表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/45

8話 初パトロール

 迷い人間が来てから数日後……


 私は仕事を始める前にまず、この異世界に慣れることから始めることになった。


 仲間の死神と一緒に光の森を歩いて回ったり、この世界の知識を覚えたりと、ここ数日はずっとチュートリアルのようなことをしていた。


 職場の皆んなはとても優しくて、私が分からない部分を質問したらとことん教えてくれたり、分かりやすく説明してくれたりした。感謝しかない。


 しかもリリー上司は、事前に告知をしてくれた上で私達の歓迎会までしてくれた。豪華な料理で私達を迎えてくれた。


 

 そんなこんなで良い感じに職場に慣れた私は、ついに今日、光の森の外でパトロールをすることになった。


「今日から白矢さんにも、外のパトロールに参加してもらうことになるよ」

「はい!」


 カフェ職場にて。受付カウンター越しに大事な話をするリリー上司の言葉を


「今日、白矢さんに行ってもらうのは「深樹海」っていう海のような森の中だよ。事前に説明した通りだね」

「はい!とりあえず基本的な情報は頭に叩き込んできました!」

「いいね」


 深樹海。クロベさんによると、人間の間では地上の深海と呼ばれている神秘的な場所らしい。


「白矢さんには、ここで何か起きてないか軽くパトロールしてほしいんだよ」

「分かりました!」

「ありがとう。とはいえ……初回で一人で回ってもらうのは流石に良くないね」


 リリー上司は顎に手を乗せて考え事をする。


「クロベさんと豪さんは今、別の地方にパトロールに出掛けてて留守だから……」

「急に忙しくなりましたね……」

「波があるんだよね。忙しかったり平和だったり……」


 昨日まで皆んな暇そうにしてたのに。


「初仕事を一人で回るのは流石に……だからって上司の僕が付くのも緊張するだろうしねえ……」


 リリー上司は視線を私から、部屋の隅のテーブルにいる獄上くんに向けた。


 獄上くんは机に文房具を広げ、謎の装置を解体していた。


「……獄上さん、それは何をしてるのかな?」

「あ、リリー様」


 リリー上司の言葉に、作業中の獄上くんがようやく反応した。


「実は少し前……時計塔の街を散策中に、街に自生する爆弾を発見したんです」

「爆弾!?」

「獄上さん、爆弾は……人工物じゃないかな……」


 獄上くんの言葉に、リリー上司は静かに汗を流しながら指摘する。


「獄上くん、さっきからずっと静かに作業してるなって思ってたけど……ずっと爆弾解体してたの!?」

「白矢様、気づいていらしたのですか?私に声を掛けてくださっても良かったのに……」

「いや、邪魔したら悪いなって思って……」

「お心遣い感謝します」


 獄上くんは修正液を片手に笑顔でお礼を言う。その修正液、爆弾のどこに使うの?


「獄上さん、いつ頃に手が空くかな……?」

「そろそろ終わります。所で白矢さん」


 獄上くんはハサミに持ち替えて私を見つめる。


「どうしたの?」

「話は変わるのですが……赤と青、どの色がお好きでしょうか」

「私に爆弾解除の切る線選ばせようとしてる?」


 そんな責任重大な任務を私にやらせるつもり?


「平気ですよ。間違えても爆弾が爆発するだけですし」

「大事故だよ!」


 そんなことをしたらカフェが大変なことになるよ!


「そんな…………あ、爆発し切る前に空に投げちゃえば大丈夫かな?」


 私達なら爆弾が爆発する前に動けるし、その気になれば爆弾も大丈夫そうかな?


「白矢様。赤と青……どちらをお選びに?」

「えーっと……赤!」

「分かりました。では白矢様のお気に入りである赤を残し、青を切断するとしましょう」

「そういう選び方するの?」


 そんな事を言ってる間に、獄上くんはハサミで青の線を綺麗に切断してしまった。


「……成功です!」


 爆弾の解体作業は見事成功したみたい。


 ……もしかして獄上くん、正解を理解した上で私に選ばせてたのでは?


 私が正解を選んだらそのまま切断して、もし私が違う方を選んだらさっきみたいに回避して……って感じで。


「ありがとうございます。白矢様の懸命なご判断のお陰で、この職場は爆弾の危機から救われました」

「その危機を持ち込んだのは獄上くんだよ」

「あの……獄上さん、そろそろいいかな?」

「はい」


 獄上くんはリリー上司に返事をすると、テーブルの上の道具を手際よく片付けて上司の側に歩み寄った。


「どういったご用件でしょうか」

「あのね、白矢さんの初パトロールに獄上さんも一緒に回ってもらいたいんだけど……いいかな?」

「命以外なら差し出す覚悟です」

「獄上くん、何かある度に命以外投げ出そうとするのやめた方がいいよ」

「ははは……」


 リリー上司は苦笑いしつつ、改めて私の方に向き直る。


「白矢さんもそれでいいかな?獄上さんと一緒でも」

「はい!大丈夫です!むしろ心強いです!」


 こうして私の初仕事であるパトロールは、獄上くんと一緒に回ることになった。


「獄上くん、宜しくね!」

「期待に添えるよう頑張ります」

「ありがとう!私も頑張るね!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ