『熱で休んだ日』
体育祭が終わり、休日があってから数日俺は家で寝ていた。
「もー、お兄ちゃん!熱出してどうするの?」
有栖の声が聞こえるが、声を返すのも喉が痛くて少し面倒くさく感じてしまう。
「熱出そうとして出したわけじゃないから...」
今日は学校だし、俺は学校へ行く準備をしようとしていたが有栖に「行ったらダメだからね?」と叱られてしまった。
こんな日でも今のところ毎日学校へ行けていたので多少の熱は我慢くらいするつもりだった。
「38.7度だね...」
体温計が測り終える音が鳴ると有栖に体温計を渡して見せると38.7度と言われた。
「そんなに熱あるの?」
思った以上の高熱だったので、俺はびっくりしていた、そういえば休日も少し体がきつかった気がするが体育祭の疲れからかなと思っていた。
もしかすると、その時から少し熱があったのかもしれない。
体育祭当日は倒れてるし充分に有り得ることだと思った。
「とりあえず、今日はお兄ちゃん休んでね。まぁ私も看病するから休むけど」
「いやいや、一人で何とかなるから有栖は行ってきていいよ?」
有栖は普通に学校へに行ってほしい、楓ちゃんや他にも友達がいるだろうし、迷惑をかける訳にはいけない。
「家族なんだから...ね?少しくらい頼っていいんだよ?お兄ちゃん」
「今まで充分頼ってきたから...あんまり迷惑かけられないんだ」
「迷惑じゃないから!私がしたくてしてるのお兄ちゃんは看病されてればいいの!わかった!?」
有栖にそう言われて戸惑っていると「返事は!?」と迫力のある感じで言われ「は、はい」と情けない返事をした。
◇
今は学校に有栖が電話をしているらしい、多分雅先生に直接電話をしているから何か面倒なことにはなることは無いだろうと思う。
「は、はい。お兄ちゃ...兄が熱を出してしまって...はい、はい。わかりましたそう伝えておきます」
雅先生の声は聞こえはしないが有栖の電話をしている声が聞こえた。
「お兄ちゃん、安静にして早く治すようにだって、結構心配してくれてたし良い先生だね!」
「そう...なのか?」
良い先生というのは感じ方によって変わるのでわからないが俺も良い先生だとは思う。
きちんと生徒のことを見ているので僅かな変化などによく気がつき女子からの人気も案外高いし名前をすぐに覚えてくれたり小さな好感度が高かったりする。
「それで、俺はどうしたらいいんだ?」
「寝てていいよ?お腹減ったらお粥でも作るから言っていいからね!んー私はとりあえず買い物に行ってくるね!」
「ん?行ってらっしゃい」
こんな早い時間から買い物に行くというのはどういう事なのか全くわからなかったが熱出し、大人しく寝ておこう、そう思った。
◇
体育祭が終わってからお兄ちゃんの様子が変だということにはすぐに気がついていた。
お兄ちゃんにも何か理由があるということをすぐに察した私は特に何も言わなかったが熱があったということと関係してくるのだろうか?
そんなことを考えていたが結果的に何も分からなかった。
「お兄ちゃんは迷惑かけてると思ってるけど...私のお節介なだけなんだよ...」
お買い物に行くと言って玄関を出る時にボソッと呟いたがお兄ちゃんには聞こえないだろうと思う声量で言った。
お兄ちゃんは気づかずに部屋に戻って行ったが見送りまでするお兄ちゃんは熱なのに無理をしすぎだと思う。
とりあえず坂上先生のところに行こう、彼ならば何か知っているのかもしれない、そう思っての行動だった。
病院に向かうと「柊です」と一言、言うだけで坂上先生のところへ通してくれた。
「やぁ、綾くんの妹さんだね、今日は何があったのかな?」
「あの、お兄ちゃ...兄のことなんですが何か坂上先生に言ってなかったですか?」
「柊くんが?最近は電話くらいしかしてないからね...特に聞いてないけど何かあったのかい?」
「実は兄が先日から、いや体育祭が終わってから変で今日は熱を出したみたいで何か理由があればと思ったんですが...」
「僕は特に聞いてないから多分だけど休日の頃からキツかったのかも?今高熱だったりするんなら悪化した可能性が高いかもしれないね」
坂上先生が言うには体育祭が終わってから様子が変だと思ったのは熱があったからだと予想しているらしい。
何か精神的なことがあれば自分のところに来るはずだからね、と言っていたことから坂上先生とお兄ちゃんは結構な信頼関係を築いてる気がする。
「何かあったら言ってくれればいいよ、綾くんにも宜しく伝えといて」
「わかりました。それでは失礼します」
そう言って病室を出ることにした。お兄ちゃんはきちんと安静にしてるかな?早く買い物を済ませて帰路を辿ることにした。
◇
暇だ、眠れない。こういう時に勉強をするのが一年前まで日課だったが頭が痛くてそれどころではなかった。
かと言って充分に睡眠をとっているので眠たいという訳ではなかった。
早く有栖が帰ってくることを待とう、そう思ってもう一度瞼を閉じた。




