17話 来ない増援
新魔界の中にて。捕虜の魔貴族レオと一緒にいた私は、後からやってきた春信くんとようやく合流することができた。
「さて、そろそろ新魔王様の元へと向かうとしましょう」
「えっ、新魔王の所にもう行くの?地獄からの増援は……」
春信くんと会話をしていると、地獄カードに着信が入った。私は急いで地獄からの連絡に目を通す。
[後は任せた]
「嘘でしょ!?」
杜撰にも程がある。地獄は時々こんなことがあるけど、まさか新魔王の対処を全てこちらに丸投げされるとは……
「えーっと……もしかしてこれ、増援も来ない感じ……?」
「来ません。地獄は我々だけで新魔王様を何とかできると判断されたご様子で」
「そ、そっか……でも、こうしてる間にも新魔王は新たな改造魔物を大量に作ってる頃なんじゃ……だから少数で出るのは……」
『あ、それならもう大丈夫かと……もう増援は来ません』
「えっ?でも、その辺にはまだ虫とかいるし、新魔王は新たな増援を作って送りつけたりするんじゃないの?」
『あー新魔王は……多分逃げました』
「…………えっ?」
魔貴族の一言に、私は思わず素っ頓狂な声を上げる。
『先程、死神様が倒した魔物の中に新魔王様の最終兵器が混じってたんですよ……確か、「攻撃を反射」できる力を持ってたかな?』
「えっ!?あれが!?他と比べて妙な力だとは思ってたけど……」
『最終兵器をあっさり倒されたら、あの新魔王なら絶対に逃亡します。あいつ意外と臆病なところあるので……』
「えっ、でもそんな……」
『本当です!死神様の力に怖気付いて逃げたのは間違いありませんよ!』
「そんな……!」
まさか、私が手早く改造魔物を倒したせいで相手が怖気付いて逃げ出すなんて……!
「フユミ様、ご安心ください」
「えっ?」
自分のせいで相手を取り逃がしてしまい落ち込む私に、春信くんは笑顔で語りかけてきた。
「春信くん……」
「大丈夫です。新魔王様が逃げられないよう、城内を魔封じの結界で覆い、対異次元人装置で新魔王様の力を封じました」
「対異次元人装置……?」
「新魔王様の力は、異次元人から賜ったものです。なので、異次元人の力を封じる装置さえあれば、新魔王様はもう「他人に力を与える」力を使えません」
「そうなの!?」
「新魔王様が逃げ出すのはある程度予測できたので……今頃、新魔王様は力の使用はおろか、城外へ逃げ出すことすらできず、慌てふためいていることでしょう」
新魔王はもう逃げられないと、笑顔で語る春信くん。とりあえずこれで、新魔王の捕獲は容易となった。
(後は新魔王を捕まえるだけ……)
でも新魔王捕獲は春信くん一人に任せた方がいい気がする。一人の方が動きやすいだろうし、一人ならアレコレ好き勝手にできるだろうし。
「春信くん、後は……」
「おーい!フユミさーん!大丈夫ですかー!?」
私が春信くんに新魔王の捕獲を任せようとしたその時、慌てた様子のコバルトくんが駆け込んできた。
「あ、コバルトくん」
「良かった、傷一つない……ってああっ!?お召し物に傷が!?」
「あー恥ずかしいもの見られちゃった。実は、私が油断したせいで服に傷入っちゃって……」
「いえ!むしろこんな危ない場所に一人で赴いて、それでいてほぼ無傷でいられたのは凄いことです!それくらいの傷なんて無いも同然!何なら俺が新しい服を……!」
「赤乃さん」
春信くんは地面に倒れていた魔貴族を拾い上げると、魔貴族をコバルトくんに押し付けた。
「うわっ!?何すんだお前!?」
「赤乃さん、その魔貴族様を地獄まで丁寧にお送りください」
「はぁ!?お前何を……」
「お願いします」
「…………わ、分かったよ」
春信くんに念を押されて怖気ついたのか、コバルトくんは素直に魔貴族を抱き抱えてその場から姿を消した。
コバルトくんを見届けた春信くんは、ゆっくり振り返って私を見つめる。
「フユミ様」
「あ、はい……」
春信くんから緊張した空気が流れてくる。私も思わず緊張してしまいながらも、春信くんに返事を返した。
「ど、どうしたの……?」
「ええと……」
春信くんがここまで緊張するなんて。一体どうしたんだろう……
「あの…………もしよろしければ、一緒に新魔王様を潰しに行きませんか?」
「……えっ?私も?」
想定外だった。まさか私を新魔王の捕縛に連れて行ってくれるなんて。
「もしお嫌でなければ、の話ですが……」
「嫌じゃない!むしろ頼られてるって感じがしてすっごく嬉しいよ!春信くん、私も一緒に連れてって!」
「……!ええ、是非!」
私の返事を聞いた春信くんはとても嬉しそうに微笑んだ。というか春信くん、妙に嬉しそう。
「とりあえず春信くんの指示に従うからね!」
「分かりました。フユミ様、私の後をついてきてください」
「分かった!」
私達はその場から駆け出すと、新魔王のいる大きな城に向かって一直線に飛んでいったのだった。




