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『過信は禁物』

 


「おかえりお兄ちゃん!」


 そう言って俺を迎え入れてくれる有栖はまさに天使なんだが、俺は「ただいま」とだけ答えた。


「お兄ちゃん何かあったの?」


「ちょっと家の前でな...」


「ふむふむ、なるほど!」


「今のでわかったの!?」


 どうやら今のでわかってしまったらしい。有栖は理解力が高すぎないか?そのうちかくかくしかじかでも通りそうな気がしてきた。


「お兄ちゃんご飯できてるよ〜!」


「わかった、今行く」


 俺は荷物を置いてからリビングへ行くと、オムライスができていた。


「美味しそうなオムライスだな」


「隊長、先月よりかは上手く作れた自信があります!!」


 変なノリできたが先月もオムライスがあったがあまり上手く出来なかったというのが結果だった。


「それで今回リベンジということか」


「そういうこと!」


「じゃあ「いただきます」」


 そう言って口にオムライスを運ぶがあることに気がついた。


 先月はケチャップで文字を書いてくれていたのに今回はケチャップで文字を書いていなかった。


「美味しいな...」


「そう?なら良かった!」


 そう言う有栖は少し不安だったらしい、余裕がなくて文字のことを忘れてたんだろう、そういうことにしておく。


「ご馳走様でした」


「お粗末様でした〜!」


 俺が食べ終えると有栖がそう言って食器を奪い洗っていた。


 有栖は絶対に良いお嫁さんになる、義兄である俺が言うので間違いないと思う。


 義兄とか、関係ないだろうけどな。


 ふと思うと、志乃亜も良いお嫁さんになりそうな感じだったな。

 表情筋が豊かだったらの話だけれども。


「お兄ちゃんそれじゃあおやすみ〜」


「あぁ、おやすみ」


 柊家の夜は早い、寝るのも少し早めだった。

 有栖は俺が帰ってくるまでの時間で、勉強や買い物を済ませているのでよくできた子だと少し感心する。


 俺も自室に戻り課題と午前の復習をしていた。

 今日はまともに勉強ができていないことから、少し夜遅くまで勉強しようかなと言うのが今回の考えだ。


「あぁ、ダメだ...」


 千里のことが頭に入り、俺の勉強の邪魔をしてくる。

 こういう時に出てくるので少しうざいと思ってしまうが、俺の脳は千里のことでいっぱいだったようだ。


 俺は頭の隅ではやはり千里のことがまだ好きなのかもしれない...とくだらない考えをしていた。


「有り得ないな...」


 そう呟くと、そんな考えはすぐに消え去った。

 ということは、やはり何も思うことはないということだ。


 最後の「綾くん!」が気になって仕方がないが俺には関係の無いことだと割り切るしかないだろう。




 その日は勉強が捗ることはなく結局疲れ果てて寝ることにした。




 ◇




「お兄ちゃん朝だよ〜!」


 次の日、俺は有栖に起こされていた。


「あと5分だけ寝させて...」


「それ3回目だよ?お兄ちゃん」


「わかった...起きる」


 有栖に言われたら起きなくてはならない、それが体に染み付いてしまっているのですぐ起きることにした。


「おはようお兄ちゃん!」


 有栖が、朝イチの笑顔で俺にそう言ってきた。


「ふわぁぁ〜おはよぉ」


 俺はと言うと欠伸をしながら挨拶を返していた。

 欠伸には勝てない、それが人だと思う。


「朝ごはんできてるから食べてね〜」


 今日はパンにベーコンに目玉焼き、そしてサラダだった。


 朝食としては十分なくらいにできている料理を眺め「いただきます」といつもより小声で言い口の中へと放り込む。


「美味しい...」


 ここ数年で確実に料理の腕を上げている、有栖の料理は限界突破したかのように美味しい。


 去年はそんなこと思いもしなかったが、今年になってから急成長しているような気もしていた。


 ひっそりと練習をしていたのかもしれないと思うと、良い子だなと思う。


 朝食を食べ終えた後、有栖は楓ちゃんと行く予定ができたらしく、戸締りはしてくれるとの事だった。


「行ってきます」


「行ってらっしゃいお兄ちゃん」


 玄関を出ると、目の前には千里の住む、春宮家がある。


 俺は一人暮らしを考えてたりするけど、有栖が心配になってくるので一人暮らしはなしになったが今後また考えるべきかもしれないと思い始めている。


「おはようございます」


 突然後ろから声がしたのでびっくりしながら振り向くと志乃亜がいた。


「俺の家知ってたっけ?」


「はい、知ってます。というか高校側に提出してる情報なら全て把握済みですね」


「流石としか言いようがないな...悪用するなよ」


「悪用はしません」


 千里の家を眺めてしまっていたので今このタイミングで志乃亜が出てきたことは嬉しかった。


 正直昨日から頭の中をかき乱されて少し困っていたところだったのでよかったとしか言いようがない。


「なぁ、志乃亜ってどれくらい情報集めたんだ?」


「全てかどうかは知りませんが7割ほどだと予測してます。まぁ10割と威張りたかったですね」


「7割って微妙な感じだな...」


 実際に情報を集める大変さを知らない俺だからこそ言える事だが、相当大変なのだろうと思う。


「そうですね、8割目指して頑張ろうと思うので貴方のこと全部話してくれるといいんですけど」


 そう言ってわざとらしくこちらをチラチラと見る素振りをしていた。


 顔が整っていて可愛いので余計に悪質だと思う、クラスのやつらにそれしたら半分くらいは落とされる。


 特に、えっと、出席番号1番!の赤野竜馬だったな、確か...あいつならその場で倒れそうな気もする。


「わざとやってるだろ?」


「わざと以外に私がやってたら多分その人落ちてます」


「自信があることはいい事だけど過信には気をつけた方が良いぞ?」


「経験談ですね」


 そう言って微笑む志乃亜、実際に俺は過信しすぎていたというのもあるのだろう、千里が傍から離れるわけがない、これからもずっと一緒だと思っていたのに離れていく。


「そうだな、俺の経験談だな」


 その言葉を否定することはこの先も一生ないだろう。



 そう思いながら学校へ、ゆっくりと向かっていった。

2話目です!

毎日2話、なんとかいけそう?な気もしますね。


誤字報告など有難うございます!

大変助かってます。

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