『カレー作り』
家に帰ったあと、荷物だけ置いてからすぐにまた外に出た。
理由としては坂上先生のカウンセリングを受けに行く予定だった。
内容としては近状報告だった、月一から週一で来たい時に来ていいとのことだったが、最近はあまり来れてない気がしたので昨日のうちに連絡をし、時間を作ってもらった。
◇
病院へ着くと看護師の方に「柊です」と声をかけるとすぐ通してくれる。
理由としては何度も来ているということもあるだろうが、髪の毛が目立つから忘れにくいのだろう。
そうして、カウンセリング室の前に立ち2回ほどノックをする。
すると『どうぞ〜』という、気軽そうな声が聞こえたので「失礼します」と入ることにする。
「綾くん、久しぶりだね?」
「お久しぶりです坂上先生」
「まぁまぁ、気軽に座っていいよ〜」
最近は少し忙しくて俺は来ることができなかったので、今日は来るということを決めていたので時間を作ってもらったが坂上先生も最近は患者が増えつつ忙しくなっているらしい。
「それで今回は何を話しに来るのかな?」
「今回は体力の付け方を聞きにきました」
「体力?」
坂上先生はなんでそんなことを言ってるのかわからないような感じで首を少し傾げていた。
「そうです、体力ですね。今やっている運動ではなかなか難しいみたいで...」
「なるほどね」
坂上先生は理由は聞かなかったみたいだ、ただ体育祭でみんなの足を引っ張るのはやめておきたいという理由なのだが察してくれてるだろうと勝手に思っておく。
「まずは継続的にできるかどうかだと僕は考えるかな...」
少し悩んでかその発言をしたが、俺も同じことを思っている。
継続できる運動をするのが大切だということはわかっている。
「実際に何をしたらいいと思いますか?」
「そうだね、まず話を聞く限りだとある程度の運動はしてるんだよね?」
「そうですね、スクワットや上体起こし、他かにもたくさんチャレンジしてます」
「じゃあ、三つに絞ろうか」
坂上先生曰く、量じゃダメらしいやはり数をこなすのは継続的にはきつくなってやめてしまうことが多いらしい。
「スクワット、腕立て伏せ、ランニングにしようか」
「ランニング?」
「予想からすると、綾くんは体育祭に備えてだよね?だから走る競技があると思うんだ」
実際に俺がやる競技も走る競技だったり色々ある。
団体リレーなど強制参加させられる競技がやはりある、アンカーなどの重要な役割は俺がなることは一切ないだろうが、少しでもみんなの役に経つことが大事だろう。
「その通りですね」
「だからこの三種類を続けていこうと思うんだ。そうだな、最初はスクワット20回、腕立て伏せ20回、ランニング2キロくらいから始めればいいんじゃないかな?」
「わかりました。参考にトレーニングをしていきますね」
「慣れてきたら30回...いや25回に増やしたりとか少しずつ難易度を上げていくと体力もつきやすくなってくるかもしれない。そこはまぁ、本人の努力次第だから、頑張ってね」
その後も次はいつ来るかなどの相談をしてから、カウンセリングを終えた。
◇
「ただいまぁ〜」
「おかえりお兄ちゃん!」
「綾さん、お邪魔してます」
俺を迎え入れてくれたのは有栖と楓ちゃんだった。
最近は良く家に来ることが多くなってきている、有栖から楓ちゃんの家に行くのは俺が嫌がっているのでなんならこっちの家に毎日でもいいから遊びに来なよって誘ったら週4か3くらいで遊びに来るようになった。
遊びと言っても、勉強会だったり、たまにはゲームをしたり、たまには俺も混ざってゲームをしたり、勉強を教えてあげたりもしていた。
「綾さん、土曜日は3人で出かけませんか?」
「土曜日?まぁいいけど...」
「約束だよ!お兄ちゃん!」
有栖と楓ちゃんの迫力に負けて「わ、わかった」と言ってしまったが大事だろうか、今のところ予定など一切ない。
強いて言うならばトレーニングをしないといけないという所だろうか、それは夜こっそりやればいいだろうということで昼間はたまには遊ぶのもいいかと思った。
2人の笑顔をみていると、こっちまで、笑顔になってしまう。
1年間ずっと、俺のことを心配しているような、不安な顔で俺を見つめていた有栖の顔は最近はいつも「楓ちゃんがね〜」と笑顔で話すことが多くなった。
俺が少し前に進めればこの笑顔もこの先もずっと続いていくのだろうか、新城颯馬...彼ともいつかは会うことになるだろう。
楓ちゃんは楓ちゃんだ、新城颯馬という男と一緒にはしてはいけない。
ならば俺は普通に接してあげるべきなのだろう、有栖の兄として接することが大事だと思った。
「あれ、何もないな...」
「今日は買い出し忘れちゃった〜」
有栖はそう申し訳なさそうな顔をしていた「えへへ」と笑っているような気もするがここは買い出しに行ってくるか。
「俺が買い出しに行くから、何か欲しいものある?」
「んー、お菓子!ジュース!」
「はいはい、楓ちゃんは何かいる?」
「い、いえ、大丈夫です」
「おっけー、お菓子たくさん買ってくるね」
そう言って俺は外に出た、2人でゆっくりする時間も大切だろうし、今日くらいは俺が料理をしてもいいだろう。
「今日は何にしようかな...」
スーパーに着いてから食材を眺めているとカレーができそうだなということでカレーにすることにした。
「よし、次はお菓子とジュースかな...」
とりあえず有栖が好きそうなお菓子をたくさん買うことにした。
ジュースは炭酸と果汁100%と書いてあるのを買うことにした。
そういえば楓ちゃんは何か、アレルギーがあったりするだろうか?
『有栖、楓ちゃんはアレルギーあるか聞いて』
とりあえずメッセージを有栖に送ることにした。
『ないだってよ〜!』
『了解、ありがとうって伝えといて』
そうメッセージを返し、会計を済ませ家に帰ることにした。
◇
「ただいまぁ、はぁ...」
「お兄ちゃん買いすぎじゃない?」
「お菓子たくさん買ってくるって言ったじゃん」
「たくさんじゃなくてこれは大量すぎるよ!」
有栖に怒られてしまった。量が多かったのは確かで、持って帰るのが辛かった。しかし、2人には喜んでもらいたいと思ったんだが、どうやら失敗してしまったらしい。
「あ、これで機嫌直してよ...」
俺が取り出したのはケーキだった、帰る途中に美味しそうな店を見つけて2人のデザートにと買ってきた。
「美味しそう〜!いいよ今回は許してあげるね!」
そう、有栖はケーキなどの甘いものが大好きなのでちょろい。
買ってきててよかったと少し思ってしまった。
「楓ちゃんにも買ってきたから...」
「ありがとうございます」
「よし、今日は俺が料理作るからゆっくりしてていいよ、それとケーキもお菓子も食後にしてね」
「お兄ちゃんが料理作るの!?」
有栖は驚いている、俺が料理を作るとは考えていなかったのだろう。
実を言うと有栖に手料理を作ってあげたことはない。
父さんが仕事人間になった時家には俺1人だったのでよく作った記憶がある。
「あぁ、実言うと作れるんだよな」
今のお義母さんと再婚してからは俺が自分で作ることは無くなり有栖に振る舞ってあげたことは一切ないのでこれが実際に初めてだと言えるだろう。
「じゃあキッチン使うからゲームでもしてて待っててね楓ちゃんも食べる?」
「はい、お願いします」
「あ、お兄ちゃん楓ちゃん今日泊まることになったから!」
「了解〜」
そうして俺はカレー作りに励むのだった。
料理を作るということは久しぶりで苦労したけど有栖と楓ちゃんには大好評だったのでまた今度作ってあげてもいいかなと思った。
有栖の負担も少しは減らしていけたらなと思っている。
「楓ちゃん、これからも有栖のことよろしくね」
「はい、こちらこそ仲良くさせてもらってます」
楓ちゃんのことはなんだか嫌いにもなれないしいつの間にか2人目の妹のように感じていた。
この生活も悪くないし、逆に楽しく思ってしまう俺がいた。
3400文字と今回の話は長くなりました。




