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『帰り道にて』

 



 俺が目が覚めた時には放課後になっていたので家に帰ろうと昇降口に向かっていた。


「あれ?」


「絢瀬じゃん...」


 絢瀬を久しぶりに見かけた気がする、というかまず会っていないな...。


「柊か、久しぶり」


「絢瀬こそ元気だった?」


「まぁ、そこそこ。というか本当に学校にいるんだね、全然見かけないし驚いた」


 絢瀬の言う通り学校では一切千里を見かけたことがない。

 彼女が休んでいるとは思えない、だが学校外の休日に会ってしまう方が確率的には少ないだろう。


「あんたはなんでこんな時間まで残ってるの?」


「保健室にいただけだ」


 嘘は言っていないし、ただ保健室にいて何をしていたか、何を見たかは言う必要はないだろうと思った。


「なんで?体調でも崩したの?」


 そういえばこの絢瀬香織という人物は俺のことなど気にせずに話す奴だったな...。


「練習中に倒れたらしい」


 実際に練習中に倒れたし、嘘は言ってないぞ?

 麻里奈先生のことは何故か伏せた方がいい気がした。


「それって結構重症?」


「いや、多分体力切れなだけだと思う」


「まぁ見るからに体力無さそうだしね」


「はは、よく言われる」


 俺たちはその後も少しだけ話をしていたが突っ立っているのもあれだし昇降口を出ることにした。


「そういえば千里はあの変な男とは縁切ったらしいわ」


「は?」


 突然言われた言葉に驚きを隠せなかった。


「もしかして聞いてないの?」


「聞いてないも何も、千里とは話す機会すらないけどな」


「確かにそうね、でも今度話す機会ができた!ってなんか喜んでたけど?」


「そこまで言ってるのか...休みの日にたまたまその男と一緒にいた千里を見つけただけだ、それで話しかけられて体育祭が終わってから話す約束を取り付けられてる」


「あー、なるほどね。体育祭のことを考えて、あんたには言わなかったのね」


 何かわかったように言うが、俺のことを気づかっているのではなく、それはただの自己満足だということだ。


「それにしてもあの男苦手なのよね〜一度会ったけど...」


「それには同意だな、俺と会った時ヤバいって脳に訴えられるような感じになった、腹黒いし何考えてるのかもわからないしな...ああいう奴が一番苦手だ」


「ほんと、あんな男とは会いたくない」


 その後は新城颯馬の話題で少しだけ、話をしたが途中で別れることにした。


 俺と絢瀬の家の方向は変わらないが俺には立ち寄る場所があった。


「やっぱここしかないよな...」


 最近は体育祭の練習など少し忙しくて来る暇が無くなっていた。


 と言っても時間はあってもヘトヘトで来る気力がなかっただけである。


「最近来れなかったし...体育祭で忙しくなるしな...落ち着くまでは来れなさそうだ」


 志乃亜によって近道を見つけてもらったと言えど、多少は時間がかかってしまう。

 そんな場所に向かうのは良いが帰る時間も考えれば来る回数が減ることは当然の事だった。


「体育祭の準備もあるんだよなぁ〜...」


 人手が足りないため大掛かりな行事は基本的に生徒も動員して準備を進める。


 みんな当日のために張り切って動くため予定より早く終わることが多いらしい。


「ちょっと名残惜しいから、今日は長めにいてもいいよな...」


 静かな場所でする考え事はやっぱりいいと思う。

 落ち着いて次のことを考えることができるからだ。


「それより、本当に誰も来ないよな」


 俺と志乃亜や、後をつけてくる裕司さんなどはこの場所について知っている。


 だがそれ以外の人がこの場所に来ることはなかった。


「ある意味おかしくないか?」


「おかしくないですよ、だってここ私の私有地ですので」


 そう声がしたほうを向くと志乃亜が、俺の独り言に返事をしたことがわかった。


「志乃亜の私有地だったのか?」


「はい、三年前くらいの誕生日に父に頼んでみたら買ってくれました。なので綾はそれを知らずに毎回来ていたことになります」


「まじかよ...俺結構な頻度で来ていたけど大丈夫か?」


「まぁ、私は他の人に入らせないようにと買ってもらったので私と綾くらいしかこの場所に来ませんので大丈夫です」


 どうやら知らないうちに志乃亜のお父さんの裕司さんが買い取ってしまったらしい。


 そんなこと一切気づかず通い続けていた俺の身になってもらいたい。


「じゃあ、近道ができたのって?」


「はい、私有地なので近道を開拓しました。少し自然にするのに苦労しました」


 突然出てきた近道の存在は、志乃亜が作ったらしい。

 行動力が良すぎて恐ろしいくらいだ。


「それはお疲れ」


「綾の体力面が心配で近道を作ったので今後も少しは来てくれると作ったかいがありますので今後も適度な頻度で来てくださいね」


「そうだな、まぁ体育祭が終われば週三くらいでは来ると思うぞ」


 そう言うと少し微笑んでく「無理しないでくださいね」と言って「それではこれで」と去っていった。


「結局何がしたかったんだろうか?」


 全く、誰もいない空間になった場所で俺がそう呟くが誰も返してくれる人がいる訳では無い。


「明日くらいに体育祭の準備あったかな?保健室で寝ていたからなんも話聞けてないんだよな...」


 あれ?志乃亜はどうして俺がここにいることがわかったのだろうか。


 それとも一人になりにこの場所に来ていたのかもしれない。

 一人になるには最適な場所だしな。


「俺も帰るか...」


 体育祭が終わって、千里と話す場ができてしまうだろう、その時俺の()()はもう決まっている。


 今は目の前にある体育祭に向けて頑張ることにしよう、そう思って帰路を辿った。





絢瀬さん出てきてないと気づきました。

千里の親友みたいな立ち位置なので千里からよく話を聞くそうです。また謎が増えてきました。


四章は千里がやっと自分の行動を知ることになります。

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