『過ぎ去る過程①』
絢瀬と最後に話をしてもう3ヶ月、何故か知らないが千里が俺の家へ来る回数は次第に減っていった。
その事に恐怖心から解放され、少しずつ落ち着きを取り戻しつつあった。
そこで変わったことが一つだけあった。
女性恐怖症が完全とはいえないがなくなったことが俺にとっての朗報と言えるだろう。
逆に悲報が三つもできてしまったことだ。
一つ目は女性恐怖症が女性不信に変わったことだった。
女性不信とは女性恐怖症とは似たようでまた違い言葉通り「女性を信じられなくなること」だった。
坂上先生にその事を話した時に女性恐怖症じゃなく、女性不信の可能性が高くなったということだった。
実際に俺もその話をされた時に坂上先生の言うことをすぐ信用してしまったが絢瀬の言ったことはあまり信用していなかった気がした。
女性不信になると女性との信頼関係を築くことが難しくなる...らしい。
その代わり女性恐怖症の症状がほとんどなくなったためそれでよしと思った。
女性不信にも沢山症状があり、女性恐怖症のように恐怖心とまではいかなくとも声をかけることなどにも戸惑いが起きたりする。と坂上先生が言っていた。
二つ目の悲報は俺の「目から光が消えたね」と坂上先生に会った時に言われた。
今の俺の中身は何も無く空っぽで虚無感がほとんどだからなのだろうか?
有栖からも「お兄ちゃん目が死んだ魚みたい!」とクスクス笑われてしまった。
きちんと有栖に「俺はそんな変な目付きしてません!」と否定したけど案外間違っていないのかもしれない。
三つ目が白髪が4分の1まで迫ってきているというところだった。
坂上先生曰く、先生の予想より早く進行しているらしく、少しストレスを発散したり、ショックな出来事を頭から消したり、色々と提案された。
今度試してみるけど期待は薄目の方がいいらしい。
◇
そして学校に対してだが俺の留年が決まってしまったようだった。
理由としては出席、そしてテストを受けていないということで赤点たちより低い評価になっていた。
髪の毛のことなどを言い訳に盾にしてみたが、意味などなかった。とは言え、この留年は俺の想定していた通りだった。
高校に通うとして、千里と同じ高校だと言うのが最も嫌なことだった。
ただでさえ隣の家というだけでも嫌だったというのに、高校で会うのもできる限り避けたいと思った。
妹の有栖はまだ中2なので俺が実質高校1年になる時には中3になっているということだ。
留年は、恥ずかしいことかもしれないけど、それでも俺は全てを忘れて1からやっていこうと思う。
そのために高校1年の勉強はある程度解けるように参考書を買いまくった。
家でゲームばかりしていると飽きてくるので丁度いい暇つぶしになっていた。
◇
俺の事情を知っている人はある程度限られてきている。
今のところ新学年から始まる担任である秋川雅先生だ。
俺にだけ特例で新学年の先生を見せてくれた。そこで担任を選ぶのだがまともそうな先生が雅先生しかいなかったというのが実際の現実だった。
他にも熱血教師だったり、おじさん教師だったり、化粧濃ゆすぎおばさん教師などがいた。
さすがにこの中から選ぶのはきついと思い残った雅先生が俺の新担任ということになる。
次に坂上先生が結構今信用していてよく相談に乗ってもらっている。
カウンセリングを受けているというのと一緒らしい。
俺の事情もある程度話し尽くしたのでなんでも相談できてしまう、良い先生だ。
次に絢瀬香織、俺の元彼女である千里の友達だ。
絢瀬は相手のことを気にせずどんどん話を進めていくため、いつもと変わらないような感じで少しは話しやすい感じがした。
それでも信用ができるかできないか、というのはまた別の話になってきていて、俺は女性と話すだけなら十分マシになってきていた。
最後に俺の義妹である柊有栖だった、中学2年という若さで俺を日頃から支えてくれている天使、まぁ女神くらいかもしれないが...。
俺の認識が家族という認識に脳がなっているらしく、今この4人で最も信用できているのが有栖だと思う。
家族だからな...そりゃそうか。
この4人には俺からきちんと話をした人達なので事情は知っていると思う。
ただし、絢瀬に対してはここ3ヶ月間一切連絡をとっていないので俺の今の状態は全く知らないことだろう。
まぁ、この4人で1番信用ができていないのが絢瀬というのもあり、このことはあまり気にしていなかったりする。
雅先生に対しては色々と今後のことを考えてくれているらしく、少しは信用できるんじゃないかと思ってたりする。
後は理事長などに話を通してくれていたりするので雅先生が教師陣でどれほど真面目でいい人なのかはある程度分かってきていた。
「たっだいまぁ〜!!」
考え事をしていると玄関の扉がいきなり開いてびっくりしてしまった。
「お兄ちゃん、友達家にあげるけど良い〜?」
「あぁ、いいぞ」
そう言って俺はテレビを消し、ジュースとお菓子でも持っていこうと思った。
今までは俺のために友達を呼ぶことも全然なかった有栖が友達を呼んでいるということだ。
俺からしたら嬉しいことなのでここは俺の秘蔵のお菓子コレクション何個か持っていくしかないな...。
俺は念の為コンコンと扉を叩いた。
「お菓子とジュース持ってきたけど入っていいか?」
「はいはーい!開けていいよ〜」
そう言われ俺が扉を開くと目の前には妹である有栖と可愛らしいのは可愛らしいが大人しめの女の子がいた。
「じゃあ、これお菓子とジュース」
「はいはい、ありがと♪お兄ちゃん!」
俺は「どういたしまして」と少し微笑んで扉から出ていった。
お互い自己紹介なんかしていないけど別に俺に関係ある人じゃないからどうでもいいや、と思った。
有栖の友達は俺の顔を見た時頭に目がいっていた。
白髪が4分の1なので目立ってきているのだろうか。
まぁあと半年くらいで俺の髪は真っ白くなってしまうか...と思い変な考えを頭から消した。
有栖の友達だから関係ない、そんなことを思っていたけど関係大ありだった。
この時の俺は知る由もない、あとから聞いた話だが有栖の友達の名前は新城楓、幼馴染の浮気相手新城颯馬の妹だという。
このことを知り、後日有栖に話したけど実言うと有栖も楓さんも最初から兄、颯馬について知っていて、楓さんも少し思うところがあったらしい。
俺がその事で苦しんでいるのを、有栖から聞いて今回来ることになったそうだった。
なんだ、普通に良い子だな...とどこか安心していた。
女性恐怖症から女性不信に人(女性)を信じられなくなっていく綾、彼にはできるだけ幸せになれるような物語にしていきたいです。
何とか書きました。今後も新たに登場するキャラ、メインヒロインなどなど...出てきます。
次の話は6時か12時に投稿予定です。
尚、進行度は安定の0%です、今から書いてきます。