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『小さな思い出、新たな思い出』

 


 


 お昼を食べ終えた後俺と志乃亜は教室に戻ってきていた。

 外野のことなんかお弁当が美味しくてすっかり忘れてしまっていたので俺が睨まれる羽目になってしまった。


「これちょっと志乃亜人気すぎない?」


「私くらいになると無意識に男を引きつけるみたいです。魅力の差ですかね」


「そう言わずに俺を守って...すぐ殺されそうなヒョロヒョロだよ?」


 そう言ってみるも「無理です」と断られた。そりゃそうだが俺を助ける気でこの場にいてほしいと思ったが無駄だった。


 俺の志乃亜に対しての信頼度が1減った瞬間だなこれは...。


 志乃亜は頭が良い、知識が豊富だった。

 俺からしたら考えられない可能性も考え付くことが出来る、今回のことは俺が忘れていただけだったので志乃亜もわかると思う。


 わざと言わなかったな...と思いながら俺は席に着いた。


「ちょっといいか?」


 声がする方を振り向いてみたら確か出席番号1番の人が来ていた。


「何だ?」


 俺は少し警戒しながら相手にそう返す、男でも他人なのは変わりようがないので基本信用していない。


 もちろん、昔みたいにフレンドリーに接するのは今では考えられなくなった。


「えーと...君と神城さんの関係ってなんなの?付き合ってたりするのか?」


 俺はその言葉を聞き「あ、これ志乃亜のこと好きなやつか...」と心の中で察してしまった。


「さぁ?本人に聞いてほしい」


 ここで、付き合っていないとハッキリ否定してあげても良いが、ここは少し意地悪したくなった。


 年上からの年下弄りだとでも思ってくれ。

 ここで勘違いし、勝手に恋仲だと思われても少し困ってしまうけど。


「そうか...わかった」


 そう言って去っていく出席番号1番の人、名前は覚えてなんかいないけど、素直に言うこと聞いてくれていい子だなとか思っとく。


 その後も人が来そうな気配がしたが出席番号1番の反応を見た人たちはみんな席に着いてくれた。


 何とか一件落着だな、一安心。




 ◇




 放課後になると志乃亜の周りには出席番号1番の人達が沢山集まっていた。(出席番号1番が沢山…。これは哲学か何かかな…?)


 帰る約束はしてないはずなので俺は1人で帰ることにしようとした。


「待ってください」


 教室を出ようとしたら志乃亜に止められてしまった。


「今日は一緒に帰りましょう」


 周りを見るとこちらを見ている男子が数人ほどいた。


「あぁ、帰るか...」


 面倒なのでさっさと帰ることにした。男たちについては明日何か言われても無視するしかないだろう。


「出席番号1番の赤野竜馬(あかのりゅうま)さんの質問に対して本人に聞けと言ったのは何故ですか?」


「その方が真実がわからないから」


「それだけです?」


「あと、年上からの年下弄りとでも思っておいてくれ、その時の気分だ」


「そうですか」


 無表情なので、何を考えているのかわからない、表情筋がないのかと思うほど笑わないし、怒ったりもしないのでわからん。


「志乃亜って表情筋ある?」


「喧嘩売ってるんですか?幾らでも買いますよ」


「違う違う、あんま笑ったりしないよな?って思うからな」


「それは...少し母親に小さい頃から欠陥品扱いを受けていたのでこうなっただけだと思います。実は一人暮らしを許してくれたのも欠陥品がさっさと家を出ていってほしいという思いからも来てると思います」


「そうだったのか...まぁなんかごめん」


「謝るなら連絡先でもください」


「ん?まぁ俺も昨日欲しいと思ってたけど」


 そうして、俺は連絡先を貰った。まぁ欲しかったので、実際に俺は得しているような気がする。


「今から予定あります?」


「ないけど?」


「先程の件本当に申し訳ないなら今から私の買い物に付き合ってください」


 さっき、連絡先交換したじゃん、それ今後も脅しとして使う気?今回だけだよ、体力ないし。


「今回だけな...」


「わかりました。次からはメールでお誘いします」


「便利な時代だよな...ほんとに」



 ◇



 俺と志乃亜は結局家に帰らずにクレープ屋さんに来ていた。


「新しくできたクレープ屋さんです。今日開店だったので、気になってたんです」


「確かに美味しそうだしな」


 俺と志乃亜は少し長い行列に並ぶことになった。

 といっても、まぁ俺は付き添いなんだけど、甘い物は結構好きなので少し嬉しい。


「次の方どうぞ〜」


 店員さんの声が聞こえて俺たちはそれぞれ食べたいクレープを頼んだ。


 店員さんが目の前で作っているのを眺めながら待っている。


「手際が良いな...」


「私が作ってもこれくらいにはなると思いますがこういうのも良いですね」


 単純に褒める俺と何かに勝負をしている志乃亜を横目にクレープを貰い金を払ってからその場を後にした。


 俺と志乃亜はもぐもぐと無言でクレープを食べている。


「美味しいな...」


「確かに美味しいです」


 これに関しては志乃亜も納得するような美味しさだった。


「そちらの1口ください」


 そう言って、俺の食べている途中のクレープを1口奪っていった。


 結構美味しいのに、食べ物の恨みは怖いんだぞ?志乃亜さん。


「そんなに睨まないでください。こっちのも1口あげます」


「じゃあ遠慮なく...」


 そう言って食べられた分だけ食べ返す、なんだがカップルみたいなことしてるな...。


「美味しい」


 しかし頭をよぎるのは千里のことだった、クレープか、アイスクリーム食べに連れていかれたこともあったな。


 今となっては小さな思い出に過ぎないが、志乃亜が今日新たに思い出を増やしてくれた。



 その後クレープを無事食べ終わり俺は志乃亜を家の近くまで送ってから帰路を辿った。


 家の前に行くと隣の家、幼馴染である千里の家の前に1人の男がいた。

 新城颯馬だろう、容姿的に何度も見た記憶がある。


 千里もいたが2人はキスをしていた。


 そこを平気に通り過ぎ俺は自分の家の玄関の扉を開け「ただいま」と声を放った。


 後ろから「綾くん!」と声がした気がしたがそんなの無視だ。





 あんなのは俺の幼馴染じゃない、そう思いたかった。


 今までの僅かな小さな思い出はただの幻想、夢であってくれと願うばかりだった。

上げて、落とす。

幼馴染の方は放置状態になってしまいましたが、この1年で確実に少しずつ、少しずつと颯馬の物になっています。


キスするのも拒まないくらいには...と思っておいてください。




ブクマ1000件越えありがとうございます。

今後も少しずつ、頑張っていきたいと思います。

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