11話 深樹海のパトロール
獄上くんと一緒に深樹海の奥へと歩いていく。
「綺麗な場所……」
空から降り注ぐ光が森の中を照らす。クラゲのような魔物がフワフワと浮かび、カラフルなサメのような魔物が私達の横を通り過ぎていく。
「……あっ、パトロールに集中しないと」
「白矢様、あちらにケミカルウミウシが飛んでますよ」
「パトロールに集中させて!」
獄上くんの悪魔の誘惑を断り、私はとにかく真面目にパトロールする。
死神のパトロールでは主に、迷い魂や異変が無いか探すのが主な仕事。だけどそれ以外にも、ちゃんとこなさないといけない仕事が存在する。
土地や物などに付着した記憶のカケラを集めること。
もしこのまま記憶を放置すると、無機物に意思が宿ったり怪異が発生してしまう。
放置し続けると生きてる人間に被害が出る。なので私達死神はパトロールがてら、記憶が溢れている箇所を見つけては記憶の掃除もこなすのだった。
「あった!」
私は記憶の気配を辿っては、順調に記憶を集めて回る。
「獄上くん、記憶は根元からしっかり引っこ抜くんだよね?これで合ってる?」
「大正解です、流石は白矢様。もう私が教えられることはございません……」
「獄上くん事あるごとに勝手にフェードアウトしようとしないで!」
「白矢様、上空にケミカルカイトです」
「パトロールに集中させて!」
しばらくして……
森の掃除も済ませ、森の中も全て歩き終えた。これでパトロールは完了だ。
獄上くんは時折悪魔の誘惑をしつつも、ずっと私のそばに寄り添ってくれた。
私が仕事をこなせるよう見守りつつ、時折それとなく補助をしてくれた。物凄くありがたかった。
「異変も迷い魂もなさそうだね」
因みに、私達が探す迷い魂は本物の魂ではない。
土地や物に一個人の強い記憶が残留し続けると、それがまるで生前の本人のように振る舞い出すらしい。
それを死神の間では迷い魂と呼ぶ。簡単に言えば幽霊だ。
「これでパトロールは完了です。お疲れ様でした」
「獄上くん、サポートありがとう!すごく頼もしかったよ!」
「どういたしまして」
獄上くんは笑顔で私に返事を返してくれた。
「さて、戻ってリリー上司に報告しないと!」
「宜しいのですか?長居しない程度に、少し景色を見て周るくらいなら大丈夫ですよ」
獄上くんは相変わらず私に悪魔の誘惑をしてくる。
「確かに気にはなるけど……!リリー上司への報告が最優先!」
「そうですか……残念です」
私の宣言に獄上くんが目に見えて落ち込んだ。どうやら獄上くんの方が、この森の景色を見て回りたいだけだったみたい。
「私だって見て回りたいけど……あ、そうだ!」
私は手を叩いて獄上くんの顔を見つめる。
「仕事が終わったら、獄上くんのオススメの景色教えてよ!で、一緒に見に行こ!」
「えっ?」
私の提案に、獄上くんは目を少し見開く。
「獄上くんの都合が良ければだけど……どうかな?」
「えっと……私で宜しいのですか?」
「うん!獄上くんなら面白いもの沢山知ってそうだから!」
獄上くんって遊び心とかあるし、楽しいものを沢山知ってそう。それに、なんやかんやで獄上くんはしっかりしてるから、一緒に見て回ったらきっと楽しいと思う。
「あっ!無理に応じなくて大丈夫だからね!無理なら後でクロベさんと」
「無理ではございません」
私の発言に、獄上くんは食い気味に言葉を発した。
「白矢様のご要望とあらば喜んでお受けしましょう」
「いいの?」
「ええ。白矢様に私のお勧めスポットをご紹介します」
「やった!ありがとう!」
獄上くんと遊ぶ約束ができた!獄上くんとの景色巡り、きっと楽しいだろうな〜!




