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『決意のその先には』

 


 家に帰ってから俺は自宅でできる運動をしてみた。


 腕立て伏せ、スクワット、上体起こしなど色々なことを試してみたが、腕立て伏せ16回、スクワット28回、上体起こし、33回で息切れになってしまった。


「お兄ちゃん何してるの?」


 俺が運動をしていると有栖に声をかけられる。


「運動...」


「それは見ればわかるけど...運動なんか何でしてるの?心境の変化?」


「体育祭が、はぁ、あるから。はぁ...はぁ」


「もう、体力がないのはわかるけど適度な運動が1番良いんだよ?気をつけてね!」


 そう言って心配の眼差しを俺に向けてくる有栖は兄ではなく弟でも見ているかのような感じの目になっていた。


「俺はお兄ちゃん...だよな?」


「?何言ってるの?当たり前だよ?」


 どうやら無意識的にそうなっているらしい、少し悲しいが心配してくれているのは少し嬉しい、複雑な気持ちになりながら運動をやめた。



 ◇



 汗をかいたので風呂に入り、少し休憩をして、夜風に浴びに来ていた。


「こういう時は()()()しか行く場所はないな...」


 そう言って向かうのは、俺と志乃亜が初めて出会った場所だった。


 この場所は何かと思い出深い場所であり、1番落ち着ける場所だと思う。


 その場所へ向かう道のりは少し特殊で迷って行った俺はまぐれでここにたどり着いた。


 何度か行けば慣れてしまうのだが初見で見つけるのは不可能だと言える場所だ。


 真ん中にぽつんと1本の木があるだけの場所で周りには花なんか咲いてすらいない。


 そんな場所だがすごく気に入っていて、週に2回ほどは来てしまう場所だった。


「やっぱ、夜空が綺麗だな...星も月も1つずつ輝いている」


 この場所に来ると独り言が零れてしまうことが多い。

 誰も来ないという安心感からだろうが、普段から独り言が多ければ痛いやつにしか見られることはないだろう。


「輝けるのは夜だけだけどな...」


 そう、星も月も輝けるのは夜だけなんだ、朝も昼も太陽が登れば太陽が輝いて月や星は輝いて見えなく見えてしまう。


 俺が輝いていたのは1年前までということだ、今は俺なんかよりもっと、もっと輝いている人たちがいるということだ。


 そう思ってしまえば、俺はまたいつか輝ける日が来るのだろう。

 そんなことを思いながら夜空を眺めていた。



 ◇



 帰る途中に、体が疲れていることに気がついた。


「そりゃそうだよな、普段運動しないのに、運動して、その後ここまで歩いてきたからな」


 この場所は人から見つかりにくい場所であるせいか、行きにくいそして体力をある程度つかうが、週に2回だけ行っていてもそれは今年からの話しで1年前は月1くらいで行くか行かないかだった。


 千里との時間を優先したら行く暇なんかできなくなっていた。


 今頃千里は何をしているだろうか?家で寝ているだろうか?颯馬と会っているだろうか...。


 そんなことを考えてしまうが今となってはどうでもいいがこの髪のこともあるし、きちんと話しをつけに行かなくちゃいけない。


 今はまだ逃げてばかりだけど、もう少し、もう少しで行けそうな気がする。


 まだまだ弱い、俺の心は弱すぎる。


 それでも、きちんと話しをつけに行くのは絶対だと俺の脳が言っている気がする。


「わかってる」


 自分で自問自答を繰り返すが、今はまだ早い、今はまだ無理だと、結果を伝えていた。


 まだ千里を見る勇気が俺にはない、対面した時にきちんと話せそうにない。


 このことをこの間坂上先生に話したところ『まだゆっくり休んできちんと向き合える時に向き合えばいい』と言われた。


 その言葉は嬉しかったがそれを理由に逃げていいわけじゃない、今年中に俺は決着をつける。


 その意気込みで帰路を辿った。



 ◇



 家の前まで着くと、隣の家が目に入ってしまった、家の灯りがまだついていることからおきてきるのだろうとおもうが、時刻は24時を回ってしまった。


「まだ起きてるのか...」


 そんな独り言を零すが誰も聞く人がいない。

 俺はすぐに家に入った。


 家に入ると、電気は消えており有栖がもう寝てしまっているということがわかってしまう様子だった。


 この家の家事全部は有栖がこなしていて電気なども俺より後に有栖が寝ることが多いので消したりするのは有栖の役目になっていた。


 今日は外に出ていたため、俺の方が寝るのが遅くなってしまったが最近この時間帯まで起きていることは少なかったので眠気がないことに少し驚いてしまった。


 少しだけ水分を取り俺も眠りにつくことにした。



 ◇



『綾くん!あの夏祭り行かない!?』


 学校からの帰り際、お互いの家の前に立ち話し合っていた。

 そう言ってくるのは幼馴染で恋人だった春宮千里だった。


 その姿は今より少し幼いので中学の時の記憶だということがすぐに分かった。


『あぁ、いいよ』


 少し幼い俺はそう言って返事を返し、家に入っていた。

 俺もその後を着いてくことにした。


 確かこの時の俺は、千里と付き合い始めてすぐだったので夏祭りに誘われたことでとても浮かれていた記憶がある。


『よっしゃぁ!』


 誰もいない家で独り言を呟いていた、少し大きい声だったが俺の独り言を俺が聞くという結構不思議な感覚だった。


 今思えばめちゃくちゃ恥ずかしい、なんでこんなに喜んでるんだろう。


 そう思ってしまったが、当時楽しかったならばそれでいいか...と諦めかけの結論を出した。


「それにしても何も無いなこの家」


 今は有栖がいるので部屋は色々なものがあったり、綺麗に整っていたりした。


 この時期は再婚するほんの少し前なので有栖はいないし、有栖が家事などをするようになったのもほんの1年前の新婚旅行がきっかけだった。


 そんなことを考えていたら舞台が一瞬変わり、夏祭りになっていた。


『綾くん、どう...かな?』


『・・・めっちゃ似合ってる』


 お互いに初々しさが残って過ごした夏祭りだった気がする。


 その後も次々と、千里との過ごした日々が出てきていた。

 一瞬で時が進んでるかのようで俺の成長や、過去の思い出が蘇ってきていた。


「千里...」


 最後のシーンはやはり電話をしている俺がいた。

 目の前には千里がいて、その隣には新城颯馬がいた。


 俺が壊れた日だ。


 このシーンを見た時俺は決意した、必ず千里と決着をつけると。



 



 その決意の先には何があるのか俺はまだ知らない───。




第三章では逃げるのではなく、少しずつ向き合おうとする綾です。それでもまだ勇気が足りない。


実際その場になってもまだ難しい感じで綾の精神は弱い状態なので坂上先生がストップをかけてます。


第三章は長くなりそうです。(多分)

書き溜めしようかと思っても1日2話投稿してたら書き溜めなんかないです。夜中にひっそり書いております。


因みに今日もう1話投稿したら5万文字到達です。

9日で5万文字は結構書いたんじゃないか?

などと勝手に思ってます笑

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