『全ての原因』
私、春宮千里はある日、全てを知っているという新城颯馬さんの話を聞きに来ていた。
「やぁ、千里ちゃん」
10分ほど早めに待ち合わせ場所で颯馬さんを待っていると時間より少し早めに来た颯馬さんが突然後ろから声をかけてきたのでビクッとしながら「こんにちは」と挨拶をしていた。
「早速話を聞きたいんですが...」
私は何故綾くんがあんな風になったのかが気になって早く知りたいという気持ちだけだった。
「まぁまぁ、今ちょうどお昼時だから、ね?食事でもしながらゆっくり話そう」
時刻はちょうどお昼時...颯馬さんが先日、約束の日時を決めていたからこの行動も考えて動いているのだろう。
私としてはとても計画的な行動だなと思ってしまった。
そんなことより話を聞かないといけないのでとりあえずは急かす行動はやめておこうと思った。
◇
食事を終えてから、私たちは綾くんとは全く関係ない話をしている。
「それでさ───」
颯馬さんは全く気にしていないらしい、私としては綾くんのことが気になってほかの話なんか全然頭には入らなかった。
「そんなに柊くんのことが気になるのかい?」
突然、今まで笑って話をしていた颯馬さんは真剣な表情で私に向けてそう行ってきた。
「そう...です。綾くんがなんで私から離れていったのか気になります...」
私だって結果的に綾くんの傍から離れてしまっている。
いつまでもこのことを引っ張ってしまっている。
その思いを断ち切りたいと思ったからだった。
綾くんが私から離れた理由は他に好きな女性ができたからだと思っていた。
綾くんの周りには色々な人が集まっているし、私より相応しい人がいると思う。
それでも傍にいたい、いやいたかったという方が正しいかもしれない。
「柊くんが千里ちゃんから離れた理由はね、千里ちゃん君自身にあるんだよ」
「え?」
颯馬さんは私に向かってそう言いながら笑みを浮かべていた。
なんでそんなことを言うのだろうか?なんで笑みを浮かべているのだろうか?
全く分からない、だって綾くんから離れていったのに、私に原因があって離れた?そういうことなの?
「正しく言えば全ての原因は僕かもしれない...けど千里ちゃんも原因だね」
颯馬さんは先程の笑みが無くなって少し悲しそうな顔をしていた。
さっきの笑みが消えてすぐにほかの顔になっている、まるで演技でもしているかのようにそれが見えてしまった。
「1から話してもらえますか...?」
私は颯馬さんが言っていることが一切理解ができなかった。
何を言っているのだろう?そう思っていた。
この時までは...。
◇
私と颯馬さんはしばらく黙っていた、多分だけど、颯馬さんはこっちに合わせてくれているみたいだった。
「千里ちゃん、そろそろ話をしていいかな?」
「は、はい...」
どんなことを話されるのだろうか、どんなことで綾くんが離れてしまったのか少しの好奇心が私の心の中にあった。
「まず、彼と付き合っていた時にきちんとデートできてなかったでしょ?」
「そ、そうですね?」
何を言ってくるのか、まずそんな状況だったが颯馬さんが言ってきたのは私と綾くんが付き合っていた時のころからの話をしていくらしい。
「なんでデートしなかったか、まぁ僕が誘ってたから千里ちゃんが悪いわけじゃないからね」
そうだった、私は綾くんからのデートのお誘いより颯馬さんとのお誘いを受けていたのだ。
また、綾くんとならいつでも行ける、そう思っていたからの行動だった。
「まぁ、僕としてはお誘いを受けてくれて嬉しかったんだけどさ、柊くん的にはどうかな?」
颯馬さんが言っていることがだんだん理解できてきた。
例えば綾くんが私より他の女性を優先して遊びに出かけていたのなら立場は逆だったのかもしれない、そう思った。
「柊くんは、ずっとデートの誘いを断る千里ちゃんを怪しんでいくと思うんだ」
そう、綾くんからの信頼は0、いやマイナスになっているのかもしれない。
絶対に今の現状はマイナスだろう。
「ということは...?」
「僕たちが遊んでいるのを見て勘違いしているんだろうね?多分だけど、それに加え何か精神的にきてるって妹の楓が電話で話をしているのを聞いたことがあるんだ」
精神的に?私と颯馬さんが遊んでいる姿を見てそれほどショックだったのだろうか、今まで悲しんだ顔を見せなかった綾くんが...?
いや、そういえば綾くんからしたらデートを断られた日に他の男と遊んでいたらショックだったはずだ。
「そんなこと気づかなかったなんて...」
「しかもさ、その後電話かかってきたんだよ?その時千里ちゃん嘘ついちゃってたしね」
ニヤニヤ笑みを浮かべながら言う颯馬さん、嘘?私が綾くんに嘘をついていた、罪悪感はきっとあったはずだ、その時の記憶が少し曖昧だがそう言われればそんな気もする。
「てことは...」
「そう、全部千里ちゃんと僕が悪いんだよ...」
「そ、そんな...わけないはず」
信じられなかった、信じたくなかった。
自分の行動が全ての原因だったということを今更知ってしまって何になるというのだろう?
「千里ちゃん、君のことをわかってあげられるのは僕しかいないよ?このまま僕といよう」
そんなことを言ってきたがどうでもよかった、私は「もう帰ります、二度と会うことはありません!」と言って走り去った。
走り去る際に「チッ」と舌打ちが聞こえた気がしたが、その日から私は颯馬さんと縁を切った。
あれから会うような連絡もこないし、音沙汰もなかった。
後は綾くんと話し合うだけ...そう思っていた。




