『入学式』
俺は今、学校へと一歩ずつ歩いているのだがやはり、視線が痛い。
そりゃ、白髪ってのは普通に珍しいし、そんなに居ないだろうし、ましてや高校生だったからな。
この高校、橋宮高校は進学校だ、ある程度の校則はなく、指定の出席日数そしてある程度の成績を収めると良い。
実際に俺の場合は出席日数もテストも提出物も何もしていなかっただけだったので留年になってしまった。
その期間は暇で勉強はしていたがどうせなら千里とは別学年でなるべく会いたくないという思いからもそうなっていた。
「それにしてもこの感覚も二度目か...」
そう、この感覚というのは入学式のことだった。
1年前にもまた同じような道を歩いた気がする、それも千里と2人でだったな...。
今思えば、嫌な思い出にしかならない事だがその時は一緒に通えるということだけで馬鹿みたいに嬉しがっていた。
「桜が綺麗だ...」
学校の正門へと近づくと俺は桜並木を眺めてそう言葉をこぼしてしまった。
周りには登校者がゆっくりと正門を潜っている人がいる。
他にも正門の前で立ち止まっている人もいる。
「心が痛いな...」
去年は2人で来たはずの道も今年は1人だった、それが何処と無く寂しい気がする、そして心地よく感じている自分もいた。
教室に向かって扉をガラガラと開くと俺の方へ視線が集まった。
正確に言えば俺の頭の方へ視線が集まったと言った方が正しいだろう。
俺は沈黙をスルーして予め聞いておいた席に座って先生を待った。
この学校は髪を染めていることに対して何か言うことは無い。
成績こそが重要になっている進学校だからというのもあるが理事長の方針が元からそうだったらしい。
俺も髪の毛、その他病気のことで1度だけ会ったことがあるが気に食わないお姉さんだった、おばさんと言うにはまだ若い年、30代後半くらいだろうと思う。
「皆、席に着いたかしら?」
少し経つと雅先生が予定より早めにやって来ていた。
俺をチラッと見て、直ぐに次の人に目を移す、目が合ってしまって俺から逸らしたのは言うまでもない。
「それじゃあ、私の名前は秋川雅、親しめで雅先生って呼んでね〜!」
そう言うとクラスに暖かさが来て、皆も緊張がやわらいだ感じがした。
雅先生はまだ教師になりたてなのでこういうのはよく理解していると思う。
そんな中俺は1人の女の子を眺めていた。
銀髪の女の子だった、目が奪われるくらいに可愛らしい彼女は無表情でその場所に座っており、誰も近づけないようなオーラが出ていた。
どこか見た事があるような気がしたその子を眺めているが彼女はこちらに一切気づかなかった。
気のせいか...10年も前の話しだしな。
千里と付き合い、そんなことすっかり忘れてしまっていたが最近では夢でもよく出てくるので思い出してしまった。
夏祭りの時に撮った写真が家に数枚だけあった。
屋台のおじちゃんに撮って貰ったんだっけな?どんなやって撮ったかなんて覚えてすらいない。
重要なのはそこに俺と彼女がいたということ、思い出として俺記憶に残っている事だ。
「それじゃ、名簿順に廊下に並んでね〜!」
そう言われて俺は廊下へ出ていた、ひいらぎなので真ん中らへんか。
事実俺の出席番号は26番、微妙な数字だけど出席番号くらい気にしない。
「それじゃあ、行こうか!」
皆が緊張してる中率先して、声を出している雅先生、キャラを作っているということは知っているがそれでも頑張っているのでとても頼りがいがある先生なのだろう。
それと同時にすごく疲れそうな気もするがそれが仕事なので何も言わずについて行くことにする。
案の定、理事長の話は長かった、女だからと油断した俺が馬鹿だった。
同じクラスで高校生になって親が来てないのは出張で忙しい俺の親と、銀髪の女の子のみだった。
入学式などはある程度の親が来るのが常識といっても過言ではない。
もちろん、おじいちゃんやおばあちゃんが来てるところもあった。
他クラスにも親が多忙な人もいたし、来てないところなど多かったがこのクラスでは俺と彼女の2人だけだった。
その為少し印象に残ってしまった。
「それじゃあ自己紹介の時間だよ〜!名簿順で起立して言っていってね〜!」
教室に戻ると自己紹介の時間がきてしまった。
今日はすぐ帰れると思ったがどうやら違うらしく、もう少し長引くらしい。
「主席番号1番赤野竜馬だ。中学校の時はサッカーのキャプテンをしてた。このクラスの人と仲良くやっていきたい。よろしくな」
いかにも眩しい男が出席番号1番らしい、こういうのは今は苦手だなと思った。
「出席番号2番伊藤明、よろしく...」
次はいかにも対象的な子がでてきた。先程の明るい眩しすぎ男子が光と言えばこっちは闇がお似合いだった。
それからも10番くらい過ぎていき、銀髪の女の子の自己紹介の番だった。
3番から適当に聞いていた俺でも聞き逃さないようにと真っ直ぐ見つめていた。
「出席番号14番神城志乃亜です。10年間海外におり、日本に先日来たばかりですのでわからないこともあるかもしれませんがよろしくお願いします」
会えてしまった、『いつかは会えると思います』その言葉が頭で繰り返していた。
それと同時に俺は思ってしまった。
合わせる顔がないな...と、彼女は10年間海外で沢山努力をしてきただろうが、俺が何をしたかといってもただ引きこもって勉強していた、変な病気と戦っていただけだった。
今はまだ、お互いに忘れておこうと思った。
「次は26番!」
そう雅先生に言われ俺は立ち上がって言う。
「出席番号26番、柊綾です。1年間病気の治療によって留年してます。この髪の毛も精神的なものが原因らしいので気にしないでください。今年1年よろしくお願いします」
そう言って座る、志乃亜を見ることは無かった。
また今度ゆっくりと話せる機会があればいいなと思った。
全員の自己紹介が終わり、今日やることが全て終わってしまい帰れるようになった。
久々の学校とはとても疲れる、俺が体力がないのはその肌の白さから分かってしまうだろう。
ゆっくりと家に帰るか...いや有栖と楓ちゃんにケーキでも買って帰るか、と思った。
楓さんから楓ちゃんになったのは「お兄ちゃんよそよそしすぎる!」と有栖に叱られてしまったからだ。
「さて帰るか...」
「待ってください。貴方はまだ帰しません」
「は?」
声がした方を振り向くと神城志乃亜が、突っ立っていた。
早速でてきた志乃亜ちゃん。
次の話一切書いてないので寝て起きて書きます。




