第14話 エンハの森
暫く木こりの様に木を切り崩した。
エンハの森と名があったがラスティは気にも留めず、木材を収集した。
素材の手持ちをとにかく増やしたい。
単価が安くても需要があるのならまとめて売却できる。
そう考えたのだ。
せっせと単純な作業を繰り返して在庫を増やしていく。
幹を切断し切り株は残した。地中の根には毒素を含むものもある。
道具屋の子息の彼だ。多少の知識は携えている。
何かの薬の材料になるかも知れないが、彼はそこまでの知識をまだ持っていない。
毒に侵されたくはない。それを用心した。
無難に材木となる部分だけを切り、収納していく。
切り倒した木を薪サイズに切り分けて、細長く削いでおいた木の皮を巻き付けて束ねて行った。そして収納。
薪の束100個。
葉のついた丈夫な枝や、葉や木の実なども採取した。
「これはエンハの木。エンハの枝、エンハの葉。木が丸いのは普通だけど葉っぱがまんまるだな。僕の手のひらよりもずっと大きい」
エンハの木は「ヒノキ質」と表示されて主にテーブルなど家具の素材に使用されると自動鑑定で判明している。
「うちのテーブルも材質はこれだろう。明るい感じの心地よい色合いだ」
100本もの木を切り崩したのだから周囲は切り株だらけ。
「あんまり切ると自然破壊にならないか? 森の動物がいたら可愛そうだ」
様子を見ながら伐採してきたが動物のいる気配は今のところない。
ラスティは生き物がいないことへの不思議さとともに安心もあった。
魔物じゃなくても畑を荒らすような害獣だったら怖いからだ。