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4話 ツリーハウス

 私はクロベさんと一緒に光の森の奥へと進む。やがて大きく開けた綺麗な土地に辿り着く。


「到着しましたー」


 私達の前に現れたのは、巨大な広葉樹。


 木の上には人が歩けるスペースがあり、その中央には大きな木造の家があった。とても可愛らしいデザインの家だ。


「あちらが白矢さんのお家ですー」

「うわぁー!可愛い!」

「荷物は既に運び込まれてるとのことですー、入ってご確認しても大丈夫ですよー」

「入る入る!」


 私は急いで大木に駆け寄り、梯子を登って家の前の足場に降り立った。

 一方クロベさんはその場で飛び上がり、足場に華麗に着地しながら私の隣に立つ。


「大きい家だね!」

「家の隣には畑もありますー」

「ホント!?」


 クロベさんに連れられて足場を移動すると、足場に作られた広い畑が目の前に現れた。近くには水場とジョウロのような道具もある。


「すごい!これなら色んな植物を育てられそうだよ!」

「光の森は魔力で溢れているので、魔力で育つ植物ならほとんど育てられると思いますー」

「いいね!ますますファンタジーだよ!」


 不思議な植物も育てられる環境まであるなんて……!


「あ、そろそろ家の方も確認しに行かないと!」


 私達は急いで家の方に戻った。


「それにしても、ホントに大きな家だね……!」


 私一人で住むには少し大きいかもしれないけど、とてもいい家なのは確かだ。木の上に家が建ってるなんて最高すぎる。


「家が大きくてお手入れが大変そうですが、ハウスキーパーの妖精がいるのでお掃除などのお仕事はしなくて大丈夫ですよー」

「そうなんだ!凄い……!」

「ささ、お家に入ってみてくださいー。私はとりあえず外で待ってますー」

「うん!」

 

 私は可愛らしい扉のドアノブを掴んで回し、急いで室内に入った。玄関に飛び込むと共に、木の良い匂いが私達を出迎える。


「うわぁ……!」


 室内もファンタジーだった。自然味あふれるボコボコの柱、温かみのある優しい壁や床、全体的に部屋は丸みがあって角が非常に少ない。


「可愛い!すごい!ねえクロベさん凄いよ!角が少なくて可愛いよ!」


 私は玄関から出飛び出し、外にいるクロベさんに報告する。


「気に入って良かったですー。もしよろしければ、お家の簡単なご説明もしますがいかがですかー?」

「お願いします!」


 今度はクロベさんと一緒に家に入り、クロベさんから大まかな家の説明を受ける。


「ここはキッチンですー。基本的な調味料は木が勝手に作り出してくれますが、味が気に入らない時は別で購入することをオススメしますー」

「木が調味料作るの!?」

「砂糖と塩、油などの基本的なものは揃っておりますー」

「すごい!見た目も可愛らしいのにスゴイ機能まで……!」


 この調子でキッチンやリビング、お風呂場を周っていく。


「お風呂は夜になると勝手に溜まる仕組みですー。ハウスキーパーに頼めば好きな時間にお風呂を貯めたりできますー」

「勝手にお湯ができるの?」

「あの天井からぶら下がっているガラスみたいな木の実に魔力を込めるとお湯ができて、この木製の浴槽に溜まっていくんですー」

「へぇー!魔法でそんなことできるんだ!」


 私は興味津々で天井の木の実と大きな浴槽を交互に見つめる。


「あ、そうそうー。明かりは魔力を込めて使用するタイプですー。魔力が減ると勝手に消えるので、切り忘れても大丈夫ですー」

「何をするにも魔力が必要なんだね」

「後で魔力の使い方をお教えしますー」

「ありがとう!」


 やがて屋内探索も終わり、私達は再びリビングに移動した。可愛らしい模様の敷物の上にローテーブルが置かれ、周りに可愛らしいクッションが転がっている。


「すっごく良い家だね!」

「喜んでいただけて良かったですー。あ、クッションは時折処分することをオススメしますー」

「えっ何で!?こんな可愛いのに!?」

「この家は特にクッションを多めに生産してしまうみたいなんですー、勝手に生成しては床を埋めてしまうので、お気をつけてくださいー」

「そうなの!?」


 家によって生産しやすい物とかあるのかな……


「あ、因みに私の家は敷物が勝手に増えますー」

「敷物!?」

「季節によって色んな敷物を使えるのは嬉しいのですが、増えすぎて困ることもありますー」

「そうなんだ……」


 変わった困りごとだなぁ……でも、異世界ならではのトラブルって感じがしてすごくいいね。


「あ、折角なのでこの職場のお仕事について簡単にご説明しますねー」

「あ、お願いします」


 クロベさんはその場に座り直して説明を始める。


「既に説明はあったと思いますがー、死神の一般的なお仕事は全て、現地の死神が請け負うそうですー」

「私達の仕事は主にパトロールなんだよね?」

「はいそうですー。主に、怪しい魂や魂の無断使用者を捕まえたり、あと現地の死神のヘルプに駆けつけるのが主な役割だそうですー」


 一見すると仕事が多いように見えるけど、実際は仕事量がかなり少ないらしい。


「パトロールする場所は様々ですー。森の中や街、時にはダンジョンに潜ることもありますー」

「ダンジョン入れるの!?」

「もちろんですー。ダンジョンは縦型が多いので、すり抜けてすぐ最深部に辿りつけますー」


 この口ぶりから察するに、クロベさんは既にダンジョンをパトロールしたことがあるのだろう。


「基本はそれくらいですー。分からない所が出ましたら、その時にまたご説明しますー」

「クロベさんありがとう!」

「どういたしましてー。それにしても白矢さん、まさか通勤初日で力を持った誤転移者と遭遇するなんて、すごいですねー」

「あれはびっくりしたよ……」


 誤転送者はどういうわけか、接近してカードでスキャンするまで誤転送なのかどうか分からない。どうやら誤転送者が地獄の管理に引っかからないのが原因らしい。


 地道に噂を集めるか、偶然発見するかでしか誤転送者を見つけられないのが難点だ。


「でも、獄上くんのお陰もあって何とか捕まえられたけどね」


 初異世界であんなイベントに遭遇するなんて……


「パトロールしてた獄上さんと一緒に捕まえたんでしたねー」

「うん!」

「彼と一緒で疲れませんでした?」

「えっ?特に大丈夫だったよ?」

「ホントですかー?」


 本当に平気だったから特に大丈夫とは言ったけど、クロベさんが言いたいことは私でも何となく分かる。


「えっとー、白矢さんは獄上さんを見てどう思いましたかー?」

「獄上くんって見た目は優しげでクールだけど、性格は結構愉快で良い人だよね!」

「モノは言いようですねー」


 クロベさん?


「でも、白矢さんと相性が良かったようで良かったですー」


 クロベさんは私を見つめながら優しく微笑んだ。


「今度から獄上さんのことは白矢さんにお任せしますー」


 クロベさん?


「あ、そうだー。これから簡単に魔力の使い方をお教えしましょうかー?」

「いいの?今日はお仕事とかは……」

「私も白矢さんも、今日は無い日ですー」

「そうなんだ……なら教えて!折角異世界に来たなら魔法とか使ってみたい!」

「分かりましたー。では、お外に出ましょうかー」

「やったー!」

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