9話 改造魔物の討伐
「ただいま戻りました!」
私と春信くんとコバルトくんの三人で職場に戻ると、そこには既に残りのメンバーの姿があった。
「フユミ!三人とも無事だったか!?」
真っ先に私達に気付いたゴウくんが、私達に声をかける。
「大丈夫!コバルトくんと春信くんがおぞましい方法で何とかしてくれたから!」
「二人とも現場で何したんだ?」
「みんな、とりあえず僕の前に集まってね」
真剣なリリー上司の指示に、私達は無言で従う。
「……つい先程、コバルトくんがダンジョンの最下層にて妙な魔物を発見しました。悪魔や死神を視認し攻撃できる、妙な魔物です。地獄では彼らを「改造魔物」と呼ぶことにしました」
「改造魔物……」
リリー上司の言葉にゴウくんが分かりやすく反応する。
「前に捕獲した魔人族による発言も合わせた結果、改造魔物は魔人族の介入により発生したものと見て間違いないとのことです」
「地獄の使いが大急ぎで地上や魔界に赴いて調査しているそうですが、今のところ、人が滅多に来ない最下層に改造魔物が大量に発生していることが分かりました」
「地上の未開拓地にも幾らか発生しているそうです。ここ最近、地上に出ていた妙に強い魔物も魔人族の仕業と見て間違いないでしょう」
「腕に覚えのある悪魔が手当たり次第に改造魔物を倒して回っているそうですが、この職場の職員にも手伝ってほしいと要請が来ました」
「なので君達にはこれから、森やダンジョンなどの様々な場所に赴いて、改造魔物を1匹残らず狩猟してもらいます」
リリー上司はいつになく真剣な面持ちで私達に告げた。
「自然の摂理なら傍観する所でしたが……巷で発生している異様に強い魔物は、魔人族の手により人工的に生み出された異物です」
「地獄にも影響が出るということで、地上にいる私達も改造魔物の討伐に駆り出されることになりました。」
「とりあえず皆さんには、地上の人間を改造魔物の手から助けつつ、目当てである改造魔物を討伐し、改造魔物を幾つか回収してもらいます。まず、豪さんは……」
リリー上司はそこまで告げると、一人一人に担当地域を告げていく。
「……そして、白矢フユミさん」
「はい!」
「白矢さんは深樹海一帯、そこが済んだら中央にある深樹海底ダンジョンを回ってもらいます」
「はいっ!」
「ちょっ!ちょっと待ってください!」
リリー上司の指令に元気よく返事をする話。だけどここで、春信くんの隣にいたコバルトくんが唐突に声を上げた。
「あのっ、リリー上司!フユミさんは誰かと一緒に仕事に行かないんですか!?」
「今回は全員、単体で仕事をしてもらいます」
「一人ぃ!?」
リリー上司の言葉に赤乃さんが大声で反応する。
「一人です。白矢さんはこの異世界に来てからだいぶ経ちますからね」
「ちょっと待ってください!まさか白矢フユミさんを一人で向かわせるんですか!?その改造魔物とか言う訳の分からない魔物に、フユミさん一人で戦わせるつもりですか!?」
「赤乃さん……気持ちは分かるよ。でも、死神は不死身だから大丈夫。それに、白矢さんは特に強いからね」
「で、ですが……!」
リリー上司の言葉が信用できないのか、コバルトくんはその場で慌てる。
「そうだ、獄上はフユミさんと仲良いよな!?」
リリー上司の言葉に納得がいかないコバルトくんは、隣にいた獄上春信くんに声をかけた。
「なあ!?獄上も流石にこの対応は……!」
「部外者が口を出さない」
「はい獄上様!!生意気な真似してすいませんでした!!」
春信くんが一言釘を刺した瞬間、コバルトくんは急に姿勢を正して全力の謝罪をした。潔い。
「改造魔物の場所は地獄カードの、急遽アップデートが入った地図アプリが教えてくれます。とりあえず皆さんは、その場から改造魔物の反応が消えるまで狩猟を続けてください」
リリー上司はコバルトくんから目を離して話を続ける。
「もし担当する地域から改造魔物がいなくなったら、まだ仕事をしてる方のお手伝いに行くように。では皆さん、仕事を始めてください」
「「「「はい!」」」」
指令を告げたリリー上司に対して全員で真剣な返事をすると、皆んなはその場から一斉に動き出した。
全員バラバラの方向に散る中、春信くんはコバルトくんを従えて遠くに飛んでいった。
「よし!頑張るぞー!」
私も元気よく職場から飛び出すと、深樹海方面に向かって全力で走った。
「到着!」
深樹海にあっという間に到着した私は、その場で地獄カードの地図アプリを開いた。
カードの地図アプリで「魔物探知」のボタンを押すと、改造魔物が近くにいることを知らせるアイコンが出現した。
どうやらこの深樹海の奥に、改造魔物が幾つか発生してるみたい。
「早速行きたい所だけど……まずは動きやすい見た目に変更しよっと」
私はその場で変身魔法を使い、自分の着ている服を私服から冒険者の魔法使いっぽいカッコよくも可愛らしい装備に変更した。
「よしっ!魔物狩りの時間だよっ!」
私は死神の武器である大鎌を手に持つと、全速力で森の中へと飛び込んだのだった。




