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『君との再会』

 




「待ってください。貴方は帰しません」


 俺が振り向くとそこには神城志乃亜が突っ立っていた。

 どこか、懐かしい面影に対して無表情で見つめてくるその目は今まで何度見たいと思ったことか。


 千里と仲良くなったのは小6からだったが、俺と志乃亜が出会ったのは小1の夏休みの1ヶ月とちょっとの間だけだった。


 普通に考えれば短い期間だったが小学生の俺たちにはとても長い時間に感じられた。


「無視しないでください」


 無表情で伝えてくる彼女をそっと見つめていた。


 それでも俺は無視を貫き通す、ここで喋るのも良くないし、俺が話しかけるのはなんとなくだが嫌な気がした。


 10年間会ってないというのはその分信頼度も落ちてしまう。

 それに加え俺は女性不信という、女性に対して信じることができない。


 今そんなこと関係はないがそんな俺を見せても意味などない。

 彼女が知っている俺、柊綾は消えたもう1年程前に。


 それだけの話だと思う。


「無視しないでください。貴方はそんな人じゃなかった気がします。それにしてもわざわざ嫌いなお父さんに頼んでまで貴方の情報を掴んでもらってこの高校に来たんですけど、当の本人に無視されては困るんです」


 そう、志乃亜のお父さんは某有名会社の社長で海外でもとても有名らしい。

 知人などに、情報に詳しい人がいて、俺の事を調べたのだろう。


 権力者というのはこういうのを堂々としてくるので恐ろしい限りだ。


「無視しないでください。そろそろ手が出そうになってきました」


「・・・」


 俺はお構いなく、無視を貫き通すようにしていた。


「はぁ...強情ですね。誰がこんな面倒な子に育ててしまったのですか」


 困った顔になっていた、お前表情結構増えたんだな。

 良かった良かった...。


「ありがとうございます?あれ?今喋りました?」


 今喋ってたのかよ、気まずくなってしまった。

 無言で歩くが着いてくるので仕方なく公園のベンチにでも座ることにした。


「やっと話す気になりましたか、柊綾」


「あぁ、ここなら誰も聞きそうな人がいなくなったからな」


「言ってくれればここら辺一帯を封鎖することも1時間くらいならできます。面倒臭いのとあの大嫌いなお父様に頼むのは嫌なのでそれならどこかカラオケなどに入るのが1番です」


「おま...志乃亜か父親嫌い悪化してるね」


 言うまでもなく、志乃亜は父親である神城瑛斗(かみしろえいと)がそこまで好きと言えなかった。


 小さい頃から周りには使用人で父親や母親といる時間より長い使用人の方に懐いてしまったと言えばいいのだろう。

 父親も母親もそれはそれで、放任主義故か彼女のことをきちんと見ることは次第に減っていった。


「貴方のお父様は再婚して元気らしいですね。義妹が出来たとも小耳にしました」


「情報力凄いな、じゃあ()()()()()()()()()()()()()()()()


「それは言ってる意味によります、例えば貴方の病気の原因などは数人しか知らないということで、調べるのにもとてもとても苦労しました」


「誰に聞いた?」


「答えかねます。お金を払って聞いたとだけ教えておきます。貴方の周りで1番関係が薄い人と言えばすぐにわかるかも知れません」


 ぱっと思いつくのは絢瀬だった、彼女に対してはずっと信用し難い感じがあった。


「その人の親が今倒産しかけてるので情報と交換で救ってあげました。win-winでしたね。相手は救ってもらえて、こちらは貴方の情報が貰えた」


「それじゃあ、多分だがそいつか知ってるのは俺の情報の一部でしかないぞ」


「そうですね、そのようですが貴方から直接聞いた方が早いと決断です。無駄な労力でした」


 無駄な労力とわかっていても彼女は動く、神城志乃亜という少女はそういう子だった。


 頭が良く、天才だった。


 俺はそんな彼女にどこか憧れていたのかもしれない。


「今から懐かしい場所に向かいましょうか、貴方の心も少しは落ち着くと思います」


 そう言われて俺は彼女の隣を歩く、後ろを歩くのは嫌な気がした。


 少しくらいは隣にいてもいいだろう、どうせ行く場所は知っている。


「私が海外に行ってから、貴方は変わりましたね」


「そりゃあ、人は変わらなかったらおかしいだろ」


「その通りです。貴方は変わりすぎたような気がします。それも別人と言って良いほどに」


「老いたとでも思ってくれ」


 そう言うと少しだけ微笑んでまた無表情な顔に戻る。

 実言うとこいつのまともに笑う顔を見たことがなく、微笑む顔が嫌いだ。


 愛想笑いにしか見えない、そんな顔が嫌いだった気がする。

 無表情の方がお前らしい顔だと思っていた。


「ここの山ですね...登りましょうか」


「そうだな、足元気をつけろよ...」


 そう言うと驚いた表情でこちらを見られたので「何だ?」と言ったら「何でもありません」と言われた。


 少し謎に思ったが、何でもないならそれでいいやと思ってしまった。


「はぁ、はぁ...」


 俺はと言うと数分で息が切れかけていた、これも日々運動をしていない真っ白い肌が言っているようなものだろう。


「息切れるの早くないですか?」


「こっちは治療してたせいでまともに動いてないんだ」


「あぁ、道理で肌が私くらい白いんですね」


「すぐ焼けるだろうな多分...」


「そうだといいですね」


 そういうくだらない話をするが俺たちはやっと着いたことに安心した。


「結構長く感じました」


「道間違えたかと思ったぞ...」


「それにしても星空が綺麗ですね」


「10年前は早く帰れ!って言われて見れなかった景色だからな...」


 俺たちは空を眺めていた。

 とても綺麗な夜空だったが、有栖にメールをしてないことに気づいて『帰るの遅くなる』とだけ返しておいた。


「志乃亜は大丈夫なのか?家厳しいんじゃないか?」


「気にしなくて大丈夫です。一人暮らしです」


「そうか、なら少しは大丈夫なんだな」


「はい、まぁお父様は反対してたんですが、お母様に許可を貰いました」


 数十分くだらない話をして、駅まで見送りをした。

 見送りは要らないと言われたけどそれでも近くまで送ることにした。


「それじゃあおやすみ」


「おやすみなさい」


 何だか去年はつまらない日々だったせいか今日がとても楽しかった。


 こんな日々が続けば良い、それが俺の青春になるだろう。



 志乃亜との再会は俺を幸せに導くかもしれないと小さな期待を抱かせた。

何とか2話書けました。

1700文字くらい書いたあと全部消して書き直ししたので誤字脱字が多いかもしれません。


次の話も書かないと...書き溜め?ナニソレオイシイノ...





ブクマやたくさんの評価などありがとうございます。

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こういうの書くの嫌いな方も多いのでたまにしか書きません。

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