第10話 旅立ちの準備
継承の儀が終わると「ごくろうさん。頑張るんだぞ!」と長老。
それとお前はまだ見習いだ。村を一人で出て街へ繰り出すお使いをしてきなさい。
ラスティは長老より第一歩の試練を言い渡され静かにうなずく。
「ラスティよ。先ほど魔物を見たことがあるかとワシは聞いたな?」
「はい……」
「その時、お前が見かけた魔物が、お前に酷い呪いを移したのじゃ」
ラスティは言葉を失った。
自分が誰の言いつけも聞かずに村の外へ出たから。
「顔を上げなさい、もう過ぎたことだ。だがの、魔物はそのように恐ろしくもあるのじゃ。話の通じる相手ではない。見た目がどんなに可愛い姿であろうと心を許してはならん。倒せるチャンスがあるなら倒すのじゃ」
「でも僕のせいで……」
「ラスティ、村の周辺の魔物はザコだ。大人なら何とかなるレベルだ。そして、何よりも呪いは盾で防げるのじゃ!」
それだけ言うと彼は深い笑みを見せ、肩の荷を下ろしたように軽い足取りで店を出ていった。
「長老様……。そうか、知識のない者が不用意にふらつけばそうなるってことか」
ラスティはその場で深々と一礼をした。
店の扉を閉めて帰っていく長老の後姿に敬意を示す様に。
いつか両親の仇を討つ日がくるかもしれない。
討たせてくれるために跡継ぎを推してくれた、そう思いたかった。
その後、さらに数日が過ぎた。村でのんびりと過ごした。
お店を継いでも棚に並べる商品がそれほどない。
自分の看病や治療費のために売りつくされたのだ。
当然利益が上がらない。
思い切って村の外へ駆け出して見たらどうかと村人たちが提案。
呪いの魔物がいる外の世界に。
ラスティは辺境の村を脱して、小さな街へ行くことを推奨される。
この数日で【鑑定】スキルもいくらか理解した。
レベルは1だけど。
【底名死】の収納魔法も使用できるようになった。
これは結構なんでも入る。
両手が届く範囲の身体の周囲にその異空間が存在する様だ。
だからどんな姿勢でも出し入れが可能なのだ。
家の中の備え付けられてないもの、外の樹木などその場から動かせないものは論外。
机、椅子、ベッド、書棚。冷蔵庫はいらないな。【ぬか床】があるから。
おまけに収納魔法はモノが腐るわけではないと知った。
【採庫のカギ】は自分のレベルが低い。
まだ使用できない様だ。
村人の話では両親の道具屋としてのレベルは100越えと大ベテランだった。
瀕死の彼を救えるほどの道具を採りに行くにはそれぐらいの知識と経験が必要。
両親の存在が失われることはこの世の損益であると悟る。
【朽ちた日没】というランプは。
夜になって村の暗がりを散策した所、体から発光するのを体感した。
見たい場所を意識するだけで集中的にそこを沢山照らしてくれた。
身体がかなり便利になって来た。スキル持ちって最高に便利だ。
【合わせツボ】の中に親たちが試行錯誤した代物がいくつか残されている。
どうやらレベルが高いものらしくて、今はまだ完全に鑑定しきれていない。
でも、ツボの中に残されていた道具の種類は3種類だ。
ラスティは鑑定スキルでそれをすでに判明させていた。
手に取ると各名称だけは見える様だ。