68、激震の女神祭 剥がされた仮面
ローラン・アッシュにとって、これまでの戦いは全て余興であり、演舞に過ぎなかった。
彼女は誰よりも理解している。自身の本当の戦い方は、軽々しく人に見せられるものではない。もし見せれば、彼女を待っているのは、もはや花束でも喝采でもなく、「卑劣」「残忍」「手段を選ばない」「下劣」といった、彼女を永遠に恥辱の柱に磔にするような、悪意に満ちた言葉の数々だろう。そうなれば、ファンでいてくれる者などいるはずもなく、騎士団の法務部から「潜在的脅威」として逮捕されないだけでも、御の字のはずだ。
だから、ローランは初めて人前でその力を見せた時から、意図的に、自らの骨の髄まで染み込んだ本来のスタイルを、抑え、偽り、変えてきた。騎士団予備団員の入団試験の時でさえも。幸いなことに、ローランの才能はあまりにも強大で、輝かしいものだった。たとえ全く合わない、不慣れな戦闘スタイルを使っても、彼女は容易く勝ち進み、首席の座を手に入れ、誰もが敬い、感服し、そして憧れる対象となることができたのだ。
実のところ、ローランはソラの護衛隊長が、かつて騎士団で名を馳せた団員であったことなど全然知らなかった。先ほどこの仮面の男からその事実を聞かされ、彼女は初めてはっと気づいたのだ。
「なんだ、騎士団の正式な団員って、その程度だったのか」
あの老人が、既に現役を退いた身であり、その実力が全盛期と比べて、いくらか衰えていることは想像に難くない。だが、たとえそうだとしても、ローランは意に介さなかった。なぜなら、彼女が本当に隠している実力は、その程度の誤差の範囲など、容易く、そして遥かに凌駕できるということを。
もし、あのレベルの腕前が騎士団の正式な団員であるならば、ローランは長年抱き続けてきた夢と目標に、どこか淡い失望を感じずにはいられなかった。その程度なら、今の自分はとうにその基準を超えているのだから。
ローランが、戦闘能力のない兄と妹を連れて、森を出て、母を探す未知の旅に出る勇気を持てたのも、家族の庇護からたった一人で離れ、何も言わずに去ろうとする母の行方を探しに来る胆力を持てたのも。これら一見無謀に見える行動の裏にある「自信」は、全て、ローランが持つ絶対的な「強さ」から生まれた、疑う余地のない、絶対の「確信」に由来していた。
彼女は信じていた。自分が本当の実力を出す気になれば、いかなる百戦錬磨の戦士であろうと、数百人の山賊やならず者の集団であろうと、誰一人として自分と比べることさえできない、と。
目の前で、自分を誘拐しようと企むこの仮面の男も、当然例外ではない。
(…これで、ようやく確信できた…。この数年間で、あたしは、あまりにも強くなりすぎた)
ようやく、何の気兼ねもなく、本当の能力を見せることができる。ローランは、心の中でそう氷のように冷たく、そして揺るぎない最終判断を下した。
♦
戦いの口火は、仮面の男によって先に切られた。
彼はもはや無意味な舌戦を交わすことなく、その腕よりも太い重厚な鋼の棍を両手で固く握りしめ、足元で激しく地面を蹴った。その体はまるで怒り狂う鋼鉄の雄牛のように、重い風を纏いながらローランへと突進する。頭上からの一撃が空気を引き裂く、鋭い唸り声と共にローランの頭蓋へと激しく振り下ろされた!
巨岩さえも一撃で粉々に砕くであろう、その雷のような攻撃を前にしてもローランの顔には微塵の揺らぎもない。彼女の世界はまるで奇妙なスローモーションの状態へと入っていた。あの鋼の棍が彼女の髪先に触れるその最後の瞬間に、彼女の体はまるで微風に吹かれた柳の葉のように左側へとわずかに揺れ、ほとんど芸術的とも言えるミリ単位の正確さで、その致命的な一撃をかわした。
ドッ!
鋼の棍が彼女が先ほどまで立っていた地面に重く叩きつけられ、固い土が瞬時に裂け、草屑混じりの土煙を上げた。一撃を外したにもかかわらず、仮面の男の動きには一切の滞りがない。彼は腰を軸に、激しく力を込め地面に深くめり込んだ鋼の棍を引き抜き、そのまま人を真っ二つに斬り裂くほどの致命的な半円の弧を描き、ローランの腰へと薙ぎ払った。
しかしローランの動きは彼よりも速い。それどころか彼の思考よりも速い。
まるで彼の全ての後続の動きを予見していたかのように、彼が薙ぎ払ったその瞬間、ローランは既に両足をわずかに屈め、激しく上方へと跳躍していた。その動きは信じがたいほどに軽やかで、空中で優美な弧を描き、そして正確に片足のつま先で高速で振り回されるその鋼の棍の上にそっと着地し片足で立ち、その姿は盤石のようで、その衣服の裾はひらひらと舞っていた。
仮面の男の目に信じがたいという驚愕の色が浮かんだ。彼は手中の鋼の棍を激しくかき回し回転させ、この大胆不敵な少女をその武器の上から振り落とそうと試みる。だがローランは再び先手を取っていた。彼の武器を自分自身の跳躍台へと変えて、あの激しく揺れ動く棍の上をまるで平地を歩むかのように素早く前へと駆け、男が驚愕にわずかに見開いた瞳の中で、そのしなやかな右足が鋭い風の音を立てて、激しく彼の顎を蹴り上げた!
ゴンッ!
重く鈍い音が響き、仮面の男はその凄まじい力に蹴られ後ろへよろめき仰け反った。硬い鉄の仮面が彼の顎の骨と激しく衝突し聞く者の歯が酸っぱくなるような「ギシッ」という音を立てる。ローランはその蹴りの力を利用し空中で華麗に宙返りをすると、まるで優雅な猫のように音もなく軽やかに着地した。
だが彼女は相手にいかなる息つく暇も与えない。着地した瞬間に重心を前へと傾け、その手にはいつの間にか握られていた長剣が魂を刈り取る銀色の光と化し、真っ直ぐに仮面の男の心臓を突いた。
仮面の男は深手を負いながらも、その豊かな戦闘本能は相変わらず鋭敏だった。彼は顎から伝わる激痛と眩暈を必死に堪え、その千鈞一髪の瞬間に左手を伸ばした。それは鋭い刃を受け止めるためではない。側面から巧妙な角度で激しくローランの剣身を押し、その巧みな力で彼女のバランスを崩し綻びを見せさせようとしたのだ。
だが彼は間違っていた。ローランはまるで彼がそうすることを初めから知っていたかのように、あの迅速な突きは最初から彼がこの手に食いつくために仕掛けられた甘い餌だったのだ!
仮面の男の手が剣身に触れたその瞬間、ローランの右手が電光石火の速さで伸び、まるで赤く熱せられた鉄の万力のように固く彼の手首を掴んだ。そして彼女は激しくその体を捻り、自分の肩を支点として、仮面の男のあの百キロを超える魁偉な体を丸ごと地面から引き抜いた!
それは教科書のように鮮やかな一本背負いだった!
ドォン!
仮面の男はまるで破れた麻袋のように、重く地面に叩きつけられ、土煙を上げた。同時にローランに掴まれ支点とされたその左腕の肘の関節が「バキッ」と乾いた骨が砕ける音を立て、奇妙でぞっとするような角度で外側へと捻じ曲がった。明らかに完全に脱臼している。
ローランは追撃せずただ静かにその場に立っていた。冷たく彼を見つめている。仮面の男は即座にもがきながら起き上がるとローランを見ることさえせず、その右手で力なく垂れ下がる左腕を掴み激しく一捻りした!
バキッ
再び頭皮がぞっとするような骨が元に戻る音が響き、彼は顔色一つ変えず強引に脱臼した関節を元に戻してしまった。
「剣術だけではない…。近接戦闘の能力も、これほど優れているとは恐れ入る」
彼はその急速に感覚を取り戻していく左腕を動かしながら、嗄れた声で感嘆した。
「的確な打撃で相手のバランスを崩し、そして関節技と投げ技を一体化させた全く綻びのない連続攻撃で敵にさらなるダメージを与える…。実に見事な戦闘の才能だ」
「そう? 予備団の団員や教官にも似たようなこと言われたけどね。でもこのローラン様にとっては基礎中の基礎だけど。てかマジで、みんなちょっと練習サボりすぎじゃない? それともあたしが強すぎるのかな?ウケる」
ローランは何でもないように手を振り払った。まるで取るに足らない些細なことをしただけだとでも言うように。
仮面の男は再び鋼の棍を握り直し、その鉄仮面の後ろから聞こえてくる声には微塵の弱気もなく、かえってどこか獰猛さが増していた。
「口の達者な小娘め。だがその程度で終わりならまだ私が勝つ」
「がっかりさせて悪いけどさ。言っただろ? あんたはまだこのローラン様の本当の恐ろしさを見てないって…。今もそれは同じだよ」
もし相手が先ほどのがローランが事前に宣告した「本当の恐ろしさ」だと思っているなら、それは完全に見当違いだ。
先ほどの数合はローランにとって、せいぜい準備運動に過ぎなかった。
その言葉が落ちると同時に、ローランの剣の持ち方が突如として変わった。彼女は手首を返し、長剣を逆手に持ち、その鋭い刃を自分自身の小臂の後ろ側に固く密着させた。剣身全体が腕の影に巧みに隠され、その長さと攻撃の角度を判断することはできない。それは仮面の男が持っているローランに関する全ての調査資料の中で一度も見たことのない奇妙な構えだった。
「ここから、あたしはちょっとだけ本気を出す」
ローランはそう言うとその身を動かし、まるで獲物を狙う豹のように、音もなくしかし迅速に再び仮面の男へと突進した。
その奇妙な構えが仮面の男の胸に警鐘を鳴らした。彼は全神経を集中させ、ローランの腕と肩の全ての微細な動きを観察し、そこから彼女が隠している致命的な剣の軌道を見抜こうと試みた。
しかし、ローランが突進の途中でまさに彼の攻撃範囲に入ろうとしたその瞬間、彼女の前進する動きが不意に止まり、その右足が極めて隠密な動きで激しく足元の砂地を蹴った!
ザッ!
大量の砂石が枯葉と混じり合い、彼女によって的確に男の顔面へと撒き散らされた。仮面の男は仮面をつけているとはいえ、両目の部分は視界を確保するために穴を開けられている。この突然の砂塵攻撃を前に、彼はほとんど本能的に腰を屈め腕を上げて目を守り、同時に鋼の棍を掲げて防御しようとした。
まさにその瞬間!
彼の上半身が防御の姿勢を取り視界が遮られたその瞬間、ローランの姿がまるで幽霊のように近づき、あの逆手に隠されていた剣が極めて巧妙で、完全に常軌を逸した角度で下方から上方へと音もなく切り上げられた!
ブシュッ!
鋭い刃が瞬時に仮面の男の左足のアキレス腱を切断し、それどころか踝の骨さえも大半が断ち切られ、その足全体が力なく横へと垂れ下がった!
ローランの本当の狙いは、最初から彼の下半身だったのだ。
「あああああ!」
身を引き裂くような激痛に仮面の男は凄惨な叫び声を上げた。彼の体は傾き、もう少しで倒れるところだった。だが彼は激痛を必死に堪え、鋼の棍を振り回し、無茶苦茶にローランへと打ちかかったが、それは再びローランによって最小限の動きで軽々とかわされた。同時にローランは彼が激痛によって動きが崩れ、棍を握る手が不安定になったその瞬間を見逃さず、再び剣を振るった!
今度の狙いは鋼の棍を握る手だ!
シャッ!
銀色の光が閃き、仮面の男の右手の薬指、中指、そして小指が音を立てて断ち切られ、血が噴水のように噴き出した!
「この野郎!」
逆上した仮面の男は残された二本の指の右手と無傷の左手で棍を片手で持ち、ローランの斬撃が終わり、古い力が尽き新しい力が生まれる前のその一瞬の間に、全身の力を振り絞り激しく一突きした!
キン!
乾いた音が響きローランの長剣が巨大な力に弾き飛ばされ、空中で回転しながら遠くの草むらへと落ちていった。
仮面の男はそれを見て大喜びしその目に残酷な光を浮かべ、まさに全てを顧みず、接近して追撃し、この忌々しい少女を肉塊に変えようとしたその時、不意に自分の腹部に氷のように冷たい、まるで魂さえも凍てつくかのような激痛が走るのを感じた。
ブスッ
彼は信じがたいという思いで頭を下げた。そこに見えたのは一本の完全に凝縮された、純粋なエルフの力によって形成された光の剣が、音もなく彼の腹部を貫いている光景だった。そしてこの光の剣の柄を握っているのはローランの左手。あの眩い光の源は、まさしく彼女の手首にある、あの数日前ソラがマータ家の家宝を代償として、彼女のために買ったあの高価な腕輪だった。
「悪いけど」
ローランは挑発するように彼を見つめゆっくりと言った。
「あたし、剣は一本しかないなんて言ってないよ」
彼女は激しく光の剣を引き抜き、熱い血の雨を降らせた。仮面の男は失血と激痛によって腹部の傷を押さえながらよろめき二歩後退し、最終的に体を支えきれなくなり、重く地面に倒れた。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
たとえ精鋭の戦士を自称し、あの話さない人形とは違う実力者であっても、今やほとんど戦う力は残されていない。ローランの強さは彼らが掴んでいた情報通り…どころか、その範疇を遥かに超えていた。
彼は前の数合の戦いを振り返り、骨の髄まで染み渡る冷気が心の中から湧き上がってくるのを感じた。彼はようやく気づいたのだ。自分の全ての動き、全ての反撃、それどころか全ての思考さえもが、まるでこの少女の予見の中にあったかのようだ、と。彼が何をしようと、ローランは極めて短い時間で最も効果的な対策を見つけ出し、反撃を仕掛けてくる。自分はまるで目に見えない糸に操られた操り人形のようで、完全にローランが書いた脚本通りに動かされていたのだ。
「な…なぜだ…」
彼は大口で息をしながら冷や汗が仮面の下の顔を濡らし、その声は恐怖に震えていた。
「なぜお前は私の全ての動きを見抜ける…。我々は今日初めて会ったはずだ…。そんなことあり得ない!」
「さあ、どうしてかな?」
ローランは神秘的な様子で、彼をはぐらかしその顔には悪戯のような笑みが浮かび、全く答えるつもりはない。相手がどれほど自分の情報を集めようと、ローランもまた自分の能力の真相を軽々しく他人に教えるわけにはいかない。それはローランが自ら会得した技法であり、彼女が深く隠している切り札。そして彼女が今やどこか「エルフ騎士団」の団員を軽視しているその自信の源でもあった。
仮面の男は必死に分析を始め、この理解不能な現実を理解しようと試みた。ローランが意図的に逆手に剣を持ち、あの聞いたこともない構えを取ったのは、彼に全ての注意を彼女の剣と腕に集中させ、それによって彼女の本当の目的――砂を蹴る――という目くらましを隠すためだったのだ。彼女はその時から既に計算していたのだ。この最も原始的で、最も卑劣な手段で自分の綻びを作り出すことを。そして力押しでは勝てないと判断した状況下で、敢えて相手が通常重点的に防御しない足の甲や指を狙って斬撃を加え、最小の代償で最大の戦果を得ようと。そして意図的に武器を奪われるという綻びを見せ、自分を罠にかけ、最後に隠していた誰も想像だにしなかった切り札で致命的な一撃を放つ!
ローランの本当の戦闘スタイルは実に…卑劣! 恥知らず! 陰険の極み!
「あんたがどう思おうと勝手だけど」
ローランはまるで彼の考えを見抜いたかのようにその顔から笑みが消え、そこには一片の氷のような冷たさだけが残されていた。
「あたしは相手に合わせて戦い方を変えるだけ。あんたみたいな闇に隠れて小細工しかできない悪党には、こういう下劣な戦術がお似合いだよ」
もし相手が平和的に手合わせし、交流できる相手であれば、ローランもまたこれほど極端ではないだろう。他に誰かが観戦している時に、このような戦術を使えば人から批判され、非難されることも避けられない。だがいかなる第三者もおらず、悪党と一対一で対峙する状況下では、ローランは自分ができうるいかなる手段も拒まない。たとえそれがどれほど汚いものであろうと。
「どうやら…我々は…君の危険度を…再評価せねばならんようだな…」
仮面の男は絶えず流れる血の傷口を押さえながら困難に言った。彼はようやく気づいたのだ。今日自分はたった二人の弓兵を連れてきただけだったが、三人で彼女を相手にするのは深刻な判断ミスだったようだ、と。
「あんたにそんな機会はない。言っただろ、あたしはあんたを殺すって」
そしてローランの口調は一片の感情も含まないほどに冷たかった。最初から彼女は自分と自分の親しい友人たちの命を脅かすこの悪党たちを、生かして帰すつもりはなかったのだ。
そう言うと、ローランの左手の手首にある光の剣が不吉にきらめき、一筋また一筋と黒い、心臓を鷲掴みにするような、まるで深淵から来たかのような気配が光の剣から溢れ出し、まるで生命を持つ毒蛇のようにゆっくりと純粋な剣身に絡みついていく。
ローランは口を開き、まるで独り言を言うかのように、またまるでこの死にゆく者に彼の最後の運命を宣告するかのように言った。
「あんた、まだ知らないだろ。あたしね、修行の過程で偶然、すごく特別な技を身につけたんだ…。この技あんまり人前で見せられないんだよね。だって…すごく見苦しくて、すごく残酷だから。どうして愛と平和を尊ぶエルフ族のあたしがこんなものを身につけたのか、あたしにもわからない。もし騎士団のあの頭の固い年寄りどもに見つかったら、あたし即座に入団資格を剥奪されるだけじゃなくて、牢屋にぶち込まれて、異教徒として扱われるかもな…。ソラみたいなずっとあたしを応援してくれてたファンもこの技を見たら、もうあたしのこと好きじゃなくなって、あたしのこと悪魔だって思うかもな…」
光の剣が漆黒の気に覆われるだけでなく、ローランの両の瞳さえもが紫黒色の光を放っていた。
「でもあんたは運が悪かったな。今ここにはあたしたち以外誰もいない。そしてあたしが使おうとしてるこの技は、ちょうどあたしの一つの大きな面倒を省いてくれる…」
誰が人を殺そうと、その罪を隠蔽するためには、自分の殺人行為を隠蔽し、可能な限り証拠を消滅させなければならない。その中で最も処理が難しいのは疑いようもなく死者の死体だ。死体は大きくて、重く。放置すれば腐敗し悪臭を放つ。たとえ土に埋めようと、海に沈めようと、いずれは発見される。たとえ死体を焼いたとしても、その骨灰の処理もまた大きな難題だ。多くの殺人犯が死体の処理が不十分だったために綻びを見せ、逮捕されている。
だがちょうど都合の良いことに、ローランはその問題を心配する必要はなかった。
「だってあたしがこれから使おうとしてる技は、あんたを殺しても何の手がかりも残さないから。骨も、血肉もな」
「き、貴様…! いったい何をするつもりだ!?」
仮面の男の目にようやく真の純粋な恐怖が浮かび上がった。彼がローランの身から感じるのはエルフの森では一度も見たことのない、不吉でそれどころか災厄に近い気配…。
「死んでから、地獄でゆっくり考えな」
無論、この問いにローランは答えるつもりはない。「冥土の土産に、相手に自分の技や能力を教えてやる」…そんな無意味なことをローランがするはずはない。
訳も分からずに死んで、それがどうしたというのだ? このような悪党に自分の死因を知る資格などない。
ローランがそう言うと、彼女の手中の光の剣の黒い気がさらに濃くなり、そして激しく揺らめいた。まるで燃える黒い炎のよう。元々眩い光を放っていた光の剣そのものさえもがこの不吉な気に侵食され、漆黒に染まっていくかのようだった。
「死ね、名もなき雑魚が」
この男が何という名前で、彼の「教会」が何なのか。ローランには全く興味はなかった。彼女は剣を掲げ、この終結の一撃を振り下ろそうとした。この十数年にも及ぶ因縁を終わらせるために。
しかし、その時。
仮面の男の体が不意に眩い光を放った。その光はあまりにも強く、ローランでさえも思わず目を細めた。そして彼の体全体がその光の中で忽然と消え去った!
ローランの剣はただ空気を切り、虚しい風を起こしただけだった。数本の雑草を斬り裂いただけ。
彼女は驚いて「えっ」と声を漏らし、その動きを止めた。彼女は警戒して後ろを振り返ったが、そこには先ほど自分が殺したはずのあの二人の弓兵の死体もいつの間にか消え失せ、まるで彼らが初めから存在しなかったかのようだった。
「クソ!またこれか!?」
このような現象はローランにとって見慣れないものではなかった。数日前彼女が道端で打ち破ったあの三人の仮面の男も、このように魔法のように彼女の目の前から消え去ったのだ。そしてこれが一体どのような魔法なのか、ローランにはわからなかった。
ローランは神経を集中させ、周囲の気配を探る。やがて彼女は判断を下した。―――自分と、気絶した二人の同級生の他には、この場にもう誰の気配もない、と。
男が負った傷は浅くはない。だがローランは、苦心して編み出した奥義で男の息の根を止めるため、それまでの攻撃ではあえて手加減をしていた。あの男は、すぐさま適切な治療を受けさえすれば、死には至らないだろう。
つまり、あの仮面の男は、ローランの手から完全に逃げおおせたのだ。
静まり返った林の中には、ただ彼女の二人の同級生が相変わらず静かにそばで気を失って倒れているだけだった。風が梢を吹き抜けカサカサと音を立て、まるで彼女のこの徒労の勝利を嘲笑っているかのようだった。
「……………このクソが!!!!!」
ドン!
…ただローランが激しく全力で地面を踏みつけ、それによって生じた半径二メートルにも及ぶ深い穴だけが、彼女の無念さを物語っていた。
「十回…少なくとも十回はあいつの命を絶つチャンスがあった。でもあたしはそのチャンスを掴まなかった…。わざとあいつをもっと恐怖させ、もっと絶望させるために、あたしは掴むべきチャンスを掴まなかった…。なんという失態…でももう次はない!」
ローランはそこに佇み彼女の半分の顔が、自分が激しく地面を踏みつけたことで舞い上がった煙塵に覆われていた。そこでローランは自分自身の未熟さを反省しながら、誓いを立てた。
「もしあんたたちがもう一度あたしの前に現れたら…誰が見ていようといまいと…あたしは最短時間で、一撃であんたたちを仕留めてやる!」
一本の斬り裂かれた雑草がローランのそばを舞い落ちた。そしてゆっくりと消え去り、灰さえも残さず、完全に消滅した。
まるで彼女の甘さや未熟さのように。




