『有栖と楓の遊園地』
ある日、私と楓ちゃんは遊びに来ていた。
お兄ちゃんが遊園地のチケットを貰った...らしいけど、お兄ちゃんのことだから多分買ったんだと思う。
「それじゃあお兄ちゃん!行ってきます!」
「はいはい、気をつけて行ってこいよ」
お兄ちゃんに見送られながら私は待ち合わせ場所へ向かった。
お兄ちゃんは最近余裕が出てきたのか私のことを気にかけてくれているみたいだった。
まだまだ支えてあげないと...と思っているんだけどお兄ちゃんは大丈夫だぞ、と言われている感じがした。
お兄ちゃんの場合妹である私に気を使いすぎな気もする。
本当にお兄ちゃんの妹で良かった、と思ってしまう。
待ち合わせ場所は駅前、私は準備に手間取ったけど10分前には着いてしまった。
「有栖ちゃん待った!?」
急いで走ってくる楓ちゃんが見えた、どうやら遅かったことに対して気を使ってるみたい。
「ううん、私も今来たところだよ!」
こういう時は落ち着かせてあげるのが1番だと思う。
楽しむものも楽しめなくなっちゃうからね!
「それじゃあ行こっか!」
私たちはバスに乗り目的地の遊園地へと向かっていった。
◇
遊園地に着くとたくさんのアトラクションが入ってすぐに見えた。
「わぁぁぁ!!!」
「凄い!」
私たちは久しぶりに遊園地に来たので楽しみだった。
それが今膨れ上がってしまっている。
実を言うとお兄ちゃんにチケットのことを話された日から楓ちゃんとやり取りをしていてずっと楽しみにしていた。
お兄ちゃんはこういうところに気が利くので兄妹で良かった!と思える。
「最初どこから行く?」
「ん〜じゃあ、あれ乗ろうよ!」
楓ちゃんが指さしたのはジェットコースターだった。
「楓ちゃん...それ本気で言ってる?」
「そうだけど...ダメだった?」
「いや、良いよ!乗ろう!」
最初からジェットコースターは少しきついと思うけど楓ちゃんが乗りたそうにしているし、楽しみにしていたから楽しんでもらいたい。
私たちは最初にジェットコースターを乗ることに決定した。
◇
「キャャァァァァァァァァァ!!!」
私は今ものすごく叫んでいる、実を言うとジェットコースターは苦手だったりする、怖いから仕方ないよね?
数年前に家族で行った時はお兄ちゃんが叫んでいたので家族にもバレなかった。
だってお兄ちゃん人の声じゃ出ない声出すんだもん。
あの時はみんな笑っちゃってたからジェットコースターの怖さも忘れてたけど今確かめてみるとヤバい。
ふと隣にいる楓ちゃんを眺めてみると満面の笑みで楽しそうに手を挙げていた。
(楓ちゃん楽しそうでよかった...!)
今日の遊園地はお兄ちゃんから聞いたところ楓ちゃんとの仲を深めるための良い機会にした方が良いと言っていた。
お兄ちゃんに『なんで?』って聞いてみたら『俺のせいでまともに1年間遊べなかったから』とそっぽを向いて喋っていた。
だけど遊ぶことは少なくても、楓ちゃんとお兄ちゃんと私の3人で出かけたりもした。
そんな日々も楽しかったんだよ!と言ってあげたいけどさすがにそこまで言うのは恥ずかしいのでやめておこうと思う。
「はぁ...はぁ」
ジェットコースターを乗り終えたら私は疲れていた。
楓ちゃんはと言うと『もう1回乗っていい?あ、やっぱり最後にもう1回乗ろうか!』と勝手に話を進めていたけど最後なら1人で乗ってもらおうかな...と思っちゃった。
「楓ちゃん次はどこ行きたい?」
「次はバイキング!」
バイキングは船の絶叫系アトラクションだった。
(絶叫系だいたい苦手なんだよね...まぁ楽しまないと!)
「わかった!それじゃあ行こう!」
そう言って私たちは次のアトラクションへ向かった。
「ギャァァァァァ!!」
もちろんここでも超叫んだ、喉が痛くなってしまったのは仕方がないよね。
楓ちゃんの方を見るが全然余裕そうでまだやり足りないみたいな顔をしていた。
「有栖ちゃん大丈夫?」
「う、うん!大丈夫だよ!」
ここで強がった事に後悔してももう遅い。
その後も何個か忘れたが絶叫系に乗らされてしまった。
「ごめんね有栖ちゃん、実言うと綾さんから絶叫系得意だから仲良くなれるよ!って言われたんだけど...」
どうやら、楓ちゃんが絶叫系ばかり選ぶのはお兄ちゃんのせいだったらしい。
なにか裏があるんじゃないかなと思ってたけどそういうことだったんだ。
お兄ちゃんに対しての態度を改めないと行けなくなってくきたよ!
「楓ちゃん実言うと私絶叫系苦手なんだよね...」
「うん、見ててわかった。本当にごめんね?」
「大丈夫!それじゃあ絶叫系やめてメリーゴーランド乗ろう!」
「うん!わかった!」
そう言って私たちはメリーゴーランドの方へ向かった。
お兄ちゃんは仲を深めさせるためにわざと言ったのだろう。
有難いけど余計な気遣いなので、1週間くらい口利いてあげないから!
◇
それからお昼を食べて、少しアトラクションをしてお兄ちゃんへのお土産を買ってから帰ることになった。
楓ちゃんもお兄さんに何か買っているみたいだったけど何買ってるのかな?
チラッとみると、どうやら買わなかったみたいだった。
「それじゃ帰ろっか有栖ちゃん!」
「そうだね!」
いきなり声をかけられびっくりしたが明るく返す。
買わなくて本当に良かったのかどうかは知らないけど楓ちゃんがそう答えを出したのなら私が口を出すべきではないと判断した。
バスに乗ると楓ちゃんはスヤスヤとすぐに寝てしまった。
私も寝ると危ないので起きておく、それにしても寝顔が可愛い。
「楓ちゃん着いたよ〜」
数十分後楓ちゃんを起こしてからバスを降りた。
まだ楓ちゃんは目をこすっていた。
「おはぁよう...ありすちゃん」
「うん、おはよう!楓ちゃん」
そうして帰路を辿った、楓ちゃんはこの日は柊家に結局お泊まりになった。
夜に色々話して、結構仲が深まって良かった。
お兄ちゃんを無視すると思ったけどそんなのどうでも良くなるくらい楽しかった。
この機会をくれたお兄ちゃんに感謝しよう、そう思って私は目を閉じた。
番外編では3章の夏までに起きた出来事だと思っててください。
次は綾くん視点の番外編になります。
皆さんは絶叫系アトラクション好きですか?
私は小さい頃にバイキングでトラウマを植え付けられてから遊園地を行くのが全くと言っていいほどなくなりました。笑




