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10.5話 死神とのやり取り

青冒険者視点

「この子はちゃんと受け答えできるのか。他の無愛想で反応が薄い死神とは違うようだな」


 深樹海の入り口で、グレイが誰もいない空間に向かって唐突に独り言を始めた。


「(どうやら死神と遭遇してるようですね……)」


 グレイは死神を視認し、対話ができる。


 グレイが死神に質問をすれば有益な情報を得られる。

 魔物の生息状況、探索先の環境と目当ての素材のある場所、人間が立ち入ってはいけない危険地帯……冒険者である我々にとって非常にありがたい存在だ。


 どうやらグレイは今、新しい死神と遭遇し対話を試みているようだ。


「君は何て名前?」


 視線を落とし、優しい口調で声をかけるところを見るに、どうやら相手の見た目は幼い見た目をしているらしい。


「シロヤフ……何だか優しそうな雰囲気の名前だね」


「リーダー、また死神と遭遇してるみたいだな」

「そのようですね。口振りからして、この場に二名ほどいるご様子……」


 我々が見守る中、グレイは会話を続ける。


「それにしても君、何とも乙女な格好をしてるね……」


 新しい死神は幼い乙女らしい。


 グレイは女性に免疫がない。グレイの態度が妙にぎこちない理由がよく分かった。


「死神はきっちりスーツ姿の奴が多かったから、珍しいなって……いやいや!そんな……!か、可愛い……と、思う……!」


 見てられない。


 まさかグレイのこんなだらしない姿を間近で見る羽目になるとは。


 顔をだらしなく緩めていたグレイ……が、唐突にグレイの顔が険しくなった。


「お前じゃねーよ!」


 物凄い剣幕でグレイが怒鳴った。


「うわっ!照れてたリーダーが急にキレた!」

「どうやらこの場に二体の死神がいるようですね……一体は乙女らしい死神のシロヤさん、もう一体はいつもの変人ハルノブさん」

「もしかして、ハルノブが何かしたのか?」


「あ、急に怒鳴ってごめん!君は可愛いよ!あはは……」


「リーダーまた笑い出した……」

「今日は随分と情緒不安定ですね……」


 なんというか気色悪い。


「あ、そうだ。ハルノブ、街に落ちてた爆弾はあの後どうなった?」


「あ、リーダーが今朝の爆弾のことを尋ねてる!」

「街中の路地裏に落ちていた爆弾の件ですね」


 あの現場には、爆弾の隣に綺麗な鞄が落ちていた。

 恐らく、ならず者がどこからか鞄を盗みだし、路地裏で鞄の中身を物色していたら爆弾が出てきたのだろう。


 あの時はグレイが、偶然近くにいた死神に爆弾を押し付けて対処していた。


「(死神の話によると、あの爆弾は死神を呼び寄せる為に街に置いていたのではないかと推測していたようだが……)」


 何はともあれ、死神によって街から爆弾を遠ざけることには成功した……筈だ。


 だが、目の前のグレイの表情があまりかんばしくない。


「……爆弾は本当に解体したんだよな?」


 雲行きが怪しい。


 まさか何かトラブルでもあったのだろうか。


「ええっ!?職場!?」


 ……もしかして死神の職場爆発した?


「なら大丈夫か……」


 本当に大丈夫か?これ、間違いなく職場爆発してるな?


「ありがとう、お陰で街は助かった」


 もっと職場の心配をしてやれ。


「そうだ、深樹海について死神達が知ってることを教えてくれないか」


 死神の職場を爆破しといてよくそんなことが言えたな?



 この後、グレイは死神とやり取りをして無事に情報を得たようだ。



「情報ありがとう。じゃあな。おう」


 グレイは死神と別れ、俺達の方に戻ってきた。


「グレイ……」

「ん?どうした?」

「死神の職場を爆破しておいてあの言い分は……」

「えっ……いやいやいや!爆弾は爆発はしてねーよ!ちゃんと文房具で解体できたって言ってたから!」

「えっ?」

「俺もよく分からないけど相手がそう言ってたんだって!」


 よく分からないが、死神の職場は無事だったらしい。


「それにしても……リーダー、会話中に何度か顔が緩んでたぞ?」

「えっ?いや、その……」


 女の子の話になり、グレイは途端に顔を赤らめて言葉を詰まらせる。


「だらしない顔してたよなー」

「ええ。あんな顔、二度と見たくありません」

「そんなこと言うなって!」


 グレイ、そこで否定はしない方がいい。


「え?リーダーは緩んだ顔を俺達に積極的に見せたいのか?」

「違う!そうじゃなくて……!」


 必死に弁解しようとするも、顔はずっと緩んだままだ。ここまで慌てるとは珍しい。そんなグレイが珍しかったのか、仲間が更に指摘する。


「リーダー、死神はそんなに可愛かったのか?」

「ええっ!?」


 死神について質問されたグレイは、表情をより一層表情を緩ませた。


「ハルノブって可愛いのか?」

「違う!あんなの可愛くねーよ!」

「じゃあ新しい方か?」

「え、えっと……シロヤって死神は……」


 グレイは顔を赤らめ、顔をこちらから背けながらボソリと一言呟いた。


「なんというか……シロヤって子は可愛かったかな、って……」


「「…………」」


 俺達はグレイの一言に呆れ、呆然とする。


「つまり一目惚れってやつか……」

「あ、違う!ただ可愛かったってだけ!それだけ!」

「…………グレイはここに置いていきましょう」

「そうだな。リーダー、達者でな!」

「ごめん!置いてかないで!」


 死神に惚れるとか、グレイは何を考えているのやら……

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