第一章 登場キャラクター紹介
シェリス・ツィンテルバス / シェリス・アーシュ
本作の主人公。現魔王にして魔界の最高統治者。かつては武力で先代魔王を殺害し王位を奪い、人間とエルフの国々に戦争を仕掛けた超武闘派であった。だが二十年前のある出来事をきっかけに男性エルフのクルイ・アーシュと出会い、愛し合い、結婚。その後三児の母となった。性格や物事への姿勢も当時とは大きく変化している。エルフ族を生理的に嫌悪しているが、家族に対しては深く誠実な愛情を抱いている。彼女の中での優先順位は家族が他の何よりも遥か上に位置するようだ。だが部外者や敵に対しては極めて冷酷非情。世界征服の野望を今も捨ててはいない。彼女の次なる獲物は愛する家族が住まうエルフの森である。
実力は絶大で歴代魔王の中でも疑いようもなく最強。数多くの自作魔法や奥義を持つ。最も強大な【魔王の力】の所有者でもある。その上料理、裁縫、観察、分析、推理にも長け、執筆能力も専門の文官に引けを取らない。まさに文武両道の王と言える。
最大の趣味はBL文化。筋金入りの腐女子である。魔王軍参謀タヴァルを主人公にしたBL小説を自ら多数執筆している。コレクションしているBL小説や漫画は万冊を下らない。男性二人の距離が三十センチ未満になると妄想が暴走する。だが自分の家族を妄想の対象にすることはない。
ちなみに、もし本当に世界征服を成し遂げたなら彼女が真っ先にすることは二つ。一、家族との再会。二、世界中の男性同性愛者を集め魔王城で鑑賞すること。
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ローラン・アーシュ
本作のもう一人の主人公。アーシュ家の長女。ダッシュの双子の妹。子供たちの中で魔王である母の戦闘の才を受け継いだのは彼女一人だけ。エルフ王国の騎士になることを夢見る、負けず嫌いで自信家、時に過信家なエルフの少女。エルフ騎士団予備団における最も輝かしい新星でもある。
クールで寡黙。口を開けば毒舌で少し天邪鬼な一面も。同時に男性すら嫉妬するほど格好良く流行のファッションを追いかけ、流行り言葉を使いこなすギャルでもある。だが家では素直になれないが心は優しく、母の愛を渇望し、家族を命懸けで守ろうとする頼れる存在だ。正義感と責任感が人一倍強く、他人に弱みを見せることはない。母シェリスとその強さを心の底から崇拝している。口には出さないがローランも心の中では母と手合わせしたいという衝動を抱いている。その驚異的な才能により覚醒確率が億分の一にも満たない魔族の根源的な力【魔王の力】の片鱗に触れている。同時に自ら会得した複数の奥義も持つようだ。第三者が見ている場面では意図的に本当の実力と戦闘スタイルを隠している。まだ騎士団の候補生だがその真の実力は既に正式な騎士団員の平均レベルを遥かに超えている。
母から学んだ「極悪非道な敵に情けは無用」という信念を信奉している。ためらいも揺らぎもなく己の敵を殺すことができる。母と同じく敵に対して一切の憐憫を持たず冷酷非情とさえ言える。だが彼女の剣は「殺戮」のためではなく「守護」のためにあると固く信じている。
創作の着想は「ギャルJK版ケンシロウ」。『北斗の拳』の主人公ケンシロウのような強さ、寡黙さ、正義感、そして愛と殺伐たる決断力を持ち、ギャル特有のユーモア、毒舌、流行や可愛いものが好きな少女としての一面も併せ持つ。
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クルイ・アーシュ
アーシュ家の大黒柱。善良で実直、料理の腕は壊滅的なごく普通のエルフの農夫。
しかし、まさしくその純粋で愚直とさえ言える優しさと愛情が、何年も前に力を失った魔王を救い、そして最終的に射止めた。彼はシェリスの正体を知りながらも妻を深く愛し、同時に彼女が故郷を滅ぼそうとすることに苦悩している。子供たちを守りたいと願いながらも、いかなる真の危険にも抗う力を持たない。それでも彼は自分の家族のために、自分のできる全てを捧げたいと願っている。心の奥底のどこかでは、自ら現状を変えたいという衝動も抱いている。
クルイはこの家庭の感情的な接着剤であり、嵐の中で最も無力で、しかし最も確固たる中心である。彼の存在そのものが、シェリスの「力至上主義」という信条に対する、最も強力な反論となっている。
ダッシュ・アーシュ
アーシュ家の長男でローランの双子の兄。非凡な才能を持つ妹とは違いダッシュは徹頭徹尾「普通の人」である。性格は温和で優しく戦うことはできないが、家事料理そして家族の世話においては驚くべき才能を発揮する。
妹に対してダッシュには何の強制力もない。性格においても実力においても双子の妹ローランには及ばない。妹の眩い輝きの下でダッシュはずっと自分自身の価値を探し求めてきた。幸運なことに彼の優れた絵の才能が変人な先輩ヒロカに見出され、ベストセラー小説『魔界より愛を込めて未来へ』のイラストレーターとなり、自らの創作の道を開いた。だが妹と比べて彼の劣等感は未だに拭いきれていない。
感情的で短気で直情的な性格の妹ローランとは違い、ダッシュは「理性」と「冷静」をより重視する。いかなる時も最も冷静で、最も論理的で、最も効率的な方法で問題を考え解決しようとする。
だがその反面、ダッシュは自分自身の恋愛問題には非常に鈍感である。幼馴染であるキアナの恋心に全く気づかず、彼女をただの親友としてしか見ていない。あるいは今後、何か進展があるのだろうか?
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ランシェ・アーシュ
アーシュ家の次女で末っ子。長い間母の愛に飢えていたため極度に内向的で臆病かつ繊細になってしまった。家庭の中で最も庇護を必要とする存在。口下手で唯一の趣味は薬草学の分野で見せる驚くべき才能。
物心ついてから母と過ごした時期のある兄や姉とは違い、ランシェが覚えてからずっと母シェリスはそばにいなかった。幼い彼女は兄や姉から初めて母の話を聞いた時から「母親」という存在に興味と好奇心と不可解さを抱いてきた。兄や姉以上に母の愛を渇望している。そのためシェリスが何年も経て帰郷するたびランシェはできる限り母に甘え接触し母を理解しようとする。
しかしそのか弱い外見の下に彼女は何か巨大な秘密を隠しているようだ…。
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ソラ・マータ
エルフの国の権力者マータ公爵家のお嬢様。一見すると「悪役令嬢」のようだがその実態はローランの熱狂的なファン。アイドルの気を引くために様々な幼稚な挑発行為を繰り返していた。正体を明かしてからはローランの最も忠実な支持者へと変貌する。彼女のローランへの思慕の情はもはや病的とさえ言える域に達している。たとえローランに殴られてもそれを栄誉だと感じるだろう。だが彼女の悩みはまさにローランが彼女を殴ることを好まないという点にある。
ローランを産み、そして彼女の幼稚な行いを補い咎めてくれるシェリスを非常に尊敬している。今彼女は様々な方法でアッシュ家と良い関係を築こうとしている。
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キアナ・カルマ
ダッシュが幼い頃からの大親友。明るく観察眼に優れた少女。彼女は「ダチ」としてダッシュのそばにいるが、ダッシュの心の内にある喪失感と渇望を見抜いている唯一の人物でもある。彼女はダッシュに心の奥底で思慕の情を抱いているが、二人の間の「兄弟」のような友情を壊すことを恐れている。ダッシュのそばにもっといるために彼女は「手伝い」と称してダッシュが所属する部活にまで入り、静かに自分の恋歌を守り続けている。
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ラルヴィ
強大な魔法を持つが生活能力と商才は皆無に等しい森の魔女。彼女はシェリスが力を失っていた頃の旧知の仲であり、クルイとシェリスの結婚式の司会者でもある。自分の魔法店が倒産した後、彼女はひょんなことから出版社の編集長となりヒロカをスターダムに押し上げた。シェリスの過去と現在を繋ぐ重要人物であり、肝心な時にいつもヘマをするトラブルメーカーでもある。
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ヒロカ
ベストセラー小説『魔界より愛を込めて未来へ』の作者。文学創作においては才能に溢れるが、実生活ではぞっとするほどだらしなく怠惰な変人な先輩。彼女はダッシュの「伯楽」であり、ダッシュに才能を発揮する舞台と切望していた原稿料を提供した。だが彼女の深刻な遅筆と劣悪な生活習慣はダッシュとキアナを散々悩ませている。思想的には保守的で平和と自由を尊ぶエルフ族でありながら、彼女が執筆する小説『魔界より愛を込めて未来へ』は男性エルフと男性魔族の間の闘争と愛の物語を描いている。シェリスと同じくBL文学を好む腐女子のようだが、彼女がなぜこのような物語を創作するのか、そこにはまだ何か裏があるようだ。




