『青春とは何か?』
学校へ着くと、俺と志乃亜はすぐさま席に着く...という訳にもいかず廊下で立ち話をすることになった。
何故かというと、男子が志乃亜を待ち構えていたからだった。
昨日のことで俺まで見られているので荷物を置いてから直ぐに撤退するという形になってしまった。
「私があそこまで人気だとは予想外でした...」
「志乃亜がそう言うって相当だな」
どうやら今日のことは志乃亜も想定外だったらしい。
教室に入りにくくなってしまったので、廊下で少し話しているがここも良くないなと思ってしまう。
「教室に戻りましょうか」
「そうだな?」
何か思いついたのか、志乃亜は教室に戻るという選択を選んだらしい、俺も何か思いついた志乃亜にかけるとして教室へ戻った。
席に座ると俺の席ではなく、志乃亜の席の周りに男たちがやはり集まることとなった。
志乃亜に話しかけては俺の方をチラッと睨んでくる男が多数。
この新クラスで浮かないように気をつけようかな、と思っていた矢先に浮いてしまっている状態になってしまった。
少し悲しいが致し方ないことなのだろう。
「おいお前、神城さんとどういう関係なんだ?」
名前も知らない男についに声をかけられてしまった。
自己紹介なら3分くらいで言うことが可能だが全く関係ない志乃亜のことで話があったみたいだった。
「なんだ?」
「お前と神城さんはどういう関係なんだ!?」
志乃亜の事が気になるのは好きにしていいのだが俺に対してお前と言ってくるのは少し教育が行き届いていない気がする。
「お前?」
俺は俺のことではないかのように後ろを振り向く素振りをした。
所謂煽りというものだろう、最近になって思うことはすっごく心が狭くなったせいか、短気にもなってきている。
志乃亜のような知人相手ならばそんなことは一切ないのだが赤の他人となると、すぐキレそうになってしまう。
俺の最近の欠点はそういう、心の狭いというところだった。
昔の自分を見ていたら、今の自分のことなんか考えられないだろう。
「おいお前話聞いてるのか!?」
「お前って誰?」
「は?」
俺が聞くと男は驚いた表情をしていた、俺の名前すらわからないと言った様子だった。
「あと、他人に自分のことをベラベラ喋る趣味は持ち合わせてないから、話すことはないな」
そう言うと男は何か考えた素振りをしてから「すまなかった」と一言返して自分の席に戻っていった。
俺が思うのもお門違いかもしれないが、根は真面目だったのだろう、恋は盲目とはまさにこの事なんだろうな、そう思ってしまった。
◇
それから俺の前に男が立つことはほとんどなくなっていた。
何故かと言うと全部俺に追い返されてしまっているからだった。
俺に対して『神城さんの誕生日わかるか?』『神城さんの好きな物わかるか?』『神城さんの得意料理わかるか?』などなど俺と無関係なことを聞き出す男が溢れてきている。
もう対処に困ってしまった俺は全部追い返すという考えに至ってしまった。
(もう俺のとこに来ないでくれ...)
心の中でそう思うばかりだったがその願いは叶うことはない。
「柊くん、今日こそ神城さんについて教えてくれ」
そう言ってきたのは出席番号1番赤野竜馬だった。
彼は結果的に俺の名前を覚えてしまい、ずっと『神城さん、神城さん』と志乃亜について超うるさいやつだった。
俺のとこじゃなくて志乃亜のところに言った方がいいんじゃないか?と聞いてみたら『女神は拝めるだろう?それと一緒だ!』と何か宗教のようなことを語り始めたのは少しいい思い出になったかもしれない。
赤野は、俺のことに対してあまり気にするような素振りがなかった。
そこが嬉しかったのか、俺がぼっちで寂しいのか赤野の相手はしてあげている。
質問に対してもぼかして答える感じなら答えてあげているが、あまり教えるのは志乃亜に申し訳ないので全部嘘も本当も混ざっている。
あともう1人、俺の暇つぶし相手ができてしまった、大野悟だ。
こいつに対しては最初は無視を決めていたのだがいつの間にか俺と少しずつ話していくうちに取り込んでしまった子といえばいいだろう。
大野については、志乃亜が好きだということではなく、最初から俺の方が気になっていたらしい。
初めの頃は『何で白髪なの?』と平気でズカズカと聞いてきた。
これも同じく、知り合いならば俺も優しめで教えていたのかもしれないが、今回に至っては他人なので『教えることはない』の一点張りで押し通した。
今になっては本人も反省しているようで、俺に対しての接し方も最初の頃より格段とマシになっていた。
俺にもつるむ相手ができたということはめでたいことだが最近になって思うことがひとつあった。
◇
青春とは何か?
そんなことがずっと頭の中にいる、今俺は青春をしているのだろうか?
これが青春なのか?俺が今していることは一体何なのか?
全くわからなくなってきていた。
「帰りましょうか」
突然志乃亜から声をかけられるが「あぁ」と返事を返し、バックを取って教室を出た。
「何か悩み事です?」
「少しな、最近のことで悩んでる」
「そうですか」
「あぁ」
俺の聞いて欲しくないことを聞かないという、この絶妙な距離感を保ってくれる志乃亜のありがたさを理解している。
それでもってまた俺は考えに浸った。
俺の思う青春とはなんだろうか?
3話目です。
これにて2章は終わりになります。
綾にも話せるような友達?ができてきました。2人ですが...
皆さんは青春と考えたら何を思いつきますか?
自分はあるアニメを思い出します。
完結してしまいましたがとても面白かったですね。
次の話は2章の登場人物をまとめて、3章から次の舞台にいきます。
季節は春から夏へと───舞台は体育大会へ。




