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『追憶の夢』

第二章一話目になります。

やっと高校生活。

 



 これはある日の記憶の夢だった。


 今年で17になる俺は1年留年し、実質16歳の扱いを受けることとなる。


 その10年前のある夏の日の出来事だった。


「お前何してんだ?」


「・・・」


 そこにいたのは銀髪の小柄な女の子だった。日本人ではない気がし当時の俺はハーフかな?くらいの感覚であった。


 最初は無愛想な女の子だったなという印象が強かった。


「なぁ、なんか言ったらどうだ?」


 そう言うと彼女は俺をジロっと睨んでから無表情になっていた。


 そんな行動のせいで当時小学生だった、俺の好奇心が溢れ出てしまっていた。


「なぁ、なんか言ったらどうだ?」


「・・・」


 この日は睨まれることもなく、華麗に無視されていた。

 結構ムカついてしまった、子供の頃の俺だが結構情けないなと思う。



 次の日も俺は、いや俺たちは同じ場所に来ていた。


「お、いたいた!おーい!!」


 声をかけるが相変わらずの無視スキル、ムキッとこの日もなっていた記憶がある。


「おー「何ですか?」え?」


 いつもみたいに喋らないと思った子は普通に喋っていた。


「え?今喋った?」


「そうですね、喋りました」


 俺と彼女の会話の始まりがこれだった。


「なぁ、毎日ここに来て何してるんだ?」


「景色を見てます。もうここにいられる時間も僅かなので...」


 そう言って空を見ると快晴で雲一つない空だった。


「綺麗だなぁ...」


「私もそう思います。全くあの青空は呑気そうです」


「俺と変わんねぇな...」


 呑気なのは俺も一緒だと言う意味で言った気がする、彼女はそれに対して少し微笑むが直ぐに無表情に戻った。


「貴方は何で私に話しかけてたんですか?」


「理由?そんなのムカついたからだけど?」


「ムカついた?何にですか?」


「無視されていたことにムカついた」


 そう面と向かって言っていたら彼女は少し驚いて、また無表情に戻る。

 この時の俺は何を考えてるのか全く分からなかったが今になれば何を考えているのか分かってしまう。


 彼女は俺という人間が不思議で仕方なかったのだろう。

 そう、彼女は俺が理解できない人だったということだけだった。


 それが彼女の興味をそそらせてしまったのだろう。


 次の日も同じ場所に来ていると俺の方が早かったらしい。

 彼女はいつも早かったので少し早めに来たのだが早すぎたようだ。


「それにしても...そういえば名前も知らないな」


 そう、お互いに名乗らなかった、名前が不明、年齢もお互いにわからないけど彼女の方が年下に見えた。


 そして、どこか大人びていた気がする。


 今思えばこの時期から社会の闇を知っていたのだろうか?

 そう思うと恐ろしい限りだ。


「今日は早いんですね。驚きです」


「ん?あぁ、お前に会いたくて早起きしてきた!」


 この時の俺は今思えば恥ずかしいことも平気で言うような男だった。


 もちろん、彼女も少し顔を赤らめてしまっていたがこの時の俺は純粋だったんだろう、熱でもあるのかと思っていた。


 ある日こんな話をした。


「夏祭り行きます?」


 夏休みも中盤まできていた時に思い出作りとして本人は行きたいらしい。


「良いよ!行こう!!」


 そんなことなら...と俺は乗り気で夏祭りを行くことになった。


 名前も知らない少女、それだけが頭に残っている。


 そんなこんなで当日になっていた。

 俺と千里が仲良くなったのは小学校6年生のときだ。

 それまでは同じクラスだったがあまり話すことは無かった。


「遅いです。デートとしては減点です」


「デート?なんだそれ」


 この時の俺はデートなんか言葉も知らない男の子だった。

 今思えばこの子はデートという言葉の意味も知っていたのだろう、知識が豊富だなと思った。



 夏祭りというのは一人で行ったりはせず、家族とよく行っていた。

 だが母さんが亡くなってからは父さんは仕事人間になっていた。


 それからずっと一人で暇をしていた俺にとっては刺激的な日常だったのかもしれない。


「そろそろ花火が上がる時間です」


「そうだな〜!」


 俺たちは花火が見えやすいスポットを探して歩いていた。


「ここが良さそうですね」


「そうか?あっちの方が良くないか?」


「あそこは獣道なので気をつけた方がいいのでこちらが安全です」


「そっか、お前凄いな!」


「毎回思ってたんですけど、そのお前というのやめてください」


「じゃあ、俺は綾。柊綾だ!おま...「お前じゃなく神城志乃亜(かみしろしのあ)です覚えておいてください」」


「わかった」


 それから俺たちはお互いの名前を初めて知った。

 夏休みが終わっても俺たちは一緒だと思っていた。


 そんな日常が終わるのも突然で、夏休みが終わる時話があると言われた。


「話ってなんだ?」


「海外行きが決定したそうです。なので来週から、会えなくなります」


「そう...か」


 この時の無知な俺でも海外行きというのは遠くへ行くということくらいは分かっていた。


「海外行きかぁ、凄いよな!」


「一般的に考えたらそうかもしれません」


「また会えるよな?」


「いつかは会えると思います」


 その言葉を信じて1週間という短い期間を共にすごした。


 1週間後俺たちは別れの挨拶なんかしなかった。


 必要なんかないと思っていたからだ。


 また出会えると信じて───。








 これは俺の...いや、俺たちの忘れられないある夏の日の記憶だった。

順調に伸びてきており嬉しい限りです。

今のところ1話2500文字前後に整えております。

それを毎日2話、約5000文字書き上げております。

書き溜めなどないので書ける範囲で書きますが休日は2話投稿、平日は1話、もしくは2話投稿というふうにしていきます。



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