17、少女魔王の答え
あの日から、クルイは心に決めていた。いつかシェリスに、自分の想いを伝えようと。シェリスがどんな困難や悩みを抱えていようとも、自分が共にそれを背負い、彼女の苦痛や不安を分かち合いたい、と。彼は、そのためのロマンチックな機会をずっと待っていた。そしてついに、女神祭が開催されるという知らせがクルイの耳に入った時、彼はチャンスが来たと悟ったのだ。
緊張と不安を胸に、クルイはシェリスを祭りに誘った。シェリスも意外にも快諾してくれた。そして、花火が大地を照らすその瞬間、クルイは人生最大の勇気を振り絞り、シェリスに告白したのだった。
「…………」
クルイの言葉を聞き終え、シェリスはしばしの沈黙の後、小指で耳をほじりながら、クルイに確認するように問い返す。
「…………なんだって? 花火の音がうるさくてよく聞こえなかった。もう一度言ってくれ」
シェリスが自分の耳を疑うのも無理はない。だが、クルイはもう一度言うことを厭わない。
「俺と結婚してくれ、シェリス。俺の妻は、君以外考えられない」
今度こそ、シェリスにもはっきりと聞こえた。彼女は再び、長い長い沈黙に陥る。不意に、何かを思いついたかのように、ハッとした表情を浮かべる。そして、乾いた、感情の乏しい声で答えた。
「……なるほどな。つまり、お前の家に居候している私に対し、体で、肉体関係をもって償え、ということか? よかろう。私の体と貞操が目当てなら、好きにするがいい。私はただの非力な女だ。お前が私を犯そうとしても、抵抗する力などない」
「ち、違う、そうじゃない!」
「では、どういう意味だ?」
「戸惑うかもしれない、突然だとも思うだろう…。でも、俺は本気で君を愛してしまったんだ! 君と残りの人生を共に歩みたい、君と幸せな家庭を築きたい…。君が俺の家に居候してるとか、そういうこととは全く関係ない! 俺はシェリス、君という存在そのものに惹かれているんだ!」
「………」
「お、俺は、君に昔恋人がいたかどうかは知らない。でも、君が俺以外の誰かと恋仲になるのは耐えられない…。君には、俺だけを見ていてほしい! 俺も、永遠に君だけを愛し続ける! 信じてくれ! シェリス!」
「お前を信じないわけではないが…。少し、情報を整理させてくれないか?」
シェリスはため息をつく。この、大人しいそうに見えるエルフに、自分が異性として見られていたとは、想像もしていなかった。魔王たる彼女は、常に世界征服を唯一の目標としてきた。恋愛など考える暇もなかった。自分には弟と天下があればそれでいい、他は全て余計なものだと考えていた。今になって男に求婚されるなど、完全に魔王の計算外、想定外の出来事だった。
「……つまり、お前は私が好きだと?」
「そうだ!」
「私のどこが好きなんだ? 自分では、男に好かれるような要素があるとは思えんが」
「細かいことを気にしない性格が好きだ。家事が得意なところも。困難があっても他人に頼らず、一人で耐えようとする強さも。一般の女性にはない度胸があるところも。てきぱきと物事をこなすところも。あまり表情が変わらないところも、話すときの声の調子も、小柄なところも、綺麗な顔立ちも、君の全てが好きだ!」
「ああもう! わかった、もう言うな!」
その時のシェリスの顔は、羞恥で血が上り、真っ赤になっていた。これ以上クルイに続けられたら、羞恥で死んでしまうかもしれない。シェリスは慌てて、ますます熱っぽく語るクルイを制止する。
これまで他者から畏敬され、あるいは恐怖されてきた大魔王が、ただの女として見られる日が来るとは思ってもみなかった。シェリスは強い居心地の悪さを感じる。彼女は気まずそうにクルイへ笑いかけた。
「すまない。こんな風に言われたのは初めてで、少し戸惑っている…。安心しろ、昔誰かと恋愛関係にあったことはない。お前が私をそれほど評価してくれるのは、嬉しい。自分でも気づかなかった魅力に気づかせてくれた」
「じゃあ…」
「だが、すまない。お前の気持ちは受け入れられない」
嬉しいのは本心だが、それでもシェリスはクルイの想いを受け入れることはできない。彼女は一国の王であり、天下をその手に収めんとする覇者だ。対して相手は、ただの農夫。しかも、シェリスが最も見下しているエルフ。魔王たるものが、どうして自らの地位と尊厳を貶め、このような劣等種に身を委ねることができようか。
「え? どうして?」
一筋の光明が見えたと思ったクルイは、慌てて尋ねる。シェリスはただ、冷ややかに残酷な事実を突きつける。
「私がエルフを嫌いだからだ」
「え?」
「お前に命を救われた義理があるから、今まで言わなかったが。私は、本気でエルフが嫌いだ。反吐が出るほどに。なぜエルフのような下等生物がまだ絶滅していないのか、毎日疑問に思うほどにな。お前個人がどうこうではない。これは純粋な、私の個人的な偏見だ。だから、私がエルフに身を任せることなど、あり得ない」
たとえこれでクルイに嫌われ、家を追い出されることになったとしても、シェリスははっきりと言わねばならなかった。もし自分が本当に結婚するとしても、相手は魔界の高官や貴族など、自分に釣り合う存在しか考えられない。翼が生えて空を飛べたとしても自分とは比較にすらならない、エルフの農夫など論外だ。
「……」
明らかに、シェリスの言葉はクルイの心を深く傷つけ、彼を絶句させた。自分に好意を持つ者にとって、これがどれほどの打撃か、シェリスにもわかっている。彼女は慰めるように言った。
「お前はいい奴だ、クルイ。真剣に探せば、きっとお前にふさわしい女が見つかる。私などに目を向けず、もっと見聞を広めるがいい。私はいつか、必ずお前の元を去るのだから」
「…………いやだ」
「ん?」
「嫌だ! 他の女を探すなんて! …俺の目には君しか映っていないんだ! シェリス! 他の誰かなんて、もう考えられない!」
人種差別的な発言をこれだけあからさまにすれば、相手も嫌悪感を抱くか、諦めるだろうと思っていた。だが、クルイは挫けるどころか、かえってシェリスでなければ駄目だという覚悟を固めたようだ。その反応は、逆にシェリスを驚かせる。クルイが聞き間違えたか、あるいは自分の言葉を誤解しているのではないかと疑い、彼女はもう一度繰り返す。
「私の話を聞いていたか? 私はエルフが大嫌いだと言ったんだ…」
「そんなの関係ない! 君がエルフを嫌いなら、俺が全力で君の考えを変えてみせる! エルフを好きにさせてみせる…少なくとも、俺のことを好きになってもらう!」
「えええ!?」
「シェリス!」
クルイは興奮してシェリスの両肩に手を置き、揺るぎない決意を大声で叫ぶ。
「俺が死なない限り、絶対に君を諦めない!」
「お前………」
シェリスは、クルイがこれほどしつこい男だとは夢にも思わなかった。この三年間の同居生活では、そんな素振りは微塵も見せなかったのに。さすがの魔王も、この男の気迫に圧され、一瞬言葉を失う。クルイの揺るぎない眼差しを見つめ、シェリスはしばし呆然としていたが、やがて我に返る。その執念に対し、シェリスは諦めたようにため息をついた。
「はぁ…。クルイ、お前がそんな男だったとはな…。もう一度確認する。お前は私と結婚したい、そうだな?」
「そうだ!」
「それはつまり、お前が私の体に下心を持っていることも、否定しないということだな?」
「そうだ! ついでに言っておく! 子供は八人欲しい!」
「勝手に話を進めるな、この馬鹿者が! ……はぁ、疲れる…。本当に…」
だが、ここまで言われては、シェリスも口先だけでこの男を諦めさせるのは不可能だと悟る。言葉で諭すより、いっそ逆手に取ってやるか。
「……わかった」
シェリスは自分の肩に乗せられた手をゆっくりとどけ、少し和らげた口調で言う。
「お前の求婚を、今すぐ受け入れることはできない。だが、お前がそれほど私に執着するなら、一つだけチャンスをやろう」
「チャンス?」
「一年だ。一年以内に、お前が私を惚れさせることができたら、お前と結婚してやる。子供だって、何人でも産んでやる。だが、一年経っても私が惚れなかった場合、求婚は断る。そして私はお前の元を去り、二度と見つけられない所へ行く。…受け入れるか?」
「ああ! 受けて立つ! 見ていろ、必ず君を惚れさせてみせる!」
クルイは見事に罠にかかり、シェリスの条件を即座に受け入れた。シェリスは内心でほくそ笑む。
(ふふ……悪いが、私がお前を愛することなどあり得ない。お前が何をしようと、一年後にはあっさりと「惚れなかった」と言ってやる。そうすれば、文句も言えまい。綺麗さっぱりお前を捨てて、おさらばだ…)
心の中ではそう計算しながらも、表向きは演技を続ける。シェリスは作り物の笑みを浮かべ、クルイに手を差し出す。
「では、これから一年、励むがいい。楽しみにしているぞ、クルイ」
「あらゆる手を使って、必ず君の心を射止めてみせる。シェリス」
クルイも手を伸ばし、二人の手は固く握り合わされた。
その日から、二人の関係は微妙に変わり始める。一年という期限付きの、これまでとは全く違う同居生活が、こうして始まったのだった。
どうも、読者の皆さん、作者のXMAGEです。ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
この作品の文字数は無事に五万字を超えましたが、未だにコメントが一つもなく、自分の作品が面白いのか、日本語の文法や言葉遣いに間違いがないか、自分ではよく分からない状態です。
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自分は日本人ではありませんので、日本人の皆さんのご意見をぜひお聞かせいただきたいと思っています。
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