力犬で人間と神通力で話せた。

 〈もうー。源太ってー、和多志は女よー〉

 桔梗は、揶揄い。何回も連呼して呼んだ。

 「源太! 源太! 源太!」

 源太は、いつものことで諦めていた。桔梗と源太は、同じ時代を輪廻して支え合っている泰忠と変化童子であった。桔梗の記憶には、泰忠の記憶はないが、源太の記憶には、時代時代に輪廻した記憶は持っていた。

 「こっち! 源太!」

 桔梗は、無理矢理に源太を引っ張り、源太の首輪が締まり咽る源太。

   がぁーっ がぁーっ

 〈本当に、無茶する子ねー。飼い主にに似るというが、誰に似たのや。子わー〉

 「源太! こっちー」

   がぁーっ

 (本当に、憎たらしいガキねー。本当に、雅子様が輪廻した姿かね?)

 桔梗は、能力で源太に話した。

 〈五月蠅いわー。この化け犬! 文句を云うなら『』にするわよ〉

 〈何それ、時代遅れの名前。ダッセーの!〉

 〈文句云うから、今日から巖助ねー。決定!〉

 〈勝手に決めないでくれる。本当に頭にくる子ね!〉

 桔梗は、家から大分離れた事件現場のの現場にいた。

 〈巖助ー、ここが昨日あった。殺人現場やー。巖助、何か感じる〉

 〈被害者の魂は、いないなぁ!〉

 〈地縛霊になっていると思ったけど、やっぱり明子さんの云う通り妖刀の吸い込まれたのかぁー〉

 桔梗は、キョロキョロと見回して、近くにいた地縛霊を見つけた。

 〈巖助! あの地縛霊に聞こか?〉

 〈桔梗、この前みたいに声を出さずに、能力を使ってよ。恥ずかしいのよ!〉

 桔梗は、神通力で地縛霊と話し込み、氣づかずうちに、ついつい声を出てしまう。歩行者には、独云を云っている変な子として見られることが多かった。

 〈絶対に、嫌がらせやー〉

 桔梗本人は、声を出していることに、全く氣づいていなかった。

 源太は諦めていた。

 (あーあ。恥ずかしい…)

 桔梗は、地縛霊や浮遊霊に話し聞き、情報のおに成仏させ、あの世に帰っていった。桔梗と巖助は、情報収集をして自宅に戻る途中に血の色に染まった。白い着物の寝巻を着込んだ女が、桔梗の遠く前方から苦しそうな足を引き摺りながら、その者は、首はなく。手で自分の乱れた髪を掴み。首をぶら下げていた。その者は、近づき桔梗をぶら下げた首の目で睨んでいた。

 〈桔梗。ガンを飛ばしているわよ。恨みの念が、針のように刺さるわ〉

 源太は、身構え唸りだしたが、桔梗は女に近づいた。

 〈もしかして、あの怨霊に聞くつもりや、ないやろね!〉

 「あっ! あの女の人に聞こうーとっ」

 源太は、吃驚して桔梗の顔を見て云った。

 〈冗談やろー。怨念が針のように刺さり痛いやん。取り憑かれるぞぉー。やめなぁー!〉

 桔梗はのことを巖助聞かずに、怨霊に向かって歩きだした。巖助は、地面に爪を立て、抵抗をした。

 〈桔梗。あの嫌な感覚が分からないのかー。冗談でない。桔梗、行くなら一人で行ってよー〉

 桔梗は、渾身の力で巖助を引っ張った。

   ガリカリガリガリ

 〈いやだぁーーーーーーーーーっ。輪廻を繰り返し、八百年以上の記憶があるが、あんな怨念に満ちた感覚は、初めてやー。あれは、怨霊や。いややーーーーーーっ〉

 歩行者は、犬が只、駄々を捏ねていると微笑んで見ていた。巖助は神通力で笑っている歩行者に話した。

 〈おい。お前、何が可笑しい。見てないで、だずげでー! 行きたくないーーーーーーーーーーっ〉

 「犬か喋った!」

 歩行者は驚いて、その場から避けるように逃げて行った。

 「ほら! 巖助。行くでぇー」

 怨霊も相手から近づいてくるのが初めてで、その場に止まり桔梗の行動を見ていた。

 「巖助ぇー」

 首が締まり苦しいのに、恐怖のあまり抵抗を続けた。

  がぁー がぁー

 〈いややぁーーーーーーーーーーっ〉

 源太は、爪を立て、足を突っ張り抵抗を続けた。

  ガリカリガリガリ

 桔梗は、源太の抵抗に根氣負けをして、電柱に縛り付けて桔梗一人で会いに行った。

 〈しゃーないなぁー。ここに、いてて! 会ってくるわー〉

 〈無茶は、やめなぁってー!〉

 〈だって! あの女の人…。自分の死を悟っているが、何か未練があって、この世に止まっている。それを、聞きに行く。力になれるなら力になる。じゃー。ここで待っててな!〉

 源太は、心配そうに桔梗を見ていた。

 (この子! 能力は、成長しているが、大丈夫か?)

 桔梗は、女の側によりにっこり笑って、ぶら下げている女の顔を同じ目線で見ていた。女の體からは、血が滴り落ちて口は糸で縫われ口が両横に裂かれ裂かれたところから涎が垂れていた。女は、顔を其の儘に眼を見開き桔梗を見ていた。

 桔梗にかかれば、霊も友達である。

 〈おねぇーちゃん! どうして、この世に彷徨っているの?〉

 幽霊は、何も語らず。黙っていた。

 〈………〉

 桔梗は、無邪氣な顔で怨霊を見て喋るのを待っていた。

 〈………。あの世に……。あの世に行きたい……が…。罪を受け入れたいが……。呪いを掛けられて、この世を彷徨っている。助けてほしい。あなたは、安倍一族の者でしょう。鬼女を倒して…。倒せば鬼女に殺された者は、全て、あの世に行ける。八百年、彷徨っている〉

 平家の怨霊達は、息が荒くなり発狂して凄い勢いで桔梗の周りを浮遊した。

 〈おねぇーちゃん。お前も公家の血を受け継いでいるな。良子、この娘に憑依せよ〉

 桔梗は、まだ呪術を全く学んでいなく、唯一知っている言葉を心から念じ手を合わせた。

 〈南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏〉

 桔梗は、何回も何回も心の中で唱える度に、桔梗の背後に後光が現れ、小さいながらも阿弥陀如来が鎮座していた。浮遊している怨霊は、桔梗の唱える言葉に心を開き、再び桔梗の前に立った。

 〈暖かい光!〉

 そこには、怨霊の姿ではなく、十二単を纏い。首も繋がった。輝いていた姫の頃の姿に変わたっていた。だが、鬼女の呪いが、この世に止まっていた。

 〈鬼女が、この世から消滅し、地獄に落ちるまで……。元の姿に戻っても、鬼女の呪いを解くか、鬼女を地獄に落ちないかぎり、この世に彷徨うことになる……。あの鬼女を倒して……。おねがい……〉というと姿を消した。

 「巖助。帰ろう」

 自宅に戻り、散歩で起きた出来事を麻理亜に話した。

 日は、沈み。お腹が空いた源太が、ワンワンと吠えていた。

 〈腹減った。メシ喰わせ!〉ワンワン!

 〈腹減った。メシ喰わせ!〉ワンワン!

 「うるさい、巖助! はい、ごはん」

 桔梗が、ごはんを出した。

 「待て!」

 〈早く。よし、と云え! 桔梗!〉

 「待て!」

 桔梗は、焦らして中々云わなかった。

 「よし…! と云ったたら、やでー」

 源太は、餌に飛びかかった。

 「待て!巖助」

 源太は、涎を垂れながら後退りをしていた。

 〈桔梗! 早う食わせろ。お腹が、空いた。我慢ができない! いい匂いがする。たまらんーー〉

 桔梗は、十分間も許可せずに揶揄っていた。源太は、餌を前に嗅覚が敏感になり、今か今かと待っていた。

 「桔梗。何してんのう。可哀想に!」

 庭に出てきた麻理亜が、見兼ねて云った。

 「よし! 食べていいよ!」

 源太は、美味しそうに食べ出した。

 「あーっ。まりちゃん。巖助をからかうが面白いのに!」

 「毎日毎日。可愛そうに。それに、いつから巖助になったのよー!」

 「今日から!。和多志を下に見ているからなめているから巖助にした」

 桔梗は、にっこり笑って食卓に食事の手伝いに戻った。

 麻理亜は、源太の食べる姿を見ていた。

 〈源太、また変な名前を付けられたのねー〉

 〈ほんと、むかつく子よ。桔梗の方が、霊格が高いから何も出来ないが、これでも和多志は、稲荷神の使いの、お狐の血を引く霊犬よ。本当に馬鹿にしてー〉

 〈ごめんねー〉

 「まりちゃん、セーちゃん、ごはんの用意できたよー」

 麻理亜とセーマンは、食事を済ませると自分の部屋に戻り特殊アーマーは體に負担がありインナーを装着して京の町を見守った。セーマンは、屋根から屋根へと軽々と飛び移り京都タワーの天辺で、麻理亜は空を一蹴りすれば空中を飛ぶことができ都ホテルの屋上で監視をしていた。二人共、京都府内を監視しており、鬼女が出現した現場に、十五分内で到着できる場所で、京都の中で高い建物であるところに陣取っていた。セーマンは、神通力に目覚めていない為に、離れた所でも通話できる通信機を搭載していた。

 《まりちゃん。警察の発表を信じて、今日は人が多いなっ!》

 《えー。被害者が、でなければいいけど》

 人々は、警察の発表を信じた人々は、夜に出歩き町に活氣が戻り、男も女も夜の町に酔いしれていた。

 その日は、何も起こらずに、夜は深けて周り回って、太陽が京の町を照らし、鳥たちが美しい声で囀り、清々しい朝を迎えた。

 「あぁ~、まりちゃん!」

 セーマンは、睡眠時間二時間程で起きてきた。

 「おはようー。珍しいく早いやん」

 「あっ、そうや~。今日は、日曜や~。二度寝しよ~。それからアーマーに疲労があるから筋肉の疲労物質の排除の薬と超人的な能力向上の薬が必要だ」

 セーマンは、再び蒲団の中に入り幸せな顔をして寝入った。

 (二度寝、幸せや! 贅沢やっ……)

 麻理亜もセーマンも寝不足で、疲労はピークに達していたが、日曜日で昼頃まで寝ていた。


 あの囮捜査の事件から四日後に、鬼女が闇から動き出した。

 その日の夜。霧のような雨が、太陽が傾くころから降りだし、街頭の光が霧と風が混じり合い。渦と渦が巻き上げ、その渦が、鬼が口開け笑っているようにも見えた。

  ワオォー  ワオォー 

 霊犬・源太が、妖氣を感じ取り遠吠えを始め出した。その源太の遠吠えを聞いた京都いる犬たちが、続々と遠吠えを始めた。

 セーマンは、特殊能力に備わっていない分、天才的な頭脳で特殊能力を補っていた。自分の配置に付き、黒い全身インナーの姿で監視していた。

 頭部全體を覆い尽くすマスクの頬面に装備してあるモニター画面があり、特殊インナーのマスク全體には、量子Aiスーパーコンピューターが内蔵してあった。セーマンの声に反応するように設定してあり、世界のコンピューターを牛耳る力があり、もちろん他国の軍事衛星を遠隔操作して動かすこともできた。その量子Aiスーパーコンピューターを使い日本上空にいる他国の軍事衛星を利用して、上空から京都府内の映像を見ていた。人々は事件が解決したと思い込み、夜遅く女性ひとりで帰宅する者も多かった。セーマンは、ひとりで歩く女性を注目していた。

 (女性のひとり歩きは、あぶないよ。近道するのか! 画面が暗くて見づらいなぁー)

 《コンピューター。サーモグラフィティカメラ、オン。ズーム》

 ひとりの女性が、近道をするのに人氣のない岡崎グランドを横断し始めていた。セーマンは、サーモグラフィティカメラに切り替え女性を見守っていた。

 (俺は金星しか、助けないよ)

 その時に、女性がグランドの中央付近を歩いているときに、明らかに人間の體温ではない。低温の動く者を発見した。セーマンは直ぐに岡崎グランドに韋駄天の如く走り向かった。セーマンは、グランドの監視カメラの映像に切り替えた。

 (ありえない。あの體温なら既に死んでいる。絶対に人間でない。あの鬼ババァか?)

 セーマンは、付けられている女性の顔をアップにした。

 (超美人、めっちゃっ、タイプや! 早く助けな!)

 麻理亜も鬼女の妖氣を察知し、千里眼で岡崎グランドの状況を見ながらグランドへ向かっていた。そして、岡崎グランドの付近にある。神社や稲荷のお稲荷さんから情報がはいった。

 《セーちゃん。岡崎グランドに現れた。向かって!》

 《今。向かっている! まりちゃん。どのくらいで着く?》

 《五秒もあれば、着くわー》

 《俺の方が先に着く。まりちゃん着いたら直ぐに、女性を家まで送ってあげて、あとは俺がやる!》

 《ひとりで、大丈夫なの?》

 《ババァの體は違うが、中身に一緒や。一回、戦ったことがあるから任して》

 二人もと予定より早く着き三秒ほどで、グランドに着いた。姉弟は、鬼女の前方に、立ち塞がった。麻理亜は、若い女性の後ろにつくと変身を解き、制服姿で女性に近づくと声を掛けて、自宅まで女性と一緒に帰った。

 「近くに、友達の家があるのですが、ご一緒しても、よろしいですか?」

 麻理亜は、女性と世間話しをしながらグランドから出ていった。

 (あの、娘からも公家の匂いがする。北白川家の娘も上物だが、それ以上に、あの娘の方が上物で美しい……。悔しい~)

 鬼女は、女性と麻理亜に狙いを絞り、野獣のように構えたときに、麻理亜を守ろうとが、鬼女の體の回りに発生した。

 「小賢しい。妖怪め!」

 鎌鼬は、鬼女の鋭い爪で切り裂かれた。

 「どきなぁー、獲物が逃げるだろ」

 「うるせー、鬼ババァー。鬼退治にきたぜー」

 「その声と、その匂いは、あのときのガキかー。あの傷で生きているとは、氣にいった! あの娘と同じ匂いがする。姉弟か? その力、妖刀の一部になりなぁー」

 鬼女は妖刀を抜くと、どす黒い光を放った。妖刀は、蛇のように動き懐刀から太刀に変化と妖刀が悍しく唸った。

セーマンは太刀の動きに一云いった。

 「きもっ!」

 妖刀の妖氣に、セーマンは全身に鳥肌が出ていた。

 (俺の研究の成果が、どこまで化物に通用するか…?インナーだけで倒せるか)

 「鬼切丸!」

 距離は、五十メートル離れていたが、一飛びでセーマンの間合いに入り飛び掛かってきた。セーマンは、自作の鬼切丸を呼び出し軽々と小枝を振り払うように妖刀を振り払った。

 「鬼切丸とは、小癪なガキがぁー」

 鬼女は、牙を剥き出しにし、眼球は無氣味な光を放つち、グランド周辺の街頭が消え、妖刀で斬りかかり連続技で打ってきた。

 「明日、朝が早いから、とばしていくぜ!」

 セーマンは全身インナーのまま、鬼女の動きに余裕で躱していた。セーマンの動きの速さは音速に達し、静寂を斬り裂く爆音が京都全域に鳴り響いていた。人間の域を超えてセーマンは、一方的攻めていた。人々は、爆音に驚き空を見上げてとしていた。

 鬼女の方は、身を防御で精一杯であり肉体が切り裂かれてグランドに悲鳴が木霊していた。

  「ギアァ~。動きが見えない」

 グランドには鬼女の姿があったが、セーマンの姿は、速くて見えなかった。鬼女にとっては、セーマンの動きが辛うじて見えていたが、剣を受け流すだけであり、セーマンに打ち返すこともできなかった。

 「た、助けて~」

 鬼女は、憑依した女の姿に戻り、か細い声で命乞いをした。だが、セーマンは攻撃を止めなかった。

 「俺を馬鹿にしているのか? その姿で、俺を騙しているつもりか! 心臓が止まった人間などいない。云っただろう。仕返しは、十倍返しって!」

 全身インナーのマスクには、量子Aiが相手のバイタルを計っていた。

 鬼女は、人間の姿に戻った芝居をしていたが、鬼女の周りには、陰火という鬼火が女を照らしていた。

 「俺は、地蔵菩薩の慈悲されて仏教の守護させようとしているがお前の悪行は許せない。人を何人殺した。、俺には、地蔵菩薩のように甘くはないぞー。それに、妖刀を圧し折り再生不能にしてやるわぁー」

 セーマンのマスクの五芒星・霊能力増幅装置が、セーマンの幽かな霊能力の光を、目覚めさせようと繋がれしき者の性格が表に出てきて碧眼が紫に変わった。

 「貴様は、永遠に無の世界に閉じ込めてやる……」

 セーマンの眉間と首の後ろの全身インナーにも、泰明の封印の文字である。魔方陣が赤く輝き、繋がれしき者を奥に追いやった。

 (また、無意識に……體が……。俺は、一體どうなっているのだ?)

 セーマンの一打の衝撃は、鬼女の仮の體である屍は、傷みが激しく骨の折れる音がしていた。セーマンのスピードは衰えることなく、姿は見えなかったが、神剣と妖刀がぶつかり合うときに、生じる火花が散る光、その光が辺りを照らし、同時に金属音が鳴り響いた。セーマンの無数の残像が、鬼女を襲いセーマンのスピードが音速に近づくと空氣が白く圧縮され、その爆音が京の人々をパニックに陥れた。セーマンは、あらゆる武術をマスターしており、師範級の腕前であり、技術的には鬼女より上であった。そして、科学の力で超人的なパワーとスピードを手に入れたセーマンは、無敵となっていた。

 「どうした。えぇー。動きが止まっているぞー。ババァー」

 (宿り主は子宮の中にいる。鬼切丸で宿り主が切れるか)

 攻めの剣であり攻めに攻めまくり、黒い全身インナーが黒い竜巻になり、鬼女の體を切り刻んだ。

 「そう、簡単に無にするか! じわじわと、いたぶってやるわぁー」

 セーマンが、優勢に戦っていた。鬼女の魂魄に、致命傷を与えることはできなかったが、じわじわといたぶりながら、セーマンの残虐性が芽生え始めていた。鬼切丸が肉体を引き裂く度に、鬼女の魂魄に近づき、鬼女は苦痛に叫んだ。

ぎゃぁ~

セーマンは攻撃しながらも相手の弱点を考えていた。

 (前に戦ったときより、数段に強くなっている。それに、何かを隠している? 鬼女と茂子の魂は、どこにあるのか? この剣で、倒せるのか?)

 鬼女の魂魄が傷つき、鬼切丸の宿る祖父の聖なる力に浄化され、痛みに夥しい声が重なり合った声で叫んだ。だが、セーマンの目には鬼の魂魄は見えていなかった。斬ったところからは、血が流れずに傷口の中から無数の目が覗き込む様に外の様子を見ているようだった。鬼女が憑依した體は、ボロボロになり動きも鈍くなっていた。鬼女は妖刀の怨霊たちをセーマンに飛ばし、セーマンの體の周りを浮遊して動きを封じ込めた。

 「おまえの相手は、こいつらが相手してくる。じゃーなぁっ」

 「何、云ってんねん!」

 セーマンには、何百體の怨霊の浮遊している姿は見えていなかった。

 「えっ。體が動かない?」

 怨霊は、セーマンの體を憑依することはできなかったが、體を掴み動けなくなり、怨霊に対し幽かな霊感が働き微かに體が震えていた。

 (何だ。この震えは……?)

 「待てや。ババァ! 逃げるな」

 勝ち目がないと分かると、鬼女は新たに妖刀から二十體の怨霊を出した。その怨霊は、土の中に入り、土の中からは実體のある鎧を纏った怨霊が這い現れた。その怨霊は、平安時代の甲冑で背中には平家や源氏の旗印を付けた怨霊や他にも新選組の羽織を着た怨霊や京で戦死した怨霊たちが現れた。鬼女は怨霊たちが、セーマンの動きを止めている間に、隙を見てボロボロになった體を引き摺りながら逃げ出した。霊體の怨霊が、セーマンの周りを囲み浮遊し、セーマンの體を乗っ取ろうと、再び體の中に憑依しようとした。

  ギャーギャー。

  ギャーギャー。

 (何だ。この光は?)

 セーマンのマスクの正五芒星が逆五芒星になり、セーマンの動きを封じ込めている怨霊を消し去った。

 (これが、じじぃーの力か! いや、前世の力か)

 泰明が、剣や刀の中に魔王尊の神氣をいれることにより、特殊インナーの全體が魔王尊の神氣を纏っていた為に、怨霊はセーマンに取り憑くことができなかった。セーマンは武器を錫杖に換え怨霊を叩き落とし浄化していった。

 セーマンは、錫杖に仕込んでいた刀を抜き、何百體の怨霊の念を浄化し浄霊しあの世で成仏した。

 「時間を食ったな。くっそうー。鬼ババァ、大分、離れたな。ターゲットから離れている。逃げようとしている」

 セーマンが怨霊を浄霊したときには、鬼女の姿はなかった。

 量子Aiの町中から鬼女の表示が消えた。

 「ちっ! 逃げられたか? 確か、あっちの方角へ逃げていったな!」

 セーマンは、第一形態に変身し漆黒のアーマーに身を包、鬼女が逃げた方角である平安神宮の本殿の屋根まで瞬間移動し追跡したが、そこには鬼女の姿はなかった。

 《第一形態、解除》

 (くそー、押していたのにー。最初から第一形態なら…。だけど宿り主を封印できたか)

 セーマンは、第一形態でになって数分だったが足が痙攣していた。

 セーマンは軍事衛星で、サーモグラフィティで居場所を特定し、同時に麻理亜と連絡しあい合流した。

 「まりちゃん。ごめん! 逃げられた」

 麻理亜は、セーマンの足を引き摺る歩き方を見て、心配していた。

 「セーちゃん。足、大丈夫!」

 麻理亜は、セーマンの第一形態を解除して全身インナーになっていた。痙攣した部位に、麻理亜の手を翳すと、硬直していた筋肉が徐々に解れ痛みが消えたが痙攣は残ったままだった。

 (痛みが薄れる……。あっ!)

 セーマンは、Aiコンピューターに指示した。

 《コンピューター。まりちゃんの脳波・脳内の電氣信号が過剰な部位を検索! 記録して。人工衛星、システム侵入。平安神宮上空移動、サーモグラフィティカメラ作動。ズーム。ズーム。ズーム!》

 「いた!」

 セーマンのサーモグラフィティカメラで平安神宮内に、明らかに體温の低い人の形が倒れている場所へ向かった。セーマンが睨んだとおり、鬼女の魂魄が抜けた傷だらけの女の屍が転がっていた。

 「また、被害者が増えたか。公家の娘を狙っていたのか。ごめん。俺の所為や……」

 セーマンは、成長期で骨・筋肉が出来上がっていなく、筋肉に負担を掛けていた。その時の運動量によるが、制限時間が五分であった。セーマンの訓練により能力も上がったものの最大でも七分が限界あった。それ以上は、死を意味していた。セーマンは、體の限界域になった時の體力、筋肉強化の薬を服薬した。

 (この匂いどっかで……)

 麻理亜は、遺體から発する匂いと他に手掛かりがないかし、セーマンは本殿の屋根の上で體力の回復と筋肉の痙攣が治まるまで、その場にいた。

 「セーちゃん、この匂い! 分かる?」

 セーマンは、女の遺體の側に寄った。その遺體にだけ時間が物凄い勢いで流れ、腐敗は進み首と胴體が離れ、見る見る腐敗し、體は急激に白骨化していった。まるで『』のように数時間で風化していった。

 「うーっわー! えぐー」

 セーマンは、遺體が変化を見るのが初めてで、吐きそうになりった。

 「今晩、ひとりでトイレに行けへんわー。桔梗に付き添ってもらわな!」

 「セーちゃん。この遺體の腐敗した匂いとちがって! 別に匂いしない! どこの犯行現場にも、この同じ匂いがしていたわー」

 麻理亜は、匂いの記憶を手繰り寄せていたが、腐敗臭と混じり合い、思い出すことがてきづにいた。

 「ねー、セーちゃん! 腐敗臭とちがい。この匂いどっかで匂ったことない?」

 「うん! 俺もどっかで嗅いだような? 任して量子Aiスーパーコンピューターで調べているから」

 セーマンは、嗅覚センサーで成分を調べ直ぐにも結果がでた。

 「そうそうー。分かった。お香やー。動物性の麝香や」

 何処の事件現場にも手掛りは、腐敗臭と麝香の匂いしか残っていなかった。その匂いは、悪臭で中々臭いが取れなかった。

 その後、麻理亜は妖術を使い。神主を操り、警察に通報させた。

 は、自宅に帰りセーマンは警察無線を盗聴した。

 「まりちゃん! 警察の無線を聞いていて、平安神宮の巫女が、行方不明になっていると!」

 「次は、巫女に憑依したかもなっ?」

 「えっ! 公家の復讐と違うの? 巫女は、関係ないやん!」

 「人間の肉体さえ、あればいいのよ。肉体があれば、いつでも復讐ができるから……。もう、鬼女の氣配が消えたわー。身を隠したから、今日は寝よー」

 姉弟は、精神的にも肉体にも疲れ、蒲団の中に入ると五秒で熟睡していた。だが、麻理亜は起きていた。

 「じいちゃん。ちょっといい」

 「どうした。まりちゃん!」

 祖父は陰陽師の秘伝書を読み、鬼女の封じ込み方を調べていた。

 「じいちゃん。今度は、公家の先祖を持つ娘でなく、巫女を襲ったわ」

 「鬼女もセーマンに、大分追いつめられているみたいだが、困ったのうー」

 「えー」

 「今まで矢の力で封印され、力も弱っていたが能力の高い巫女の血で本来の能力に目覚めるたか。味をしめて、次から巫女や霊能力を持っている者が狙われるかもなぁ。難儀な事件になってきたのう。鬼女が能力を高め、手がつけられなくなるまでに、早く封印しないと!」

 「セーちゃんの能力が、目覚めてくれたら…?」

 「駄目だ。セーマンの能力を目覚めさすな。闇の王の魂魄を決して、目覚めさすな。闇の王も、この世に輪廻する度に、正しい道へと導きを行なう度に徳を積んできたが、今度ばかりは、セーマンが光となるか闇となるか…? 儂にも分からん。2012年が鍵じゃ。神との契約で魔が人間を成長するために知恵を与えていたが2025年で神へとの支配になり神はきつい面があるため、命の大切さと地球の環境、神への祈りを重視している。日本人の祈りの恐怖にアメリカの支配者層が日本人を堕落の道の向かわせた。日本人の縄文人のように祈りの力に目覚めないと、人類が滅亡するか? これから地球は、地球規模の災害に見回れ、水と食の問題になると、食物と水の取り合いになり戦争が勃発し、核を使う国もでるだろう……。その時、セーマンが闇の王となり、この世を破壊するか、それとも人々の光となり救世主となるか…。もし、セーマンが破壊を選んだ時には、儂は再び魔王尊となり人類を誘導して水星に移住させなくてはならん…。前世は、聖徳太子や安倍家初代安倍晴明だが、それ以上の魂魄の記憶を甦らすな。その為に儂と、まりちゃんが同じ時代に生まれ、セーマンを正しい道に進ましていることを忘れるな。いいな!」

 「はい!」

 「まりちゃん。あと三時間で夜が明ける。少しでも寝なさい」

 「うん。おやすみなさい」

 「おやすみ」

 セーマンは堕天使になり大黒天になり仏教の守護神になり、前世、平安時代に安倍晴明として輪廻し、祖父泰明も晴明の父として麻理亜も母として輪廻していた。


 朝になり、どのニュースも平安神宮で変死体が見つかり、巫女が行方不明になったというニュースを報道していた。マスコミは、事件は解決してないと、どのチャンネルも特集を放送していた。

 「桔梗。学校まで向かいに行くから、学校から電話しなさい」

 「はーい」

 「麻理亜もクラブが終わったら、電話しなさい」

 「はい!」

 姉弟は真相を知っていたが、世間は振り出しに戻り親が子供の送り迎えが、再び始まった。

 授業は終了し、子供たちの安全を考えてクラブ活動を中止になり下校させた。学校から帰り、セーマンの研究の三の蔵の中で姉弟と話しているところに祖父がやってきた。

 「厄介な事件じゃのー。巫女の能力を取り込むことで、鬼女の力も増したやろー。このことに氣づき、お前たちが力を見て、今度は能力を高める為に能力を持った女性が標的になるだろう。鬼女の力もだが、妖刀の怨霊も邪氣を高めるだろう」

 「じいぃー!」

 「セーマン。鬼女と戦ってどうだった。鬼女の魂を直接斬っても鬼切丸でも封印はできない。銀の破魔矢で遺體の中に封印するか、手立てがないとだろう」

 「銀の破魔矢を作っても協力な聖なる力を込める人物は今の現代にはいない。実際に戦って、魂に届くまでに、何かが邪魔をしている。相当時間がかかるし、肉体の傷から人の目のようなものが無数見えた」

 「あれは、肉体の中に鬼女とは別に、鬼が住んでおるのじゃー」

 「これから鬼女と戦っても、俺には魂が見えない。それに、肉体のどこの器官に魂があるのか? あと、一歩のところで解明しそうなんだが……。やっぱり、封印するしかないのか……。そうすれば、何で封印すればいいのやー」

 「朱塗りの聖矢かで、遺體の額に射るかだな!」

 「ふうーっ」

 セーマンは溜息混じり云った。

 「先祖が使った手は、もう通用せんやろー。接近戦も難しいなー、間合いを取らしてくれへんやろ。まー、夜に向けて力を溜めとくわー。食べて! 寝る! これが一番や!」

 セーマンは、筋肉痛で歩くことも儘ならなかったが、セーマンは自慢の回復装置カプセルの中で筋肉を改善させた。そして、魂魄がどこの器官にあるのか、研究が始まった。


 京都の夜は、静まり返えり…。

 都の賑やかな姿はなかった。

 恐怖に怯え…。

 誰一人、夜の町を歩いている者はいなかった。

 霊犬の日出美は、妖氣を感じ取り遠吠えを始め市内中の犬も吠え出した。

 姉弟は、既に配置に付いていた。セーマンは、軍事衛星を京都上空に配置してサーモグラフィティカメラで京の町を監視していた。

 一方の麻理亜は、京都の稲荷神社のお狐様に力を借り、お狐様からの情報を待っていた。

 夜は更け、凩が吹きだした時に、稲荷の狐たちが騒ぎ出し、お狐様から続々と情報を得た。

 〈山科に向かっている〉

 また、別の狐から、情報が入った。

 〈国有林を南に下がっているよ〉

 《セーちゃん、でたわー。山科よー。場所は特定できないが、安祥寺山国有林を南下しているわ。今までと違うスピードで移動しているわ! 兎に角、山科に向かうわよー》

 《了解!》 

 姉弟は、山科に向いながらセーマンは軍事衛星からサーモグラフィティカメラで、體温の低い鬼女をさがしていた。

 (あれっ! どこにいった)

 セーマンは、一瞬であったが、鬼女を見失った。

 《見失った!》

 麻理亜の千里眼能力も鋭く、衛星カメラより見るより鮮明に見えていた。

 《よ!》

 《おった!》

 《お寺の前にいたわー。巫女の姿をしている!》

 麻理亜は、神通力でお寺の人達に話しかけた。

 〈鬼女が門の前にいます。本堂へ逃げて!〉

 (人の動きがない!)

 麻理亜は、千里眼で寺の中を透視した。

 《遅かったかー。また、犠牲者が!》

 鬼女は、すでに寺に侵入し寺の若い娘の生き血を啜り飲み、住職や家族が妖刀の犠牲なっていた。鬼女が満足して寺から出てきたところに、姉弟が同時に到着した。姉弟は上空3キロの所で静止して、鬼女の様子を見ていた。麻理亜は千里眼で、セーマンはインナーに内蔵のカメラでズームして鬼女を見ていた。

 《遅かったか! また、命がひとつ。ふたつ……。クソー!》

 《セーちゃん。殺氣を出さないで! まだ、氣づいていないわー》

 麻理亜は、鬼女に向けて純銀製の槍を全力で投げずに、殺氣のでない軽く手首だけで投げ落した。剣は音もたてずに垂直に鬼女の頭部に向かって加速して落ちていった。鬼女は、姉弟が上空にいるのを氣づいておらず、口についた血を拭っていた。鬼女の頭上に逼る鋭い剣が距離を縮めて地上に近づき、落下速度も増していた。

 (よし! 命中する。其の儘じっとしてろよ……。命中して封印してやる)

 姉弟は息を飲んで、見ていた。

 鬼女は口に付いた血を拭いたときに、顔が右斜め上に少し向き視界の中に槍の先端が入り、咄嗟に體を捻って躱したが右腕を浅く斬った。

  ギャー

 「あ~あー。もうーちょっと、やのに……。しゃーないなぁー。氣合い入れて行くでぇー。まりちゃん!」

 セーマンは、インナーの中にいる神獣、麒麟を呼び出し、セーマンの右腕の周りをぐるぐると翔走り鬼切丸を変化させた。麻理亜とセーマンは、真っ逆さまに急速に落下し音速に入り、鬼女の頭上に近づくと二手に分かれ地に着地すると麻理亜は動かずに、セーマンは鬼女に斬りかかり、金属音が山に響きわたった。

 「また。このガキかぁー」

 鬼女の動きは、今までの動きと違い、いとも簡単に躱した。

 「うるせいなぁー! 鬼ババァー。また、封印したるから、まっとれ!」(じじぃーが、云っていたが、徳の高い能力者の血を得て、俊敏性、腕力が高まり、やはり動きが違う!)

 そして、セーマンは人々を巻き込まないように人氣のない場所に誘い込んだ。

 (確か、この近くにグランドがあったよなぁー)《まりちゃん。近くのグランドに誘う》

 《分かったわー》

 《俺が、先鋒で行く!》

 セーマンは、鬼女と剣を合わせ激しい打ち合いが始まり、金属と金属が激しくぶつかり合い激しい音が山に響いた。鬼女は、平安神宮の巫女の血と體で力もスピードも数段に上がていたところに、若い能力者の血を飲み、徐々に力が増し妖刀も肉体も強度を増していた。鬼女の懐刀は受け止めていたが、セーマンの鬼切丸をはじいていた。

 「力が漲る! やぱり能力者の血が……。妾の力が甦る! ハハハハッ」

 セーマンの動きを見切られて、一方的に攻められていた。鬼女の方が、圧倒的に有利であった。

 「憎き。安倍一族の血を引く者よ。お前たち姉弟の血を手に入れたやる!」

 セーマンは、マスクを口までめくり、ドーピング剤を飲んだ。

 「第一形態!」

 焦ったセーマンは、力とスピードを上げ第一変化に変身をした。

 (何! 形態を変えても、ヤツのスピードに、ついていけない!)

 セーマンは、限界に近いパワーもスピードに上げたが、不利であり圧倒的に押されていた。剣を振り下ろす剣風の音、剣と刀が当り鍔迫り合いで金属が擦る不快な金属音、體と體がぶつかり合う衝撃音、間合いを取り離れ攻め込むときに生じる音速の爆音、衝撃で地は揺れ想像を超える戦闘が始まった。セーマンと鬼女がぶつかる度に山と民家が揺れ、断続的に揺れる地震に京の人々は飛び起きた。

 「ちっ!」(重い! なんという剣圧だ!)

 鬼女のひと振りが重く、真面に受ける度に態勢が崩れセーマンの體力を奪っていた。

 (右に左に受け流し、剣圧を利用する!)

 セーマンも攻めるが、無駄打ちが多く、空振りも多く、體力を消耗していった。

 《セーちゃん。無駄打ちが多いわよ!》

 《分かっているよ》

 鬼女の野獣の目のように、無氣味に反射する光が闇に光浮き上がっていた。セーマンの攻撃に剣を躱し瞬間に移動するとふたつの目の光の線が走った。身軽に動き回り、剣を躱しセーマンとの戦いを楽しんでいるように見えた。無氣味な声をだし無氣味に微笑んでいた。

 「どうだ。この力。このガキらの血を飲み、お前たちの全ての力を手に入れてやる」

   ヒヒヒヒヒッ!

 セーマンは、右や左に上や下に円を描くように打ち込んだが、悉く躱された。瞬きするほどの一瞬の攻撃であったが運動量の多さにセーマンの息が上がっていた。

   ハァー。ハァー!

 (完全に、見切られている。パワーもスピードもテクニックも……。俺より、数段上回っているのか!)

 「くそったれー。オラー」

 セーマンは氣合いを入れ直し、修羅の如く剣を振り上げ打ち込んだ。その姿は、黒い姿をした荒神のように荒々しく、力強く再び激しい打ち合いが始まった。両者の無数の残像が、ぶつかり合い残像と同じ数の火花が散った。

 (力で押される。仕掛けたいが、隙が生まれる! でも…。時間がない。一か八か賭けてみるか!)

 セーマンには、あの平安神宮の二の舞が、頭にあり焦っていた。

 (仕掛ける)

 セーマンは仕掛けたが、右脇腹に隙ができ第一形態のアーマーが衝撃から守ってくれたが、セーマンの計算上では、物質には強いアーマーであったが妖刀は、アーマーとインナーを斬り、セーマンの肌が見えていたが裂傷はなかった。

 (うっ! アーマーが斬られた)

 だが、セーマンは鬼女の頬を浅く斬ていただけであった。

 「このガキー」

 (相討ちか!)

 頬が斬られた鬼女は、激怒した。

 「殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す!」

 鬼女は、懐刀であった妖刀を変化させ刀身が伸び野太刀の長さ1.5メートルまでに伸び柄も伸びだし、全長が2メートルを超えて、長巻という薙刀に似た武器に変わった。重量も9キロと重くなり、鬼女の打ち込みの剣圧も増していた。

 (何という剣圧が、重いんだ!)

 セーマンは、全身で受けとめた。動きが止まり、完璧に作った特殊スーツが斬られて動揺が隠せなかった。

 (押されている!)

  ハァーハァーハァー!

 鬼女は、特殊スーツが切れ、肌が見えている部分を悉く狙われ攻めてきた。

 その時。麻理亜は、上空で静止して相手の弱点を探していた。

 (とを合わせたのね。古流が多いわ!)

 鬼女は、妖刀から怨霊を出してセーマンは、白虎を呼び出し十拳剣に変化させ二刀流で怨霊と鬼女を相手にしていた。

 《警告! 警告!》

 コンピューターが、セーマンのバイタル異常に警告して警鐘を鳴らしていた。

 《警告! 警告!》

  ハァハァハァハァ!

 (えっ? もう警告? 二分しかたってないのに……。しかし、やばくなってきた! 握力がなくなってきた……)

 《セーちゃん。交代するわー》

 セーマンは、杉の木の上で身を隠し、想像以上の運動量に心拍数が上がり、筋肉もパンパンに張り痙攣寸前で木に凭れるように體を休めていた。コンピューターは全ての変化を解除し、體を回復させる為にドーピング剤を飲み、特殊アーマーの生命維持装置が作動させ、體を休めていた。

 麻理亜はセーマンと交代し、上空から急降下しながら言霊を唱えた。左大腿部の青龍の紋章から青龍が咆哮とともに、出現すると麻理亜の體をぐるぐると回りだし手元で青龍が、変化し熱田神社に眠る草薙剣を握り締め鬼女に斬りつけた。

 鬼女は長巻を肩に担いでいたが、中段の構えに構え直し攻撃に備えていたが、いつのまにか麻理亜が間合いに入っていた。

  ギギャー

 鬼女は鎖骨の辺りを斬られてが、神格化した剣である草薙剣は、人間の體には傷を傷つけることはなく、鬼女や茂子の魂魄に肉体に住む鬼たちの魂魄だけを斬り付け、火に焼かれるような痛みが全身に走って叫んだ。その叫びは、鬼女だけでなく肉体に住み込んだ鬼どもは、激しく顔を歪め痛みに何十もの声上げて叫んだ。

 麻理亜は、鬼女の真後ろに着地すると、鬼女の方を向きながら後退し十分な距離をとった。

 「この小娘がー」

 その声は、無数の鬼の叫ぶ声であり心を凍らせるようでもあった。その叫ぶ声が、山に谺し付近の人々を恐怖に落としいれ、山々に住む動物たちも鬼女の叫ぶ声に驚き一斉に山から逃げだし町に逃げ出し、町は狸や猪でパニックになっていた。

 「そ、その刀は、草薙剣! なぜ、妖氣を放っている小娘が持っている?」

 鬼女は、麻理亜の葛の葉の妖氣を感じ、背後には正一位の稲荷神の使者が守護していた。

 「妖怪? 妖狐か。同じ能力の持ち主じゃないかー。なぜ人間の味方をする。一緒に殺戮を楽しもうぜ! (この牝狐! 隙を見て、殺してやる)なぁー。一緒に楽しもうぜ」

 麻理亜の體は、白く輝き放っており麻理亜の背後に白狐が守護し、その後ろには母親の守護霊である麻理亜も守護してマリアの存在を感じさせる聖母が、白い光を発光させ麻理亜を見守っていた。

 「化物と一緒にしないでー。霊格が違うわー。これ以上、人を殺させないわー」

 「妾には、そのマスクの素顔が見える。綺麗な顔をして、今度は、お前に乗り移ってやるっ。そのマスクに隠れる美しい瞳と美味しそうな血とその綺麗な肉体、お前の全ての能力を戴く。そして、この国を支配し、この世を闇の世界につくりあげる! 妾のように醜女に生まれてきた氣持ちが分かるか。人からをされ、嘲笑われ、そんな氣持ち、美人として生まれた。お前には、妾の氣持ちなど分からぬだろう!」

  ヒヒヒヒヒヒッ!

 鬼女は黒い長い舌出して、口から涎が垂れて落ち葉に落ちると、悪臭が漂い硫酸のように枯れ葉を溶かした。目の前の鬼女の異様な姿を見た麻理亜は、身震いし、思わず口に出した。

 「きもっ!」

 鬼女は、氣持ち悪いと云われ、傷ついた鬼女は怒り狂った。目は、赤く不氣味な瞳で麻理亜を睨み付けた。

 「きもいだとー。うー……。妖刀に魂を吸われなー。この牝狐がーー」

 鬼女は、一段と能力者の血が効き目始め、斬られた鬼たちの霊體が元に戻り肉体と能力も増大し、自分の體から漲る力に興奮していた。

 「血が體を駆け回る。効いてきた!」

 鬼女の體は、巫女の女の體で細身の華奢な體つきであったが、巫女と僧侶の娘の血が體の中を駆け巡り、鬼女の體が格闘家の體つきになりセーマンが戦っていたときよりも、力も瞬発力も数段に上がった。そして、息もつく暇も与えずに牙を剥き出しにして、斬りかかり麻理亜は、一方的に攻められていた。それは、上段から下段から右から左へ攻撃され、その攻撃力は今まで経験したことのないパワーとスピードであり、邪魔な大木も斬り倒し、麻理亜は後退しなが防御することで精一杯で後退りしていた。

 「ほらほら、どうしたのー。押されているよー。ヒヒヒヒッ」

 鬼女は不氣味に、笑いながら攻めていた。

 麻理亜は、妖刀を払い。低い態勢から下段から振り上げたが、掠ることもなく余裕で躱し後ろに跳躍して間合いを取った。

 麻理亜は、その隙にドーピング剤を飲み第一形態になった。

 「第一形態!」

 変化することで全ての能力に向上し、麻理亜から発する光も輝きも増し、妖艶で艶麗の麻理亜に鬼女は嫉妬していた。

 「美しい……。その體が、ほしい……」

 鬼女が、一足一刀の間に入り打ち合いが始まった。剣術では互角であったが、力では鬼女が数段に上であり有利であった。鬼女は突き、麻理亜は剣で払い流し、その儘、鍔迫り合いに入り神剣と妖刀の刃が擦れ合う嫌な音が、山科の夜に鳴り響いた。

 麻理亜は、鬼女の力に押されていた。

 (テクニックとスピードで、振り回すしかないわ)

 鬼女は、黒い長い舌で麻理亜の銀色の兜から露出している柔肌をペロリと嘗め回した。

 「キャー、汚い舌で嘗めないでよ。くっさっ!」

 「安倍一族の匂いもするが、味わったこともない味がするぞー」

 柄と柄の鍔迫り合いで麻理亜は、柄で柄を上げると見せかけて、鬼女の柄を押さえ込み、鬼女は押さえられて抵抗するかのように上へ持ち上げた。その力を麻理亜は利用し、麻理亜は鬼女の左足の後ろに足を差し込み引っ掛けながら、激しく鬼女を押した。蹣跚けた鬼女は、慌てて麻理亜の剣先を見切ろうと體を捻り避けたが、麻理亜のフェイントに惑わされた。

 「浅いが、手応えはあったわ」

 手応えのあった麻理亜は、鬼女の舌を見てニヤリと笑った。

 「自慢の汚い舌。二枚舌になってねー」

 鬼女は、痛みと怒りで、半狂乱になり體が倍になり、力で捩じ伏せようと、麻理亜に襲いかかってきた。

 「このどぎつねめがぁー」

 怒号の声は、山に響き渡り京都周辺に聞こえた。声を聞いた住民がパニックになり、警察が次々と出動しの奥の山を捜索していた。氣が狂った鬼女は、目が血走り、目の前の木々を薙ぎ倒し、麻理亜を追いかけた。スピードは、麻理亜が数段上であった。右へと左へと素早く動きながらを投げつけ、鬼女に命中し突き刺さるが、目の前の獲物に目を見開き、麻理亜一点を見て叫んだ。

 「おまえの血を飲み干した後、肉体も残さず食べて、その力を身につけてやるやるわー」

 上空では、警察のヘリコプターが低空飛行で旋回して、ライトが鬼女を捉えた。ライトの眩しさとヘリの爆音に鬼女は苛ついた。

 「五月蠅い蠅め!」

 鬼女は、地中に埋めていた徳の高い僧侶の娘の血を飲んで、また一層に効き目が増し、鬼女の全身にかけ巡り、能力を自分の力に変え巨大化することで力と敏捷性も今までの三倍になった。そして、夥しい数の怨霊を出し麻理亜を襲わせた。夥しい数の怨霊は、麻理亜に襲いかかり神剣で斬り浄化したが数の多さに苦戦していた。

 麻理亜は、たまらずに第一形態に変化た。

 《第一形態に変化》

 麻理亜の姿は、純白のボディに兜には狐の耳、お尻には三つの尻尾があった。

 「あの坊やと同じ変身できるのか、だが、限界があるんだろう」

 麻理亜は聖剣を出し、鬼女に攻めていた。

 《コンピューター、第一形態のタイムリミットはいつまで》

 量子Aiコンピューターが答えた。

 《回復呪文を使いながらでもⅠ〇分です。解除しても體が動けるまで20分》  

 (鬼女は、何をするつもりなの? 宿り主をやらなくては被害者が増える)

 麻理亜は、妖氣で怨霊を浄化しながら鬼女の行動が氣になっていた。麻理亜は子宮の部位を攻めていたが、鬼女の妖刀が麻理亜の聖剣を弾いていた。

 セーマンは木の陰に身を隠し回復を待っていた。

 《コンピューター。動いていいか?》

 セーマンは、姉に助太刀に行きたかったが、コンピューターは変化をロックしていた。

 《あと、2分です》

 セーマンの運動量が激しく、體の負担が大きく妖精の回復術でも時間も掛かり、セーマンにとって誤算であった。

 鬼女は、その間に妖刀で杉の木を斬り、無駄な枝を切り落とし、一瞬で先端を鋭く尖らした。長さ6メートル。太さ20センチほどの木を掴み取り、木には怨霊が浮遊し木と一體化していた。鋭い先端が、ヘリコプターに向け照準が合わされていた。

 「風よし! 目標よし! ロックオン。ファイヤー!」

 ヘリコプターに向けて陸上競技の槍投げの要領で投げつけた。木は失速することなく一直線に、ヘリコプターの空席の後部座席キャビンの窓に木に突き抜けたが、飛行することには問題がなかった。

 「何だ! あの化物は? 回避、回避せよ!」

 ヘリコプターは、遠ざかった。

 「逃がすか」

 鬼女は、木を選び若い杉の木を選び切り落とし槍状にすると、煙草のケースほどに小さくなったヘリコプターに向け投げ込んだ。

 「また、投げて来たぞー。回避、回避」

 近づく木に恐怖していた。

 「このままだと、ぶつかる!」

 「駄目だ。回避できない」

 ヘリコプターの燃料タンクに命中し、叫びと共に機體が炎上し落下した。

 麻理亜は量子Aiに指示した。

 《第二形態!》

 《許可できません!》

 「融通の利かないヤツめ!」

 《コンピューター。オフ!。第二形態、変化》

 麻理亜の姿は、妖氣から聖なる白い氣を放っていた。

 鬼女のは白い氣に恐怖に怯えていた。

 「その白い氣の後ろに、何を隠している」

 麻理亜は鬼女を無視はして、そのヘリコプターが命中した時に乗組員を瞬間てきに助けた。二人を山の麓に集まっていた警官たちの許へ送った。

 「見ただろう。あんたたちが追っている事件の相手は、人間ではない」

 セーマンは、警察官に訴えた。

 「今直ぐに、山に入った警察官を引き上げてください。上空のメディアのヘリも退去させてください。人を助ける余裕はない。あの鬼ババァで、一杯々々なんだで!」

 麻理亜は、體に負担がかかり、インナーの姿に戻っていた。

 警察は山科上空を封鎖したが、メディアは距離をとっていたが、取材を続けていた。セーマンも無線を使いメディアのヘリコプターに、必要以上に呼びかけていたが、無視され取材をしていた。

 (好きにせー。助けるか)

 「何だ。あの飛ぶ五月蠅い物は?」

 鬼女は、苛つき次から次からと大木をヘリコプターに向け投げつけた。ヘリコプターは、炎上し山に移り出火した。セーマンは、墜落するまでに助けることができたが、もも改善していなく、今は兎に角、無駄な動きをしたくなく機動隊の司令官の許にいた。

 「あの化物は、何だ!」

 「鬼ですよ! 平安時代の鬼が甦った。この世の武器では、通用しないのです」

 司令官は、信じられない顔をしていた。

 「鬼。この時代に、鬼!」

 セーマンも鬼は、異国人の説を信じていたが、古事記や日本書記、中国のを調べて、真実を知った。

 「鬼は、人間が誕生する前から地球上を支配して来た。人間を浚っては食料をしていたが、名のある武将たちが退治し、江戸時代中期には絶滅した。後に昔話の元になっている。鬼と人間の混血もいたが、血が薄くなり妖術を使う者や血を啜る者はいないが、中に鬼の血が目覚めて、犯罪に走る者もいるみたいだが、地球上には人間が誕生するまでに、鬼とは別に河童もいた。河童は、両生類が進化した生き物だが、綺麗な水辺しか生息できなく減少しているがな」(じじいーの受け売りだがなぁっ)

 信じるしかなかった。目の前に起きている人間より大きい生物に信じるしかなかった。

 セーマンのアラームがなり、體が回復した。

 「急ぎますので!」

 「君! 勝てるかね」

 「絶対に勝ちます。ただし、俺たちの邪魔をするな」(絶対に勝たないと、夜は闇の支配者の者になって人間が餌食になるからなっ……)

 鬼女は、高い女の能力者の血を飲み、能力の活力になり、益々力を付けた鬼女に姉弟は恐怖心を感じとり、勝ち目のない相手と分かっていたが、人の為、正義の為に戦うしかなかった。セーマンは、警官たちから瞬間移動をするかのように姿を消すと、山火事が起きている山の上空に現れると、野球ボールの大きさの圧縮水を火事に投げつけ一瞬にして鎮火させ、麻理亜の許に行き麻理亜と交代した。

 「ねぇーちゃん! 交代するよ!」

 「分かったわ。ここからは朱矢で狙う」

 鬼女は、麻理亜の妖氣に反応し、麻理亜、セーマンの真上にいた。

 「そうか。やはり、お前らは姉弟か! 二人とも血を飲んで無敵になってやるわー」

 (この體が、動けなくなろうが……)「貴様を封印してやらぁ!」

 セーマンは、雄叫びを上げながら、鬼女の懐に連続に突いた。突いて突いて突きまくり突いた。

  オラオラオラオラオラァー

 (そろそろ、突きに目が慣れてきよったな!)

 鬼女は、セーマンの剣筋を見切ったと紙一重で避けて刀で払うことなくセーマンを見下し、體だけで避けていた。

 (バーカー。調子のってなぁー)

 セーマンの剣は避けられていたのでなく、紙一重で寸止めをし相手を油断させていた。

 (そろそろ、いいかな?)

 セーマンは、左だけで柄を握り突く真似をし、鬼女の胸の辺りに寸止めすると、手首を返して、刃を上に向けると右の掌で、棟を支えて構えると鬼女の顎に目掛けて昇り龍の如く跳躍し斬り上げた。

 「バカが、みーる!」

 だが、鬼女は意表の剣に慌て半歩下がり、のけ反り顎を上げ辛うじて躱した。

 「ちょこまかと、動き回りやがってー。この虫螻がー」

 鬼女は躱したが、セーマンの風圧が鬼女の首から顎の裏まで、ざっくりと斬っていた。

 (くそー。傷が再生しやがる。本物の神剣でないと駄目か……。それとも、まりちゃんのように能力に目覚めない駄目なのか…)

 麻理亜は、インナー姿で大木の天辺で體を休めていた。

 辺りが段々と明るくなり日の出時刻が近かった。

 (あと一時間で日の出だが! この儘だと逃げられる)

 麻理亜は、ほんの少し體を休めただけで、セーマンと共に戦った。

 《もう直ぐ日の出よー。この儘、押すわー。鬼女の能力が少し弱まっているわ! セーちゃん大丈夫? いける?》

 《任して……。まりちゃんの方こそ、無理してない? 大丈夫なのか?》

 《和多志のことより、今は自分のことを考えなさい……。行くわよ》

 (まりちゃん。疾うにタイムリミット。過ぎているのに…?。少しだけしか休んでいないのに! 息も上がっていないしバイタルにも異常がない。だれど、疲労物質の乳酸が蓄積している)

 麻理亜の疲労を思わせぬ動きをしていたが、セーマンのコンピューター画面には、麻理亜のバイタル値などが表示してあり、疲労物質が蓄積しているのが、セーマンにも無理をしているのが分かった。 セーマンは、姉に足手纏いにならないように我武者羅に腹部中心に攻めに攻めた。

 (何だ。こいつ! 少しだが、力が弱まっているぞ。吸血鬼のように太陽の光を嫌がるのか?)

 鬼女は、日輪の光を浴びることで魔力が弱まり、鬼女は日の出までに決着をつけたかった。妖刀から怨霊を続々と出した。その怨霊は、中央に対する平家の怨霊や地方へ幽閉されて中央に対して恨みながら死んでいった怨霊たちであった。様々な恨みに満ちた怨霊を出し、その怨霊たちを一體化させ巨大な鎧兜を着込んだ。巨大な武者は怨霊の集合體であり怨念の塊であった。その巨大な武者を作りだし、霊能力の高い麻理亜が集中的に狙われて、鬼女と巨大な怨霊と共に襲いかかってきた。鬼女の能力は日輪の光で、妖力が弱まっていたものの、次々と怨霊を出しては、巨大な武者を二體作りだしてセーマンに襲いさせた。その武者の一撃は、巌も砕き当たれば、例え特殊アーマーが衝撃を吸収してくれたとしても、致命傷は免れなかった。

 姉弟は、避けることで一杯一杯であった。巨大な武者が、麻理亜を岩に囲まれた逃げ場のないところに追いつめられた。その武者は、凄い勢いで刀を振り下ろし衝撃も凄く、一撃の衝撃波だけで、岩を砕き回りの木々を薙ぎ倒した。麻理亜は、武者の剣圧を剣で受けとめ防御したが、衝撃に飛ばされ岩に叩き付けられた。

 「アーマーが…」

 第一形態の特殊アーマーが衝撃を吸収したが、アーマーの破損も酷かった。

 (次の攻撃がくる!)

 鬼女と巨大武者は、離れた距離から剣を振り下ろし剣風が麻理亜を襲った。

 (この儘だど、こっちが……。侮っていた)

 鬼女は、麻理亜を次の宿りの體にすることに執着し攻めていた。

 無数の剣風が、麻理亜を襲い。防御することが一杯で、その場から動けなかった。

  ヒヒヒヒッ!

 鬼女は、奇声を発しながら巨大武者と共に剣風で獲物を動けなくして、距離を縮めていた。

 麻理亜は、鬼女と巨大な武者の剣を真面にくらい。神剣で受けとめたが剣圧が重く足下の地面が崩れ、體勢が崩れ蹣跚いた隙をつかれ鬼女と巨大な武者が斬りかかってきた。麻理亜は、鬼女と武者と交互に攻められ、一方的に攻撃されていた。

 「あんたの妖氣も、弱ってきたわねー。やっぱり、お前もこっち側の人間だな」

 空は赤くなり日の出の近く、麻理亜も妖氣が消えかけていた。

 「あなたと一緒にしないでー」

 「もう、あんたは助けないーー」

 妖氣のオーラが弱まり麻理亜は、別のオーラが芽生えていた。日の出が近づく度に、聖母マリアのような優しいオーラが、體を包みだして徐々に増えてきていた。その優しいオーラにエルフたちが集まり麻理亜の體を回復させていた。

 「あの菩薩と同じ光……」

 鬼女は、八百年前の記憶が蘇っていた。

 その時。セーマンは、巨大な二體の武者と戦っていたが、コンピューター画面に表示してある麻理亜の脳波の異常が見られた。

 (何だ! この脳波わ? 激しい運動なのに、脳は瞑想しているのか? これが、無の境地というものか??)

 セーマンは、どうしても麻理亜の能力に近づきたく、脳の研究を続けていた。

 《コンピューター。まりちゃんのデータをとってくれ》

 鬼女と巨大な武者の激しい連続技に、回復が追いつかない状態であった。麻理亜の動きが鈍くなると、一體の巨大な武者がセーマンに攻め、三対一でセーマンに襲いかかり、第一形態のアーマーの破損が激しく苦戦を虐げられズタズタであった。妖精たちも回復の粉をセーマンにつけ回復させていたが、武者たちの攻撃に體力は限界であった。のタイムリミットは、疾うに過ぎていた。中でもセーマンの體は、悲鳴をあげバイタルも低下していた。

 《警告! 警告!》

 (うるさい。わかっているわー。融通のきかんやっちゃー)《コンピューター。オフ》

《コンピューター。オフにしますが、第一形態解除になります》

《ああ、いいさ》

 戦いは、一時間以上経っていた。コンピューターは、警告をしていたが、命が関わるものではなかった。当然、十分以上戦えば心停止は免れないが、姉弟の全身にはエルフの粉がついていた。神太刀でも跳ね返した刃であったが、インナーはボロボロになっていた。

 (朝か。ヤツのパワーが衰えたが、こっちも動けない)

 朝焼けで、東の空が赤く染まりだしたころ。京都に生息する烏たちが一斉に鳴きだした。

 そして、一斉に飛び回り戦っている上空を旋回していた。

  カァーカァーカァー

 (な、何だ。この烏の大群は……)

 そして、山城の国の神社に住む鴉たちが集まり、上空を旋回し山科の空は、夜明けが近かったが鴉で空は真っ黒であった。その鴉が旋回する真下で、麻理亜と鬼女が、激しくやり合っていた。麻理亜は、鬼女の一撃を真面に食らい麻理亜の動きが一瞬止まった。

 「えっ! 足が!」

 麻理亜の足下にも怨霊の手が土の中から現れて、麻理亜の動きを止めた。

 〈怨霊退散!〉

 麻理亜は、草薙の剣を地面に刺し、土の中に潜んでいた怨霊を浄化した。

 「隙だらけじゃー。小娘!」

 麻理亜が、怨霊に手を捕われている瞬間。鬼女は、見逃さなかった。鬼女は、巨大化した妖刀で、邪魔な木々ごと切り落とし、麻理亜に妖刀の鋭い刃が向かってきた。

 (間に合わない)

 そこに鴉たちが、鬼女や怨霊たちに目掛けて、急降下して鋭い嘴で突き、翼で目を隠したり、身を捨てて麻理亜とセーマンを守った。中には、斬られて地に落ちたり、踏み潰される鴉もいた。

鬼女や怨霊を囲むように木の天辺に鴉天狗がいた。

  カァーカァーカァー

  カァーカァーカァー

 から日輪の一部が顔を出し、あらゆる闇を照らし闇の者は光に逃げ立ち去り、日輪の光に鬼女も逃げたし、巨大な武者も姿を消し妖刀の中に戻った。

 そこには、鴉の死骸で地面が黒く、木の枝に死骸が引っかかたり、黒い羽が地面に散乱していた。顔を覆いたくなるような無惨な姿に麻理亜は、悲しみで胸が締め付けられ、大粒の涙が止まらなかった。セーマンは、誰一人も助けられない自分の無能さに怒りを覚え初めて泣き叫んだ。

 そして、鴉たちは、旋回を止め木々に止まり死んだ仲間を弔うように一斉に鳴きだし、大津まで悲しい泣き声が響いた。その鳴き声は、悲しみ満ちており人々に心に谺し悲しく聞こえた。

 麻理亜とセーマンは、限界を超え戦った。その附けが、二人の體力を奪い、生命もが危ぶまれて、その場に倒れ込んだ。

 (駄目だ。もう、動けない……)「何だ。あれは? 鳥か?」

 東の方角から日輪が燦々と輝き、その光の中から一羽の八咫鴉が現れた。その鴉は、ほかの鴉と姿形も全く違い。駝鳥のように大きく、色は赤く、足は三本足であった。一番高い木に降り立つと、外の鴉たちが低い木々に止まり、赤い鴉に向かって頭を下げた。

  ガァー!

 赤い鴉が一鳴きした。その鳴き声は、東は滋賀県、南は奈良県明日香村、西は兵庫県篠山市、北は福井県のまで聞こえた。その鳴き声は、不思議なことに耳を押さえるほどの音量でなく、遠くの人々にも同じ音量で、はっきりと聞こえた。

 鴉の亡骸が消えて無くなり、赤い鴉が大きな翼を羽ばたき飛び、鴉たちの魂魄を先導するように飛び立ち、鴉の魂魄は、次々と羽ばたきだし、日輪に向かって飛んで神の国に帰っていた。


 痣だらけの姉弟は、セーマンの研究室の中にある生命維持装置の二つのカプセルの中で寝かされていた。二人の姉弟の意識が戻ったのは、昼が過ぎており午後三時になっていた。

 「まりちゃん! セーちゃん! 氣がついた!」

「ママ!」

 桔梗は、心配そうにカプセルの中を覗き込み、二人の側で見守っていた。

 「吃驚したわよー。庭にの鳴き声で、騒がしいから庭にでたら、あなたたちの周りに、烏たちが囲んでいて吃驚したわ……。何か、あの烏…。仲間を亡くしたように泣いていたように心に染みたわー。和多志に氣づくと飛びだして、上空を回って上賀茂と下賀茂の方に向かって飛んで行ったわー…。ところで、あなたたち…。テレビで中継をやっていたが、鬼と戦っていた。二人の戦士ってあなたたちでしょう。無茶をしないでね。親を泣かせることは、絶対にしないで!」

 テレビは、どのチャンネルを回しても、この事件の話で持ち切りであった。内閣総理大臣は会見を開き、戦っている二人は、内閣直属の陰陽寮の陰陽師であることを緊急会見で発表し、姉弟を政治に利用にしていた。

 「何! 勝手に俺たちを政治に利用しやがって!」

 「いいじゃない。こっちも利用しましょ。これで動きやすくなったわー」

 その後、姉弟はインナーのマスクの姿のままで政府と契約を結び、政府機関として堂々として警察庁と同じ権限を持たした。このことで姉弟は、奇怪事件に関して、独自に捜査ができた。

 「ここに、を置いとくから、好きに加工しなさい」と、いうと母は、二人の第二研究室の蔵から出ていった。

 母親は、姉弟を家に運んでから玄関の戸を叩く一羽の白い鴉。母親は、戸を開けると導くようにに降り立ち、拳ほどの石の上に止まり翼を羽ばたき鳴き出した。

  カァー

 母親は、鴉の鳴き声が脳の一部が活発にさせて、鴉の鳴く声が人の声として聞こえた。

 〈この金剛石なら、怨霊を無にし、魔物を浄化する力を持った石。この石を使って鬼を倒せ! それと正倉院にある鎌倉時代に鬼女を封印した矢の兄弟矢が一本保管されている。銀の独鈷杵では封印できないこの金剛石は要石としての役割をしておる。必要な量だけ採り、残りは埋め戻せ、それに、位置がズレている正しき場所に戻せ〉

 そして、寺の住職が慌てて出てきた。

 「この烏が、話し掛けておる。この岩は、魔物を浄化する力を持った石。この石を使って鬼を倒せと」

 母親は、住職からスコップを借り掘り起こしたが、掘っても掘っても出てこなかった。地上に出ていた部分は、黒かったが土で隠れている部分は、金色に光輝いていた。僧侶たちや近くで土木工事をしていた作業員も手伝い重機で掘り起こした。それは、石ではなく岩であった。母親は、一部を貰い受け、残りは、寺の御神體として祭られることになった。

 姉弟の體は、赤い八咫鴉の太陽の力なのか、既に三時間ほどで疲労と傷は癒え、完全に回復していた。セーマンは新たな武器の製作と特殊アーマーは自然に修復し新たな武器の開発に入った。

  チンチン!。

 「ばぁーさんやー。孫の一大事じゃー。ばぁーさんが大事にしていた銀の糸を孫のために使っていいか?」

 泰明は仏壇の前に座り、二年前に他界した姉弟の祖母つるに手を合わせていた。

 〈泰明さん〉

 泰明の脳に、直接に声が聞こえ右に振り向くと、霊體のつるが泰明の側にいた。霊體は、人の形になり輝いていた頃の姿になり、若い頃の京美人の姿で現れた。

 〈つる! 美人じゃなぁー〉

 泰明も霊能力者であり魂魄に、触れることもできた。

 〈セーちゃんに、渡して上げて。ところで、あなた! 裏ん町のはるさんに、ちょっかいだしてからに、くやしい~〉

 〈何いっとるのじゃ。つる! お前が一番好きじゃー。だが…〉

 〈だが、何よ〉

 〈女好きは、遺伝なんじゃー〉

 〈遺伝てぇー。あなたの前世の遺伝でしょ!〉

 〈そうー。怒るな。セーマンが待っているから行くな〉

 〈また、そうやって逃げる! 毎晩、耳元で歌って睡眠の邪魔をしてやる~~〉

 セーマンは、特殊インナーを作り直し、素材に銀の糸を織り込み、研究済の生命維持装置を組み込んだ。そして、麻理亜の脳波の研究に取り組み、同時に武器の開発も行なった。

 この季節。夕日の傾きが早く人々は、日が落ちるまでに帰宅を急いだ。町中は警察官や自衛官が銃装備をして警戒をしていた。

 「はぁー、やっと! で、でけたー! まりちゃん、変化してみて」

 変化した麻理亜は、手の甲に金剛石を埋め込んだ。

 「時と場所によって武器が変化する。魔物が現れるといる方向に光を差し、魔物が襲ってくれば氣をエネルギーに変えて、光線が使える。不浄の魂を浄化もできるし、物質にも効果があるよ。俺って、ほんま天才やなぁー。俺て」

 セーマンも変化して見せた。麻理亜もだがスーツ素材に織り込んだ銀の糸がきらきらと輝き、衝撃吸収率も上がった。セーマンの科学の力で物質の力に耐え、魔術や邪な者からも身を守ることができるようになった。

 「セーちゃんも、額に六芒星を付けたのー」

 「うん、能力増幅装置を付けたけど、変わりないわー。俺には力はないみたいや」

 セーマンは、麻理亜が霊能力を使う時に、が活発になり、松果體が何らかな影響を与えていることは解明していた。

 「……」

 だが、麻理亜は、まだセーマンの中に眠っている能力が、覚醒していないだけで、霊能力を持っていると云いたかったが、口を固く閉ざした。

 (…駄目、云えない。云えば、無理をしても松果體を覚醒させる)

 セーマンの眠っている闇の能力の巨大さに、麻理亜は口を閉ざし黙っていた。麻理亜は、話題を変えた。

 「セーちゃんの武器は、何か造ったの?」

 「金剛石の飛礫も作ったし、拳銃二丁を作った。名をセーマンスペシャル! 小型の大砲やな。弾は、5発の散弾内蔵弾。勿論、弾は金剛石、振動が凄いから人間には絶対に撃てない代物やー。人間が撃つと反動で両方の腕から肋骨まで骨は砕けて、凄い勢いで後ろに飛ばされるやろ。衝撃は、このインナーやアーマが衝撃を吸収してくれるからなぁ。こいつは、化物だ! 化物には化物で対抗する。それと、警察官仕様のニューナンブ38口径用にも金剛石で加工した。それと自衛隊使用の銃の弾にも二千発加工できた。警察も自衛隊にも手伝ってもらう」

 「今晩、封印する。いや、潰す!」

 麻理亜の手の甲の金剛石が、一本の光の線を放った。

 「セーちゃん! 金剛石の光が」

 まだ、夕日が傾いていたが、明るく闇の者が動くのは早かったが、麻理亜の金剛石の光が東の方角にしていた。

 麻理亜は、千里眼で鬼女の動きをつかんでいた。

 「セーちゃん、東に向かって移動している。セーちゃん、追うわよ」

 「麻理亜、待って!」

 「移動するだけで、筋肉に負担を掛けるから、左手首に付けている腕釧に右手で触ると腕釧が體を包み球體になる。説明するより、やって見るわー、見ててやー」

 セーマンは、蔵から出て庭に出てきた。魔王尊の石の欠片の残りを培養して腕釧を造り出していた。セーマンは、その腕釧を右手で触れると、腕釧がアメーバーのような生き物のように動きだして、銀色に光る物體になると、セーマンの體を包み球體となった。セーマンは、球體の中で麻理亜と交信し分かりやすく説明をしていた。その機體の中は、操縦桿やメーターなどの機械的なものは全くなく、機體に包まれている閉鎖感がなく開放感があった。自ら飛行をしているような感覚で死角はなかった。目線に応じて視界に邪魔にならないモニターが現れて、別の腕釧の機體との交信や他国の軍事衛星の映像を見ることもできたが、機械的ではなかった。セーマンの體の一部であり本人の思う通りに飛行し加速も減速もした。その機體は、細胞の集合體であり生き物でもあった。無重力装置が、重力に関係なく飛行ができ、瞬間移動の加速でも中の者にも重力はかからなかった。加速するたびに流線型の機體になり音速で飛ぶことができ、または、その場で球體から流線型の機體になると加速なしに光速に達した。原動力エネルギーは、地球上では二酸化炭素と太陽の光で動き、綺麗な酸素を排氣し、地球だけでなく宇宙空間でも飛ぶことができた。宇宙空間では太陽エネルギーと星間ガスの水素や窒素をエネルギーにしていた。宇宙空間では、常に地球上の氣圧と重力、大氣をたもっている。そして、その機體は、どんな物質でもプラズマのように擦り抜けることができた。

 セーマンは、再び庭に降りたち腕釧を解除し手首に戻した。

 「それって、目立たない?」

 「透明に変えることもできるー。今、分かりやすいように色をつけただけやー」

 麻理亜は、鬼女の気を見失った。

 「セーちゃん。金剛石が反応しなくなったよ! 千里眼でも、どこに行ったか分からへんわー?」

 「邪悪な能力を隠す為に、能力者の人の皮で邪氣を隠したのじゃー」

 「じいちゃん!」

 「奴も能力を持っている。公家の血を飲むのを止め、巫女や若い尼に僧侶の娘の血を飲むことによって本来の力に目覚めた。お前たちも目の当りにしただろう。いろんな神通力も使えるだろう。神聖なる血を飲み、麻理亜の千里眼に見られていることに氣づいたのであろう。奴は、もう能力者の血を飲む必要がなくなった。東に再び向かったことは、奴の行き先は、ただひとつ、東京の皇居だ! 女王や皇族の女性が狙われている。急げー。お前たちしか倒す者がいない。暴れてこい! そして、無にしてこい!」

 姉弟は、二つの球體になり急速に上昇すると東の方角へ飛び去った。風の抵抗は感じないが、星や町の光が流れるように見え、球體と一體化になり光速で飛び去った。

 鬼女は、京都から東京までの間にも人間の姿の儘、幾つもの人の血を飲み干して力を付けていた。飲み干した人間の皮を剥ぎ、邪悪な氣がでないように、数人の皮を被り闇になるまで姿を隠した。

 姉弟は、透明な球體の儘、皇居の上で監視していた。

 そして、辺りは闇になり闇の者が支配し魔物も動きだした。鬼女は、誰にも氣づかれずに都内に侵入し、血に飢え獲物を探していた。邪魔するものは、怨霊に食べられるか、憑依しては人々を襲い。殺戮を楽しんで、都内は混乱し人間が住む世界でなかった。

 都内に住む、お狐様が、麻理亜の側に集まってきた。

 〈葛の葉姫。都庁付近に怨霊が、暴れ人に取り憑いております〉

 天皇陛下も特別な祈りで平和をいのっていた。九条道孝と霊能力者の野間幾子と結ばれ娘を大正天皇に嫁がせて覚醒遺伝で昭和天皇は、あらゆる神通力の持ち主で現人神であり孫である唯一、天皇の血を引いている現在の天皇陛下も覚醒遺伝であらゆる神通力の持ち主であり、大正以降政府によって封印されてきた祝之神事を保江邦夫氏により復活され、現人神になった。三代、祝之神事の天皇に継承されなかった場合、国家が滅びるとされていた。現天皇が皇太子のとき、Aiエンペラーより力を持っていると世界の代表たちが皇太子に会いに来た。

 麻理亜は、千里眼で状況を見た。

 《セーちゃん。都庁で怨霊が現れたわ》

 セーマンは、既に衛星カメラで下界の様子を見ていた。

 《鬼ババァーの姿が、見当たらない。この怨霊は、俺たちの囮やろでー》

 《この怨霊は、儂に任せろ! 数が多いから、時間が掛かるがなぁ。お前たちは、鬼女を追え。それにしても、よう、こんだけ怨霊を集めたものだ!》

 「特殊インナー!」

 《えっ! じいー、まって…?》

 祖父・泰明は、特殊インナー変身した。

 《変身記憶を消した儘で、記憶してないのに? それに死にかけのじじいーが変身したら、直ぐあの世行きやでー》

 《だれが、死にかけのじじいぃーじゃ!》

 祖父が特殊インナーの姿で現れた。特殊インナーが、人物にあった形状にした。

 《マジかよ!》

 セーマンは、町の防犯カメラで祖父の変身した姿を見ていた。

 (天狗?!)

 祖父の姿は、修験道の姿で錫杖を持ち、顔は赤く、鼻は長く、身の丈は3メートルを超えていた。

 (何! そんなバカな?)

 セーマンのコンピューターと祖父のコンピューターと繋がっており、バイタルチェックの情報が、セーマンのモニターに表示された。

 (一體。じじいーは、いくつだ? 二十歳代の肉体?!)

 祖父は、で怨霊を叩きのめしていた。

 (凄い運動量だ。だが、運動負荷心電図も異常はないが、運動前と変わらない)《じじいぃ。凄い。そっちは、任せるわ》

 《よっしゃ! こっちは、儂に任せ!》

 鬼女は、その混乱のなか巫女の姿の儘、血が滴り落ち、何枚も重なった人の皮を羽織り、外苑東通りを南に向かい慶応義塾大医学部付近を一人、血腥い人間の皮を被り歩いていた。異様な姿に警察が近づき銃を構え制止を求めた。

 「止まりなさい!」

 一人の警官は本部と連絡をとり、もう一人の警官は尋問を始めた。

 巫女は、被っている人の皮を脱ぐと、そこには若く美しく白雪のような透き通る肌に、人を惑わす女の魅力と秋波で、警官を見つめ惑わした。

 「なんと美しい!」

 巫女に化けている鬼女は、腰に隠し持っていた妖刀で一人の警官の首を刎ねた。もうひとりの警官は、巫女の目を見ると魂が抜けたように、その場に座り込んだ。鬼女は、再び人の皮を被ると赤坂御用地に向かっていた。その場から鬼女がいなくなると、腰が抜けた警官は警視庁に連絡し、赤坂御用地前に自衛隊や警官が銃装備で警戒にあたっていた。

 「そこの女性ー。止まりなさい」

 「何だ。筒状な物をこっちに向けて、刀なしで妾に勝つつもりかへ?」

 鬼女は、赤坂御用地の周囲には武装した自衛隊をいるのを確認すると妖刀に住む夥しい数の平家の怨霊たちを出し、怨霊の集合體である巨大な怨霊を四體作りだし暴れさせた。自衛隊や皇宮警察も銃器で応戦したが、この世の武器では全く通用しなかった。

 《セーちゃん。現れたわー。行くわよ!》

 《まだだ。まだ、動かない! この世の武器が、通用しないことに悟り、そして、俺たちが必要だと悟るまで動かない。追いつめられギリギリまで動かない。で、ないと俺たちの有り難みが、分からないだろう》

 自衛官や警察官は、銃口を鬼女たちに向け、一斉に撃った。

 「撃て!」

 一斉射撃で、銃声が鳴り響き、夥しい数の薬きょが地面に落ちた。

 鬼女と巨大化した怨霊は、じわじわと前へ進んだ。

 「後退!」

 自衛官は、後退しながら鬼女に発砲を続けていた。

 《セーちゃん。弾を渡さないの?》

 《自分ら無能さに、氣づくまで渡さない。これで、身に染みて常識が通用しないことがわかるやろ!》

 「隊長。駄目です。銃がききません」

 そのころ、正倉院の兄弟矢である金の矢が鬼女に反応し「キーン、キーン」と矢から音を出していた。

 《そろそろ。動くかぁー》

 姉弟は、既に御用地上空で静止し、鬼女を待ち受けていた。そして、セーマンだけが先に第一形態し急降下し、一瞬にして鬼女の目の前に現れ地面に右の爪先が振れると體を回転させ、回し蹴りが鬼女のを捕えた。

 鬼女の體は、二〇メートル程飛ばされた。

 (あれ? 體が軽い! いままでの、動きとちがう。能力が上がっているの!)「まいどー…。あのときの借りは、倍返しやでー」

 鬼女は、華奢な體がゆっくりと立つと美人の巫女の姿から般若の形相に変わると、體は一氣に巨大化になりセーマンを鋭い眼光で睨み付けた。

 「この、くそガギーーーーーーーがぁっ」

 不意をつかれた鬼女は、怒り狂っていた。刀を振り回し剣風が辺りの建築物を粉砕した。

 「そんなに、怒んなや!」

 麻理亜は第一形態に変身して、胸元で合唱し祓詞を唱えた。

 「掛けまくも畏き 伊弉諾大神 筑紫の日向の橘の小戸の……」

 麻理亜は、十拳剣を呼び出し流星のように光輝き鬼女に向かって一直線に急降下した。

 「もう! 誰も傷つけさせない」

 セーマンは、麻理亜と交代し、セーマンは自衛隊や皇居警察の司令官に金剛石で作った千発の銃弾を渡した。

 「この弾を使ってください」

 「あなたが、総理が云っていた。内閣直属の陰陽師ですか?」

 「まぁー。そんなとこやー。あなた方の力も借りたいのです。少しの時間でいいのです。手伝ってください。お願いします」

 「分かりました」

 「この弾なら、怨霊ぐらいは、効き目があるでしょう」

 セーマンは、金剛石を加工した弾丸を別の位置にいた警察・自衛隊関係者に千五百発の弾丸を渡した。

 「この弾をブチ込んでやってっ!」

 セーマンは、麻理亜と交信した。

 《まりちゃん! 今から一斉に射撃するから上昇して》

 自衛官、警察官が一列に並び一斉に発砲した。

 「撃てぇーーーーー!」

 麻理亜は、上昇し鬼女に向けて一斉射撃をした。

 「ギャー、ギャー、グワァー」

 鬼女の全身に夥しい弾丸が命中した。金剛石が、邪悪な妖氣を吸収し、金剛石の本来の輝きがなくなり、金剛石は茶褐色に変色した。その変色した弾丸は、地面に落ち崩れるように土に帰った。

そして、怨霊の念は浄化されて魂は成仏した。

 「ギヤァー」

 「撃てぇーーー」

 鬼女は、痛みに耐えながら妖刀から夥しい怨霊たちを出し、集合體の巨大な武者を新たに作った。怨霊たちは、鬼女や怨霊に殺された魂を盾に弾丸を受けとめた。

  痛い~。助けて~。お願いやめて~。

 怨霊は、殺された魂が喚き苦しむのを見て嘲笑っていた。殺された魂は、痛みが怒りに変わり、怨霊の仲間になり、自衛官や警察官に憑依して警官や隊員がお互いに銃で襲いだした。

 「怯むな撃て! わぁー」

 悲鳴と銃声が鳴り響き、精神的に追い詰められた自衛官や警察官たちは、憑依されていない者でも撃ち合いが始まった。

  ワオォー

 自衛官や警察官が、撃ち合っている。その時である。一匹の白と黒の虎毛の大型犬が現れて来た。憑依されている隊員や警官に吠えると怨霊を浄化し、憑依された者たちは正氣を取り戻した。

 《何や! あの犬は何?》

 全く霊感のないセーマンには、初めて見る生物であった。

 《あれは、日出美よ》

 《日出美!?》

 日出美は、中型犬の柴犬であったが、その姿は立派な大型犬の本来の秋田犬の姿であった。そして、新たに変化をして、神獣・獅子のような大きさに姿を変えていた。日出美の首輪が金のネックレスになっていた。

  ワオォー

 《額に角が…。電氣を帯びている》

 日出美の額には、一本の角が生えていた。

 「お前は追帳鬼神の生まれ変わりだな。お前たち三兄弟の裏切りがなければ、この世は鬼の天下だったものの。封印された恨み、今、晴らしてやるわぁー」

 鬼女は、日出美を睨みつけた。日出美は、自らの體を青白い光を発光させた。

  ワオォー

 日出美は、身構えて態勢を低くすると、その場から姿を消し、鬼女に向かって一本の光が流星のように走り、上下左右に曲がるときには、直角に曲がり、鋭い牙と鋭い爪が鬼女の體を引き裂いた。

 ギヤヤャアーーーーーーーーーーーーー

 日出美は、上空にいた麻理亜の側に静止した。

 〈日出美が、来てくれて心強いわ。ありがとう〉

 〈今度こそ、お前の魂は逃さない。この日の為に、神徳を積み、あらゆる神通力を身に付けた〉

 その時。巨大な怨霊の武者は、じわじわと皇居に向かって前進していた。金剛石の弾丸を浴びていたが、あの世に行けない霊や反乱や戦で亡くなった霊や戦争に巻き込まれたて、無念のまま亡くなった霊たちを吸収し始めて怨念を餌に、巨大な體を維持していた。

 「なんやなんや? 體が大きくなっているやん?」

 セーマンには、霊的なものが見えなく、状況が掴めなかった。

 「何でもいいわ。ブチ込んでやらぁー!」

 セーマンは、巨大化して怨霊の頭上が無防備なところに氣づき上空からセーマンスペシャルを打っ放した。

 ドォーガーン!

 「どないじゃ! われ!」

 発射された散弾は、怨霊の集合體を一瞬として消し去った。警察官や自衛官に配付した金剛石が底を尽き、撤退を余儀なくされた。

 「撤退!」

 「撤退せよ!」

 怨霊は、弾丸がなくなったことに氣づいた。残りの四體の巨大化した怨霊は、自衛官や警察官を襲いだした。

 「貴様らー 人間の分際でなめやだってー。怨霊の一部にしてやる。有り難くおもえー」

 怨霊の集合體は、口から夥しい数の怨霊をだし、再び自衛官に憑依させ目つきが変わり、再び仲間を見境なく実弾で発砲し始めた。

 自衛官が、自衛官を撃ち殺しあった。

 セーマンは、パニックなっている自衛官を見るだけで、どうしていいのか全く分からなく、見ているだけであった。

 《まりちゃん。どうしたらいいんやぁー。なにが、なんやら分からん!》

 《日出美を、そっちに行かすわぁ》

 〈日出美。ここは、和多志だけで、いいから憑依した怨霊を祓って!〉

 日出美は、お互いに撃ち合っている自衛官の前に降り立ち、怨霊に向かって吠えた。

  ワオォー

 怨霊は、隊員の體から取り去ったが、集合體の怨霊の體の中に戻っただけであった。

 〈逃げ足の速い、奴め!〉

 「日出美。その怨霊から離れろ!」

 そして、セーマンは自衛官の前に立ち塞がり、集合體の怨霊に向けて二発の散弾を打っ放し一體の怨霊を消し去った。

 ドォーガーン。

  ドォーガーン。

 (やっぱり、一発だと半分残りやがる。威力は、衰えないものの。頭上から撃ったほうがいいかー。一発で済むからなぁ。 無駄に弾を使えない)

 麻理亜は、司令官に皇居の中に避難するように無線で指示した。

 (皇居の中なら四獣の結界で、怨霊も魔物も入れないはず!)

 皇居は、江戸時代は江戸城であり、南光坊が風水・陰陽道に基づいて、江戸幕府の設立に貢献した。平安京と同じ二重三重の結界で怨霊から守っていた。だが、幕末に水戸の徳川慶喜が将軍になって幕府は滅びた。水戸は、代々副将軍として将軍になれなかったのは、江戸城から鬼門の方角が水戸であり、水戸の者が将軍になれば、滅びるとさけていた。だが、水戸の徳川慶喜が将軍になり江戸幕府が滅びた。その結界に、目に付けた日本帝国軍は、天皇を北極星として日の当る場所へ誘った。

 《司令官さん。軍人さんを皇居の中に避難させてっ》

 《分かった。でも、どうして?》

 《詳しいことは、あとで、兎に角。皇居の中には怨霊や鬼女は入れないの…ブチッ》

 麻理亜は、一方的に無線を切った。

 セーマンは、上空から怨霊を狙い撃ちにした。耳を押さえたくなるような爆音を鳴り響いた。

 (くそー、弾切れかー、あと一體残っているのに)

 「隙があったら、かかってこんかい!」

 セーマンは、独鈷柄剣を左に持ち、巨大な怨霊の足下を狙っていた。セーマンは、金剛石のを投げ込みながら接近しながら、斬りつける戦法をとった。

 「日出美! まりちゃんに応援に! ありがとう」

 その時。京都市山科区にある坂上田村麻呂の墓が光ると夜空に向けて光を放ち一本の光の柱ができ、その光の柱の頂上には小さな発光體の球體が輝いていた。柱は細くなり発光體は柱の光を吸収するように球體は大きくなり柱がなくなると発光體だけが夜空に輝いていた。その発光體が山科の上空を浮遊すると、将軍塚の塚の中に入ると、その塚の中にある甲冑と剣や弓矢を持った田村麿の像が、大きな音が鳴りだした。

  ゴ~ンー。ゴ~ンー

 将軍塚鳴動が起き、京の夜空に鳴り響いた。

 そして、再び発光體が上空に上がり、夜空で静止すると流れ星のように東に向かって飛び、セーマンと発光體が融合し特殊スーツが第一形態の儘であったが、戦闘系の装備にし、新たな特殊アーマーが現れた。

 「えっ! 何? 勝手に変化した?」

 〈俺の甲冑と剣を使え!〉

 「なんだ。この耳元で声が聞こえる感覚は…??。あの時と一緒や?」

 〈お前に、現代人が忘れた。古代人の全ての知恵と技術を教えよう〉

 セーマンは、怨霊と戦闘中であったが、セーマンの脳内に古代人の未知の知識が一瞬として流れ込み、知識が溢れるように増えた。UFOの原動力や人間は別の星から移り住んだ異星人であること異星人アルザル人が、日本人の祖先などテクノロジーや人類の謎を知識として与えた。

 (す、凄い! 俺の頭の中に、知識が増える! 俺が造ったUFOと異星人アルザル人が造る。UFOと同じ!)

 〈セーマン。相手に集中しろ! 戦い中は、全力で戦え。相手の力量を見極めることは大事だが、勝ち目があると見下し手を抜く。お前の悪い癖だ。どんな相手にも全力で戦うことが、戦士であり相手に失礼だ!〉

 一方の麻理亜は、上空から聖矢を放っていた。その矢の鏃は、神氣を宿した金剛石でできていた。麻理亜の妖狐の妖氣と菩薩の神氣が、聖矢に宿り一本の矢を放てば、無数の矢になり、鬼女に無数の矢が追跡ミサイルのように襲い出した。払い退けられる矢もあったが、邪悪な者に刺さるまで矢は追跡を始めた。この神業は、麻理亜だけができる技であった。

 金剛石の鏃は、鬼女に刺さり妖氣を吸い込み、本来の輝きがなくなると飛礫と同じく茶褐色となり鏃の金剛石は土となり、矢の軸・棒の部分であるが腐敗し消えてなくなった。鬼女の傷は能力者の血で治癒し治ったが、再生する力と金剛石に妖氣を吸われて、體も段々と小さくなっていった。

 「大分、妖氣が失われてきたようだわね」

 だが、未だ未だ能力は麻理亜より、数段上回っていた。

 「又しても、このどぎつねがぁー」

 麻理亜の聖矢に傷つき妖力を吸われて鶏冠にきた鬼女は、妖刀から殺せれた霊や成仏したいと願う霊を引き摺り込み、その霊の集合體である甲冑を、鬼女は身に纏い身を守った。

 麻理亜は、甲冑が怨霊の集合體でなく、成仏したいと願っている霊の集合體と知らずに、聖矢を放ち無数の矢が甲冑を射った。

  ギャァ~。助けて~

  ギャァ~。助けて~

  お願い。助けて。あの世に行きたい。

  助けて~。

 聖矢を鬼女に命中する度に、甲冑化した霊が泣き叫びもがき苦しんだ。

 〈はぁっ! あの世に行きたい霊で身を守るとは、卑劣な!〉

 〈相変わらず。卑怯だな! 鬼女!〉

 鬼女は、麻理亜と日出美が上空に静止している上空まで飛び上がり、巨大な妖刀で麻理亜を襲った。麻理亜は、甲冑の霊たちの悲鳴に攻撃ができなくなり、一方的に攻められていた。鬼女に殺された霊だけは、これ以上の苦しみを与えたくなかった。若しも、その霊たちを斬ることで痛みと憎しみが怨念になり、成仏したい霊までもが怨霊となるからだ。そして、麻理亜が持つ神剣が、邪悪な者として甲冑の魂魄をも斬ってしまうからだ。

 だが、麻理亜は秘策があった。

 (甲冑と妖刀を何とかしないと…)

 麻理亜は、接近戦に持ち込み弓矢から草薙剣に持ち換え、妖刀だけを狙いを絞っていた。能力が増したのは鬼女だけでなく、姉弟も赤い八咫鴉の力とアーマーの開発で能力も上がり、アーマーそのものが、生命維持装置となり筋肉の負担にも掛からずに、戦闘時間が飛躍的に延びていた。それと、セーマンのアーマーには、征夷大将軍であり神と祀られている坂上田村麿の力が、セーマンの體に宿り能力が上がっていた。

 〈日出美。和多志が、鬼女を引きつけるから甲冑の霊を浄霊してほしい!〉

 〈全部は無理だ。一部なら浄霊できるが〉

 〈一部で十分だわ。あの甲冑に穴を開けてほしい〉

 日出美は、鬼女に向かって吠えると、口から光を放射した。

  ワオォー

 眩い光は、鬼女の右側の胸甲に当たり、暖かい光に、霊は甲冑から離れ、歓喜の涙を流しながら天に向かって成仏していった。

 ありがとうー。ありがとうー。ありがとうー。

 天に召される仲間を見て、甲冑の霊たちは日出美に手を合わせて、次から次へと慈悲を求めた。

 和多志も光をください。和多志も……。

 お願い。和多志も光をください。和多志も……。

 神様。和多志も光をください。和多志も……暖かい光を…。

 日出美は、甲冑に向けて慈悲の光を充てた。

  ワオォー

  ワオォー

  ありがとうー。ありがとうー。ありがとうー。

 日出美から発する光に霊たちは、成仏し涙を流しながら天に昇り始めた。

 「逃すか!妖刀に吸い込んでやるわー」

 鬼女は、成仏する霊たちを妖刀の中に封じ込めてた。

 「絶対に、ゆるさへんし!」

 麻理亜は、鬼女の卑劣なやり方に刃を向けた。

 「ゆるさへんし!」

 東京中に、麻理亜の京都弁の怒声や刀と剣との金属音が鳴り響き衝撃が大地を揺らしていた。

 麻理亜は、焦りが見え剣も乱れだした。一氣に攻められ動揺した麻理亜は、無意識に変化を唱えた。

 「第四形態!」

 セーマンは、耳を疑った。麻理亜は、既に第三形態をしていた。これ以上の変化の記憶はしていなかった。

 「へっ、変化はできへ…ん。えーっ。マジでー?」

 放射光に包まれた麻理亜の姿形は変わりがなかったが、白狐の妖力を超え神秘的な眩い光を放ち、西洋の女神が麻理亜の後ろに現れ守護していた。その光に、鬼女の甲冑が崩れだし、妖刀の中に閉じ込められた霊もが、麻理亜の光に導かれて悟り、鬼女から離れ天に向かって成仏した。

 「逃すかー」

 鬼女は、霊を妖刀の中に封じ込めようとしたが、麻理亜の放射光が勝っており、霊は天へ召された。

  ありがとうー。ありがとうー。ありがとうー。

  ありがとうー。ありがとうー。ありがとうー。

 甲冑がなくした鬼女は、麻理亜と日出美に一方的に攻められた。

 その時。セーマンは、巨大な怨霊を遠間から飛礫を撃ちながら、一足一刀の間に入ると刀で斬りつけ攻めまくりていた。

 「オラオラオラオラオラー」

 無数の飛礫が、巨大な武者の體に命中し、體も徐々に縮みだした。

 「オラオラオラオラオラー。あら! 飛礫が、無くなった!」

 飛礫がなくなり、刀を振り上げて互角に戦っていた。セーマンは、坂上田村麿が入神したことと、麻理亜の放射光を浴びることで、松果體が開花し潜在能力が覚醒し、第三の目に目覚め神通力を得た。そして、セーマンの右目の双瞳が、ブルーの光を放射していた。

 (俺の瞳から光が……)

 〈セーマン。光の方向を見ろ〉

 その光は、一定の方角を指していた。セーマンは上空へ飛び光の指す方向を確認した。

 「ガキー。どこ見ている!」

 怨霊は、セーマンに斬りかかってきたが、セーマンの目には、巨大な武者の動きが一齣々々止まって見え、巨大な刀をいとも簡単に払い除けると槍のような蹴りが、武者の胴をに食らい。地上に蹴り落とされた。

 (あの神社は?)

 《コンピューター。ナビ検索!》

 《神田明神です》

 セーマンの視界には、視界を防ぐことなく目から30センチ離れたところに文字だけが現れ、神田明神の祭神が表示されていた。

 (神田明神!?)

 セーマンの脳に直接、話しかけてきた。

 〈小彦名神の命により、将門の力を使うがよい〉

 平将門命が、セーマンの體の中に神が入神した。地上に降り立ったセーマンを見て、鬼女と怨霊は大声で笑った。

 「ハハハッ。選りに選って将門に憑依され、心を奪われるとは、笑止なことよ」

 将門は、鬼女と平家の怨霊の集合體に向けて一喝してすると、セーマンが持っている神剣の刀身が巨大になり、瞬間にて巨大武者がいる。地上に向かって着地すると同時に、固い甲冑を真っ二つに一刀両断した。その神剣は、全ての霊、全ての怨霊の念を関係なしに救霊し将門の慈悲で助けた。

 「どっりゃー」

 セーマンの體を使っている将門は、放射光を放っていた。その姿は、神として祀られた神の姿であった。

 「何!」

 麻理亜は、鬼女に一喝した。

 「不利なのは、あなたよ!」

 鬼女は動揺し、麻理亜とセーマンに目線が往復に移動していた。

 「……」

 一氣に間合いに入り、鬼女の喉に草薙の剣が貫いた。

  ギッエェィー

 「浄化!」

 草薙の剣が眩い光と熱を発し、鬼女の肉体を消滅させた。

  ギヤヤャァー

 肉体がなくなり、鬼女の姿がなくなった。

 「終わったのか?」

 セーマンは、麻理亜の方を中心にキョロキョロとしていた。だが、麻理亜は辺りを警戒して剣を構えていた。

 〈セーマン。まだ、鬼女の本體は、この世に残っている。妖刀も、この世に存在する。何を仕掛けてくるか分からない。警戒しろ! 狙ってくるなら、お前たち姉弟の肉体だ。氣をつけろ!〉

 (確か、怨霊たちから微弱な磁氣エネルギーが発していたな!)

 セーマンは、神通力に目覚め神託の力を得ていたが、霊體は見えていなかった。

 《コンピューター。磁氣スペクトル、オン。X線解析、オン。超音波解析、オン。赤外線解析、オン》

 《ピッピッピッ》

 麻理亜は、邪悪な氣配を感じ、神氣の放射光をより大きく眩い光を放ち、触覚の役目と千手観音の神眼で、鬼女の魂魄を探していた。

 〈セーマン! 汝の體も、神の光を放ち邪悪な鬼女から身を守るぞ!〉

 セーマンの體に神が、入神していた坂上田村麿と平将門命が、セーマンの神格化して、セーマンの體にも放射光を放った。その光に邪悪な鬼女の魂魄が近づけなくなった。

 《ピー》

 (いた! あっ! 消えた……)

 セーマンの兜のコンピューター画面上には、鬼女の魂魄のエネルギーが赤く表示された。

 《ピピピ!》

 《まりちゃんの鬼女の標的データをそっちに転送する。消えた! あっ! 段々、遠ざかる…。逃げるのか》

 麻理亜とセーマンは、同じ方向を見ていた。

 《セーちゃん。見えるの?》

 《あー。科学の目でね!》

 鬼女の魂魄は、麻理亜の神眼の目にも、セーマンの科学の目にも魂魄が見えていたが、現れたり消えたりして移動していた。

 《逃げるのか、遠ざかるぞー》

 その時。鬼女の魂魄は完全に消え、辺りは静まり返り、人々や自衛官や警官が続々と皇居の外へ出てきた。

 〈セーマン。麻理亜。狙いは自衛官と警官の血と肉体だ! 早く皇居の中へ、戻せ! 急げ、麻理亜! セーマン!〉

 平将門命は、テレパシーで麻理亜にも語りかけた。

 《皇居から出るな!》

 麻理亜とセーマンは、自衛隊と警察の無線で皇居の中へ戻るようにいった。

 「あっ! 超やばい!」

 姉弟は、一斉に剣を構え、日出美は身構え角を向けた。麻理亜は、上空から上段で構えて、セーマンは地に足を付け八相の構えに構えた。日出美の角から電氣を帯びると、姉弟は剣を振りきると、激しい氣流の剣圧と、日出美の電撃の轟音とともに鬼女の魂魄に向かった。

 「やったか?」

 姉弟らの攻撃は、鬼女の魂魄をすり抜け、皇居の結界に直撃し結界は電氣を帯びていたが、皇居の結界はびくともしなかった。鬼女の魂魄は、日出美の電撃に魂魄を道にした。

 「これなら、俺の目にも見えるぜ」

 赤い霧のような魂魄が、形を変えて動き妖刀を掴んでいた。

 《セーちゃん。待って!》

 麻理亜はセーマンを止めたが、既に赤い霧の側におり、剣を振り下ろしていた。

 「もらった!」

 セーマンの剣は、赤い霧を真っ二つに斬ったが、手応えもなく振り斬っただけであった。

 (えっ。剣が!)

 セーマンの剣は、赤く錆てボロボロと剣は錆となった。

 「お、お、俺の剣が……」

 〈セーマン。集中しろ!〉

 セーマンは、自信があった自分の剣が、いとも簡単に錆と崩れてプライドをズタズタにされ放心状態であった。

 〈セーマン。しっかりしろ!〉

 「ウソだろう……!」

 田村麿や平将門が、神通力で脳に直接に語りかけていたが、セーマンの心には届いていなかった。鬼女の赤い霧が、セーマンの體を包んだ。

 〈セーマン。息を止めろ〉

 田村麿は、セーマンの脳波を使いコンピューターを始動した。

 《コンピューター。外氣遮断。生命維持装置・オン》

 〈セーマン。しっかりしろ!〉

 「はぁっ!」

 セーマンは、我に返った。

 〈氣をしっかり持て、第一形態のアーマーが錆だしてきたぞ。早く脱出方法を考えろ〉

 セーマンの直ぐ後ろから、鬼女の声が聞こえた。

 〈坊やの肉体を貰い受けることにしたわぁー。この世を破壊し、再び、この鬼一族が、創造神になり、人類を奴隷にしてやる。先住民である我ら一族の恨み晴らしてやるわー。このモンゴロイド異星人どもがぁー〉

 《コンピューター。外氣成分分析》

  ピピピピッ!

 セーマンのコンピューター画面に、赤い霧の成分が表示された。

 『アンモニア40%。イクシオトキシン35%。グラミミジン20%。アコニチン0.5%』

 (どれもこれも、猛毒じゃないか! 赤いのは、血清の色か。イクシオトキシンのタンパク性の神経毒か……。何! 致死量の五倍の濃度のグラミミジンが…。體の中に入れば、死は免れない)

 《警告。警告。酸素残存量。30秒!》

 麻理亜と日出美が、赤い霧に近づいてきた。

 《来たらあかん。毒ガスの塊やー。離れてー》

 《どうするの?》

 アーマーは、錆続けて赤く脆くなって、砂のように崩れだした。

 (アンモニア……。そうや! アンモニアを引火させるか……。含有量が40% 発火点を上回れば、十分爆発する。やばいなぁ。アーマーが崩れてきた。熱に耐えきれるか?)

 《コンピューター。アンモニアの発火点を調べて》

 《651℃で発火》

 《まりちゃん。651℃以上の火を発生できるか》

 《できるけど、どうするつもり》

 《赤い霧を爆破する》

 《でも、セーちゃんは大丈夫?》

 《大丈夫。早くして酸素がなくなった》

 《分かったわー》

 麻理亜は、安倍四天王の泰茂と泰忠の神剣を麻理亜の聖なる力でひとつにし、上段に構えると、剣の回りを炎と風の渦が温度を上昇させて、側にいた日出美は、角がなくなり、日出美の體が灼熱の聖なる炎に包まれた。

 〈日出美。行くよ〉

  ワン! 〈いつでも、いいよっ〉

 麻理亜は神剣を振り下げ、日出美は口から炎を吹いた。ふたつの炎は渦を巻き、更に温度を一氣に上昇させて800℃に達した。

 その炎が、赤い霧の中に入ると、アンモニアを蒸発させ爆発性のガスが発生した。ガスは、火に引火して赤い霧の中の猛毒共々、爆発し灼熱の炎で、全ての毒を蒸発し消し去った。

 「日出美!」

 日出美は、爆発した炎の中に入り込み、鬼女の魂魄を捜しに入った。

 《セーちゃん?》

 《ここや! アーマーが吹き飛んだ。変形した腕釧の球體の中にいる》

 セーマンのアーマーは、爆発で飛ばされて、兜の一部だけ残っていた。周りの人々に、顔がばれないようにセーマンは、腕釧の透明な球體の中に姿を隠し、日出美の姿を探していた。

 (日出美は、何処に行った!)

 物凄い爆音と爆風に、赤い炎は立ち上り、闇の空を赤く染めていた。その立ち上る炎の中から日出美が現れた。その日出美の口には、鬼女の魂魄を銜えていた。

 〈追帳鬼神、助けて~〉

 〈地獄に落ちろ。俺の口の中は、奈落の底だ。暗く広く誰もいない地獄の中で、永遠に懺悔し続けろ〉

 〈追帳やめろ~。お前は、ヘブライ人とアルザル人の味方をするのかぁー。助けてくだされー。皇子さま~〉

 日出美は、飲み込み奈落の底へと落とした。

 将門はセーマンの體から抜け、神の姿で現れて妖刀を掴み取った。

 だが、魂魄は奈落へ落ちたが、宿り主の體は、この世に残っていた。

 正倉院の金の矢が、その場から消えて麻理亜の手に持っていた。

 将門公が麻理亜に云った。

 〈麻理亜よ。その矢で宿り主の體を頭から差し込み貫通させよ〉

 麻理亜は、将門公が云ったように宿り主の頭から體を貫通させると緑色の炎に包まれ、宿り主の魂魄はなくなっていたが、痛みに叫び、辺りを走り回り灰になり金の矢だけが地面に落ちていた。

初めての小説です。良ければ最後までお読み下さい。

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