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『悲しい顔』

 


 次の日団体競技はすぐに決まっていく、何故なら代表リレーなどの競技はは足が速かったり、運動神経が良い人達が取っていく、結局なにも決めることがなく、全員参加の競技しかない、男女混合のリレーもそうだった。


 順番などを決めたりするのは練習が始まってからにするそうだ。


 とりあえずは決まったことでみんなは一安心、いや強いて言うならば雅先生が一番ほっとしていた気がする。


 因みに、赤野と志乃亜は代表リレーに選ばれていた。

 各クラスから男女2名と、補欠が2名いるらしい。


 因みに補欠が決まらなくなっていて、困りかけたこのクラスは俺を補欠にしようとするアクシデントが起きてしまったが流石に俺は断ってそのついでに大野に投げやりしておいた。


 大野は意外と運動ができる、その代わり馬鹿だと言うのは言うまでもないだろう。


「おい、綾なんてことしてくれるんだ!?」


「大丈夫、補欠なんだから赤野が怪我したりしない限りは出なくていいんだぞ?」


「そりゃ、そうだけどさ...」


 何かしら気に食わないように俺に言ってくる大野、珍しいなと思い少し聞いてみることにする。


「なんだ?」


「俺さ、こういう本番ちょっと弱いんだよ、タイムとかは良いんだけど女の子に見られてると思うと...」


 ごめん、深く聞いた俺が馬鹿だった、こいつの頭は馬鹿なことでいっぱいだということを忘れかけていた。


 真面目そうな顔をしているのに、少しだけ...いや結構変なやつなので女子からの人気は意外と低いのかもしれない。


「しかもな、赤野が怪我したら俺たちの組が優勝できる確率は大幅に減るからな」


 俺たちのクラス1年2組は青組、この1年2組にいる、運動面で成績の良い生徒は赤野と橋本駿(はしもとしゅん)と言う生徒だけだった。


 橋本は障害物競走にでるので、代表リレーは出るのを譲ったらしい、それで赤野ともう1人は何故か知らないが志乃亜になりそうになっていたが、俺が一応カバーして、笹木美紀(ささきみき)という陸上部の女の子になった。


 足がとても速いらしく、何度も賞を取っているらしい。

 運動ができない俺は少しだけ感心しながらその子についての話を聞いていた。


「それで笹木さんは足速いの?」


「速いって話しなら速いけどな...」


「何話してんの?」


 どこか苦い顔をしている大野を眺めていると本人である笹木さんが寄ってきていた。


「いや、笹木さん代表リレー大丈夫かなって話しだけど?」


 俺がとりあえず返しておく、変な誤解をされるのも面倒だし、こういうタイプの女子はあまり苦手なのでさっさと話題を変えようとする。


「あはは!それ柊くんが言っちゃうんだ、神城ちゃん庇って私になったのは柊くんのせいだと思うけど?」


「それについて言えば橋本くんだって志乃亜と同じ競技なんだ、女子の方が体力が少ないことはわかるのに、出させるのは酷だろう?」


「まぁ、そうだけどさー?」


「それでも出たくないと思えば他の人に変わってもらえばいいと思う、笹木さんの実力を聞く限りだと良い調子でいけそうだけどね」


「柊くんってハッキリものを言うタイプなんだね、初めて知ったよ」


「初めて知って当然だと思う、何せ今日初めて喋ったからね」


「そうだね。ま、心配してくれてありがとう〜練習から全力で頑張るよ」


「あぁ、俺が言うのもあれだけど頑張って」


 そう言うと「ありがとー」と返事をしてから去っていった。


「綾、改めて尊敬したわ...」


 今の今まで沈黙で黙っていた大野が俺にそう言ってくる。


「何が?」


「笹木さんって結構美人じゃん?」


「そうか...?」


「まぁ、神城さん狙ってる男子からしたらそうでも無いだろうけど、神城さんを諦めた男子が次に目に移るのが笹木さんというわけだ。だから笹木さんは神城さんのことを良くは思ってないのかもしれない。笹木さんは陸上部の1年生ではトップだからな、高くないと納得できないから裏が怖いという噂もあるんだぞ、そんな相手にハッキリとものを言える綾を尊敬するな」


 そんなことを言ってくるが、最初に苦手なタイプだと思ったのはこういうことなのかもしれない。


「まぁ、気を使っても面倒だしな」


 実際にほぼ関わりのない相手に気を使う余裕など俺にはない。

 志乃亜は特に気を使うようにしているし、気を使わせてばかりなので少し申し訳なさがでてくるくらいだ。


 赤野や大野は少し程度なら気を使っているつもりだった。


 最近は特に話しかけてくることが多くなっている。


 これからも関わることなんてないだろう、そんなことを考えていた。


「何考えてるんですか?」


「何も考えてない...」


「嘘ついても意味ないですよ、嘘発見器持ってきましたので」


 志乃亜はそう言って嘘発見器を取り出してきた。


「変なの持ってくるなよ、没収されるぞ?」


「この間ショッピングに行ったら面白そうなのが売ってあったのでつい買ってしまいました」


「程々にしろよ...」


 俺を振り回して、考える時間も与えないようにしている感じだった。

 ここまで気を使わせているのは逆に大切にされてるんだな...と自惚れてしまいそうだった。


『大切だからここまでするんです』


 今の志乃亜だったらそういうのかもしれないな...と変な期待を抱いてしまっている。


 だがふと考えてしまうこともある、神城志乃亜にとって、俺柊綾という人間のことをどう思っているだろうか?





 その答えを知るのは神城志乃亜本人だけだ、俺が知ることはない、そう思った。



 ◇



「聞いてます?」


「ごめん八割くらい聞いてないかも」


「それほとんど聞いてないですね」


 志乃亜は俺と話す時は長話が結構多かったりする。


「昨日ですかね、橋本さんに告白されました」


「そう?良かったね〜」


 適当に返す、実際橋本という人が告白してきても俺になにか影響があるわけじゃない。


「それでこう言ってきました『体育祭で俺が出る競技全て1位だったら付き合ってほしい』と」


「それで?受け入れたの?」


「気になります?」


「いいや、人の恋路なんか興味無いな、自分の恋にすら興味が無いのにな」


「そうですか、因みにその告白は断りました」


 少し残念そうな顔をして、告げていた、そんな顔をするのならば告白を受ければよかったのにな...と思った。


「そうか、断ってよかったのか?」


「何がですか?受けてほしかったんです?」


「そういう訳じゃないけど、いつもより悲しそうな顔してるからな、何でだろうなと思っただけ」


「そこには気がつくんですね、そうですね、本当に悲しいです」


 志乃亜はそう言うとすぐに無表情のまま「帰りましょうか」と言ってきたので「あぁ...」と反射的に返して帰路を辿った。


 今日の志乃亜はいつもより少しおかしかったなと思った。





 今日見せた悲しい顔はその日俺の頭から離れることは無かった。

なんとか、2話投稿。

この話はいつもより長くなりました。


新しい人も登場させれたので少し満足です。

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