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『貰った恩は返すもの』

 


 土曜日はあっという間に終わってしまい、日曜日は坂上先生に言われた通りの運動をしていた。


「1...2...3...4」


 最近は少しずつだか慣れてきているこの運動も5回ほど回数を増やしてみたが、丁度いいくらいだったので坂上先生の判断は正しいと言える。


「次は1キロ走り込みか...」


 実を言うと1キロの走り込みはそこまで言ってきついという訳では無いが、走る場所にもよってきつさが変わってくる。


 例えば坂道を1キロ走るのと、平らな道を1キロ走るのでは坂道が断然にきついということがわかるだろう。


 それにちょうどいい場所を探していると一つ思い浮かぶ場所があった。


 俺の家からは1キロ以上離れているしこの場所には週に2、3回ほど来ているので丁度いい感じになっている。


 最近はほぼ毎日きているのだが、誰かと会うことなんてなかった。


「誰かいると思ったら貴方でしたか...」


 声がした方向を振り向くと志乃亜がいた。


「ここで会うのは久しぶりだな」


「そうですね...最近は少し忙しくなってきてますので、特に私の家の方は」


「まぁ、志乃亜くらいの家になったら色々あるだろうけど、何かあれば俺に言うくらいならできるぞ?」


 今までのことで志乃亜に対して恩を感じているので、少しくらいは恩返ししたいと思いそう声をかけてみたが「大丈夫です」と一言返してきただけだった。


 その返事はどことなく力がないようで、俺は深く言うのはやめておいた。


「貴方は最近何してるんですか?」


「運動してるくらいかな...体育祭だし迷惑かけたくないだけだけどな」


「確かにその体力だと今後問題点がたくさん出てくると思うので今のうちに体力をつけるという行動は正解だと思います」


 俺の考えを肯定するのはわかるがいつもより顔が暗い気がするのは先程の家の件が関係してくるのだろうか?


「俺と志乃亜ってどういう関係なんだ?」


 ふと気になってみたことを聞いてみることにした。

 幼馴染というわけではない、そして友達か?と聞かれたらもっと上の関係だと思う。


「突然どうしたんですか?」


 志乃亜は質問に対して答えずに、少し不思議そうに俺を見つめていた。


「いや、少し気になっただけ」


 よく良く考えれば俺と千里は今どういう関係なんだ?

 元カノ?元カレ?そういう関係なのだろうか?

 そう思っているのは俺だけなのかもしれない。


 そんな考えが頭をよぎったが、以前目にしたキスシーンを思い出せば俺と千里の関係は元恋人ということになるだろう。


「貴方と私の関係は十年以上経ってでも崩れないくらいの関係だと思ってくれればいいです」


 突然俺の考え事中に放ったその言葉はさっきまでとは違い迫力があった。


「十年以上いて崩れることもあるけどな」


 そう、幼馴染である千里との関係はある日をきっかけに崩れた。

 きっかけなんか小さなことでしかないのだ。


「私と貴方の関係が崩れるのは有り得ます、この先の未来で確定して有り得ないという言葉こそ有り得ない」


 現実を突きつけてくるがその言葉は正しい、志乃亜は無表情な目で、顔で俺を見つめていた。


「そうだな...」


「と言っても、この先私と貴方の関係が崩れることは有り得ないと言っても等しいくらいだと思いますけどね」


「俺は思わないな、だけどそう思えるくらいにはなりたいと思う」


「私もそう思います。何のために日本にまで来たのかわからなくなってしまいますので」


「そう言えば俺との約束を守るために日本に来たって言ってたよな?」


 俺は志乃亜の言葉を思い出すように聞く。


「その通りです。貴方といつか会えると言ったあの日から日本に来る計画を立ててましたので」


「決行するのに時間がかかった感じなのか...」


「その通りです。父は中々放してくれないので、母に頼るしかなかったです。母的には早く出ていってくれて嬉しがってるようにも見えましたがね...」


 そんなことを聞かされると、志乃亜の家についてめっちゃ気になってしまう。


「昨日さ───」


 そんなことどうでも良くなるくらい俺の話をしていた。


 昨日千里と新城颯馬に出会ってしまったということを伝えてみた。

 最初は驚いていたようだったが後から落ち着いて話しを聞いてくれた。


 そして最後に、千里と話す機会を設けるということになったことを話した。


「志乃亜はどう思う?」


「極端に言えば反対です。貴方はまだ安静にする時期だと私は思ってます」


 その後に「ですが...」と続けた。


「賛成します。矛盾しているのですが、結局決めるのは私ではなく貴方なので貴方の意見を尊重するべきだと考えました」


 こんな時でも俺の意見を肯定しようとしている、自分の意見はどうでもいいかのように言ってしまう。


 それが彼女(神城志乃亜)だった。


「志乃亜のそういうところ嫌いじゃないけど、もっと自分を大切にするべきだと思った」


 普段なら絶対に言いそうにない言葉も今日は何だか言える気がした。


「もっと自分を大切にしたらどうだ?」


 まだ、まだ足りない。


「神城志乃亜、お前の溜めてるものは全部吐き出してしまえばいいんだよ」


 俺の言葉は彼女に届いているだろうか、十年以上経っても関係は崩れない。


 そういう彼女になら絶対に届く。


 貰った恩はきちんと返す。


「そんな暗そうな顔、ここ数ヶ月見たことないぞ?」


「無表情で気持ち悪いと母には言われてますが何故かしら貴方は気がつくんですね...」


 そう言って彼女は少しずつ自分の話を俺にし始めた。

志乃亜のお話になります。

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