第12話 採取修行
跡継ぎの為に生まれて初めて村を出る。
それも一人旅。
そして、ラスティは最寄りの街へ向かう。
道中で採取した道具を売るために。
軍資金を調達するテクニックを身に付けるための彼の修行が始まる。
まずマップを確認する。
自分の村以外になにも表示がない。
ラスティは左腕をスッと水平に軽く薙ぎ払いながらマップを見る。
半径3kmほどのエリアがマップ上を照らし、マップ解放が為された。
「わお、素晴らしい!」まだ村を一歩出ただけに過ぎない。
なのにそれだけで周辺の情報を知ることが許されるなんて。
道具屋って便利だな。
ラスティの両目は輝きを放ち、マップビューに釘付けだ。
マップは「道具使いの心得」から得たスキル。
持ち主視点で視界に映る情報の全てを「ビュー」と呼称する。
「この道具を買った冒険者は当たり前の様に使いこなし、重宝してるんだよな」
ときめきが彼の胸を躍らせる。
ラスティは足元を見る。
舗装のない幅広な道。
よく人々が行き交う様で雑草は踏み倒されて地中にめり込んでいた。
ずっと遠くの方まで茶褐色の田舎道が続く、その地平線まで目を凝らした。
それが人の言う道だと彼の目にも良くわかる。
「目指す街まで一本道。大きく外れることさえなければ心配はないって聞いた」
道は右へ左へとゆるいカーブを描いている。
道の両脇は広い草原だ。
その向こうには小さく幾つもの木々が垣間見えた。
ラウタッカの周辺は風がよく吹く。気温は低めで肌寒さを感じる。
ラスティは秋口に行く紅葉ピクニック姿ぐらいのしっかりとした服装だ。
木々の合間に獣道がある。
深入りすればそれが森という領域だとマップ上には出ていた。
進む道の両脇に広がる草原とその奥の森林地帯。
右手にあるのは「ラウタッカ草原」「エンハの森」とある。
左手に広がるのは「ラウタッカ草原」「カクハの森」だった。