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04.モン娘化したけどしばらくはお休み。寝て起きたらママが一緒に寝てました。

 さて、この世界に生まれ早6年、遂に『モンスター娘への変態』スキルを使う。……長いし、やっぱ『モン娘化スキル』でいいか……。


「さぁ、行くよチット!」


『うん!』


 おれはチットに向け意識を集中し、スキルを使用する。おれの願い、想い……ちょっとの欲望やスケベ心、そして、なにより溢れんばりの愛をチットに注ぎ込む!


『ふわああぁぁぁ~んっ!?』


 何か、チットが色っぽい声を上げ、光を身体から溢れさせる。それは、丸くチットを包む込み、何かの繭のような形で固まる。チットは今、この繭の中で俗に完全変態と呼ばれる行為を行っているのだ。


「ふぅ、上手くいったか……」


 まぁ、神様が直接作ったスキルだから、失敗なんてするはずもないんだけど……。これから数日の間、チットはこの繭の状態となる。モンスターという存在から完全に身体と、精神すら造り替えることになるんだ。スキルを使って一瞬で終わり、なんて簡単なことではない。


「チット、お休み……元気に産まれてくるのを待ってるよ」


 繭を抱き上げ、優しく撫でながらおれはそう呟くのだった。




 さて、お昼寝の時間である。


 初めてテイムをしたからか、スキルを使ったからか……それとも、その合わせ技か、精神的に物凄い疲れを感じていた。


「さっさと寝るか……」


 しょぼしょぼとする目を指で擦りながらも、チットの繭をタオルでしっかりと包み、転げ落ちないように机の上に丁寧に置く。本当ならベッドで一緒に寝たいんだけど、もし寝返りとかで床に落としてしまったら――と考えると、怖くて出来ない。なので、チットには悪いが机の上で我慢してもらうことにした。


「ふわあぁぁ~……」


 もう、我慢の限界だ……おれはベッドに潜り込むと、すぐに寝息を立て始める。だから、気付けなかったんだ……おれの部屋に侵入する、金色の母性に溢れた怪しい影に……。




 あぁ、なんて温かい……身体だけでなく、心までぽかぽかとしてくる温かさ……これは、前世の高級羽毛布団でも勝負にはならない……それに、ぽよぽよとや~らかくて、いい匂いのする枕……あれ? おれの枕ってこんな素晴らしい手触りだったっけ……? こんな、どこまでも優しく包み込んで、どこまでも沈んでいくような……あぁ、目覚めたくない、ずっとここに居たい……そうだ、おれはここから産まれて来たんだ……だから、ここに帰るのが当然なんだ……あぁ、、、って、駄目だろ!? 危うく心が原初に帰るところだったぞ!?


 くっ、なんて罠だ。これは、確実におれを駄目にする罠……負けん、負けんぞおおぉぉぉぉっ!!


「うりゃああぁぁぁっ!」


 ――ガバッ!


 おれは気合を込め、勢いよく起き上がる。そうしなければ、また心が負けてしまいそうだったからだ……次は、きっとおれは起き上がれないと確信を抱いていた。そう、今しかないのだ。


「はぁ、はぁ……あ、危なかった」


 なんとか起き上がることの出来たおれは、隣ですやすやと幸せそうに眠るお人を見る。そこに居たのは、うん、ママでした。


 柔らか枕の正体見たり、ママのおっぱい。そら、温かいし良い匂いもするよ……。


「むにゃむにゃ……ふにゃ? むぅ~……」


 ママは手をごそごそと動かし、誰かさん抱き枕を手探りで探しているようだ。いや、これもうどっちが枕だったのかわっかんねぇな……。


「はぁ~……綺麗で、可愛い人だよな……」


 感嘆混じりに呟き、まだ寝ているママの頭をなでなでする。少しウェーブがかった髪ではあるが、それでもサラッサラである、なのにフワッフワでもある。女の人の髪の毛って、なんでこう男とは違うんだろうか。


 何か、こう……やっぱ、生物として根本的に違うんだろうね。


 それにしても……と、おれは自己嫌悪に深々と溜息をついた。うん、おれやっぱママを異性として見ちゃってるよな。駄目だとは分かっているんだけど、どうしてもこの女性が母親である、という認識が薄いのだ。恐らく、これはおれが転生した人間だからだと思う。母親となると、どうしても前世のおかんの顔が思い浮かんでしまうのだ。


 はぁ、親不孝者だよな、おれ……。ママがおれを子供として愛してくれればくれるほど、自分が嫌になってしまう。


 とはいえ、そんな気持ちを表に出すわけにもいかんよな、ママを悲しませることは絶対に駄目なのだ。




「ふわぁ~、おはよう。アル♪」


 そんなこんなでママのお目覚めである。おれが目覚めてあれこれ考えてる間に、それなりの時間が過ぎていたようだ。


「おはよう、ママ。何時の間に布団に入ってたの?」


「ふふ~ん。アルがお部屋に入って、お布団に入ってすぐよ? アルが温かくて気持ち良かったから、ママもぐっすり寝ちゃった」


 って、マジで最初からか!? いくら疲れてたからとはいえ、気付けよおれ。


「それにしても、アル。魔力すごくが減っちゃってたようだけど、どうしたの?」


「え? 魔力?」


「うん。廊下でアルが魔力を使う気配がしたから、ママ慌てて来たのよ? そしたら、アルってば魔力切れになって寝ちゃってるし……心配したのよ?」


 魔力、魔力……あ、ひょっとしてチットのテイムとモン娘化で使ったのか? なるほど、あの眠気は魔力切れだったのか……多分、モン娘化の方だろうな。どうやら、かなりの魔力を消費するようだ。


 さて、どう答えたものか……いや、誤魔化す必要なんてあるのか? おれがやったことは、テイムしてスキルを使っただけ。程度の差はあれ、この世界の人間であれば誰でも持っている力を使っただけだ。


 それに、ママとティーの二人に誤魔化しの嘘を吐いたとして、その嘘は何時まで吐き続けなきゃいけないんだ? 数日もすれば、チットは繭から産まれてくるんだぞ? ここで変な誤魔化しをしたら、おれはずっと彼女を隠し続けなければならなくなる。それでは、チットを自由にしてあげられない。


 うん、素直に話してしまおう。もちろん、おれが転生者であることや、神様からスキルを貰ったなんてことまでは話さないけどね。

お読みいただきありがとうございます。

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